タイトルは本のタイトルである。ハメットの長編の一部、一部の短編をまとめたアンソロジーというのかしら。アメリカではこういう編集本があるんだね。
その中にTHIN MANからの抜粋がある。一章から五章までが採録されている。日本のミステリー界ではあまり言及されることはないが、アメリカではハメットの作品では一番読まれている作品だと聞いたことがある。
コメディタッチのユーモア探偵(引退した)物語といえばマルタの鷹や赤い収穫が有名な日本ではハメットらしくない作品だ。アメリカでは彼の一番売れた作品でかつ最後の作品である。
一応早川文庫にあるようだが、読めたものではなかった。ところがこの抜粋を読んで驚いた。何たる軽快な疾走感、アメリカで人気があるわけだ。
日本ではミステリー作家の色々な作品から抜粋を集めて本を作って売れるのだろうか、なんて考えてしまう。たとえば松本清張傑作抜粋集とかいって。純文学の作家では小中学生向けにたまにこういう本があったような、たとえば漱石とか、古典中の古典で。
ミステリー作家ではないだろうね。一般の作家でもほとんどないんだから。プロットだとかフェアプレーだとか書評家は種明かしをしてはいけない、とか妙なことをいう日本の業界では考え付かない企画だろう。
それだけハメットはさわり、あるいはマクラだけ並べても十分に商品になる文章力があるということだ。
ついでだが、日本語タイトルは影なき男なんて文学少女的な気取った名前を付けているが噴飯物じゃないか。痩せた男じゃ売れないのかな。