メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

世界推理・科学名作全集 16 『地球最後の日』 コナン・ドイル/作 偕成社

2021-04-10 14:44:20 | 
世界推理・科学名作全集 16 『地球最後の日』 コナン・ドイル/作 偕成社
監修:江戸川乱歩、木々高太郎、畑中武夫
野田開作/訳 杉浦範茂/装幀 依光隆/色絵・挿絵
昭和38年発行 定価260円


「ジュヴェナイル」カテゴリー参照


ハマってるジュヴナイルシリーズ
シャーロックホームズの著者がSFものも書いていたことにビックリ





よくある宇宙からの侵略者に襲われる系かと思いきや
謎の毒ガス帯に入って、地球全滅からの意外な展開だった

科学者、記者、冒険家らが地球が終わる様を
ガラス窓から見つめ続けると同時に
読んでいる私たちもまたその目撃者となる

1冊全部がこの話だと思ったら
『地球最後の日』は短編で、もう1作のほうが長い


もう1作は私の大好きなヴェルヌの『海底二万里』に負けず劣らずの
海底冒険もので、奇想天外でいて、妙に科学を先取りした話に
夢中になって一気に読んでしまった!



毎回、巻末を見ると、別のシリーズの紹介があるのも嬉しい

「少女世界文学全集」と銘打って、世界の名作がまとめて全36巻もある
監修には川端康成も加わっている/驚






「少年少女 現代日本文学全集」は全24巻
これは短編を集めたものだろうか?





昔から英米文学が好きで、日本文学に疎いため
こうしたシリーズから入るのが抵抗なく最適かもしれない

もちろん、私の大好きな宮沢賢治も入っている
賢治のどの作品が載せてあるかも気になるところ








【内容抜粋メモ】







●1 奇妙な金曜日

8月27日金曜日
金曜日というのは縁起が悪いと相場が決まっている
(そうなの? だから13日の金曜日?
ロンドンは街中が灰色に見えた

新聞記者マローンは、3年前、有名な冒険探検学者チャレンジャー博士とともに
南米アマゾンの秘境を踏査した

今日はその記念日で別荘に招かれている
冒険をともにした自然科学者サマリー教授、狩猟家ロクストン卿も来る

編集長から怪物博士に会いに行ってくれと仕事を命令される
今朝のタイムズ紙に、近頃、宇宙天体に怪しい異変が起こり
毒ガスがはびこり、地球が死の危険にさらされると発表したのだ

全人類の滅亡など信じていない編集長は
うんと面白く書いて、月曜の朝刊で「地球の最後か?」と大特集をやれば
バカ売れすると興奮している

(とにかく末尾に「!?」をつければ、なんでもありだからね


マローンは、シンガポールやスマトラで
住民全員が正体不明の病に侵されたというニュースも聞き
得体の知れない恐怖に震える

そこに博士から「サンソヲ、モッテコイ」という謎の電報が来る


●2 狂ったぜんまい
酸素屋(そんなのがあるの?!)に行くと
サマリー教授も同じ電報を受け取って
あるだけの酸素をタクシーに積み込ませていた

タクシーに乗る間、世の中の調子がぜんまいが狂ったようだと気づく
普段落ち着いている町がせかせかと気違いじみている

陽気なロクストン卿は明るく挨拶し
自分も酸素を汽車に運んだと話す

一生の親友でありながら、道中ずっと口喧嘩となり
気まずい状態でジャービス・ブルック駅に着き
車でロザフィールドの博士の別荘に着く






●3 毒ガス問答
人嫌いの博士の門には「訪問者、新聞記者、物乞い等、一切立入禁止」とある
大きな頭、広い額、黒髪、澄んだ瞳の博士が迎える

忠実な博士の黒人運転手オースチンは
博士が今朝、女中の足に噛みついたとこっそり話す

イラストが可笑しいww





電話が鳴り響き、7、8通の電報が投げ出されている

博士:
わしだって助からんさ
あんたはあんたでなんとかするほかないよ と乱暴に電話を切る

ロンドンからここまで変わった様子はなかったかと聞かれて
みんな精神が乱れてすさんでいたと話すと
自分も忠実な女中の足にいきなり噛みついたことを話す

マローン:毒にやられているんだ!

