シャーロック=ホームズ全集 11 『シャーロック=ホームズ最後の挨拶(上)』 コナン=ドイル/著 偕成社
1984年初版 1989年8刷
装丁/市川英夫&プラスB 挿絵/S.パジェットほか
※「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します
しばらく間があいてしまったが、続きを読みはじめた
血生臭い殺人ものも多くて描写が生々しい/汗
■ウィスタリア荘
ホームズ:ひどく異様な事柄は犯罪につながりやすい
スコット・エクルズからの「信じがたい異様な経験をした」という電報を読む
その後、本人が事件の依頼で来る いたって真面目なイギリス紳士
ロンドン警視庁のグレグスン警部とサリー州警察のベインズ警部が来て
昨夜、スコットが泊ったウィスタリア荘の主人ガルシアが殺されて
ポケットからスコットの手紙が出てきたと疑う
スコットはここ数日あったことをそのまま話す
メルビルの家に招かれた時にガルシアと出会い
急速に親しくなり、泊りに来ないかと誘われて行くと
いかにも重苦しい空気が漂い、外国人の下男が手紙を持ってきて
さらに考えこんでしまう
寝室で寝ていると、1時頃に「ベルを鳴らしたか?」とガルシアに聞かれて
それからまた寝て、起きると、主人、外国人の下男、料理人も姿を消していた
メルビルを訪ねるとガルシアのことは知らないと言う
ガルシアがもらった手紙は暖炉に投げられたが燃えずに残っていた
「われらの色は緑と白 第一ろうか 成功をいのる D」と女性の文字
ガルシアの死体は頭がぐちゃぐちゃに殴られていた/汗
死体は1時頃からあったと推測されるが、その時はスコットと話している
ホームズ:
ガルシアがスコットと急接近したのは、アリバイ証人に仕立てるつもりではないか
時計の針をあらかじめ動かして、うまく事が運べば戻るつもりだった
手紙は会合か逢引きの約束に違いない
警部とサリー州エシャ村に行くと、ウィスタリア荘に残した警官が
「窓に悪魔が出たが外に出た時はもういなかった」
大きな足跡を見つけるホームズ
台所には黒人の赤ん坊のミイラのようなものや
大量の血を入れたバケツなどを見つける
(ブードゥー教の儀式か?と思ったら当たったv
ベインズ:自分の手柄となるように独力で捜査したい
ホームズは大英博物館に出かけたほかは、長い散歩などして過ごす
「殺人容疑者逮捕」という見出しを見て驚く
窓で見かけた大男が逮捕された
ホームズ:君にひと言忠告したい
ベインズ:お互いに自分のやりかたで捜査しよう と拒絶される
ホームズ:
下男と料理人、手紙の相手も共犯者
僕は植物採集をしながら歩き回り、住人の経歴を探った
ヘンダースン氏と外国人秘書ルーカスは奇妙な連中だ
2人の子どもがいて、家庭教師はミス・バーネット
クビにされた庭師ワーナーから聞き出して
家は中央から2つに分かれ、召使とヘンダースンらはほぼ行き来がない
手紙を書いたのがミス・バーネットだとすると
事件の夜以来見かけたものがいない
同じ夜に殺されたか、閉じ込められているか確かめなければならない と計画していると
ワーナーが汽車で連れていかれそうになっている彼女を助けて連れて来る
アヘンを飲まされ、酷い虐待を受けていた
ベインズも同じ線を追っていて、大男を逮捕したのは
ヘンダースンらを泳がせ、ミス・バーネットに近づくため
ヘンダースンはかつて「サン・ペドロのトラ」と呼ばれた極悪非道な男
暴徒から逃れ、子ども、秘書、財宝もすべて消えた
手紙にある緑と白はサン・ペドロの国旗
夫を無残に殺された被害者であるミス・バーネット、本名デュランド夫人が真実を話す
ヘンダースンに復讐する結社が作られ
国外を転々としていたヘンダースンを突き止めて家庭教師になりすました
元高官の息子ガルシアに手紙を書いていると秘書につかまり
その場で殺されそうになるがリスクが大きいため麻薬を飲まされた
ベインズは次のギルフォード巡回裁判で解決すると言い切ったが
逃げた2人の足取りはつかめず、半年後、2人は何者かにより殺される
ミイラは料理人が崇拝していたブードゥー教の神で
取りに戻ったところを逮捕されたと明かすホームズ
田舎でくすぶっていた有能な警部は手柄を上げ
大きな事件がなくて気が狂いそうになっていたホームズも満足気
どっちもどっちな狂気を感じるな
■ボール箱
1話目と同様、ワトソンがノートからピックアップしたという設定
朝配達された手紙に夢中になっているホームズ
どんなに暑くても田舎や海辺にはまったく興味がない
ワトソンの仕草を観察して、何を考えているか当てる件は読んだことがある!
