まこの時間

毎日の生活の中の小さな癒しと、笑いを求めて。

景色が変わる

2021-09-01 | 暮らし
何気なく通っている8号線の信号待ち。
前からあった高圧送電線がやたら目立つ。
道路の上にかかった新幹線の架道橋が完成して白く幅をきかせ、鉄塔がさらに目立つ。
この道路のずっと手前にはトンネルがあったが、ついに山をなくして、道路の上に、右の山からから左へ行く「けもの道」用に細い橋をつけた。
けものたちはありがたく利用している様子はない。
わたしがけものなら、新しく付けられた橋は罠に違いないと警戒するだろう。

30分早く向こうの町へ行きたくて、山にトンネルを掘る。
人がほんのちょっと早く行くために、山は無くなり、道は広がり、新幹線は道路の上を走る。
くわばら、くわばら・・・ついに、わたしも年寄り婆さんみたいに怖がるようになった。
みたいに・・ではなく、婆さんには違いないが。
小百合は小百合である。






樹木たちの知られざる生活

2021-09-01 | 暮らし
題名「樹木たちの知られざる生活」
副題「森林管理官が聴いた森の声」
ペーター・ヴォールレーベン
長谷川圭 訳
早川書房
2019年8月15日  5刷

森のことが書いてある。
森は人が手を着けてはいけない場所なのだということ。
林業で人工的に伐採、植林をしているが、果たして森の立場ではどうだろう。
街路樹の木の気持ちはどうなんだろう。
コンクリートで固められた足回り。水と太陽だけでは木は育たない。
木と木が根の部分で助け合って生きているのが森だ。
街路樹は、根っこが空気を吸いたいために、水道管を破ってしまったという事例がある。水は十分与えられていて、水道管の継ぎ目から漏れる空気を吸いたかったということが、後で分かったらしい。
木の周りは、アスファルトの歩道と車道しかなく、どこまで行っても土はない。息苦しい~~と、木が言ったかどうかは本には書いてないが、そう思えた。
街路樹にとっては、牢屋に入れられたも同然だ。というくだりを読んでから、街路樹を美しいと思うより、哀れに見えるようになった。
人間が誇らしげにすることは、地球を壊すことばかりだとこの本を読んでいるとだんだん人間が怖くなる。
だからと言って、今更わたしたちは人類がホモサピエンスと呼ばれ始めた頃には戻れない。


悪いことばかりではない。木は「フィトンチッド」という抗生作用を持っているので、松林の中の空気は針葉が発するフィトンチッドの働きで無菌なのだという。
また、クルミの木の下にベンチを置くとよい。蚊に刺されないのだという。
しかし、人工林ではダメなのだそうだ。
適応できない場所に植えられた木の叫び。

もしかして、田舎の方がコロナのウィルスが広がりにくいのではないかと、ふと思った。
山登りをすると爽快な気持ちになるのは、森の木のシャワーを浴びているからだろう。
土や草を触っている年寄りが長生きするのは、そのせいかも。
気のせいではなく、木のせい。

この本を読み終わると、人間が無力なのだと思えてくる。
銀座で接待を受けて喜んでいる場合ではないのである。
ひげもじゃの男たちが小銃を持って集まっている場合ではないのである。

わたしも中たらない弓を引いている場合ではないのである。
しかし、何もしないと腑抜けになってしまうので、人に迷惑をかけない範囲でスポーツに親しむのは良いかなとも思う。
勝手なものではある。