博士:
地球は宇宙に発生した毒ガス地帯に突入しつつある
まもなく包まれ、今や地球最後の日に直面しているのだ!



●4 酸素のとりで
周りは平和で美しい田園風景
ゴルフ場で楽しそうにプレーする人
乳母車を押す少女





博士:
ここは海抜700フィートの高地だから
まだ何もないが、やがてここにも押し寄せるだろう

ロクストン卿:戦おうではないか

博士:
ガスは非常な早さで襲ってくる
これは世界各地から来た電報だ
パリでは暴動が起きて殺し合っている
ガスは人間同士を敵にする作用を持つ

サマリー教授:僕たちは死ぬまでいい仲間でいましょう

マローンもせめてすべての人間が助け合って死ぬべきだろうと思う

博士の妻が作ったオムレツとカツレツが美味しくて
地球最後ということも忘れる4人

博士:
ガスがここまで来るのは夕方
酸素がある分、私たちは全人類より
数時間長く生き延びられるかもしれない

妻の狭い部屋を閉め切り、隙間を油紙でふさいで密閉すれば
うまくいくと思っている

酸素ボンベは6本ある
地球最後の日をできるだけ長く観察するのが私たちの義務だ


全員は早速、酸素の砦をつくる



●5 忍びよる死の影
南米からの通信は途絶え、老若男女、金持ち、貧乏人問わず
バタバタと倒れている

編集長から電話があり
「博士の予言が当たった 編集室の半分以上の連中が意識を失った・・・」





電話の声が途切れ、死の気配が感じられた

突然マローンは膝をつき、声が出なくなる
激しい眩暈、全身から力が抜ける

このまま死ぬのかと諦めた矢先
赤紫色の顔で妻をかついで運ぶ博士を見て
自分を叱咤し、酸素の部屋に戻ると生き返るマローン


●6 ほろびゆく世界

サマリー教授:
この毒ガスはどういう性質だろう?
匂いも色もなく、正体が分かれば
恐怖の秘密を解き明かせたかもしれない

マローン:この窓から見られるかぎりを観察して詳しくノートに書きます

オースチンは自動車を洗いながら倒れている
さっきまで穏やかだった景色が一瞬で死の世界となる

鳥も虫も飛ばない空

火事を発見して2人の学者は首をひねる
炭酸ガスのように火を消す性質ではないことが分かる

遠くを驀進する汽車が見えて
石炭車にまともにぶつかり火柱が立った
乗客はすでに死んでいたに違いない






●7 生きているアメーバ
夜になり、1本の酸素ボンベで約3時間もつと分かる

遅めの夕食には冷肉、パン、ピクルスなどが出て
普段と変わらぬ食卓を飾る妻に感心する

博士:酷い悲しみや苦しさに晒されると妙に腹が減るものだ(そうか?

ロクストン卿:土人の葬式ではカバをむさぼり食うのを見た

夫人にはアイルランドに母がいる
サマリー教授はロンドンに妻子がいる
彼らもとうに死んだだろう


博士は顕微鏡を覗き、昨日採集したアメーバが活発に生きているのを見て驚く

博士:
アメーバが生きられるのなら
いつかまた地球に生命が誕生し
進化すれば人間の社会が復活する

アメーバは海、泥でも生きる生命力がある
周囲に応じてどんな姿にもなる
未来の人間は我々とは全然違う姿をしているかもしれない

ロクストン卿:
どんな姿でも人間になって自然を支配してくれたほうがいいよ
火星人が地球人を見れば奇怪な奴だと思うだろう
よろしく頼むよアメーバくん

ロクストン卿は真面目な顔でアメーバに話しかけた

(自然を支配したからバチが当たったとか?



