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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



■2020年五輪招致のために
 元旦の読売新聞のスポーツ面に「『東京五輪』へ国立改修計画」という見出しの記事があった。
 東京都が立候補している2020年夏季五輪の招致に向けて、2月15日までにIOC(国際オリンピック委員会)に提出する「申請ファイル(開催計画の概要をまとめたもの)」のなかで、現在の国立霞ヶ丘競技場(以下、国立競技場)を改修して、2020年五輪のメイン会場とする案が盛り込まれているとのことだ。そして、その改修のために、国立競技場を運営するNAASH(日本スポーツ振興センター)は、建築家やスポーツ関係者による有識者会議を設置する方針だという。
 2016年五輪招致の計画では、メイン会場は三方を海に囲まれた晴海だった。収容人数約10万人のアクセスを考えたら、まったく非現実的なメチャクチャなプランだった。それに比べて、都心にある国立競技場ならばアクセスの心配はなく、世界的に見ても理想的な立地だろう。
 ただ、現在の国立競技場は、第3回アジア大会のために1958年に建てられた年代ものなので、これを機に、改修というよりも、ぜひ建て替えをお願いしたい。そして、その計画を練るにあたっては、建築関係者やスポーツ関係者だけでなく、広く都市計画の視点をもつ人たちを有識者会議に加えてほしい。

■出来上がっていたプラン
 実は、昨年の4月ごろ、その時点で出来上がっていた国立競技場の改修計画案を見せてもらったことがあった。2020年五輪招致も正式決定していないなかで、2019年のラグビーワールドカップの決勝会場として利用することを理由に建て替えるための計画案だった。
 外観のイメージは、南アフリカのサッカーW杯のときにケープタウンに新設された「グリーンポイント」競技場に似ていた。陸上競技の国際大会も開催できるよう9レーンをとれる陸上競技兼用のものだった。大手設計会社のプランだったが、正直、がっかりした。そこには、新たなスポーツ施設を造るという概念しかないように思えたからである。
 さらに言うと、このプランを策定するための調査を、某総研の友人が請け負っていた。国内外のスタジアムを視察し、基礎情報をまとめた。そのなかには、最近のスタジアムが複合施設化しつつあることなどを盛り込んでいたが、結果的には、予算などの関係から、設計には反映されなかったそうだ。縦割り行政の影響も多分にあったのではないか。

■50年後にも使えるものを
 おそらく、ぼくが昨年見たプランは白紙に戻され、あらためて、2020年東京五輪のメイン会場にふさわしい競技場を考えることになるのだろう。そのために文部科学省は来年度予算に約1億円の調査費用を計上している。
 新たなスタジアム建設の計画を策定する際には、単なるスポーツ施設として考えるのではなく、スタジアムのもつ多様な面を意識してほしいと思う。
 まずは、東京だけでなく日本のスポーツシーンの象徴という発想。つまり、国立競技場だけでなく、近隣にある明治公園、神宮球場、秩父宮ラグビー場などを含めた一帯をスポーツ・パークとするような将来像をもったうえで、その中心となる新・国立競技場を考えること。
 競技をする、見る、というスタジアムの内側だけを考えるのではなく、巨大建造物の外向きの部分にも目を向けること。すでに世界には、スタジアムの建物のなかにホテル、ショッピングモール、シネマコンプレックス、さらには老人ホームなどを組み込んだ例がある。現在の国立競技場も、トレーニング施設、スポーツ博物館・図書館などが入っているが、知る人ぞ知るような存在になっていて、ほとんど利用されていない。この機会に、それらを発展させ日本オリンピック・ミュージアム、日本スポーツ殿堂をつくるとか、あるいはこれも老朽化し建て直しが望まれている、競技団体が集結する岸記念体育会館の機能を国立競技場に移設するとか、ソフト面でも日本のスポーツの中核・象徴にすることも可能だろう。
 また、将来的には、今IOCやFIFAが大会のメイン会場として求める8万人規模の観客を収容できるスタジアムよりも、例えば1000台のテレビカメラ(映像装置)を設置できる「スタジオ」のようなスタジアムが必要になるかもしれない。 
 先の新聞報道によれば、改修費は7~800億円を見込んでいるらしい。いったん計画が進み始め、できてしまったら容易に変更はできないのが巨大建造物である。少なくとも50年後にも、りっぱに機能しているスタジアムが造られることを期待する。日本サッカー協会が2050年までに招致を目指すサッカーW杯の決勝会場としても十分にアピールできるものを。



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