穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

「みみずくは黄昏に飛びたつ」村上春樹に川上未映子がインタビュー

2017-05-21 11:53:08 | 村上春樹

村上春樹の新作「騎士団長のなんとやら」出版記念という体裁のインタビュー集である。全部で四章あって最初の一章(70ページ)が二年前に出版された村上作品「職業としての小説家」を巡って川上さんが村上氏にインタビューしている。

この本の出版後このブログで十何回かにわたって書いたので店頭で見かけて購入したのである。二章から四章までが最近発表された「騎士団長云々」についての質疑応答である。とりあえず第一章だけ読んだところで書評。

 私は川上未映子さんという女性を知らない。個人的に、という意味を強調しているわけでは有りません。勿論個人的にも全然知らない訳ですがね。どういう職業のかたでどういう実績があるか、という意味です。一読してどこかのデパートでよく開かれている文化、教養講座であこがれのえらい先生に若い女性が感激してうやうやしく質問している印象を受けました。

 ウィキペディアで検索すると川上さんは女優で作家です。芥川賞の受賞者ということらしい。年令は40歳という。この第一章のインタビューをした時には38歳くらいということになります。すべてにおいて本のなか(インタビュー)の印象とことなるので驚きました。

そういうわけで彼女の作品は読んだことが無いのですが、同じ作家同士としてはもう少し堂々と質問をしたらどうかというのが感想です。村上氏の受け答えの方は無難で常識的でした。彼はこの手の人にはなれているのでしょう。川上女史は私の言うピンキーちゃんです。女優だからセクシーだという意味ではありません。かなり幼稚な左がかった人という意味です。

 失笑あるいは噴飯ものなのは、60ページからの数ページですかね。『右寄りの作家で、この人、正気かなって思うようなことを言ってますよね』(『』内は川上氏の発言要旨)とか。

『スローガン的な言葉がどんどんうわすべって(スローガン的なのは左翼、戦後民主主義者のほうだと思っていたが)、浅はかな言葉が蔓延する状況に対する危機感みたいなもので、しかるべき物語を書いて対峙して行くということを、村上さんはやっていた(寡読なわたしは読んだことはないが)』。

これに対して村上氏は老獪に「そうね、、、、、(と一応彼女に同調して)考えていることはあるんだけど、もう少し時間がかかるかも知れない」とかるくいなしている。

 彼女は感激して『今日は村上さんのその言葉を聞いただけでも』。このやりとりに失笑しない人がいるでしょうか。

 村上氏はこうも言っている「じゃあ何をするんだと言われても困るんだけど、、、、なかなか難しいですね」とかさねて曖昧化している。

 又村上氏は「社会的にこうするのがコレクトだからこうする、みたいなのは、発想としてちょっと違うんじゃないかと思うんです」とも逃げている。

 正気とも思われない発言をしている作家とは誰のことなのかな。どういう作家のことを指しているのかな。そして村上氏にももっと積極的な左翼的な発言を「していただきたい」みたいなお願いをしている。彼女は左翼的なんて言葉をつかっていませんが、要するにそう言う人たちだけが正しいという単純な考えなのでしょう。

 それに対する村上氏の反応は用心しながら常識的というか曖昧な表現をしている。たとえば「あなたの言う通りなんだが、自分は作家だから大衆運動的なことは適切じゃない、作家として自分としてなにが出来るか考えている(考えているですよ、実施するとか計画すると言質を取られない様にしている)。それには時間がかかるかもしれないけどね」といったようにね。

村上氏も基本的には「戦後民主主義」に洗脳された口なんだが、マーケットのことを考えると右だ左だと旗幟を鮮明にしないほうが得策だ、と思っているのでしょう。

 


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