「入院患者」の冒頭とまったく同じじゃん/驚
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズにもこうした使い回しがあるけど
まさか世界的に有名なホームズまでとビックリ
ホームズ:顔は感情を表す道具として与えられたものだ
ミス・カッシング宛てに塩漬けの耳が2つ届いた/汗
まったく覚えのない夫人は問題児の医学生3人のイタズラではないかと思う
ホームズとワトソンは夫人の住むクロイドンに向かう
レストレード警部とともに郵便物を調べると
麻紐とその結び方に特徴がある(とくればもう船員だな
2つの耳は同一人物のものではない
解剖室の死体には防腐剤が注射してあるが
よく切れない刃物で切り、塩漬けにしてあるから医学生ではない
2人を殺したことをカッシングに知らせるのが目的と推測
部屋に飾った写真から2人の妹がいると分かる セアラとメアリ
メアリは船員ジム・ブラウナーと結婚 酒癖が悪く暴れる
セアラは一時期姉スーザンと暮らしていて、いつもジムの悪口を言っていた
2人はセアラの住むウォリントンにも向かうが
重い脳障害で倒れて話せない状態
ホームズは早速レストレードに犯人の名前を書いた名刺を渡す
ホームズ:
あのヒモは船の帆を縫う時に使う
結び方は船乗りがやる方法
小包の宛名はミス・S・カッシング
犯人はセアラ宛てに出した
人間の体の中で耳ほどいろいろな形をしたものはない
切られた耳とスーザンの耳の特徴はとても似ていたため、近親者と分かる
犯行の動機として考えられるのは夫の妻に対する嫉妬
セアラが事件の原因となる出来事に関係していた
セアラは小包のことを聞いて寝込むほどショックを受けた
レストレードはブラウナーを逮捕するとあっさりと自供してその供述書を読む
ジムとメアリは最初うまくいっていたが
セアラがジムに惚れ、拒むと心底憎むようになり
メアリにいろいろ吹き込んで夫婦仲が壊れたところに
アレックという男を連れてきて、2人はいい仲になったためケンカになった
ジム:今後あいつと会ったら、奴の片耳切り落として記念に送る!
1週間の航海に出る前に家に戻ると
メアリとアレックが仲良くしているのを見て正気を失う
ボートを漕いでる2人に近づき、ステッキで殴り殺しボートごと沈めてしまった
ボート屋はもやで方角を見失い、沖に流されたと思った
目をつぶると2人がじっと睨んでいる
あいつらは俺をじわじわ殺そうとしている
ホームズ:
この不幸と暴力、恐怖の繰り返しは何を示しているのだろう?
目的がなければ、この世はただの偶然に支配されるということになる
人間の理性がいつまでも答えを出せないでいるのだろう
■赤い輪党
多忙で小さい事件には興味のないホームズだが
“おせじにかなり弱く、優しさにも弱かった”(これは意外
ため、ついに押しの強いウォレンさんの相談にのる
10日前に入った下宿人は、週に50シリングの宿代のところを5ポンド払うと言い
前払いする代わりに誰も入れるなという条件を出す
1日中せかせか部屋を歩きまわるのに、あれから1度も出てこないのが気になって仕方ない
外に出たのは最初の夜だけ
食事はベルを鳴らした時にドアの前のイスの上に出して
終わったらまたベルを鳴らして食器を片付ける
必要なモノはメモに書いて盆に乗せるがどれも活字体でひと言のみ
最初の紳士はヒゲを生やしていたが
もえさしのタバコが短く切ってあるためヒゲを焦がしてしまう長さと気づくホームズ
事件に興味を持っても、なにか犯罪が絡んでいるという理由がないかぎり
プライバシーに立ち入る権利はないため
なにか進展があればすぐ知らせてくれと言って帰す
部屋を借りた人と今住んでいる人が違う可能性がある
借りた男との通信手段は新聞の通信広告欄(いかにもミステリーだな
ここ2週間の広告欄を調べるとそれらしき文面が見つかる
「白い石の化粧張りの高い赤い家」
そこに再びウォレンさんが来て、主人が2、3人に馬車に乗せられ
別の場所で捨てられたと言う
ホームズ:下宿人に危険が迫っている
下宿人の向かいの物置部屋に鏡を置けば、相手の顔が見えるため行くと
向かいに「白い石の化粧張りの高い赤い家」があるのを見つける
食事の盆を置き、鏡を見ていると、女性がドアを開けるのが見えた
活字体で書いたのは、女性の筆跡がバレるのを防ぐため
ワトソン:どうして君がこれ以上深入りする? 何が得られるんだ?