●8 さいごの夜明け
夜が更けて月がのぼる

他のみんなは盛大なイビキをかいて眠るが
マローンは眠れず鮮烈に光る月や星を見る

(そんなにイビキの合唱になるような旦那はイヤだ/汗


素晴らしい夜明けに感動するマローン

マローン:人類は絶滅したが、太陽は昇り、潮は満ち、大自然は滅びない・・・

最後の酸素ボンベを開ける

朝は温かいココアが出た

ロクストン卿:
最高の科学も、宗教も、結局は人間の幸福のためにあると思うよ
吾輩は友だちとヒマラヤのユキヒョウ狩りを約束していた
今度生まれ変わったら、その約束を果たしたい

死のガスは、大自然を透明なほどキレイにしたのかもしれない
空気を濁し、自然を汚した人間をやっつけ
地球を元の姿に戻したのかもしれない


(あと、娯楽のために動物を殺したりね/涙

酸素があと少ししかないことに気づく


●9 くだかれた窓

ロクストン卿:
ライオンが目の前にのしかかった時逃げてはダメだ
敢然と立ち向かうしかない
一か八か じっとしていてもどうにもならない

サマリー教授も酸素が切れるまで
じっとしているのが我慢できないと言う

博士は妻が生まれ変わったら
夫と朝の散歩がしたいなら今すぐやろうじゃないかと
やにわに望遠鏡を窓ガラスに投げて割る





意外にも外の空気は爽やかで、新鮮な呼吸で体が蘇る

博士:世界は死の毒ガスから抜け出した 我々は助かった!

妻:生き残ったのは私たち5人だけでしょうか

5人で地球の後片付けをしようと誓う


●10 うつろな空の下
毒ガスにいたのは約20時間ほど
チベットやアルプスなどの人は助かったかもしれないと
生きている人を探しに出かける5人

いきなり女中やオースチンの死体を見て悲痛になる
体が固まり、顔には苦悶の表情がないことにフシギがる学者ら

ロンドンの様子も見ようとロクストン卿の運転する車で出かける
マローン:僕たちは地球上に現れた最初の人間みたいですね

(意外と今の現代人もそだったり?


すぐに死体の群れを見て震えあがる
サマリー教授:野蛮人が虐殺していった後のようだね
(それは開拓時代のこと?






