メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

世界科学・探偵小説 24『闇からの声』 イーデン・フィルポッツ/作 偕成社

2021-04-09 18:17:27 | 
世界科学・探偵小説 24『闇からの声』 イーデン・フィルポッツ/作 偕成社
船山馨/訳 杉浦範茂/装幀 武部本一郎/色絵・挿絵
昭和45年発行 定価320円


「ジュヴェナイル」カテゴリー参照






偕成社は様々なジュヴェナイルシリーズがあって
調べ出すとキリがないほど

「世界科学・探偵小説」シリーズは全国の図書館に2冊ほどしか見つからず
これまたとても貴重な本と分かった

巻末には元の持ち主か借主か
これまで読んだと思われる(それともこれから読みたいものか
熱心な書き込みがある
どのタイトルもワクワクする響き





ホームズの後に読むと、探偵にあまりクセがなく
捜査方法も地味めな上
犯人を憎むあまりに
同じ方法で死に追い込んでしまうという
大きな過ちをおかしてしまっている

カラーのイラストの「人の首」の絵はたしかにおぞましく、インパクト大
本文中の挿絵はスタンダードなタッチ






上品で美しいベレイヤーズ夫人を
晩年のイングリッド・バーグマンが演じていると想定して読んでみた

犯人がある程度分かっている状態でも
探偵との知恵比べにはドキドキする

それにタイトルの声の正体が最後まで謎で
それがまた先を読ませる1本の筋となっている





この物語について 船山馨
『闇からの声』はイーデンの代表作の1つ
探偵小説の古典とも言われる名作

犯人捜しではなく、はじめから犯人として登場し
探偵と死力を尽くして戦います

頭のレクリエーションにもなり
読書の楽しみも生まれると信じます



【内容抜粋メモ】(ネタバレ注意

●1 名探偵リングローズ




旧荘園邸ホテルにジョン・リングローズがおりたつ
短い灰色の髪の上品な紳士

彼が狙えばどんな迷宮入りの事件も
たちまち解決されてしまう「鬼探偵」として有名だが
柔和で洗練された容姿

55歳の停年(本文通り)でロンドン警視庁を退職
1人で本でも書こうと高台に1軒建つホテルに来た

ホテル主人ジャコブ・ブレントは、早くに妻を失い
一人息子が犯罪の嫌疑をかけられた際
リングローズに潔白を証明してもらった恩義があり
気持ちよく迎え入れる

引退したのに、部屋の間取りの位置を調べてしまう職業病に苦笑するリングローズ

狩猟に来た際に泊まる以外は客が少ないホテルに滞在しているのは
中風を患って長いベレイヤーズ夫人とその召使のスザン・マンリイ2人のみ






●2 闇のなかの叫び声
84歳のベレイヤーズ夫人は、50年ほど前に亡き夫と
このホテルで新婚を過ごした思い出とともに暮らしている

高齢な夫人は非常に聡明だという諺を思い出す
年齢よりずっと若く美しく、品のある女性

リングローズとは逆の端に部屋がある

その夜、リングローズはただならぬ恐怖の声で目が覚める
廊下も空き部屋の隣りも人影はなく、窓は閉まったまま


●3 幽霊の声?
リングローズは職業柄、危険が多いため独身を通しているが
子どもが大好きだった

叫び声が少年のもので、すすり泣きが哀れで激しい怒りを覚える

ホテルにいるのは全部で10人 子どもはいない

4日目の夜も同じ少年の声を聞く

「怖い その人を隠して ビットンさん!」


リングローズはベレイヤーズ夫人を訪ねて事情を話すと青ざめて
今は亡き少年の幽霊の声を聞いたのだと言う

ビットンとはその子の召使
体の弱い子で保養のために来た






●4 あやしい召使ビットン
