前回がドン・バグリーと言うマニアックな選択だったので、今回はド定番でレイ・ブライアントのプレスティッジ盤を取り上げたいと思います。先日ご紹介したシグナチャー盤「レイ・ブライアント・プレイズ」と並んで、彼の代表作に挙げられる1枚です。マイルス・デイヴィスやソニー・ロリンズとの共演を経て、カーメン・マクレエの歌伴を務めていたブライアントが当時のレギュラーメンバーであるアイク・アイザックス(ベース)とスペックス・ライト(ドラム)と組んだもので、ジャズ名盤特集にも必ずと言って良いほど取り上げられる有名盤です。
さて、名盤特集でこのアルバムを解説する時に必ず取り上げられるのが1曲目の”Golden Earings"。レイ・ブライアントと言えばこの曲!とされるぐらいの定番曲ですね。原曲はサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」と言うヴァイオリン曲(以前に当ブログでも紹介しました)ですが、その後にヴィクター・ヤングが映画音楽用に編曲したそうです。特に日本のジャズファンの間で人気が高いようですが、やや歌謡曲っぽい旋律が受けたのでしょうね。ただ、個人的には続くマット・デニス作”Angel Eyes"やチェット・ベイカーも歌ったアンニュイな”The Thrill Is Gone”同様にメロディがベタ過ぎてそこまで好きではありません。
私としてはむしろブライアントの自作曲を含めたジャズオリジナルの方を推したいと思います。特に自作の2曲が素晴らしく、まずは3曲目の”Blues Changes"。ブライアントも参加した「マイルス・デイヴィス & ミルト・ジャクソン」に収録されていた”Changes"と同じ曲で実にリリカルな名曲です。続くアップテンポの”Splittin'"は個人的に本作中最もお気に入りの曲で、いかにもブライアントらしいファンキーなピアノソロが堪能できます。この曲は同じ年にジジ・グライス&ドナルド・バードのジャズ・ラブにもカバーされています。残りは他のジャズメンの曲で、"Django"はMJQ「ジャンゴ」、”Daahoud"は「クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ」、”Sonar”はケニー・クラーク「テレフンケン・ブルース」にそれぞれ収録されていた曲のカバーですが、中では”Sonar”が出色の出来です。