ホームズ:
芸術のための芸術ってやつさ
君も患者を診る時は研究で頭がいっぱいで料金のことなど考えないだろう?
下宿人の部屋からロウソクを点けたり消したりする暗号が見える
読み解くと「ATTEMTA」
イタリア語で「用心せよ」の意味
向かいの部屋からも返事のような合図があるが
「危険」というやりとりの途中で男の姿が消えた
アパートに入ろうとすると、グレグスン警部が
ピンカートン・アメリカ探偵社のレバートンとともに張っている
目的は50もの殺人事件の影にいる赤い輪党のゴルジアーノ逮捕のためと聞いて驚く
アパートに入るとゴルジアーノが首にナイフを刺されて死んでいる
この家から出た3人の男たちが怪しい
ロウソクで「来い」と合図をすると、下宿人の女性がやって来て
ゴルジアーノが死んでいるのを見ると踊らんばかりに狂喜する
エミリア・ルッカは夫ジェンナロ・ルッカとの話を始める
2人は駆け落ちし、結婚、NYへ渡り、カスタロッテの世話になる
彼が連れて来たイタリア人がゴルジアーノ
カルボナリ党(19Cイタリアの政治的秘密結社)とつながる
ナポリの秘密結社「赤い輪党」に誘われて入った
ゴルジアーノはエミリアに惚れて襲うところにジェンナロが来て争い、ゴルジアーノは姿を消した
カスタロッテも命を狙われ、家ごとダイナマイトで吹き飛ばす役にジェンナロが指名された
カスタロッテに危険を伝えてからロンドンに逃亡
この隠れ家にいたがゴルジアーノに見つかった
エミリア:皆さんにお聞きしますが、私たちは法律の裁きを怖れる必要がありましょうか?
グレグスン警部:上司に会っていただきましょう
正当防衛ってことか
ホームズはすぐにコペンハーゲン劇場でワグナーのオペラを観に行く/驚
■ブルース・パーティントン設計図
濃い霧の日が続いて、せっかちで行動的なホームズは耐えきれなくなる
戦争や政治、革命に関するニュースには関心がなく、新聞にはめぼしい事件もない
ホームズ:
この素晴らしく陰気な舞台は大がかりな犯罪のために用意されている
僕が犯罪者でなくてこの社会は幸運と言うべきだろうね
ワトソン:まさにその通り(ww
ほとんど家の近辺から出ない兄マイクロフトが来るという電報に喜ぶ
ホームズ:
大変動でも起きて、レールが外れたのかな(w
兄はイギリス政府に関係している
時にイギリス政府であると言ってもいい
素晴らしい記憶力、秩序だった頭脳を持つ男で専門は無限、全知的だ
地下鉄で死体が発見されたカドガン・ウエスト事件について
ウーリッジ兵器庫の事務員
最後の目撃者は婚約者のバイオレット
切符が見当たらず、どこから乗ったか不明
国家予算から膨大な額の金を密かに獲得した潜水艦作戦
国家機密のブルース・パーティントン設計図が盗まれ
10枚のうちポケットに入っていたのは7枚
外国人スパイに売るのが目的と思われる
厳重に金庫にしまわれ、3つの鍵が必要
管理者は2人 ジェームズ・ウォルターとシドニー・ジョンソン
マイクロフト:足を使うんだ、シャーロック!
