鈴木章・北海道大学名誉教授(80)のノーベル賞受賞決定を受けて、北海道大学の来春入試の動向に早くも関心が集まっている。相次ぐ日本人科学者の受賞もあり、ここ数年はちょっとした理系人気。だが、北大は伸び悩んでいた。志願者増の「鈴木反応」は起こるか?
■「研究レベルPR」 「最近、理科系に進む若い人が少なくなったのは嘆かわしい」。ノーベル化学賞受賞後の会見で鈴木さんはそう語っていたが、北大では理科系学部の活性化への期待が高まる。 鈴木さんが教鞭(きょうべん)を執った工学部で7日に開かれた祝賀記念セレモニーには、理系学部の学生を中心に約300人が集まった。「理学部で研究者を目指しているので、頑張ろうという気持ちになれた」「普段の実験も、積み重ねが大事だと実感した」――。学生たちからはそんな意欲的な声が聞こえてきた。 学生募集にも期待が集まる。北大には八つの理系学部がある。2010年度前期の志願倍率は、定員が最多の工学部は2.6倍、鈴木さんの出身学部である理学部は2.5倍だった。入試課によると、ここ数年で理系学部の倍率に目立った増減はないという。北大全体では10年度の志願倍率は09年度より0.2ポイント減り、4倍にとどまった。 北大は11年度入試から、入学後に学部を決める「総合入試」を導入。細分化が進んで、受験生に学科の違いがわかりにくいとされる理系学部は、全体の定員の7割以上を総合入試で募集するなどして、受験生へのアピールを強めている。それに加えて鈴木さんのノーベル賞受賞。 入試課の村田幸彦課長は「これまで高校生に、『勉学環境日本一』をうたってきたが、今後は研究レベルでも世界一、日本一をPRできる。これを機に志ある学生が多数集まることを期待したい」。
■受賞直後に急増の例も 大手予備校の河合塾によると、今年8月に実施した模擬試験の志願動向では、昨年よりも理学部のうち特に数学・物理や生物分野の志望者の増加が目立っている。 理学部人気は、2008年に物理学賞と化学賞で一度に4人の受賞者が出てから続いている。09年度入試では、全国の理学部の志願者が、国公立・私立とも約5%ずつ増加。10年度も国公立で1%、私立で5%増えた。「相次ぐノーベル賞受賞で、受験生が基礎研究分野に注目するようになった影響」と見る。 効果が顕著だったのが京都産業大。理学部物理学科の益川敏英教授が物理学賞を受賞した翌春の09年度一般入試で、大幅に志願者を増やした。同学科の志願者が382人増え前年の2.4倍になっただけでなく、全体でも4985人増え前年の1.3倍になった。10年度入試ではノーベル賞効果は一段落したものの、それでもほぼ横ばいだという。 入学センターの渡辺純一事務部長は「それまで関西以外で低かった大学の知名度が、全国的に上がった。昨年も志願者が多い状態が続いており、知名度は定着してきたと思う」と話す。 08年の受賞者3人がかつて在籍していた名古屋大理学部は、09年度入試の志願者が前年よりも17%伸びた。志願倍率は2.3倍から2.7倍に増加し、10年度入試でも2.6倍を維持している。 同大は10年度入試の受験者向けのガイドブックの表紙に、01年に化学賞を受賞した野依良治氏を含めた4人の顔写真を使用。11年度入試用ガイドの表紙も4人が飾り、受験生向けの説明会では「ノーベル賞学者を4人も出した自由度の高さが今もある大学」とPRしている。 ただ、大学全体では09年度入試(一般選抜前期)の志願者は6%(287人)増えたものの、10年度は4%(193人)減り、人気を維持する難しさが浮き彫りになった。入試課の田上隆課長は「今回の受賞で、『そういえば2年前に名古屋大関係の3人が取っていたな』と思い出してくれるとありがたい」と話す。 一方、08年に化学賞を受賞した下村脩氏が前身の学校を卒業した長崎大薬学部は、09年度入試で志願者を減らした。06年度入学者から6年制となり学費がかさむようになってから、薬学部は全国的に志願者減が続いている。同大の入試担当者は「ノーベル賞も人気の低下に歯止めをかけられなかった」と話した。■化学系へ影響は12年度以降か 河合塾教育情報部の近藤治部長の話 就職に有利なイメージが強いこともあり、最近、理系学部の志願者が増えている。その中で化学系だけ人気がなかったが、今回の受賞で理系の他学科から志望を変える人は出てくる可能性はある。ただ、これから志望先を変えるのはリスクが高いので、大きな変化が見えるのは12年度入試以降ではないか。北大全体でも、不況などで受験生の地元志向が強まる中、本州からどれだけの人が受けるのか注目される。』2010年10月11日アサヒコム
7校ノーベル賞受賞者の出身大学
『日本人のノーベル賞受賞者は、今年の化学賞に2人選ばれたことで18人となり、その出身大学も、北海道大が加わって7校に増えた。 出身校別に見たノーベル賞受賞者数は、東京大が最も多い7人。次いで京都大5人、名古屋大2人。東京工業大、東北大、長崎大、北海道大が各1人だ。自然科学分野に限ると、東大は4人になる。 1949年に湯川秀樹氏が日本で初めて選ばれて以来、東大、京大卒業者のみの状態が続いていたが、2000年以降、東工大卒の白川英樹、東北大卒の田中耕一、名大卒の小林誠、益川敏英、長崎大卒の下村脩、北大卒の鈴木章の各氏が受賞し、出身校が広がっている。実力のある大学が増えたことがうかがえる。 ただ、根岸英一・米パデュー大特別教授のように、海外で研究を続け、成果を上げた人も多い。出身大学で基礎的な教育を受けたとしても、その効果はどの程度だったのか。日本の大学関係者は、改めて考えてみてはいかがだろう。』(2010年10月13日 読売新聞)
2000年以降は、旧帝国大学系では根岸英一氏は東京大学工学部応用化学科を卒業、東北大学卒の田中耕一氏、名古屋大学卒の小林誠氏、益川敏英氏、北海道大学卒の鈴木章の各氏1929年旧制大学の東工大卒の白川英樹氏、下村修氏は旧制長崎医科大学附属薬学専門部(現・長崎大学薬学部卒)卒業学位は、名古屋大学理学博士、ボストン大学名誉教授、各授賞者のの皆様の出身大学をみますと国立大學の出身者ばかりです。名古屋大学卒の小林誠氏、益川敏英氏、下村修氏名古屋大学で、1960年に理学博士の学位取られています。名古屋大学は、昭和24年の新制大学発足時に当時の文部省は、大学の学閥に囚われない大學人事の方針を掲げ、目指したので、優れた研究者が集り今日のノーベル賞受賞者を生み出しと思います。ノーベル賞受賞者を輩出した卒業大學には受験生が、増えるかどうかはリーマンショツクの世界恐慌により地元志向が強まっている今日、各大学も地元出身の受験者が多くなり、ノーベル化学賞を受賞された鈴木章氏の母校卒業された北海道大学理学部化学科rato.sci.hokudai.ac.jp)に本州の出身の受験生が増加するかどうかは不況が回復しない現在の状況では来年度入試は難しいように思います。