穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

魂の行方

2023-06-25 05:39:14 | 村上春樹

この本は恐ろしく読みやすい。一種の幻想小説だか、この手の物は感情移入が難しく、別の表現で言えば馬鹿らしくて、普通は読むのにハカがいかない。ところが今度の小説は口当たりがいいので、もう590ページ?(全654ページ)だ。読みやすいというのは小説家としての腕があがったということかな。

さて第二部に入る。地下水脈に飛び込んだ影がどうなったか、一切記述がない。第二部はいきなり二十年後だ。ボクはどういうわけだが壁の外(普通の社会)に戻って、第一部の記述によれば、いったん壁の中に入ったら出られないはずだが、一般社会に戻り大学を出て書籍取次業者に二十年間勤務していたが、思うところがあって??中途退社。

退屈してまた勤めよう(働こう)として地方、山間僻地(地方名なし)の館長募集に応募して受かる。そこで図書館創設者で前の館長の子安さんの面接をうけて採用される。この子安さんはもう死んでいて、永久に無に帰する前の一定期間に少数の人の前にだけ現れる。そういうステージにあった。どの宗教にも多かれ少なかれこういう思想はある。仏教にはとくに。キリスト教でも微かにある。

この思想は国学では日本でも徳川後期に理論化されている。平田篤胤など。さて子安さんだが、これはこの思想の研究者で岩波文庫にも「霊の真柱」なる著書のある国学研究家の子安宣邦氏を連想させる。誰にでも手に入る岩波文庫だから村上春樹も読んでいたのかもしれない。

 

 



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