鉄道を見ると、転轍機とカーブがやけに多いのが特徴
血痕がないことから別の場所で殺されて、電車の屋根に乗せられ、カーブで落ちたと推測
ジェームズ・ウォルターを訪ねると今朝亡くなったと聞いて驚く
弟バレンタイン大佐:今回の誹謗中傷のせいだ
バイオレット:
彼ほど真面目で愛国心の強い人はいなかった
質素で給料は足りていた
ここ1週間ほどふさぎこんでいて
売国奴が設計図を手に入れるのはカンタンだと言った
映画に行く途中で突然駆け出して、それきり
ホームズ:模写したほうがカンタンなのに、原図を盗むとは風変りだ
シドニー:残った7枚のうちの1枚に弁装置が描かれていて、3枚では不完全
ホームズは盗んだのが上司ではないかと推測し
不法侵入にワトソンを誘う
ホームズ:
ほかの可能性がすべて消えれば、たとえありそうにないことでも残ったものが真実だ
僕ときたら、そばに信頼のおける同志であり
伝記作家がいなきゃ何ひとつできん男だからな
最後は勇気をふるってくれると信じていたよ
地下鉄の上に建つアパートに侵入すると
死体を落とした窓に血痕が見つかり、電車が一時停止することが分かる
部屋は隠ぺい工作されていたが
金庫の中に新聞の人事広告欄で取引した記事が残っていた
翌日、おとりの広告を出し、レストレード警部と4人で犯人を待つ
そこに現れたのはバレンタイン・ウォルター大佐で
事の顛末を詳しく明かすホームズ
濃霧の中、役所から設計図を盗んだのをカドガンに見られたための犯行
カドガンを殺したのはスパイのオバーシュタインで、電車の屋根に乗せたのは自分だと自供
借金返済を迫られたのが動機
重大な箇所が抜けていたから売りたいと再び広告を出すと
オバーシュタインがおとりにかかり15年の刑となる
ウォルターは2年目の刑期で獄死した
その後、ホームズはさる高貴な女性から素晴らしいエメラルドのタイピンをもらう
■シャーロック・ホームズを推理する 各務三郎
●謎に挑む作家たち
昭和43年 府中で3億円事件が起き、いまだに迷宮入り
今の警備、捜査なら未然に防げたのかな?
昭和48年 九段のホテルから元大統領候補・金大中氏が誘拐され
韓国に連れていかれた事件
昭和24年 東北本線松川駅近くで起きた列車転覆事件
死者3人が出て、国鉄職員、共産党員らが逮捕され有罪判決がおりたが
物的証拠が少なく、強制された自白か、自発的な自白かが問題となり
昭和38年 全員無罪となる
1836年 アメリカ メルツェルという人形師が自動チェス人形を使って興行
ポーは『メルツェルの自動チェス人形』と題して論文を書き手品であると論じた
その後、人形の中に小人が隠れていたと分かる
ポーは世界最初の探偵小説『モルグ街の殺人』を書いた
●探偵が作家になった例は多い
ダシール・ハメットは元ピンカートン・ナショナル探偵社の探偵
ジョー・ゴアズも元私立探偵の推理作家 小説『ハメット』(映画で観た?
ベリー・メースン弁護士シリーズで有名なE.S.ガードナー
事件調査委員会をつくり、弁護士、法医学者、私立探偵などを任命
誤審と思われる裁判を雑誌に調査結果を発表
約15年、無実の人たちを解放し、裁判制度、警察制度、犯罪学、市民の法意識に大きな刺激を与えた
●ドイルはホームズ?
ドイルの2番目の妻・ジェーン夫人:
シャーロック・ホームズと私の夫は素晴らしい独自の推理と分析能力がありました
貧しい若い看護婦がドイルに手紙を出し、行方不明の婚約者を探して欲しいと依頼
見つけ出した後のお礼の手紙が残っている
『花むこ失踪事件』に似ている
1903年 バーミンガムの炭鉱地帯で家畜が刃物で殺される事件が連続し
インド人弁護士ジョージ・エダルジが逮捕され、7年の刑を受けた
人種差別の典型
ドイルは調査し、『デーリー・テレグラフ』に無罪説を書いて非難し国中が大騒ぎになり
無罪となったが損害賠償はされなかった
1908年 金持ちの老婆が惨殺され、ドイツ系ユダヤ人スレーターが終身刑となる
ユダヤ人への偏見が背景
ドイルは『オスカー・スレーター事件』を発表
いったんくだされた判決をくつがえすのは困難を極め
無実となったのは、約20年後
(ドイルが優れた推理をしたというより、当時の捜査や裁判が相当ずさんで
人気のあったドイルが発表することで世論を傾けたということでは?