リングローズ:何事も偶然はあり得ない 結果の前には原因があるものです

ベレイヤーズ夫人は事情を話す

1年ほど前、ルドヴィック・ビューズという貴族の子どもが来た
父ブルーク男爵がイタリアで客死し、跡を継いだばかり

召使のアーサー・ビットンはよく面倒をみていたが
それが猫かぶりだと言うスザン

少年亡き後、男爵を継いだのは少年の父の弟、現ブルーク男爵
天真爛漫でみんなに親切で評判がいい

ベレイヤーズ夫人とスザンはルド少年を脅かす証拠をとらえたという

物質学者の言う「物質」には
人の手に振れることのできないものが含まれている


精霊も否定しないが、あれほど生々しい肉声に
幽霊の声とは信じがたいリングローズ


●5 おびえるルド少年
医師の話ではルド少年は
何か恐ろしいものを見て神経が疲れていたという

2時か3時頃、少年の叫び声が聞こえた
今、リングローズが泊っている部屋

スザンを行かせると
「またあの人が来たよ! こっちを見ている 怖い!」と叫ぶ声

ビットンが優しく慰める声もした

叔父に知らせようと思いつき、2人が留守の時、部屋を調べてみた


●6 ぼうし箱のなかの秘密
ビットンがブルークノートンの主人を訪ねる用事ができて好機が来た

少年が眠っている間に部屋中を見たが何も怪しいものが1つもなく
鍵のある箱も開けっぱなしで、逆に妙に思った

鍵のあるぼうし箱を開けてみて
なんともおぞましい「人の首」の人形が出てきて
思い出すだけで身震いするスザン

大きな黄色い目、穴だけの鼻、長い歯

それをベレイヤーズ夫人に見せて、忘れないように絵に写した






医師は死因は脳膜炎だと言ったが
ルド少年はビットンに殺されたと疑わない2人



●7 叔父のビューズ氏
ブルーク男爵に「アナタノ オイガ テキニネラワレテイル」
と電報を打った矢先のことだった

男爵に絵を見せるとうなずいていたが
男爵はビットンに絶対の信頼をおいていた

後でホテルの主人に
あの夫人たちは少し変ではないかと言っていたと分かった

あのぼうし箱を見てくれと頼むとビットンは唖然としたが
男爵に言われて開けると中には帽子のみだった


●8 おそろしいデッサン
ルド少年の姉ミルドレッドもまだ17歳くらいで
今は爵位と財産を継いだ男爵のもとで暮らしている





ビットンはルドの死後すぐに辞めて
結婚してブリドボードに住んでいる

絵は焼き捨てようとしていたが、見つからず
ゆうべ見つかったのは神さまの采配だと疑わないベレイヤーズ夫人

リングローズはその絵を預かり
少し調べたいがこの話は伏せて欲しいと頼む


●9 リングローズの決意
ホテル主人にも予定を変えてすぐ発つことを伏せるよう頼む

ビットンには共犯者がいて、誰かに頼まれたと考えるが
それにしても肉声の意味が解けない

「行動の人」とも呼ばれたリングローズは
用意周到に準備をして作戦を立てる

ビットンはブリドボードでウエーターをしているため
リングローズも召使の勉強をして、同じ職業に扮して親しくなろうとする

名前もアレック・ウエストと変えて
上品な人々が集まる酒場に通い

執事を引退後、主人から多額の金をもらって
老後を好きに過ごそうという設定を広めて
すっかり好印象を持たれてみんなに好かれるリングローズ

酒場の主人テインクラーはビットンも似た立場だと教えてくれる

周りに寛大過ぎるほどの態度の彼を見て
教養のある犯罪者は、寛大さを示すことで良心の償いをすることを思い浮かべる


●10 ビットンに近づく
ついにビットンから声をかけられて
アレックは高齢で亡くなったマクタガート公に仕え
かなりのお金を分けてもらったため
この辺で家を探していると話し
ビットンがなぜ男爵のもとを辞めたのかさり気なく聞く