●11 悪魔のつめあと
どの死体も臭いを発散していない
夏の盛りなのに腐っていないし

色も変わっていないと不思議がる学者ら

3階からハンカチを振っている人間を見て驚く






行くと、1人の老婆で
病気のために酸素ボンベを欠かしたことがないため生き延びたが
外の惨状を知らないため
銀行からお金をおろして、買い物を頼みたいと言う

街中に突然悪い病気が流行ったが
帰りにまた寄ると約束してそこを離れる


●12 鳴りわたる鐘
ロンドンの人口は当時700万人
1000人くらいは生き延びただろうと予想したが

ロンドンの都市部はバスや電車が混乱し死と化していた
タクシーは郊外に逃げ出そうと向かって止まったまま

(災害に対する都市の脆さよ・・・


どの夕刊にも
「偉大な科学者、チャレンジャー博士の警告!
 地球最後の日接近す!?
 人騒がせなチャレンジャー博士」とある

サマリー教授:
人間は自分の不幸を信じたがらない
まして地球の破滅などバカげた冗談としか思わない

マローンはセントメリーの鐘を鳴らせばロンドン中に響き
生きている者が集まるかもしれないと提案

「魂のふるさと」と呼ばれるセントメリー寺院にも
押しかけた人々の死体が積み重なっていた

重い鐘を4人で動かすと、素晴らしいコーラスを奏でるが
1時間半鳴らしても誰も来なかった


●13 失われた一日
明日は他の町にも出かけようと決める

マローン:
俺たち5人と老婆だけでは随分寂しいだろう
自分はやはり新聞記者としての毎日が送りたい
だが、新聞を読む人がいない

マローンはまた眠れずに一夜を明かす

なにか物音がして、1台の馬車が来るのに飛び上がる
小鳥のさえずりも聞こえる

ゴルフ場では人々が遊び
農場では農夫が何事もなかったかのように働いている
乳母車を押す少女は赤ん坊をあやしている

夫人:みんな生き返ったのよ! 1日だけいなくなっただけなのよ

馬車が着き、新聞記者が来て
タイムズ紙に発表したことについて意見を伺いたいと博士に取材する

博士:
もう危機は去った
君だって死んだじゃないか
あれは今朝ではなく昨日の新聞だ

混乱し、泣きべそをかいてしまう記者

(消えた1日って発想は面白い
 今ならスマホですぐ1日経ってるって分かるけど
 この時代はそれに気づくまでにいろんな手掛かりが必要だものね


●14 大いなる目ざめ
その後、電話がひっきりなし鳴り続け問い合わせが殺到した
マローンは記者として目のまわる忙しさとなる

編集長:
すごい特ダネだ
わがガゼット社の売れ行きは君のお蔭で確実だ
月曜の特集は全ページ、君の記事で埋め尽くすぞ

(文屋の商売魂もすごいな


夫人:汽車の衝突や火事で本当に死んでしまった人もいるわね

博士:
それは運命だろう
今は地球が滅びなかったことを有難いと喜ばなくちゃ

ロクストン卿:あの毒ガスは人間を殺したのか、眠らせたのか

サマリー教授:
殺したのです
人間はあきらかに死んでいました
呼吸も心臓も止まっていた
医学的にもたまにあり得ることです
死体が死体らしくなかった
もっと詳しく研究して正体を突き止めるほかない