■作品解説
●ウィスタリア荘
サン・ペドロは架空の国で緑と白の国旗は中米諸国にはない
●ボール箱
『入院患者』と冒頭が同じ
男女の三角関係が道徳上好ましくないとして、後半を削ったが
『最後の挨拶』編集にあたり、原稿枚数が少なくて収録
●赤い輪党
一部の研究家によるとイタリア語はKWXYを使わないから
アルファベット26文字の暗号の順番が狂うという意見もある
日本語でも平安時代までは㋼をウィ、㋽をウェという言葉があった
ヲをウォと読む発音がかろうじて残った
今でもズとヅを区別する地方がある
1984年初版 1989年8刷
装丁/市川英夫&プラスB 挿絵/S.パジェットほか
※「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します
しばらく間があいてしまったが、続きを読みはじめた
血生臭い殺人ものも多くて描写が生々しい/汗
■ウィスタリア荘
ホームズ:ひどく異様な事柄は犯罪につながりやすい
スコット・エクルズからの「信じがたい異様な経験をした」という電報を読む
その後、本人が事件の依頼で来る いたって真面目なイギリス紳士
ロンドン警視庁のグレグスン警部とサリー州警察のベインズ警部が来て
昨夜、スコットが泊ったウィスタリア荘の主人ガルシアが殺されて
ポケットからスコットの手紙が出てきたと疑う
スコットはここ数日あったことをそのまま話す
メルビルの家に招かれた時にガルシアと出会い
急速に親しくなり、泊りに来ないかと誘われて行くと
いかにも重苦しい空気が漂い、外国人の下男が手紙を持ってきて
さらに考えこんでしまう
寝室で寝ていると、1時頃に「ベルを鳴らしたか?」とガルシアに聞かれて
それからまた寝て、起きると、主人、外国人の下男、料理人も姿を消していた
メルビルを訪ねるとガルシアのことは知らないと言う
ガルシアがもらった手紙は暖炉に投げられたが燃えずに残っていた
「われらの色は緑と白 第一ろうか 成功をいのる D」と女性の文字
ガルシアの死体は頭がぐちゃぐちゃに殴られていた/汗
死体は1時頃からあったと推測されるが、その時はスコットと話している
ホームズ:
ガルシアがスコットと急接近したのは、アリバイ証人に仕立てるつもりではないか
時計の針をあらかじめ動かして、うまく事が運べば戻るつもりだった
手紙は会合か逢引きの約束に違いない
警部とサリー州エシャ村に行くと、ウィスタリア荘に残した警官が
「窓に悪魔が出たが外に出た時はもういなかった」
大きな足跡を見つけるホームズ
台所には黒人の赤ん坊のミイラのようなものや
大量の血を入れたバケツなどを見つける
(ブードゥー教の儀式か?と思ったら当たったv
ベインズ:自分の手柄となるように独力で捜査したい
ホームズは大英博物館に出かけたほかは、長い散歩などして過ごす
「殺人容疑者逮捕」という見出しを見て驚く
窓で見かけた大男が逮捕された
ホームズ:君にひと言忠告したい
ベインズ:お互いに自分のやりかたで捜査しよう と拒絶される
ホームズ:
下男と料理人、手紙の相手も共犯者
僕は植物採集をしながら歩き回り、住人の経歴を探った
ヘンダースン氏と外国人秘書ルーカスは奇妙な連中だ
2人の子どもがいて、家庭教師はミス・バーネット
クビにされた庭師ワーナーから聞き出して
家は中央から2つに分かれ、召使とヘンダースンらはほぼ行き来がない
手紙を書いたのがミス・バーネットだとすると
事件の夜以来見かけたものがいない
同じ夜に殺されたか、閉じ込められているか確かめなければならない と計画していると
ワーナーが汽車で連れていかれそうになっている彼女を助けて連れて来る
アヘンを飲まされ、酷い虐待を受けていた
ベインズも同じ線を追っていて、大男を逮捕したのは
ヘンダースンらを泳がせ、ミス・バーネットに近づくため
ヘンダースンはかつて「サン・ペドロのトラ」と呼ばれた極悪非道な男
暴徒から逃れ、子ども、秘書、財宝もすべて消えた
手紙にある緑と白はサン・ペドロの国旗
夫を無残に殺された被害者であるミス・バーネット、本名デュランド夫人が真実を話す
ヘンダースンに復讐する結社が作られ
国外を転々としていたヘンダースンを突き止めて家庭教師になりすました
元高官の息子ガルシアに手紙を書いていると秘書につかまり
その場で殺されそうになるがリスクが大きいため麻薬を飲まされた
ベインズは次のギルフォード巡回裁判で解決すると言い切ったが
逃げた2人の足取りはつかめず、半年後、2人は何者かにより殺される
ミイラは料理人が崇拝していたブードゥー教の神で
取りに戻ったところを逮捕されたと明かすホームズ
田舎でくすぶっていた有能な警部は手柄を上げ
大きな事件がなくて気が狂いそうになっていたホームズも満足気
どっちもどっちな狂気を感じるな
■ボール箱
1話目と同様、ワトソンがノートからピックアップしたという設定
朝配達された手紙に夢中になっているホームズ
どんなに暑くても田舎や海辺にはまったく興味がない
ワトソンの仕草を観察して、何を考えているか当てる件は読んだことがある!
