Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

10月のBGM

2013-10-31 | 音楽
2013年10月に聴いてた愛すべき音楽たち。

■Never Too Late/木根尚登
NEVER TOO LATE
93年リリースのソロ作品を中古盤で入手。聴いてで安心できる優しいメロディが木根楽曲の魅力。1曲目はバックコーラスがTMN名義で、2拍3連符のメロディ。もろにTM。気に入ったのは歌詞。「くちづけを愛の始まりと思った」女性と「愛の終わりと感じた」男性のすれ違いが切ない。

■Royal Straight Flash/沢田研二
ロイヤル・ストレート・フラッシュ
NHK-BSの「Covers」は、現役アーティストが昭和の楽曲を歌う音楽番組。第1回は斉藤和義が、ジュリーの「ダーリング」と梓みちよの「二人でお酒を」を歌った。同い年だけやたら共感できる話だらけで楽しめた。ジュリーは「TOKIO」以降のド派手路線より前が好き。このベストは愛聴盤。

■Don't Look Back In Anger/Oasis
モーニング・グローリー
「日本人はどうしてこんなにwhateverが好きなのか」と彼らは発言したと聞く。それは、パッフェルヴェルのカノン(そのバリエーションである達郎のクリスマスイヴ)と同じ、下降するベースラインの楽曲を日本人が好むからである。Don't~もその一つ。弾き語りしたいなぁ。

■sister's noize/frip Side
sister's noise(初回限定盤)TVアニメ「とある科学の超電磁砲S」オープニングテーマ
長男ルークが見ているアニメ「とある科学の超電磁砲S」主題歌。前シリーズの主題歌をテレビで聴いて、本編も知らずにグッときてしまったのは、私。だってぇー、このユニットの打ち込みエレポップ路線にはTMの遺伝子を感じるんだもん。最近、哲ちゃんと共演したんだとか。おおー。

■Italian Garden/クレイジーケンバンド
ITALIAN GARDEN
期待を裏切らない横山剣ワールド。本作でも健在。堺正章とのデュエットも楽しい。僕はカラオケでCKBをよく歌うのだが、「似合う」とよーく言われる。剣さんのように、おっさんのダサさもカッコよさにしちゃうようなミドルエイジになりたいんっす。不良倶楽部を聴きながらそう思う4×歳である。うん。

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片腕カンフー対空飛ぶギロチン

2013-10-30 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その12)★ゴーゴー・ボール/♪Super16(空間美学PART2)

■「片腕カンフー対空とぶギロチン/獨臂拳王大破血滴子(One Armed Boxer VS The Flying Guillotine)」(1975年・台湾)

監督=ジミー・ウォング
主演=ジミー・ウォング カム・カン ドリス・ロン ロン・ファン

 オーレン・イシイのボディーガード、ゴーゴー夕張が操る鋼鉄の球が”ゴーゴーボール”。ブレザー姿の女子高生と鉄球という妙な組み合わせもあって強烈な印象を残してくれる。ゴーゴーのキャラがいたく気に入ったタランティーノが何度もそのシーンを撮り直すので、直径12センチの鉄球は何度も修理され、小道具係を泣かせていたとの話もある。さて、その武器のルーツとされるのが、ジミー・ウォング主演のこの映画。仇役の盲目の老殺し屋(カム・カン)が操る空とぶギロチン”血滴子”がそれだ。ガンダムのハンマーではないぞ(笑)。この”血滴子”は半球状のもので相手の頭に帽子の様にかぶさり、内側から刃が飛び出して首を引きちぎるという必殺の武器。これにはジミー・ウォング扮する片腕カンフーも苦戦を強いられた。決して想像の産物ではなく、中国の伝説や歴史書にも記録があるそうだ。

 本作「片腕カンフー対空とぶギロチン」は、ジミー・ウォング主演作「片腕ドラゴン」の続編として製作された。今回初めて観たのだが、正直面白い!。騙されたと思って一度観てくださいよ!。カルトな人気にも心底うなずける。前作で弟子を殺された封神無忌がギロチンを手に片腕ドラゴンに復讐するのがメインのお話。ここに異種格闘技トーナメントが絡むから俄然話が面白くなる。中国拳法だけでなく東南アジアのムエタイやらヨガ使い(手が伸びる場面はもう笑うしかないけれど)トンファーを操る日本人も登場して実に楽しい。仰々しい音楽とともにいちいち「勝」「負」と記した扇を開いて勝敗を宣告するレフリーも印象的。このトーナメント場面がアーケードゲームの「ストリートファイター」の元ネタとも言われる。ジミー・ウォングが弟子達の前で、空のカゴの縁を歩いたり壁を歩いたりする場面が登場するけどこれなんか「マトリックス」のアクションのルーツ?。とにかくエンターテイメントに徹しているのがいい。床が鉄板になっている小屋に火を放ち、裸足で戦うムエタイを苦しめる場面なんざぁ、ウケ狙い?とさせ思えてくるけど。

