メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ゆがめられた記憶 マーガレット・マーヒー/作 岩波書店

2024-10-08 16:44:33 | 
1996年初版 清水真砂子/訳 アラン・フード/カバー絵


どこで本書を知ったかもう思い出せないが
タイトルに惹かれた

前半はひどく酔ってボロボロの主人公や
ゴミ屋敷に住む老女のリアルな描写に戸惑ったけれども
姉の謎の死の真相、老女の行く末が気になって一気読み
ヒトの記憶の曖昧さについて考えさせられる

時々、会話や主人公の想像力が飛びすぎて
ついていけない部分もありつつ
社会に順応できないもどかさはホールデン・コールフィールドを思い浮かべた



【内容抜粋メモ】

登場人物
ジョニー 19歳
ジェイニーン 姉

ベネディクタ家
ボニー 養女
サマンサ 養女 妹

ソフィー
エロル・ウエスト 夫
ネブ・ファウラー


ジョニーはひどく酔い、ケンカ沙汰を起こして、父に説教され
ボニーに会いたいと思って家まで来る
最後に会ったのは姉ジェイニーンの葬式
もう5年が経った

ベネディクタ家はマオリに土地を返そうという運動のデモに参加した若者が集っている
ボニーは街中のフラットに住んでいるというが詳しくは教えてくれない
ジョニーは電話帳を覗いて住所や電話番号を手にメモる

マックスがクルマでタクシー乗り場まで送ってくれる
ジョニーとジェイニーンは鶏肉の有名なCMで踊っていたと知って驚く

ジョニーは今でもふと歌ったり、タップダンスで踊ることがある
母は「笑いなさい! 幸せそうな顔をするの」というのが口ぐせだった



ボニーはジェイニーンと親友同士で、ジョニーと3人でよくごっこ遊びをした
「危険」という立て札を無視して崖っぷちを歩き、ジェイニーンは転落死した
ジェイニーン:あんたになんか、つかまりっこないわよ

ボニーはジョニーも崖の上にいたとウソの証言をした
ジョニーは自分が姉を押したのではないかという記憶にさいなまれ続けている
それをボニーに確認したかった

ボニー:私たちはいろんな印で動いていくものよ
ボニーはジョニーにとってピュートーンだった



気づくと、安全地帯の木の茂みで寝ていたジョニー
ふらふら歩いていると、スーパーから出て来た老女がニコニコしながら歩いてくる

ソフィー:あなたよねえ? あなたも来る?

後をついていくと、コルビルというパブの名前を見て
学生の頃、自分をひどくいじめたネブ・ファウラーを思い出す
ネブはジェイニーンが好きだったが、ジェイニーンはコルビルを下に見ていて、ネブを嫌っていた

ソフィーの家は壁から大きな蛇口が出ている
夫エロル・ウエストは配管工だったが亡くなった

ソフィーはアルツハイマーのような症状を持ち
家の中は荒れ放題、たくさんのネコを多頭飼いしている状態

何度もお茶をいれると言って、お湯だけを出し
大好きなビスケットだけを食べている様子

ジョニーは倒れこむように寝室で寝てしまう



ソフィーは鍵を首から下げていることを毎回忘れて
隣人が盗んでいるのではないかと疑っている

ジョニーはそのまま家に帰ろうとして、ソフィーが心配になり
一緒にケーキを食べて、スーパーで買い出しする
ソフィーは郵便局に多額の預金を持っていると分かって驚く

持ち家なのに、毎週のように大家スパイクが家賃をもらいに来るのを不審に思うジョニー
夫婦に子どもはいない ジョニーをいとこのアルバと思い込んでいるソフィー

台所を片付けて、古いトランジスタラジオが出てくる
棚の中には600ドルの紙幣が置いたままになっていて
このまま盗んでも誰も気づかないと誘惑されるがそのままにする

ソフィーがどこからかもらってきた本にボニー・ベネディクタと書かれていて驚く
マネキンが置かれていた隣りの家に住んでいると分かる



ソフィーが半裸で床を這っていて驚くジョニー
そのままお風呂に入れて、寝室も片付けていると
ベッドにおねしょの跡を見つける

再び家に帰ろうとしてパブで食事をしていると
ソフィーのトランジスタラジオを見つける
ネブが来て、彼の友人2人がソフィーのものを盗んでいる様子

ソフィーのような老人の面倒を見てくれる施設を見つけるつもりでまたソフィーの家に戻る
若い頃の写真の中に、ジョニーのとよく似たブレザーを着ている青年アルバを見つける
ソフィーは結婚前、アルバに恋愛感情をもっていた