「入院患者」の冒頭とまったく同じじゃん/驚
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズにもこうした使い回しがあるけど
まさか世界的に有名なホームズまでとビックリ
ホームズ:顔は感情を表す道具として与えられたものだ
ミス・カッシング宛てに塩漬けの耳が2つ届いた/汗
まったく覚えのない夫人は問題児の医学生3人のイタズラではないかと思う
ホームズとワトソンは夫人の住むクロイドンに向かう
レストレード警部とともに郵便物を調べると
麻紐とその結び方に特徴がある(とくればもう船員だな
2つの耳は同一人物のものではない
解剖室の死体には防腐剤が注射してあるが
よく切れない刃物で切り、塩漬けにしてあるから医学生ではない
2人を殺したことをカッシングに知らせるのが目的と推測
部屋に飾った写真から2人の妹がいると分かる セアラとメアリ
メアリは船員ジム・ブラウナーと結婚 酒癖が悪く暴れる
セアラは一時期姉スーザンと暮らしていて、いつもジムの悪口を言っていた
2人はセアラの住むウォリントンにも向かうが
重い脳障害で倒れて話せない状態
ホームズは早速レストレードに犯人の名前を書いた名刺を渡す
ホームズ:
あのヒモは船の帆を縫う時に使う
結び方は船乗りがやる方法
小包の宛名はミス・S・カッシング
犯人はセアラ宛てに出した
人間の体の中で耳ほどいろいろな形をしたものはない
切られた耳とスーザンの耳の特徴はとても似ていたため、近親者と分かる
犯行の動機として考えられるのは夫の妻に対する嫉妬
セアラが事件の原因となる出来事に関係していた
セアラは小包のことを聞いて寝込むほどショックを受けた
レストレードはブラウナーを逮捕するとあっさりと自供してその供述書を読む
ジムとメアリは最初うまくいっていたが
セアラがジムに惚れ、拒むと心底憎むようになり
メアリにいろいろ吹き込んで夫婦仲が壊れたところに
アレックという男を連れてきて、2人はいい仲になったためケンカになった
ジム:今後あいつと会ったら、奴の片耳切り落として記念に送る!
1週間の航海に出る前に家に戻ると
メアリとアレックが仲良くしているのを見て正気を失う
ボートを漕いでる2人に近づき、ステッキで殴り殺しボートごと沈めてしまった
ボート屋はもやで方角を見失い、沖に流されたと思った
目をつぶると2人がじっと睨んでいる
あいつらは俺をじわじわ殺そうとしている
ホームズ:
この不幸と暴力、恐怖の繰り返しは何を示しているのだろう?
目的がなければ、この世はただの偶然に支配されるということになる
人間の理性がいつまでも答えを出せないでいるのだろう
■赤い輪党
多忙で小さい事件には興味のないホームズだが
“おせじにかなり弱く、優しさにも弱かった”(これは意外
ため、ついに押しの強いウォレンさんの相談にのる
10日前に入った下宿人は、週に50シリングの宿代のところを5ポンド払うと言い
前払いする代わりに誰も入れるなという条件を出す
1日中せかせか部屋を歩きまわるのに、あれから1度も出てこないのが気になって仕方ない
外に出たのは最初の夜だけ
食事はベルを鳴らした時にドアの前のイスの上に出して
終わったらまたベルを鳴らして食器を片付ける
必要なモノはメモに書いて盆に乗せるがどれも活字体でひと言のみ
最初の紳士はヒゲを生やしていたが
もえさしのタバコが短く切ってあるためヒゲを焦がしてしまう長さと気づくホームズ
事件に興味を持っても、なにか犯罪が絡んでいるという理由がないかぎり
プライバシーに立ち入る権利はないため
なにか進展があればすぐ知らせてくれと言って帰す
部屋を借りた人と今住んでいる人が違う可能性がある
借りた男との通信手段は新聞の通信広告欄(いかにもミステリーだな
ここ2週間の広告欄を調べるとそれらしき文面が見つかる
「白い石の化粧張りの高い赤い家」
そこに再びウォレンさんが来て、主人が2、3人に馬車に乗せられ
別の場所で捨てられたと言う
ホームズ:下宿人に危険が迫っている
下宿人の向かいの物置部屋に鏡を置けば、相手の顔が見えるため行くと
向かいに「白い石の化粧張りの高い赤い家」があるのを見つける
食事の盆を置き、鏡を見ていると、女性がドアを開けるのが見えた
活字体で書いたのは、女性の筆跡がバレるのを防ぐため
ワトソン:どうして君がこれ以上深入りする? 何が得られるんだ?
