
◼️「極北のナヌーク(極北の怪異)/Nanook Of The North」(1922年・アメリカ)
監督=ロバート・J・フラハティ
BSの放送大学チャンネル「231オーディトリアム」というクラシック映画+解説の講義。ドキュメンタリー映画の先駆けとも呼ばれる映画「極北のナヌーク」の回を視聴。
フラハティ監督は、ドキュメンタリー映画の父とも呼ばれる人物。監督はイヌイット家族と共に暮らし、その様子をフィルムに収めて帰国した。しかしそれを焼失してしまう。再度イヌイットの村を訪れた監督は、フィルムの現像装置と映写機も現地に持ち込み、彼らと共に映画を創り上げた、との解説があった。
イヌイットの名ハンター、ナヌークとその家族。風で吹き固められた雪を切り出してドーム型の家を作る場面。幼い頃に本で読んだことはあるが、映像で見るのは初めて。光を入れるための窓として、切り出した分厚い氷をはめ込む。上映後の解説では、これを1時間程度で完成させるとか、気泡が含まれる雪の塊が壁になるから断熱効果があるとか。なるほどー🧐。
上映後に80年代のイヌイットの様子が紹介され、犬ぞりがスノーモビルになり、身につけていた毛皮はダウンジャケットになり、定住してしっかりした住宅に住んでいることも、ビデオゲームを楽しんでいる様子も映された。
アザラシやセイウチを狩る場面は、観ているこっちまで力が入る。アザラシが氷に開けた呼吸用の穴の前で待ち構えて、銛を打ち込む。逃げようとするアザラシに氷の上にいるナヌークが引きずられる姿は、真剣勝負なのだと思い知らされる。
こうした狩猟の生々しい場面を映像記録としてしっかり撮ることができたのは、この撮影だけでなく、それ以前から長期間イヌイットと暮らした関係性があるからだ。撮りたい構図や様子を十分に理解した上で撮影しているし、イヌイット側が映画にどう映されたいと望むのかを話し合って製作が進められたそうだ。流氷の上をスイスイと飛び、歩くのは簡単にできることではない。狩猟場面で、腹を減らした犬たちが野生の本能を見せ始めるのも印象的だった。
本作の製作にあたっては家族でない者が家族であるかのように映されているなど、撮影にあたって"演じている"部分もあるとか。そうした意味では現在で言うところのヤラセのないドキュメンタリー映画とは呼び難いのだとか。しかしイヌイット生活の様子や北極圏の自然の厳しさの記録は、紛れもない本物。蓄音機に驚く姿を面白おかしく描写しているのは、ちょっと白人優位の目線を感じる。しかし、全体的には極地での生活や自然の様子に触れることができる貴重な映像記録であることに間違いはない。
それにしても初公開時の邦題は酷い。戦後原題に近いものに変更されている。
寒波が厳しい2月の連休に、これを観てますます寒さを感じたのでした。
フラハティ監督は、ドキュメンタリー映画の父とも呼ばれる人物。監督はイヌイット家族と共に暮らし、その様子をフィルムに収めて帰国した。しかしそれを焼失してしまう。再度イヌイットの村を訪れた監督は、フィルムの現像装置と映写機も現地に持ち込み、彼らと共に映画を創り上げた、との解説があった。
イヌイットの名ハンター、ナヌークとその家族。風で吹き固められた雪を切り出してドーム型の家を作る場面。幼い頃に本で読んだことはあるが、映像で見るのは初めて。光を入れるための窓として、切り出した分厚い氷をはめ込む。上映後の解説では、これを1時間程度で完成させるとか、気泡が含まれる雪の塊が壁になるから断熱効果があるとか。なるほどー🧐。
上映後に80年代のイヌイットの様子が紹介され、犬ぞりがスノーモビルになり、身につけていた毛皮はダウンジャケットになり、定住してしっかりした住宅に住んでいることも、ビデオゲームを楽しんでいる様子も映された。
アザラシやセイウチを狩る場面は、観ているこっちまで力が入る。アザラシが氷に開けた呼吸用の穴の前で待ち構えて、銛を打ち込む。逃げようとするアザラシに氷の上にいるナヌークが引きずられる姿は、真剣勝負なのだと思い知らされる。
こうした狩猟の生々しい場面を映像記録としてしっかり撮ることができたのは、この撮影だけでなく、それ以前から長期間イヌイットと暮らした関係性があるからだ。撮りたい構図や様子を十分に理解した上で撮影しているし、イヌイット側が映画にどう映されたいと望むのかを話し合って製作が進められたそうだ。流氷の上をスイスイと飛び、歩くのは簡単にできることではない。狩猟場面で、腹を減らした犬たちが野生の本能を見せ始めるのも印象的だった。
本作の製作にあたっては家族でない者が家族であるかのように映されているなど、撮影にあたって"演じている"部分もあるとか。そうした意味では現在で言うところのヤラセのないドキュメンタリー映画とは呼び難いのだとか。しかしイヌイット生活の様子や北極圏の自然の厳しさの記録は、紛れもない本物。蓄音機に驚く姿を面白おかしく描写しているのは、ちょっと白人優位の目線を感じる。しかし、全体的には極地での生活や自然の様子に触れることができる貴重な映像記録であることに間違いはない。
それにしても初公開時の邦題は酷い。戦後原題に近いものに変更されている。
寒波が厳しい2月の連休に、これを観てますます寒さを感じたのでした。