本日はかなり通好みのチョイスで白人ベーシストのドン・バグリーをご紹介します。と言っても誰やねんそれ!と言う方は多いと思います。私もぶっちゃけそうでした。スタン・ケントン楽団で長年ベーシストを務めたそうですが、スモールコンボでの活動は限られており、サイドマンで目にする機会もあまりありません。本作は1957年9月にサヴォイ傘下のリージェント・レコードに吹き込まれたものですが、サヴォイ系特有のセンスのかけらもないジャケットのせいもあり、普通であればスルーするところです。
ただ、思わず食指が動いたのは参加メンバーを目にしたからです。まず、パーカーの後継者として絶賛売り出し中だったアルトのフィル・ウッズに、ベツレヘム等にリーダー作を残している渋好みのギターのサル・サルヴァドール、個性派ピアニストでヴァイブもよくするエディ・コスタ、そしてメンバー中唯一の黒人で名ドラマーのチャーリー・パーシップ。おそらくリーダーのバグリーが一番無名なのでは?と思えるぐらいの興味深いメンツが集まっています。
全6曲。全てバグリーのオリジナルで構成されています。オープニングの"Batter Up"からまずパーシップのドラムを露払いにしてフィル・ウッズが哀愁漂うアルト・ソロを披露し、コスタのピアノ→サルのギター→バグリーのベースソロと続き「意外と悪くないかも?」と思わせてくれます。続く"Come Out Swingin'"もマイナーキーの曲で、コスタのバピッシュなピアノソロで始まり、ウッズ→サル→バグリーとソロを受け渡します。
3曲目"Odd Man Out"はバラード曲でバグリーとコスタのピアノとのデュオです。バグリーの2分近いベースソロが堪能できます。続く"Bull Pen"はまたしてもマイナーキーの曲ですが、ここではコスタがピアノをヴァイブに持ち替えて流麗なマレット捌きを見せてくれます。5曲目"Hold In There"は本作のハイライトといえるドライブ感満点のナンバーで、テーマ演奏のあと、サル→ウッズ→コスタのヴァイブとそれぞれたっぷり時間を取ってソロをリレーして行きます。ウッズ、コスタの好調ぶりは相変わらずですが、ここでは2分以上に及ぶサルのギターソロにも注目ですね。ラストは再び哀愁漂う"Miss De Minor"で終わり。
全体的にマイナーキーの曲が多いですが、"Hold In There"のようにガツンと来るアップテンポの曲もあり、硬派ジャズファンも満足させてくれる内容と思います。リーダーのバグリーは随所でベースソロを取りますが、どちらかと言うとウッズ、コスタ、サル・サルヴァドールの方が目立っていますね。特にウッズは同じ年に代表作である「スガン」や「フィル・トークス・ウィズ・クイル」、「ウォーム・ウッズ」を発表していた頃で、脂の乗り切ったプレイを聴かせてくれます。