<スポーツ雑感 ワイド版「新国立競技場を考える(1)」 2015/7/11>
あらためて、新国立競技場について考えたい。
現行案の見直しがされない理由として「2019年ラグビーW杯に間に合わないから」がある。ラグビーW杯組織委員会の話では、日本大会の開幕試合(2019年9月)と決勝戦(10月)は、東京の新国立競技場で行われる計画になっている。この開幕試合、決勝戦の会場の変更はできないのだろうか? 結論としては、変更はできる。
準備は進んでいるのだろうが、日本大会までまだ4年もある。主催の「ワールド・ラグビー」との約束違反というかもしれないが、恐れることはない。2020年東京五輪だって、あんなに計画が変わっているではないか。
会場変更以上の例もある。2003年のラグビーW杯は、当初、豪州とニュージーランドとの共催だったが、大会の1年半前になって、ニュージーランドが開催権を返上し、関係者をあわてさせた。しかし、単独で開催した豪州大会は無事成功し、ニュージーランドも2011年に単独で大会を招致、成功させている。ニュージーランドというラグビー大国と日本の違いはあるかもしれないが、試合会場の変更ぐらいは認められるだろう。
また、すでに日本大会の12の開催都市が決まっているが、その中の、横浜市は、当初、開催都市として申請していなかった。しかし、締め切り後に組織委員会の要請を受けて申請し、開催都市に選ばれた。新国立競技場が間に合わなかったときの保険として、収容人数約7万2000人の横浜国際総合競技場を考えているとしか思えない。8万人の約束を守りたいなら、横浜国際総合競技場の陸上トラックの上に8000席を仮設すればすむ。
先日の有識者会議のなかで、森喜朗委員が、2019年に間に合わせるということは、ラグビーW杯だけではなくて、2020年東京五輪の1年前(準備)大会のためでもあると言っていた。しかし、これは、ぼくの考えでは正しくない。新国立競技場の競技エリアは、まず陸上トラックなしで、ラグビーのフィールド(天然芝)だけを造るはずだ。そして、ラグビーW杯後に、芝を張り替え、五輪用に陸上トラックを造る。なぜならば、ラグビーのフィールドを国際規格にあわせると、トライをするエリア(インゴール)が陸上トラックにかかってしまうからだ。旧国立競技場でラグビーをやるときに、人工芝のカーペットを敷いていた部分だ。やはり最初の期限は、ラグビーW杯なのだ。
このように考えると、新国立競技場の見直しの前提として、2019年ラグビーW杯の計画の一部見直しを早急にすべきとなる。
新国立競技場について、ラグビー界からは、ラグビー3巨頭(森喜朗、遠藤利明、河野一郎)以外の声がほとんど聞こえてこない。噂では、ラグビー関係者には、かん口令が敷かれているとも。このままでは「ラグビーのせいで、未来永劫、新国立競技場の大借金をかかえることになる」と言われかねない。遅すぎる感はあるが、今こそ、ラグビー界は、トップにしばられないまともな声を上げるべきだろう。
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