ビットンは男爵は道楽のためなら借金でもなんでもする人で
とくに中世期以降の象牙の彫り物には目がない

金に困ると兄に頼り、兄はとても金持ちで金離れがよく
弟をとても可愛がっていた

ビットンの妻ジェーンも紹介され、次第に親しくなっていく


●11 小だぬきと大だぬき
リングローズとは家を行き来する仲にまでなった

ビットンの生活は真面目で、教会にも毎回熱心に通う
男爵が彼を自由にしたのは、ビットンがかなりの小心者だからと分かる

リングローズは彼の化けの皮を剥がし、法廷で真犯人を証言させようと誓う

そのために、ベレイヤーズ夫人が描いた絵にもとづいて
口を開け閉めできる「人の首」の怪物を作ってもらう
あまりの恐怖で職人は気が変になるほどだった






リングローズはどこも断られたから
ビットン氏のような一軒家を建てようかと思っていると触れ込み
一度家の中を参考に見せて欲しいと頼む

2月の寒く暗い夜、ビットンがリングローズの部屋を訪ねてきた


●12 あらしの夜
夜の11時 男爵との苦労話をするビットン

暗い部屋で、リングローズは腕組みの中で糸を引くと
「人の首」の口が動く仕掛けになっている






それを見たビットンは恐怖で「後ろを見たまえ!」と叫ぶが
「何も見えない」ととぼけるリングローズ

人形は素早く隠して、アルコール中毒ではないか
幽霊を見たのではないかと慰め、家に泊まるようすすめるが
帰るから送ってくれと頼まれる



●13 気味のわるい誘い
リングローズはビットンを医者に診せたほうがいいと夫人にすすめる

ビットンは「あの怪物を隠してくれ!」と叫んだ
それはルド少年と同じだった

翌日、ビットンを見舞うと片方の目に眼帯をして
ロンドンの医者に診てもらうというウソをつく

リングローズ:上流の人たちは飲みすぎて真っ先に目をヤラれる と心配するフリをする

夫人は部屋に変わった顔の絵などないかと聞くが
そんなものは探してもなかったとリングローズ

せっかくだから家を見て行ってくれと誘う夫人

翌日、夫妻はロンドンに行き、やはり病はないと分かる



●14 ビットン夫妻を招く
リングローズは夫妻を夕食に招く
部屋を明るくしたせいで愉快に話が弾む

男爵の兄はよくイタリアに行き、別荘もあった
骨とう品の収集狂で、まるで女には興味がない様子だった

ルド少年のことも探りを入れると
父の死の1年後、体が弱くて亡くなった
姉は男爵と暮らしている

結婚させようとした相手に断られたショックで
すっかり屋敷に閉じこもっている


リングローズは建てもしない家の設計図を見せると
結婚したほうがよいと言われて
自分には兄弟もなく、結婚の予定もないと話す

ジェーン夫人は夫の悪事を何も知らないことが確かになる


●15 書だなのかげに・・・
ビットンを再び部屋に誘うリングローズ

家主は本をたくさん持っていて
『ガリバー旅行記』が面白いとすすめる(!

人を送り出すのがクセになり
執事そのものになりきっている自分に苦笑するリングローズ
自分のつくるウソの世界が本当になる気持ちになることも度々あった


その後、本を借りに来たビットン
月がキレイだからと部屋の明かりを落とす

本を取った瞬間、人形を見て失神してしまうビットン
「あっちへやってくれ!」

リングローズ:
君の家族には千里眼
普通の人には見えないものが見えるの人がいるんじゃないか

ビットン:
人間の顔じゃない 悪魔のような・・・
僕以外、それを見たものはないのさ

悪魔は信じないが、部屋に悪霊がついていたら嫌だから
明日にでも部屋を引き払うと言い、後で後悔するリングローズ

家まで送ると、家内には内緒にしてくれと頼むビットン


●16 ざんげのきざし
ジェーンは泣いた目をして、近頃はビットンが苛立ち乱暴になったと話す
悪夢にうなされ「あっちへやれ!」などと叫ぶ
医師からは精神的にショックがあるのではないかと言われた

