今年も燕がやってきて、何回も巣立っていった。毎年この時期は車庫は燕に占領される。車庫の中に新聞紙を敷いて、糞の始末をする。
7月4日に車庫で拾ったひなを姑が居間へ持ってきた。耳の遠い姑は軍手の中のひなを強引に机の上に置いて去って行った。もしかして、姑の大声で失神したのかもしれないくらいひなは弱っている様子。
わたしにはひなを育てる器量がないので、とりあえず巣の中へ戻すことにした。一時的な気休めかもしれない。放り出されたひなは、また放り出される可能性があるのではないか。
脚立にのぼって、ひなを巣の中へ入れようとするが、巣の中には4羽いて、落ちたひなの入る場所はない。それでも、無理矢理押し込んで脚立を降りた。4日後の朝、巣を見上げるとひな達は成長している。身体が大きくなって巣からでている胸のたくましいこと。あれっ?4羽?もう1羽は?と、不吉な予感がして下を見ると、そこにいた。あぁ・・少し大きくなってはいたようだが、じっとうずくまっているような。鳥というのは、そもそもうずくまっているような姿ではあるが。
触らずに、気にしながら仕事に出かけてしまった。帰ってから車庫を見に行ったがみつからなかった。巣立っていったとは思えないか弱いひなだった。燕のひなも救えないのである。
その日、国境なき医師団から「感謝状」と、「領収書」が届いた。先日寄付をしたことを思い出した。何も出来なくても寄付をすることによって、誰かが助かる。しかし、1回や2回の寄付では、燕のひなを巣に戻すくらいの力しかないのではないか。根本的に元気になる。あるいは、みんなが助かるというようなことにはならない。