美味しい味噌汁を飲んで、いざ下山。前日は夕ごはんを食べてから6時過ぎには横になっていた。山小屋ではひたすら翌日の為に寝る。月が出ているため星は思ったより見えなかった。元気があれば、外でビールでも飲んでも良いが体力はない。翌日、みんなの足手まといにならないように寝ることが大事だと思った。忘れてはならないのは例の物「アミノバイタル3600」を飲む。万全だ。
白山に登って、雷鳥荘に泊るとシャワーも出来るらしいが、山というのは美味しいものを食べたり、豪華な宿泊を期待するところではない。一生懸命登り、マナーを守って、自然を守って下山する。
室堂で、泡をいっぱい立てて顔を洗っている女性がいた。南竜では浄化槽があって、水洗トイレなので、泡で顔を洗ってもよいのだろうが、室堂では生態系が壊れるから駄目なのである。
マナーと言えば、解せないのが、たくさんの登山者がいる中、クマ鈴をガラガラ、リンリン鳴らす人がいることだ。後ろから近づいてくると、自転車のリンのようで「チリンチリン、どいてどいて」と、言われているようだ。先に行ってもらうが、熊が出るんですか?この銀座のような夏休みの白山に、と問いたい。その音がうるさく感じるのは、わたしが疲れているからだと思う。黙って歩いていると、耳の中に容赦なくリンが飛び込んでくる。暑い。辛い。うるさい。と、なるのである。
さて、8時に出発。昨年より雪渓が狭い気がした。御前峰を振り返り、名残惜しい下山である。下界は暑いのだろうなあと思う。

トンビ岩コースでは、ハイマツが群生していて、ホシガラスが来るのだそうだ。トンビ岩に登って記念写真を撮ったが、へっぴり腰と言われて不採用。

トンビ岩から見える岩を、自然観察員の女性が「ゴリラ岩と呼んでいるんです」とのこと。確かにゴリラっぽい。

南竜ケ馬場に近づくと、ニッコウキスゲが咲いている。

南竜までに相当疲れてきて無口になったわたしは、チョコチップとコーヒーで息を吹き返して、甚之助小屋までたどり着く。甚之助小屋から眺める山は、以前にも増して削られている気がする。

ここで昼食を摂った。暑いので、また傘を差して食べた。食後のフルーツが美味しい。特に白桃がめちゃくちゃ美味しかった。甘くてつるんとしていて、少し水で冷やしただけだが、この暑さの中でひんやりと喉を通過していった。

2日間の食べ物の中で、白桃の大勝利と思えた。おかげで、元気に下山出来た。途中、航空自衛隊の若者たちがざくざくと登ってきた。迷彩色の暑そうな服と、異国の人かと思えるほど真っ黒な顔。驚くことに、可愛い女性の隊員も真っ黒だった。
いろいろな人たちが、いろいろな思いで、ハアハアと登る白山の魅力。無事下山した後も、余韻が残って幸せ気分である。
みんなのお陰で、けがもなく、熱中症にもならず、ひとりではとうてい叶えられない登山である。
「感謝の気持ちでいっぱいです。どうか心ゆくまで美味しいビールなど浴びるほど、各自帰宅後に飲んでください。」