ハードバピッシュ&アレグロな日々

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チャーリー・マリアーノ

2024-09-11 18:17:24 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はチャーリー・マリアーノです。彼については以前「トシコ=マリアーノ・カルテット」で取り上げましたが、1959年に日本人ピアニストの秋吉敏子と結婚したことで日本のジャズファンにはよく知られています。60年代は一時期日本に住んでいたこともあるとか(余談ですが歌手のMonday満ちるは彼と秋吉の間に生まれた娘です)。もともとは東海岸ボストンの出身ですが、1950年代半ばは全盛期のウェストコーストジャズに身を投じ、スタン・ケントン楽団やシェリー・マンのバンドでプレイしました。

本作は1956年にベツレヘム・レコードに残された彼のウェストコースト時代の代表作です。ただし、録音自体はケントン楽団の東海岸ツアー中にニューヨークで録音されたもので、メンバーはケントン楽団の同僚であるマックス・ベネット(ベース)とメル・ルイス(ドラム)、東海岸で活躍していたジョン・ウィリアムズ(ピアノ)と東西混成のメンツです。

全8曲、うち6曲が歌モノスタンダードです。ほとんどが定番曲ばかりで一歩間違えればベタなマンネリの演奏になりがちなところですが、カルテットの質の高い演奏のおかげで実に聴き応えのある作品となっています。冒頭からアップテンポに料理されたロジャース&ハートの”Johnny One Note"、ミディアムテンポでゆったり聴かせる”The Very Thought Of You"、マイナーキーの佳曲”King For A Day"と軽快な演奏が続きます。バラード演奏も素晴らしく、後にプラターズによって全米No.1ヒットとなった”Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)"、ジミー・ヴァン・ヒューゼンの名曲”Darn That Dream"をマリアーノが情感たっぷりに歌い上げます。2曲あるマリアーノのオリジナルは前者の”Floormat"がいかにもウェストコーストっぽい快適なミディアムチューン、後者の”Blues"がおそらく即興のブルース演奏です。ラストは再びスタンダードの”I Heard You Cried Last Night"をドライヴ感たっぷりに演奏して終わります。

マリアーノは当時ウェストコーストでプレイしていましたが、スタイル的にはチャーリー・パーカーの影響を強く受けたストレートなバップで、輝きに満ちたフレーズを淀みなく繰り出す様は素晴らしいの一言。個人的にはフィル・ウッズ、ハーブ・ゲラーと並んで”3大白人パーカー派アルト”と勝手に並び称しています。ピアノのジョン・ウィリアムズは”山田太郎”的な名前の特徴のなさがどうも過小評価に結びついていますが、スタン・ゲッツやフィル・ウッズ、ズート・シムズとも共演歴のある名手で、本作でも素晴らしいピアノソロを聴かせてくれます。マックス・ベネット、メル・ルイスも堅実なサポートぶりで、ワンホーン・カルテットの名盤として大いに推奨したい1枚です。

 

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