メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『月夜とめがね』 小川未明/作 あすなろ書房

2021-12-12 15:09:13 | 
「小川未明まとめ」カテゴリー参照



以前読んだ『赤い蝋燭と人魚』の作者である
小川未明さんが気になって他の絵本も借りてみた

小川未明
1882年生まれ 1961年没
新潟県上越市出身の小説家、童話作家
1925年 早大童話会を立ち上げる
数多くの優れた童話を発表し
「日本のアンデルセン」と呼ばれている

絵/高橋和枝
東京学芸大学教育学部美術科卒業



2015年初版 意外と新しい本なのが意外

昭和のとても落ち着いた言葉遣いの文章で心が休まる
文章に寄り添うように描かれた高橋さんの絵も見ていてとても落ち着く

私の大好きな三角屋根の四角い家が描かれていてとても気に入った

月は童話にもよく出てくる
とても神秘的な存在であることがわかる


【内容抜粋メモ】





月が綺麗な晩のこと
静かな町のはずれに住むおばあさんは
窓の下に座って針仕事をしていました






目がかすんでいるため針の目に糸が通らず
何度も透かして眺めたりしていました

おばあさんはこうして仕事をしながら
自分の若い時分のこと
遠方の親戚のこと
離れて暮らしている孫娘のことなどを
空想していたのであります

外では何か物売りの声や
汽車の行く音のような聞こえてくるばかりであります

おばあさんは今自分はどこにどうしているのすら思い出せないように
ぼんやりと夢を見るような穏やかな気持ちで座っていました






外の戸をコトコト叩く音がして
風の音だろうと思っていると
窓の下で「おばあさん」と誰か呼ぶのであります

外には背が小さい黒いメガネをかけた男の人が立っています






私はお前さんを知らないが誰ですか?

私は眼鏡売りです
この町は初めてですが
実に気持ちの良い綺麗な町です
今夜は月がいいからこうして売って歩くのです

私の目にあうような眼鏡はありますか?

男は箱のフタを開くと鼈甲縁の眼鏡を取り出して

これなら何でもよく見えること請け合いです







おばあさんはメガネをかけてみると
目覚まし時計の数字や暦の字がはっきりと見えます
幾十年前の娘時分にこんなになんでも見えたのだろうと思われたほどです

これをおくれと買いました

男の姿が見えなくなった時には
草花だけが夜の空気に香っていました






もう時刻もだいぶ遅いから仕事を片付けていると
また外の戸をトントンと叩くものがありました

何と不思議な晩だろう
また誰か来たようだ
もうこんなに遅いのに

そこには12、3の美しい女の子が
目を潤ませて立っていました







私は町の香水製造場に雇われています
毎日白ばらの花から取った香水を
瓶に詰めて夜遅く帰ります







月がいいので歩いてきますと
石に躓いて指をこんなに傷つけてしまいました
痛くて我慢できないのです

私はおばあさんが親切で優しい方だと知っています
それでつい戸を叩く気になったのであります







私にお見せなさい
何か薬をつけてあげよう

さっき買ったメガネをかけて
娘の顔をよく見ると
綺麗なひとつのこちょうでありました







こんな穏やかな月夜の晩には
よく胡蝶が人間に化けて
夜遅くまで起きている家を訪ねることがあるものだという話を思い出しました

そのこちょうは足を傷めていたのです

おばあさんが振り向くと
少女はいつのまにか消えていていました







みんなおやすみ
どれ私も寝よう

おばあさんは家の中へ入って行きました

本当に良い月夜でした







家の前に咲いている花に住んでいる胡蝶だったのかな




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