博士:
人間は実に脆く、弱いものだね
狩りをしたり、発明をして強そうだが
宇宙の謎にころりとやられてしまう

またいつ襲われるとも分からない
人間は目先の欲望に駆られ、戦争しているヒマはない



マローンは丸2日寝ていないが
世界に死の1日を詳しく報道できるのはなによりの喜びだった

新聞は月曜の朝に売り出され
350万部も発行しても足りないほどだった

マローン:
こんな記事を二度と書かないためには
地球は平和であって欲しいです

空は晴れ、セントメリー寺院の鐘が鳴り響く






「マラコット深海の謎」





●1 大西洋の秘密博士
マラコット博士はいつ、何をするか分からない人物

ストラドフォード号がイギリスの港を出ても
何が目的か誰も分からない

乗組員は、ハウイ船長ほか20人
博士の助手で若い海洋学者のヘッドリー
愉快なアメリカ人で機械に詳しいスキャンラン

航海に出て1か月後、スキャンランはなぜ自分たちが呼ばれたか
秘密を見つけたとヘッドリーを船底に案内する

穴の中にはブキミに光る縦横3mほどの金庫のようなものがある
直径80cmほどの丸窓がある


船底は二重になり
博士がこれに乗り人跡未踏の深さまで潜るに違いないと言う


●2 世界一の深海
翌日、ヘッドリーは博士に呼ばれる





東洋の仙人のような博士から
死んだら悲しむ者があるかと聞かれ、いないと答える

博士:
私も同じだ
学者はいつ死んでもいいようにさばさばした身の上でなければならん

探検とは、世界で一番最初でないと値打ちがない
最初に南極探検を成し遂げたアムンゼンのように

学問は古臭い学説を打ち破るものだ
これまで深い海底の水圧は恐るべき強さと言われていたが
わしは信じない

本船はカナリー諸島に差しかかる
その深い窪みをマラコット海溝と名付けた
フィリピン海溝、日本海溝より深いだろう
大西洋で最も深い海底、底なしかもしれない

鉄製の潜水機を作り、船から吊り下ろす
鎖、送気管、電話線はせいぜい800m

海底は500mで紫外線も届かなくなるが
軍で使うのと同じサーチライトが備わっている


その後、全員に深海探検計画が発表された

船長はもうすぐ嵐になると警告するが
博士は試験潜水を成功させた


●3 驚異のながめ
いよいよ探検に出発
船長は電話口につききりで連絡をとる





海水が薄緑から青、深紫色に変わり
まったくの暗黒になった

約250mでいったん止まり、分厚いガラス窓から見る景色に
ヘッドリーは「キレイだな 素晴らしいな」と連呼するばかり

水深400m 大きな黒い影がかすめる
博士:イカはどの深さにもいる

潜水機は600mの噴火山の上に着く

「波が荒れてきたからあと5分ほどにしてくれ」と頼む船長

水平に動くと、奇妙な形のあらゆる発光魚が現れる

ついにマラコット深海に着く


●4 恐怖の怪物出現
絶壁のすぐ前に、果てしない穴が広がりゾッとする

かつて科学的にも物語にも出たことのない未知の怪物が潜水機を襲う
甲殻類の新種でマラコット種と名付ける博士

怪物は屋根に上がり、とうとう鎖を切ってしまい
潜水機はまっしぐらに暗いトンネルに落ちていく






●5 ふしぎな海底人間
電話線も送気管も切れ、圧搾空気ボンベを開ける
空気も電気も1週間はもつだろう

水圧に押しつぶされることがないことを証明できて博士は得意げ

海底に着き、測深計は8140m
なぜか冬の朝のように白っぽい光で辺りがはっきり見える
降り積もった生物の残骸が燐光を放っているせい

白い平原に屋根や彫刻を見つける

地理学者が今の海が大昔は陸地だったと言う説が本当だと分かる
ヒマラヤから貝の化石も出ている
この深海は火山の噴火でできたもの


酸素はあっても炭酸ガスがたまり
胸がつかえ、頭がガンガン鳴り
薄れる意識の中、人間が潜水機を覗いているのに驚く






●6 三人の運命
海底人間は3人を調べるように見つめて消えた
目の錯覚かと思いきや、大勢の海底人間を連れて戻ってきた

身振りで底ぶたを開けて出てこいと言っている
海水が侵入するが、腰あたりでとまった

3人に透明のレインコートのようなものをかぶせると
とたんに呼吸がラクになる

肩に空気をつめた袋がついている
これほど精巧な水中服は地上でもまだ発明されていない

海底人間は3人を心から歓迎している様子でついてこいとうながす

重力のない宇宙のように体が浮き
海底の泥に足がもつれてピエロのようになる






四角い出入口から入り、がらんとした部屋に案内されると
海水が強力なポンプで排出される


●7 文明の王国
海底人間の言葉は分からないが、握手をしてから長い廊下を歩く
壁には小さな穴があり、新鮮な空気が噴き出している
天井には蛍光灯がついている

豪華な応接間に来ると、ふかふかした絨毯、長椅子もある

マンダというここのリーダーらしき老人が来て
地上の人間を見るのは1万年ぶりだと歓迎する

もう1人とんがり帽子の医師が来て
額に手を当てただけで、3人が空腹で疲れていると分かる






珍しいご馳走が運ばれ、3人はたいらげる
コーヒー、ミルク、ロールパン、なんでもある

博士:
水素と酸素は海水から抽出できる
窒素と炭素は海藻に含まれる
燐、カルシウムは沈殿物にある
なんでも手に入れられるわけだ


(全部、自給自足で足りるはずなのに
 なぜ地上にはずっと貧富の差があるんだろうね



●8 すばらしい科学
召使がガラスのスクリーンのようなものを運ぶ
マンダ老人が集中すると、スクリーンにその姿が映る

博士:これは人間の精神を映し出すエクストラ・テレビジョンだ!