ホームズ:
芸術のための芸術ってやつさ
君も患者を診る時は研究で頭がいっぱいで料金のことなど考えないだろう?
下宿人の部屋からロウソクを点けたり消したりする暗号が見える
読み解くと「ATTEMTA」
イタリア語で「用心せよ」の意味
向かいの部屋からも返事のような合図があるが
「危険」というやりとりの途中で男の姿が消えた
アパートに入ろうとすると、グレグスン警部が
ピンカートン・アメリカ探偵社のレバートンとともに張っている
目的は50もの殺人事件の影にいる赤い輪党のゴルジアーノ逮捕のためと聞いて驚く
アパートに入るとゴルジアーノが首にナイフを刺されて死んでいる
この家から出た3人の男たちが怪しい
ロウソクで「来い」と合図をすると、下宿人の女性がやって来て
ゴルジアーノが死んでいるのを見ると踊らんばかりに狂喜する
エミリア・ルッカは夫ジェンナロ・ルッカとの話を始める
2人は駆け落ちし、結婚、NYへ渡り、カスタロッテの世話になる
彼が連れて来たイタリア人がゴルジアーノ
カルボナリ党(19Cイタリアの政治的秘密結社)とつながる
ナポリの秘密結社「赤い輪党」に誘われて入った
ゴルジアーノはエミリアに惚れて襲うところにジェンナロが来て争い、ゴルジアーノは姿を消した
カスタロッテも命を狙われ、家ごとダイナマイトで吹き飛ばす役にジェンナロが指名された
カスタロッテに危険を伝えてからロンドンに逃亡
この隠れ家にいたがゴルジアーノに見つかった
エミリア:皆さんにお聞きしますが、私たちは法律の裁きを怖れる必要がありましょうか?
グレグスン警部:上司に会っていただきましょう
正当防衛ってことか
ホームズはすぐにコペンハーゲン劇場でワグナーのオペラを観に行く/驚
■ブルース・パーティントン設計図
濃い霧の日が続いて、せっかちで行動的なホームズは耐えきれなくなる
戦争や政治、革命に関するニュースには関心がなく、新聞にはめぼしい事件もない
ホームズ:
この素晴らしく陰気な舞台は大がかりな犯罪のために用意されている
僕が犯罪者でなくてこの社会は幸運と言うべきだろうね
ワトソン:まさにその通り(ww
ほとんど家の近辺から出ない兄マイクロフトが来るという電報に喜ぶ
ホームズ:
大変動でも起きて、レールが外れたのかな(w
兄はイギリス政府に関係している
時にイギリス政府であると言ってもいい
素晴らしい記憶力、秩序だった頭脳を持つ男で専門は無限、全知的だ
地下鉄で死体が発見されたカドガン・ウエスト事件について
ウーリッジ兵器庫の事務員
最後の目撃者は婚約者のバイオレット
切符が見当たらず、どこから乗ったか不明
国家予算から膨大な額の金を密かに獲得した潜水艦作戦
国家機密のブルース・パーティントン設計図が盗まれ
10枚のうちポケットに入っていたのは7枚
外国人スパイに売るのが目的と思われる
厳重に金庫にしまわれ、3つの鍵が必要
管理者は2人 ジェームズ・ウォルターとシドニー・ジョンソン
マイクロフト:足を使うんだ、シャーロック!