罪に何の関わりもない近親者が悲しい思いをするのは
これまでの犯罪でも嫌というほどあり悲しくなるリングローズ


すっかり元気になったビットンと散歩に出かける
悪夢をよく見ると話す彼に
白状させる機会を与えようとうながすリングローズ

リングローズ:
自分も忘れていた過去を思い出して夢に見ることがある
僕と同じ過ちをした友だちに話したらスッキリして救われた
人間くらい弱いものがあるだろうかと考えるんだ

口の堅いビットンが話しかけたそぶりを見せたがそれまでだった


その後、町で男爵と会い
リングローズは顔を覚えられないように避ける


●17 寝室の下にしのびよる

リングローズ:
大人になるということは、泥沼を泥沼と感じずに歩くことなんだろうかね

少年たちを見るたびそう言うリングローズに
子どもは大嫌いだと迷惑そうなビットン

リングローズは第3の計画に移る頃
町では盗賊が現れたという不安が広がる

ジェーンが週末に実家に出かけ
リングローズは夜中にビットンの家に忍び込み
窓ガラスから人形を見せると
叫び声と倒れる音が聞こえる

リングローズは翌朝、人形を暖炉で焼いてから
正々堂々と対決しようと決意する


●18 思いがけないできごと
ビットンの家に警官や人だかりができて
ビットンがピストル自殺したと聞いて
ショックで帰宅するリングローズ

6か月かけた計画が崩れただけでなく
ビットンを恐死させてしまい
次の計画が台無しになった

夜にお悔やみに行くと
ジェーンは自分にも打ち明けてくれなかったが
なにか後ろめたい秘密があると思ったと話す

警察に呼ばれたら、男爵と顔を合わせることになるため
不幸を忘れるためにも旅行に出ると言って別れる

新聞にビットンの自殺が判定されたと読みホッとする


●19 男爵邸へのりこむ
以前救ったことのある骨とう品屋のカレブに
中世期頃の象牙細工がないか聞くと

カレブ:
最後の値打ちものは男爵に売った
持ち主が亡くなり、競売にでもならない限り上等なものは現れない

イタリア、ルネサンス時代の
ゴルドーニの作品を持つキャンブル夫人を紹介してくれる

男爵に近づくために、名前をノーマン・フォーダイスに変えて
今度は骨とう品商売人になりきる

エジンバラのキャンブル夫人を訪ねると
ちょうど金がいるからと男爵に1000ポンドで売る約束をつける

自分で持っていくと手紙を送り、素顔のまま男爵邸にのりこむ

ユーモアがあり、非の打ち所がない男爵
長身の美しい青年ニコラス・トレーメンを紹介される


●20 お花畑の少女
庭でミルドレッド嬢に出会う





トレーメンがミルドレッドを愛していることが伝わるが
彼女は破棄された婚約者を忘れられないでいる

男爵は値切るために、まずは自分のコレクションを見せる


●21 奇怪な彫り物
4世紀の象牙細工などが並び
名のある品より、名のない品のほうが値打ちを感じることもあると語る

その中に地獄の入口の彫り物で、悪魔の象牙細工を見て
「人の首」そっくりだと驚くリングローズ


その後、ゴルドーニ作品を見せると
これは本物だと興奮し、750ポンド出すと言う

持ち主に電報を打って確かめるため
トレーメンとともにブルークノートンの局まで行く


●22 うかびあがったなぞ
ミルドレッドは子どもの頃からイタリアに住んでいた
父親が悲劇的な死に方をして
弟とともに男爵の世話を受けることになった

婚約したコンシダインはコモ湖の医者で
不幸があった後、年が違いすぎると断り
すぐに金持ちのアメリカ人と結婚してしまった
はじめから財産目当てだった

“父親が悲劇的な死に方”という言葉がひっかかるリングローズ

キャンブル夫人は1000ポンドよりまけないとの返事
その後、現金で850ポンドという話でまとまる

