ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

スタンリー・タレンタイン/レット・イット・ゴー

2024-09-18 18:23:36 | ジャズ(ソウルジャズ)

スタンリー・タレンタインとシャーリー・スコットはジャズ界きっての夫婦コンビとして知られています。もともとのデビューはスコットの方が先でプレスティッジ・レコードから女流オルガン奏者として大々的に売り出されていました。一方のタレンタインはマックス・ローチのバンドを経て、ブルーノートと契約したのが1960年。同じ年にスコットと結婚します。

その後の2人は公私ともにアツアツの関係。タレンタインは「ディアリー・ビラヴド」「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」「ア・チップ・オフ・ジ・オールド・ブロック」「ハスリン」でオルガンにスコットを起用。お返しとばかりにスコットは「ヒップ・ソウル」「ヒップ・ツイスト」「ザ・ソウル・イズ・ウィリング」「ソウル・シャウティン」「ブルー・フレイムズ」でタレンタインのテナーをフィーチャーします。契約の関係でタレンタインの作品はブルーノート、スコットの作品はプレスティッジから発売されていますが、内容的には大きな違いはなく、一連のシリーズとみなしてよいでしょう。ただ、ブルーノート盤と違い、スコット関連のプレスティッジ盤はCDで全く再発売されないため、youtubeでしか聴けないのが残念なところです。

その後、1963年にスコットはインパルス・レコードに移籍。引き続き「クイーン・オヴ・ジ・オルガン」等でタレンタインと共演しますが、なぜか1枚だけタレンタインをリーダーに冠したアルバムがあり、それが本作です。当時のタレンタインはブルーノートと専属契約中だったと思うのですが、特別に許可されたのでしょうか?録音年月日は1966年4月。メンバーはタレンタイン&スコット夫妻に加え、ロン・カーター(ベース)、マック・シンプキンズ(ドラム)です。

全7曲。うち3曲がタレンタインのオリジナルで、残りがスタンダード等のカバーです。オルガン入りジャズは一般的にソウル・ジャズとジャンル分けされることが多いですが、ここでも冒頭のタイトルトラック"Let It Go"や5曲目"Good Lookin' Out"等の自作曲、サイ・オリヴァー作の4曲目"'Tain't What You Do"あたりはまさにそんな感じのR&B色強めの曲ですね。

ただ、タレンタインに関しては歌モノの方が良いですね。おススメは2曲目の”On A Clear Day You Can See Forever"。1965年の同名のミュージカルのタイトル曲で、この後オスカー・ピーターソン、レッド・ガーランドらもカバーし、新たなスタンダード曲となる名曲です。メロディアスなアドリブを朗々と吹くタレンタインに、スコットもグルーヴィーなオルガンソロで華を添えます。7曲目"Deep Purple"もミディアムテンポのゆったりしたグルーブ感が耳に心地よいナンバーです。ちなみにこの曲、1930年代に書かれたスタンダード曲でジャズではアート・ペッパーの演奏でも知られていますが、伝説的ハードロック・バンド、ディープ・パープルの名前はこの曲から取ったそうです。何でもギターのリッチー・ブラックモアのおばあちゃんのお気に入りの曲だったとか。本筋とは全然関係ないですが、ちょっとしたトリビアです。なお、これだけ濃密なパートナーシップを築いていたタレンタイン&スコットですが、1971年にあっさり離婚します。理由は音楽性の違いとか色々言われていますが、男女の間のことなのでよくわかりません。

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