鉄道を見ると、転轍機とカーブがやけに多いのが特徴
血痕がないことから別の場所で殺されて、電車の屋根に乗せられ、カーブで落ちたと推測
ジェームズ・ウォルターを訪ねると今朝亡くなったと聞いて驚く
弟バレンタイン大佐:今回の誹謗中傷のせいだ
バイオレット:
彼ほど真面目で愛国心の強い人はいなかった
質素で給料は足りていた
ここ1週間ほどふさぎこんでいて
売国奴が設計図を手に入れるのはカンタンだと言った
映画に行く途中で突然駆け出して、それきり
ホームズ:模写したほうがカンタンなのに、原図を盗むとは風変りだ
シドニー:残った7枚のうちの1枚に弁装置が描かれていて、3枚では不完全
ホームズは盗んだのが上司ではないかと推測し
不法侵入にワトソンを誘う
ホームズ:
ほかの可能性がすべて消えれば、たとえありそうにないことでも残ったものが真実だ
僕ときたら、そばに信頼のおける同志であり
伝記作家がいなきゃ何ひとつできん男だからな
最後は勇気をふるってくれると信じていたよ
地下鉄の上に建つアパートに侵入すると
死体を落とした窓に血痕が見つかり、電車が一時停止することが分かる
部屋は隠ぺい工作されていたが
金庫の中に新聞の人事広告欄で取引した記事が残っていた
翌日、おとりの広告を出し、レストレード警部と4人で犯人を待つ
そこに現れたのはバレンタイン・ウォルター大佐で
事の顛末を詳しく明かすホームズ
濃霧の中、役所から設計図を盗んだのをカドガンに見られたための犯行
カドガンを殺したのはスパイのオバーシュタインで、電車の屋根に乗せたのは自分だと自供
借金返済を迫られたのが動機
重大な箇所が抜けていたから売りたいと再び広告を出すと
オバーシュタインがおとりにかかり15年の刑となる
ウォルターは2年目の刑期で獄死した
その後、ホームズはさる高貴な女性から素晴らしいエメラルドのタイピンをもらう
■シャーロック・ホームズを推理する 各務三郎
●謎に挑む作家たち
昭和43年 府中で3億円事件が起き、いまだに迷宮入り
今の警備、捜査なら未然に防げたのかな?
昭和48年 九段のホテルから元大統領候補・金大中氏が誘拐され
韓国に連れていかれた事件
昭和24年 東北本線松川駅近くで起きた列車転覆事件
死者3人が出て、国鉄職員、共産党員らが逮捕され有罪判決がおりたが
物的証拠が少なく、強制された自白か、自発的な自白かが問題となり
昭和38年 全員無罪となる
1836年 アメリカ メルツェルという人形師が自動チェス人形を使って興行
ポーは『メルツェルの自動チェス人形』と題して論文を書き手品であると論じた
その後、人形の中に小人が隠れていたと分かる
ポーは世界最初の探偵小説『モルグ街の殺人』を書いた
●探偵が作家になった例は多い
ダシール・ハメットは元ピンカートン・ナショナル探偵社の探偵
ジョー・ゴアズも元私立探偵の推理作家 小説『ハメット』(映画で観た?
ベリー・メースン弁護士シリーズで有名なE.S.ガードナー
事件調査委員会をつくり、弁護士、法医学者、私立探偵などを任命
誤審と思われる裁判を雑誌に調査結果を発表
約15年、無実の人たちを解放し、裁判制度、警察制度、犯罪学、市民の法意識に大きな刺激を与えた
●ドイルはホームズ?
ドイルの2番目の妻・ジェーン夫人:
シャーロック・ホームズと私の夫は素晴らしい独自の推理と分析能力がありました
貧しい若い看護婦がドイルに手紙を出し、行方不明の婚約者を探して欲しいと依頼
見つけ出した後のお礼の手紙が残っている
『花むこ失踪事件』に似ている
1903年 バーミンガムの炭鉱地帯で家畜が刃物で殺される事件が連続し
インド人弁護士ジョージ・エダルジが逮捕され、7年の刑を受けた
人種差別の典型
ドイルは調査し、『デーリー・テレグラフ』に無罪説を書いて非難し国中が大騒ぎになり
無罪となったが損害賠償はされなかった
1908年 金持ちの老婆が惨殺され、ドイツ系ユダヤ人スレーターが終身刑となる
ユダヤ人への偏見が背景
ドイルは『オスカー・スレーター事件』を発表
いったんくだされた判決をくつがえすのは困難を極め
無実となったのは、約20年後
(ドイルが優れた推理をしたというより、当時の捜査や裁判が相当ずさんで
人気のあったドイルが発表することで世論を傾けたということでは?
■作品解説
●ウィスタリア荘
サン・ペドロは架空の国で緑と白の国旗は中米諸国にはない
●ボール箱
『入院患者』と冒頭が同じ
男女の三角関係が道徳上好ましくないとして、後半を削ったが
『最後の挨拶』編集にあたり、原稿枚数が少なくて収録
●赤い輪党
一部の研究家によるとイタリア語はKWXYを使わないから
アルファベット26文字の暗号の順番が狂うという意見もある
日本語でも平安時代までは㋼をウィ、㋽をウェという言葉があった
ヲをウォと読む発音がかろうじて残った
今でもズとヅを区別する地方がある