男爵がミルドレッドに結婚をすすめるのは
遺産分けしたくないからと推理する


●23 悪魔の顔
男爵はなんの秘密もないように見えて
鋭い感性があるため、油断ならない

ミルドレッドから、母が亡くなり、父は乗馬にのめりこみ
崖で墜落死したことを聞く

近いうちにイタリアのフローレンスの家に行く

キャンブル夫人から申し出を断わる電報が来る

リングローズは再び悪魔の彫刻を見つめていると
後ろから男爵に声をかけられる


●24 うたがいの目
リングローズが去る直前、1000ポンドの小切手を渡され
ゴルドーニ作品を手に入れる男爵

男爵がノーマンを不審に思ったことが分かる
ビットンの自殺とアレックとを結びつけたに違いない

また新しい方法を考えなければ
その時、コンシダイン医師を思い出し

早速、イタリアのメナジオのホテルにノーマンの偽名で泊まり
風邪気味だとコンシダインを呼ぶ


●25 医師コンシダインの話
若々しく、教養で洗練された姿で評判が良い
結婚の話を持ち出すと一生しないと言う

夜食に誘い、元ブルーク男爵の別荘について聞く

コンシダインは兄ブルーク男爵の主治医で
弟バーゴイン(現男爵)もよく知る

ミルドレッドを裏切った話をすると
歳が違いすぎるからと断ってきたのはミルドレッドのほうからだと言う

2人はバーゴインに計画的に引き裂かれたのだと指摘するリングローズ
自分が調べるから、単独行動しないように約束させる

ブルーク男爵の死体を発見したのはコンシダイン

愛馬は「わしのへや」と呼ばれる崖から落ちたが
ブルーク男爵はそれとは別の場所から落ちたことを警察には伏せた
ミルドレッドへの配慮からだった

古くからの召使ロックレイが子どもの遊び相手として来た


●26 『わしのへや』
バーゴインは遺言執行者をつとめ
大変悲しんで、子どもたちを引き取った

リングローズはコンシダインに「わしのへや」に案内してもらい
死体発見場所をくまなく調べて
すべて自分にまかせてくれと頼む







●27 別荘の老人
リングローズはビットンと親しいアレックとしてロックレイに会う
60年も仕えた彼は、骨とう品狂いのバーゴインに苦労したことを語る

ブルーク男爵が自殺した日もイタリアにいたことを知るのは彼のみ
ステッピングという偽名でボローニャのホテルにいた


●28 対決をいどむ
リングローズはボローニャに飛び、アリバイ工作の謎を解き
コンシダインに事情を話す

ブルーク男爵は自分が調べていることに気づいているだろう

妻の死を嘆いていたとしても、愛する子どもに遺書も残さず
金の無心ばかりする弟に残して死ぬわけがない
自分の豊かな天性を利用して犯罪を生み出すこともある

リングローズはコンシダインに男爵宛てに手紙を出してもらう

「メナジオにノーマンという男が来て
 男爵一族のことをしきりに聞かれて怪しい
 本当に親しいのか」という内容

リングローズは男爵が自分を「わしのへや」から
同じ手口で突き落としてくれたら自分の勝利だと言う


●29 にこやかな出会い
時間にルーズな男爵にしてはすぐに返事が来て
なぜ一族に興味を持つのか分からないと気のない内容だったが

それが逆に怪しいとにらんだリングローズはすぐルガノに向かい
ノーマンの名でホテルに泊まる

道で男爵と出くわし、いかにも嬉しい再会の芝居をする2人(w
夕食に誘うと喜んで応じる男爵


●30 さぐりあい
男爵がリングローズを探偵と疑っているのは間違いない

いもしない妻宛てに男爵の罪を暴くため
明日、「わしのへや」に行くつもりだと書いた手紙を
わざと隠すそぶりをして男爵に読ませる

男爵もまた、リングローズがわざとそうしていると知りつつそれを読む

思い出に浸りたいから