ジョニーは本を返しにボニーと再会する
ソフィーのことを話すと、牛乳と郵便物を勝手に持って行ってしまう迷惑なおばあさんという以外に
事情を知らなかったことを反省する

この家は会計士たちの会社によって1年以内に取り壊されることになっている
ボニーは近所のシルバー福祉センターに知り合いのデイントンがいると教える

ボニー:
あなたは本物のダンサーだった ジェイニーンも私もあなたに嫉妬していた
妹のサマンサはヒネランギ・ホテネと改名して、活動家として報道されている

ジョニーはボニーを夕食に誘うが、肝心の姉の話はできないまま
ソフィーの荷物から古いテレビが出てきて、2人でアニメ『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』を見る
(!! このアニメずっと観たくてどこにもないんだよな



ソフィーは全裸で立っている
ソフィー:ほかの人を愛するなんて無理よ・・・

シルバー福祉センターのデイントンを訪ねると
先日、クルマで送ってくれたマックスだった
ソフィーについて相談すると

マックス:
この町には施設が3つあるが、どこも順番待ちなんだ
彼女はアルツハイマーだと思う
明日にでも家に寄ってみるよ

ソフィーの家に戻ると、男の声がする
スパイク:金をくれれば領収書は出しますよ

スパイクはネブだと思っていたが、パブで見かけたネブの友人の1人だった
新聞の集金に来た時、ソフィーが家主と思い込んだのがきっかけ
ジョニーは二度と来るなと脅して帰す



ソフィーにネイビーブルーのワンピースを着せ、夕食を作るとボニーがやって来る
テレビでホテネが逮捕されたニュースが流れる
ボニー:私は混血のため、養子としては不適格者だったが、両親はそういう子を欲しがっていた

ジョニー:
昔のことにこだわって、そこから動けないんだ
ジェイニーンが落ちて、あんたが俺を抱きしめてくれて

ジョニーはボニーに無理やり迫って、ブラウスを破り、ボニーは家に帰ってしまう



ネブが友人2人を連れて家に来る
ネブ:奴はここのばあさんと親戚でもなんでもないんだ

ジョニーはバルコニーから3人に向かって飛び、ネブと取っ組み合いになる
ソフィーもほうきでネブを叩き、ボニーの呼んだ警察が駆けつける

ジョニー:おれ、やっぱり姉さんを押した気がするんだよ と泣き崩れる
ボニー:ジェイニーンはつまずいて転んで、海に落ちただけ



6週間後、ジョニーは再びソフィーを訪ねる
何度もかけあって、マックスが手配したお陰で
今では週に1回、看護婦がソフィーを風呂に入れ
もう1人が家の掃除をして、ボニーも時々訪ねて世話をしている

ソフィー:
私、その人に手を貸してあげてるの
必要な時に助けてあげられないなんて、そんなひどいこと、ないでしょう?

(ヒトって他者に必要とされていることに幸せや充足感を感じて生きるものなんだな

ジョニー:
君がウソの証言をしたのは、特別なわけがあったに違いないと思ってた
両親は、俺にただ仕事について楽しくやってくれさえすればいいと方針を変えた

ボニー:
私はピュートーンのフリをしていただけ
あなたは私のタイプじゃないし、もうBFがいるの知ってるでしょ

ジョニーは建設現場で働き始め、タップダンスのレッスンにも通い始めた
ソフィーの家で暮らすことがリスタートのきっかけになったと思い返す
原則として人はひとりで生まれ、ひとりで生き、ひとりで死んでいくということだ

ジョニーはソフィーをバンドのリハに誘うと喜ぶ



訳者あとがき
本書の原題は『Memory』
失せない記憶に苦しむジョニーと、失せゆく記憶にとまどう老女ソフィーの物語
無機質に見える都市の中にもたくさんの有機体が呼吸し、ドラマを生きていることが分かる


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