2015年の作品、タイトルはヒンディー語で「剣」と言う
意味もあるが、事件のあった家族の名前である。作品内では、
タンドン家(実際には隣の家の名前)となっている。
おそらく喉を切り裂いた凶器のククリナイフ(ネパールの物)
ともかけていると思われる。
2008年5月にウッタル・プラデシュ州のノイダで歯科医夫婦の
娘アールシ(13歳)と使用人ヘムラージ(45歳)が他殺体で
発見された事件に基づいている。
当初、父親が名誉殺人で逮捕されたが容疑を否認し、次に父親の助手
2人が容疑者となったが容疑は確定せず、また父親が有罪となり、
その後、証拠不十分となり、事件は未解決のままである。
映画を観るにあたって事件を調べたのだが確かに両親が何かを、
知っていると思われる。隣の部屋で殺人が行われていたのに、
気が付かないわけがないし、娘の遺体の回りが持ち物で装飾されて
いたのも(犯人がしたのかもしれないが)不可思議である。
今となってはイルファン・カーンの作品に出会うのが嬉しい。
決してヒーローではなく、とぼけた演技をさせたら一級品、
噛めば噛むほど味が出る、そんな俳優だった。
<ストーリー>
2008年3月16日、ウッタル・プラデシュ州ノイダのタンドン家で
14歳の少女シュルティが殺害されているのが両親によって発見された。
ノイダ警察は見るからに無能で、父親のラメーシュ(ニーラジ・カビ)の
話に従って行方が分からない使用人のケンパルの行方を探す。
数日後、ケンパルの遺体がタンドン家のアパートの屋上で発見される。
家には父親のラメーシュ、母親のヌータン(コンコナ・セン・シャルマ)、
シュルティ、ケンパルの4人である。そのうちの2人が殺害され、
2人が生存している。すると生存している2人が何かを知っていると
考えるのが普通である。いかにボンクラの警察でも解る。
警察はラメーシュを逮捕し、ケンパルがシュルティに添い寝して
いる所を発見したため二人が肉体関係を持っていると思い込み、
殺してしまったと推理し発表していまう。
ラメーシュは容疑を否認する。世論は推理を真実だと思い込み、
使用人が娘と関係を持っていたら一家の名誉の為に殺すのは、
当然であると言う意見を言う人もいた。
これがインドである。カーストがあるため、カーストが下の男性と
娘が関係を持ったとしたら殺して当たり前、と言う考え方である。
この場合、関係を持っていたかどうかは解らない。確かに14歳の
娘のベッドで娘の隣に使用人が寝ていたら疑うかもしれないが、
(関係がないとしても、使用人が娘と同じベッドで寝るのは、
よほど赤ちゃんの時から子守をしていたような場合でないと、
ないだろうとは思う。しかも男性の使用人である。)
CDI(中央調査局)のアシュウィン(イルファン・カーン)が、
真相究明のために調査をする事になる。
アシュウィンの人となりであるがエリートではなく、
屋台で隠し持った酒を飲み、妻とは離婚調停になっていたり、
下手な冗談を言ったり、どちらかと言えば凄腕には見えない。
アシュウィンはラメーシュに前夜から発見までの状況を聞く。
現場の検証を一からやり直し、夫婦をうそ発見器にかけたり、
証拠を徹底的に集める。ノイダ警察のボンクラが最初に現場で
検証していなかったせいで失われてしまった証拠も多数あった。
聞き込みの結果、ラメーシュをよく言う人間はいなかった。
怒りっぽく使用人達への接し方も悪く、浮気もしていた。
歯科医院で働くカンヘイヤは事件当日の記憶を引き出す為に
自白剤を投与される・・・彼の供述によると・・・
当日、ケンパルの部屋でカンヘイヤと友人達3人は酒を
飲んでいた。酔ったカンヘイヤともう一人はシュルティを襲い、
殺してしまった。ケンパルがその事を話すと言った為ため、
建物の屋上に連れて行き口を封じるために殺してしまった。
アシュウィンはノイダ警察の推理とは全く違う見解を示し、
ケンパルを真犯人として逮捕する。ラメーシュは釈放される。
CDI内でアシュウィンはカンヘーリらの犯行を指示し、
ラメーシュの名誉殺人を指示する一派と相対する。
裁判でラメーシュは証拠不十分で釈放される。
アシュウィンは父親による名誉殺人ではないというスタンスで、
真犯人は別にいると考え捜査に当たる。実際の事件は二人を死に
至らしめたのは父親のゴルフクラブによる頭部の殴打、死に至った
後にメスで喉を切り裂いている。つまり喉を切ったのは、
捜査かく乱ではないか?
使用人のケンパルに罪をきせるために屋上に遺体を隠したが、
マスコミが取材に来てしまいどこかへ移動できずに発見されて
しまったのではないか。私は父親による名誉殺人説を支持する。
シュルティを殺すつもりはなかったが、手元が狂って
殴ってしまったか、使用人と関係を持ったため殺してしまったか、
どちらかであろう・・・あくまでも推理。
ただ、疑わしくば被告人の利益に、なので父親は無罪。
ノイダ警察が初めに証拠をがっちり抑えていれば、
迷宮入りしていないと思う。