ここいらで一番景色の良い「わしのへや」に行かないかと誘う男爵


●31 犯人の告白

男爵:
あなたは私をよくご存じなのでは
そこで私は不思議な話をすっかり打ち明けてしまいたいのです

翌日、2人は崖にのぼる
男爵は少年の死は認めるが、兄は自殺だったと言う

あなたは私の敵ではない
お腹が空いたでしょう 酒もあります、とランチをすすめる


●32 毒酒をのむ
男爵がしみじみと双眼鏡で崖のかなたを見ている間に
キャンティ酒を飲んだリングローズはもがき苦しむ






男爵:
そこに致死量のヒオシンを入れて、この崖から捨ててやる
ロンドンの私立探偵に調べさせて分かったのだ

辺りを警戒してふと見るとリングローズが消えている
崖から転落した跡を確かめると
男爵はすぐにミラノ行きの夜行列車に乗る

夜、コンシダインのもとに泥だらけのリングローズが現れる

兄を殺した際も弟がさし出したランチを食べただろう
自分は飲むフリをして、ハンカチに染み込ませた

ヒオシンは死後何年たっても検出できる毒物
何度も崖を調べたおかげで、姿を隠すことができた

リングローズはすぐにエジンバラに向かう


●33 幽霊の正体
リングローズが再び旧荘園邸に訪れたのは
事件から1年ほど経ってから

ホテル主人は歓喜して出迎える
あれから20人泊まったが幽霊は出ていない

ベレイヤーズ夫人とスザンにこれまでの経緯を
2晩にわたって聞かせる

崖で死んだと思わせて
私立探偵にバレないよう姿をしばらく隠す必要があった
それから警視庁と大がかりな捜査が始まった

ブルーク男爵の死体からヒオシンが検出された

逮捕される時も男爵は落ち着いていた

男爵:
君は飲まなかったのだね
とうとう私を絞首台に送ったね というのが最期の言葉

牧師は断り、遺言にゴルドーニ作品とともに
あの悪魔の象牙細工をリングローズに遺した

コンシダインはミルドレッドと結婚することに決まった


大団円だが、まだ事件捜査のきっかけとなった
幽霊の声の謎が解けない





リングローズが来た時、ブレントは口留めされていたのに
嬉しさのあまりスザンに打ち明けた

2人はリングローズが寝たのを見て隣室から声を出した
押し入れの壁が隣りに抜けられる仕組みになっていた

ベレイヤーズ夫人は昔
劇場でバーレスク(道化芝居)が華やかだった頃
どんな子どもの声も演じることができた有名な女優だったと明かす

リングローズに問題を問いかけるために最後の演技を見せた

幽霊の正体見たり枯れおばなという
東洋の言葉を思い浮かべるリングローズ





<解説 船山馨>





フィルポッツは、イギリス陸軍士官の父を持ち、インドで生まれた
教育は景色のいい土地で有名なプリマスで受けた

17歳の頃から新聞記者などいろいろな仕事を転々としながら
小説を書き続け、30歳過ぎてから世間に認められはじめた

トーケイに住んでいた頃、隣りに住む10代の少女が
小説を書いてはフィルポッツに批評してもらっていた

それが今や有名なアガサ・クリスティーだったのは有名な話(!





60歳を過ぎてから探偵小説を書いて、人々は驚いた
本書は64歳の時の作品

バン・ダイン流の推理とは違うおっとりした妙味が特長


ドーバー海峡の切り立った崖は、大昔の大地震で大陸が海底に沈み(!
「白い国」と呼ばれ、絶えず大陸から侵略を受け

追い詰められた人々は、気候風土の荒いスコットランドに住みついた
本書のキャンブル夫人の頑固さもスコットランドの気質か

フィルポッツはハリントン・ヘキストという別名でも
たくさんの探偵小説を書いた

同一人物とハッキリしたのは第二次世界大戦後のこと






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