<スポーツ雑感+ 2024/6/6>
パリ五輪まで50日の本日、東京五輪・パラ組織委元理事、高橋治之被告の受託収賄の公判を傍聴した。いつもの東京地裁422号法廷で、一般傍聴券38枚は無抽選で傍聴希望者全員に配られた。明らかに関心が薄れている。
証人は、すでに贈賄罪で有罪(懲役1年、執行猶予3年)となっているAOKIホールディングスの上田雄久氏(現AOKIホールディングス・グループ事業戦略室室長)で、検察の尋問が13時30分から17時まで(途中15分の休憩あり)おこなわれた。検察の尋問も証人の答えも歯切れが悪く、実際の時間よりも長く感じた。証人の妻と息子も傍聴していたが、15時頃には退席していた。
検察の立証趣旨は、高橋被告が組織委理事の「職務権限」を行使して、いかにAOKIに便宜を図り、AOKIの要望を叶えていたか。
実際に、証言によれば、高橋被告の力添えで
- AOKI幹部と森元組織委会長との会合
- ティア3スポンサーとしての協賛金15億円が半額の7.5億円に
- 遅れ気味だったスポンサー契約の早期締結
- コンペになったものの日本代表選手団の公式服装を受注
- ライセンシング契約でのレディス・カテゴリーの追加と早期契約
- 大会が1年延期になったことで、組織委から求められた1億円の追加協賛費を1000万円に減額
などが実現したことになる。オリンピックという世界最大級のスポーツイベントの利権に関連して、これだけのことをやれるのは、高橋被告しかいないだろう。
そして、上田証人は、その背景として、高橋被告が、
- 組織委理事であること
- 電通の元専務であること
- スポーツマーケティングに精通していたこと
の3つがあったと証言した。つまり、組織委理事の力が働いていたものの、その他の要素も大きかったということだ。むしろ、電通マンとしてスポーツマーケティングを開拓し、その界隈で築いてきた世界的強力な人脈は、組織委理事の職務権限よりもはるかに大きな影響力があるのではないか。裁判所は、どう考えるだろうか。
なお、この日の検察尋問の中には、コンサル業としての高橋被告の実績を矮小化するような姑息なところがあったことも書き留めておきたい。
検察側の尋問だけで終わってしまったため、上田証人に対する弁護側の尋問はあらためて日程を決めるとのこと。ただし、次回の公判は7月2日(火)13時30分から同法廷の予定。