海底人間は3人がどうここに着いたか知りたいと分かり
博士はこれまでの航海の様子を映し出すと
マンダ老人は3人を大きな講堂に連れて行く

そこにはすでに1000人ほどの海底人間がいて
博士は舞台に上がり
イギリスの港からストラドフォード号で航海してきた様子を映すと
地上文明に感嘆の声を上げる海底人間









これほどの文明がありながら
なぜ潜水機を作らないのか不思議に思うヘッドリー

怪物に襲われたシーンでは「マラックス!」と叫ぶ 怪物の名前か?


マンダ老人の美しい娘モウナが王国を案内してくれる
食品工場、発電所など素晴らしい科学とともに
古臭い機械もあった

スキャンランがポケットからハモニカを出して吹くと
初めて聴く音色に驚き、海底人間が集まり聴き入る






故郷の歌、土人、カウボーイの歌を聴いているうちに
ヘッドリーは地上が懐かしくなる


●9 ああ、わが潜水機
太陽も月もなく、昼も夜もない世界
(海底世界には太陽も月もあるって噂だけどね

博士は潜水機にノートなどを取りに行きたいと頼み
マンダ老人と槍を持った海底人間とともに海底に出る

測深計や温度計に興味を示すマンダ老人
海底温度は40度と分かる

海底人間は槍でとても上手く食料を獲る


●10 意外な事件
1人の海底人間が駆けつけ、険しい山を登って見えたのは
嵐で沈んだストラドフォード号!






船員は振り落とされたか、サメに食われたのか1人もいないが
船長だけはブリッジを握りしめて死んでいた

無理を言ったために嵐に巻き込んだ責任を感じる博士
遺体を海底に埋めて花を飾る葬式は同じ

船室にいろいろ残っている物を持って帰ろうと言うと喜ぶマンダ老人ら
その日は博覧会のような騒ぎになる

船長の航海日誌を読み、泣く2人に
海底の研究を終えたら、世界に発表するんだと言う博士は
また秘密の計画を立てているようだった


●11 危険な殺人魚
次第に海底生活に慣れてきた3人

博士は工場を見回り計算したり
スキャンランは工場の手伝いをし
ヘッドリーは海底に出て珍しい魚を観察する

マンダ老人は3人を海底散歩に誘う

海底の川「クジラの墓地」には、人食いクジラの歯が残る
(クジラは穏やかでヒトより知能が高いと思うよ

炭鉱ではどんどん石炭を掘り出している
(環境汚染にはならないのだろうか?

サンゴの山の麓には海藻のジャングルがあり
好奇心でふらっと入った博士は珍妙な格好で逃げ出して来る

そのあとから1畳ほどもある大ガニが出現!
海中電気に目がくらみジャングルに戻る

再び殺人魚に襲われ、海底人間が1人逃げ遅れて殺されてしまう
それを見て、スキャンランはジャックナイフで勇猛に立ち向かう






●12 名誉ある男
殺人魚は海底人間をサンゴ礁に押し付けてすりつぶしている
その背中に乗り、ナイフを突き刺し、みんなで槍で総攻撃すると
大量の血を流して消える(巨大マンタみたいな絵

博士:ブランケットフィッシュは猟師の小舟をひと飲みしてしまうこともある

海底人間の葬式が終わると、スキャンランは英雄になる

スキャンランは講堂で見世物をして、博士も喜ぶと言う
壇上に立ち、手作りのラジオを見せ

「2LOP こちらはイギリス、ロンドン放送局です」と放送が入ると
魔法を見たように驚く海底人間

軍楽隊が♪ローエングリンの行進曲(!)を奏でると
素晴らしいオーケストラ演奏に感動するが
3人は余計にホームシックにかかってしまう


●13 新しい秘密計画
帰りたいと嘆く2人に博士は特別のガラス玉に手紙を入れて海上に送る計画を話す
レビゲンガスを詰めれば、30分で海上に着く
ヘッドリーは早速、玉に入れる手紙を何通も書く

