◆「不戦の誓いを現実のものとするためには私たちもまた先人たちにならい、決然と行動しなけ ればなりません。いわゆるグレーゾーン(事態)に関するものから集団的自衛権に関するものでまで、切れ目のない対応を可能とするための法整備を進めてまい ります。行動を起こせば批判にさらされます。過去においても日本が戦争に巻き込まれるといった、ただ不安をあおろうとする無責任な言説が繰り返されてきま した。しかしそうした批判が荒唐無稽なものであったことは、この70年の歴史が証明しています」
これは、安倍晋三首相が3月22日、陸海空3自衛隊の最高指揮官として防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式に出席して述べた訓示の一節である。国民の 多くが、実質的な軍隊組織である陸海空3自衛隊の動静に神経を尖らせるのは、当たり前であるのに、安倍晋三首相がそれにいちいち過敏に反応して批判を浴び せるのは、為政者としてあるまじき行為である。安保法制整備が「海外派兵拡大」を目的にしている以上、国民の多くが心配するのは、当然であるからだ。
◆軍隊というのは、「自己増殖する本能」を有しているので、「不拡大」を力説していても、いつの間にか「戦線を拡大」する性質がある。それは、安倍晋三首 相の同郷・山口県の大先輩である田中義一首相(陸軍大将、萩市出身、1864年6月22日~1929年9月29日)の悪しき前例を想起すれば、明らかであ る。
田中義一首相は、在任(1927年4月20日 ~1929年7月2日)中、大日本帝国陸軍の「大暴走」を食い止めることができなかった。済南事件(1928年5月3日、中国山東省の済南で起きた国民革 命軍の一部による日本人襲撃事件、日本の権益と日本人居留民を保護するために派遣された日本軍=第二次山東出兵と北伐中であった蒋介石率いる国民革命軍= 南軍との間に起きた武力衝突事件)、満洲事件=満州事変(1928年6月4日、中華民国・奉天=現・瀋陽市近郊で、関東軍によって奉天軍閥の指導者張作霖 が暗殺された事件)の責任を取らず、事件の犯人不明としてその責任者を単に行政処分で終らせたため、昭和天皇から「お前の最初に言ったことと違うじゃない か」と強く叱責さればかりでなく、奥には入って鈴木貫太郎侍従長に「田中総理の言うことはちっとも判らぬ。再びきくことは、自分は厭だ」と勅勘を被った。 このため田中義一首相は、涙を流して恐懼し、1929年7月2日、内閣総辞職に追い込まれた。その後、大日本帝国と中華民国は1937年から1945年ま で続いた日中戦争へと突入して行った。
◆大東亜戦争(日中戦争と太平洋戦争などの複合的戦争)が終わってから70年を経て、戦後生まれが大多数を占めるようになったからと言って、「戦争の記憶」「戦争が再び起こるのではないかという恐怖心」が消えたわけではない。
国民の多くは、安倍晋三首相と中谷元防衛相が、「安保法制整備」に血道を上げて、「暴走している」と底知れない不安感を抱いている。この不安感が不信感 へとつなげているのが、「いわゆるグレーゾーン(事態)に関するものから集団的自衛権に関するものでまで、切れ目のない対応を可能とするための法整備を進 めてまいります」というなかの「切れ目のない対応」という言葉である。安倍晋三首相と中谷元防衛相は、「軍事衝突」「戦闘」「戦争」という軍事用語を意識 的に避けて、「事態」という曖昧模糊とした官僚文学用語を使っているけれど、これは、大東亜戦争前に使っていた「事変」という用語に似ている。
大日本帝国政府は、日中戦争勃発当時、「支那事変」としたのに、1941年12月8日の対米英蘭の太平洋戦争開戦に伴い、閣議により支那事変から対英米戦 までを大東亜戦争と決定した。これと同じような図式で、「事態」という官僚文学用語は今後、いつの日か「戦争」という用語にすり替えられかねない可能性を 包含しているのである。
しかも「切れ目のない対応」という表現は、「事態」が際限なく拡大していく危険性をも孕んでいる。これは、「結果」を求める安倍晋三首相が、「戦前の日本を、取り戻す。」という大目標にようやく近づいたことを示す「一里塚」でもある。
しかし、安倍晋三首相は、自分が有頂天になっている分、国民の多くが、不安感に囚われていることをよく認識、理解し、国民やマスメディアを批判するのでは なく、安心感を与えるための努力を怠ってはならない。それが、為政者の努めである。為政者は、「徳政」を行ってこそ、「君子」と言える。
【参考引用】 産経ニュースが3月22日午後5時15分、「【安倍首相の防大訓辞】『平和を唱えるだけでは実現しない』『戦争に巻き込まれるとの言説は荒唐無稽』『諸君の務めとは…』」という見出しをつけて報じた。
本日の「板垣英憲(いたがきえいけん)情報局」
小沢一郎代表が「『あまりにも子どもじみた』安倍政権の辺野古への対応」と「談話」でガチンコを予測し苦言!
◆〔特別情報①〕
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐり、沖縄県の翁長雄志知事と安倍晋三政権が、遂にガチンコ状態。翁長雄志知事は3月23日付けで、沖 縄防衛局に対して、「ボーリング調査などの海上作業を30日までに停止するよう」文書で指示、これに対して、菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で 「粛々と作業を進めていく」と強調した。中谷元防衛相も、翁長雄志知事の指示には、従わない強硬姿勢だ。こうしたガチンコ状態を事前に予測、険悪化を憂慮 した小沢一郎代表が3月20日、「『あまりにも子どもじみた』安倍政権の辺野古への対応」という「談話」を発表していた。要するに、安倍晋三首相、菅義偉 官房長官、中谷元防衛相に「頭を冷やせ」という諌めだ。
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目次
第二章 すでに始まっている二十一世紀の首相レース
松下政経塾卒の国会議員第一号―逢沢一郎 ③
松下政経塾時代、逢沢氏は、台湾問題、補助金、農業・食糧問題、岡山県の地域研究に励んだのである。台湾問題では二度の台湾訪問、補助金、農業・食糧問題では北海道から九州まで、徹底した現地現場主義で取材活動を続けた。
引用元http://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken