※2015年1月に「TVステーションWEBサイト」に掲載したものを再録しました。
[4]2020年のヒーロー・ヒロインは?
■ 高校生アスリートを追う
毎年、年末年始には、高校生のスポーツ大会を追いかけている。
年末には、全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会「ウインターカップ」、年末から年始にかけては全国高校サッカー選手権大会、年が明けてからは、全日本バレーボール高等学校選手権「春の高校バレー」(通称、春高バレー)などだ。ラグビーや高校女子サッカーの全国大会もあるが、関西で開催しているため残念ながら見に行けない。
今回は、趣向をかえて、この年末年始の大会で活躍した、注目すべき高校生アスリートたちを紹介したい。彼、彼女らは、今、15~18歳だから、5年半後の2020年東京オリンピック・パラリンピックのときには20~23歳になる。日本代表の中心選手として十分に活躍できる、活躍してもらわなければならない年頃だ。
そして、そんな高校生アスリートたちを追いかけることで、日本スポーツ界の未来が垣間見えてきた。
■ バスケ、バレー、サッカーの注目選手
年末のバスケットボール・ウインターカップの男子で、2連覇した明成高校(宮城)は、先発の5人が全員2年生という若いチームだった。決勝戦では、福岡大学附属大濠高校(福岡)に終始リードされながら、試合終了まで30秒余りの時点で逆転し、優勝をもぎとった。
1年生のときからエースを張るのがセンタープレーヤーの八村塁(はちむら・るい、2年生)だ。父がベナン人、母が日本人のハーフである。身長198cmながら、しなやかな身のこなしに加えて、外角からのシュートもうまい。チャンスとなれば、豪快にダンクシュートを決める。NBA(米国プロバスケットボールリーグ)を希望しているようだが、これまでNBAに挑戦した日本人選手と比べれば、成功する可能性はもっとも高いのではないか。
ウインターカップ45回のうち20回優勝している超名門、桜花学園には、やはりセンタープレーヤーとして馬瓜(まうり)ステファニー(2年生)がいた。両親がガーナ人で、両親と姉とともに日本国籍を取得している。姉エブリンも桜花高校3年生のときに全国制覇し、現在は女子日本リーグ(WJBL)のアイシンAWでがんばっている。
年明けの春高バレー、女子の優勝は、決勝戦で大阪対決を制した金蘭会高校(大阪)だった。夏の高校総体、秋の国体でも優勝している。その金襴会のエースは、1年生の宮部藍梨(みやべ・あいり)。ナイジェリア人の父と日本人の母をもつ。182cmの長身と最高到達点306cmのジャンプ力は、おそらく父親譲りだろう。ひときわ高い打点からのスパイクが決まるたびに会場がどよめいていた。
男子の東福岡高校(福岡)も、春高バレーは初優勝ながら、高校総体、国体との3冠を達成した。中心は、2年生の金子聖輝(かねこ・まさき)。女子の宮部にも言えることだが、夏の高校総体のときは、上級生にリードされていたが、半年たって、2人ともエースの風格さえ醸し出していた。若いだけあって、成長の速さは目を見張るばかりだ。
高校サッカーで目についたのは、日大藤沢高校(神奈川)の田場ディエゴ(3年生)だった。惜しくも準決勝で敗れたが、ボールコントロール、キープ力、パスセンスが光っていた。両親ともペルー人で、日本生まれ。名前のディエゴは、サッカー好きの父親が、あのディエゴ・マラドーナ(元アルゼンチン代表)にちなんでつけたそうだ。
■ 日本スポーツ界のグローバル化
一昔前は、そして一部では今でも、高校スポーツのチーム強化策としては、外国人留学生を加えることが主流だった。しかし、ここで紹介したように、最近では、外国人と日本人の混血や、両親が外国人ながらも、日本で生まれ育った高校生アスリートが目立つようになってきている。これは、特に1990年以降に顕著になったグローバル化によって、日本でも結婚や就労環境における国際交流が広まったためだ。
1998年のサッカーW杯・フランス大会で、地元フランス代表が優勝したとき、フランス代表の多民族性が注目されたものである。サッカーのフランス代表は、伝統的に白人主体でチームを構成していたが、1994年の米国W杯出場を逃した後、チーム強化のためにアフリカやカリブからの移民やその子孫を代表選手に積極的に起用するようになった。エースのジネディーヌ・ジダンはアルジェリア系のフランス人だったし、守備の要だったマルセル・デサイーはガーナ出身だった。そして、見事、W杯で初優勝したのだ。
これまでも、混血の選手が増えることで、日本人の弱点である身体的能力で引けを取らないアスリートが出てくるだろう、と言われていた。それが、今、現実になってきている。グローバル化が日本のスポーツの競技力を高めているのは間違いない。
外国人の身体能力と日本人のメンタリティを併せ持ったニュータイプの日本人アスリートが、2020年東京オリンピック以後の主役になっていくことだろう。
| Trackback ( )
|