ガラス玉はフットボールほどの大きさ
1回目は2個 途中でフカなどに飲み込まれる可能性もある

手を離すとガラス玉はあっという間に暗い海の中に消えていく






●13 はるかなる過去
簡単な英語を覚えたマンダ老人は「もうすぐ別れる 悲しい」と言うため
みんなで地上に帰ろうと誘うと

マンダ老人:
地上に帰ればみんな死ぬ
この国を守るのが神さまの命令

昔、この国にも戦争がたくさんあったと
マンダ老人は講堂で海底王国の歴史をスクリーンに映して見せる

約1万年前、映画のように広がる大自然
町の一角に荘厳な城がそびえたつ

千年、二千年と経つうちに人相が悪くなり
どこも戦争、流血地獄となった

悪い王が平和な国を奪った

やがて1人の正義の使途が現れ
「早く目覚めないとこの国は亡びる」と警告したが聞く者はいなかった

キリストより8000年も前の歴史に驚く3人

(ヒトって全然凝りてないんだね


使途は支持する人々とともに奇妙な城をつくり水が入らないようにした
その使途の顔がマンダ老人にそっくりでさらに驚く

突然、海が山のように襲って、陸地を飲み込んだ
私たちは神のお加護により助かり
永久に海底で平和の国を作ると誓った


●15 黒魔の宮殿

博士:神や宗教はともかく、人間は自分たちの歴史の中で暮らすのが一番幸せなんだな

ヘッドリーはニュースの時間にラジオ室に急いだが
その後3個打ち上げたガラス玉の話はない

モウナは彼が地上に帰れないことを喜ぶ

ヘッドリーは悪い王が住んでいた宮殿が見たいと言うと
父に叱られると震えて断るモウナ

1人でも行くというヘッドリーを仕方なく案内する






海底王国の真後ろの山に抜け穴があり、中は暗黒
壁に寄ると毒を持つあらゆる生物がいる

丘に出て、宮殿の廃墟を見る
門をくぐろうとすると思わぬ強い力で引き戻すモウナ


●16 魔境の番人たち
宮殿の奥には秘密があるに違いないと
ヘッドリーは2人に話してしまう

それは怪魚ではなく人間に違いないと言う博士
スキャンランは6連発のピストルを出して
早速3人でこっそり宮殿に向かう

足元に火山口が口を開け、深い海底にさらに谷底がある
崖の上にそびえたつ神殿

いきなり岩の合間からネッシーみたいな怪物が現れる!
運動靴のような耳(w)はレーダーの役割で
大カレイがしびれて、その目玉だけを食べて消える






●17 地獄のうず潮
その後、ピラニアのように何千匹ものハイドロプスが
カレイの血の匂いを嗅いで集まり
1分もしないで骨だけにしてしまう

さらに進むと黒大理石づくめとなり、重い扉はどうにも開かない
そこには地獄の鬼のような人間の姿が彫刻してある

博士:王は魔人に魂を売り渡したのだ

ふいに強い潮流のうずまきに巻き込まれ
3人は手をつないで柱に抱きつく





潮流は熱くなり、柱が揺れはじめた
海底地震でもうダメだと思った時

ぴたりともとの静けさに戻り
大きな扉が開いていることに気づく

中からがんがんする笑い声が響いた


●18 危機せまる!

「ぐずぐずせずにさっさと入れ わははは!」

部屋の中は海水がない
そして魔王のような怪人は、3人の心が読める

祭壇の横から黒い鉄でできたような怪人が現れる
目まで黒く、真っ赤な口がぱくぱく動いてパール・シーバと名乗る

パール・シーバとは伝説に出て来る死の悪魔だが
博士は悪神など信じず、不思議な魔術師に過ぎず
現代の武器には勝てないだろうと考え
スキャンランにピストルで撃てと命じる

3発撃ち込むとどっと倒れる
パール・シーバは血まで黒い

のたうち回りながら、自分が死んでも
扉が閉まって、一生出られないと言い残して死ぬ

(あっけない! さすがピストル王国
 悪魔も殺せると信じている人間のほうがよほど怖いよ






●19 地上からの声
ちょうど同じ時、ようやく大西洋上で
1隻の快速艇がガラス玉を発見した

仲間とマグロ釣りを楽しんでいたアメリカの金持ちで
中に手紙が入っていることから海流調査瓶と思い引き上げると
ひどく固くて、ライフル銃を10発も撃ち込む

手紙は行方不明になったマラコット博士からで驚き
港の役人からイギリス政府、ヨーロッパ、アメリカまで無電が飛ぶ


海底人間がラジオの音楽を聴いていると
1曲ごとにあわただしいニュースが入る

イギリス、フランス、アメリカなどの艦艇が大西洋に急行している
3人の名前が連呼され、マンダ老人を呼ぶと一斉捜索するが見つからない

モウナは泣いて、パール・シーバの住処に行ったことを話す

マンダ老人:
神よ われらはいかなることがあろうとも戦はしないと誓ったが
あの3人を助けるために一度だけお許しください

海底人間は1万年開けたことのない武器倉庫を開けて武装する


●決死の救援隊
もし戦をすれば、海底王国は潰れてしまうが
それほど海底人間たちは3人を愛していた


神は黒い悪魔に永久に苦しみを与えるために閉じ込めた
悪い心が起きれば自然と宮殿に行き、孤独に死ぬことになる

3人は体から刻々と生命力が失われる
いっそ死んだほうが楽だとスキャンランですら
残った1発の弾丸で死のうとしたが力が尽きた

さっきより激しい地震が起きて、3人は嵐の船のように
宮殿内を揺さぶられ、今度こそ死を覚悟する

それはマンダ老人たちが駆けつけたために起きた地震で
パール・シーバの出現を待つが現れないため
勇敢に中に進み3人を見つけて救助する






3人を出したと同時に扉が閉まる
こうして戦をせずに助け出せたため、王国は破滅から免れた


●21 友よ、さらば
パール・シーバが死に、海底人間は永久にのんびり暮らせることになる

地上に帰る準備をして、最初に研究ノートなどをガラス玉に入れて送る
すぐにラジオから迎える準備が出来ていると返答がある

別れが辛すぎて、言葉が詰まる3人と海底人間

博士:
再び来るには科学的方法で、きっとまた来る
ここは第二の故郷だ


3人は特別製の水中服を着て、ガラス玉にぶらさがり
落下傘兵のように浮き上がる






ヘッドリー:
人間はどんなばかげたことも真面目に考えなければならない
学問もこれでいいということはない

博士:最高の潜水機を作り、いつでも、だれでも海底の国に行けるようにしたい

(また侵略や汚染、金儲けのために?


3人は各国から招かれ、講演、研究発表に追われるが
海底の国の話をするととめどない悲しみがわいてくるにちがいなかった




<解説 原作者と作品について 野田開作>





探偵小説家として有名になったドイルだが
きわめて素晴らしい空想科学小説も少なくない

優れた空想科学小説は、純粋な科学小説と考えるべきだ
人間の想像力を刺激し、宇宙や地球の未来の予言まで到達する


『地球最後の日』の毒ガスは、現代の放射能の一種と考えてもよいし
(放射能は一度浴びたら、一生残るよね
『マラコット深海』の潜水機は進歩し海底を解明している


ドイルは科学に対する関心が人一倍強かった
『失われた世界』『霧の大陸』『ゴードン・ビムの冒険』など

その特徴は、とても親しみやすい愉快な人物が活躍すること

ヴェルヌやウェルズの登場人物は超人すぎるが
ドイルは科学者でも泣き笑いする人間だといつも強調している

作中人物が愛されなければ、その小説は価値がないと考えていたに違いない
人間を愛する作家とも言える

ドイルの生まれたエジンバラからは
他にも2人の世界的な小説家が生まれている
『湖上の美人』のスコット、『宝島』のスチーブンソン

ドイルの小説に魅了された人たちのクラブは
現在も世界各国にあり、友情を温めあっている

いまもなお多くの人々の心の中に生き続ける作家はざらにはいない





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