 悪役が魅力的だと映画は面白さが倍増するけれど、本作もその好例。というよりも悪役こそが主人公?と思えるくらいだ。弟子の復讐を誓って住処に火を放つオープニングにしても、壮絶な棺桶屋での死闘にしても、主人公ジミー・ウォングよりもずっと迫力がある。数々の仕掛けで封神を倒すジミー・ウォングの方がずっと情けない。封神が登場する場面では”ボイング、ボイング”と不思議な音楽が流れる。これはジャーマンロックのバンド、ノイが演奏する ♪Super16(空間美学PART2) で、映画で無断使用されたもの。タランティーノは「vol.1」でこの曲を使用、サントラにも抜粋が収録されている。オリジナルはずーっとあの調子で3分37秒・・・(呆)。



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グリーン・ホーネット

2013-10-28 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その11)★クレイジー88の”カトウマスク”/オーレン移動中のBGM

■「ブルース・リーのグリーン・ホーネット/The Green Hornet」(1973年・アメリカ)

監督=ノーマン・フォスター
主演=ヴァン・ウィリアムズ ブルース・リー ウェンディ・ワグナー

 ブライドが日本に到着、オーレン・イシイを追ってバイクで東京の街を走る場面。そこで流れた音楽を覚えておられるだろうか?トランペットが奏でるやたら忙しそうな旋律が印象的な曲。これが1960年代の人気TVシリーズ「グリーン・ホーネット」のテーマ曲だ。主人公は新聞・TVを操るメディア界の若き大物社長。事件が起こるとマスクを着けて悪を討つ!。若き日のブルース・リーが主人公の相棒カトウ役でレギュラー出演、華麗なアクションを見せている。ブルースが着けている”カトウマスク”は、もちろん「キル・ビル」でクレイジー88(オーレンの手下たち)が着けているマスクに引用されている。蛇足ながら「ピンクパンサー」シリーズでクルーゾー警部の召使いに”ケイトウ”という名のアジア人が登場するが、これももちろん「グリーン・ホーネット」のパロディ。男女がキスする壁画が割れて、ブラック・ビューティー号が現れる出動?シーンはかっこいい。この番組は「バットマン」TVシリーズ人気を追って製作されたものだから、富豪が裏でヒーローやってたり、マスク着けた助手がいるなど、共通点が見いだせるのも面白い。

 今回取りあげたのはTVシリーズの3話を編集した(つーか単につなげただけ)劇場版。ビデオでは「グリーン・ホーネット1」のタイトルでリリースされている。第1話は予告殺人ゲームをする”探検家クラブ”の面々をホーネットが粛正するお話。第2話は、空飛ぶ円盤墜落騒ぎを起こして住民を避難させ、そこを運搬する予定の核爆弾を奪取しようとするマッドサイエンティストのお話。いきなりシルバーの衣装にビン底レンズ付ゴーグルで登場するから、今見ると妙に笑える。それにゴールドの衣装を着た女性は手からレーザー光線を出し、ブルース・リーの動きを封じ込めるんだからすごいじゃん。でもこの劇場版のみどころは何と言っても、チャイナタウンの抗争事件を扱った第3話。日系人俳優マコ岩松(見ようによっては爆笑問題の太田光に見える・笑)とブルース・リーのカンフー対決は必見。




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フロム・ダスク・ティル・ドーン

2013-10-27 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その10)★テキサスレンジャーの元ネタ/エル・ドライヴァーの由来・・・

■「フロム・ダスク・ティル・ドーン/From Dusk Till Dawn」(1996年・アメリカ)

監督=ロバート・ロドリゲス
主演=ジョージ・クルーニー クエンティン・タランティーノ ハーベイ・カイテル

 ブライドが半殺しになったエル・パソの教会。そこに駆けつけたテキサス・レンジャー親子を覚えているだろうか。親父の方は、実は「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の冒頭、クルーニーとタランティーノ兄弟に射殺されるテキサス・レンジャーを演じていたマイケル・パークス。息子の方はその続編で保安官助手を演じていたジム・パークス。その二人が「vol.1」ではそろって登場する、とまぁ楽屋落ちのようなネタですな。マイケル・パークスは、聖書を映画化した超大作「天地創造」(66)でアダムを演じていた俳優さん。TV「ツイン・ピークス」にも出演している。

 さて本作はタランティーノが脚本・出演したバイオレンス・アクションホラー(なんちゅうジャンル分けだ?)。前半は二人の犯罪者がメキシコへ逃げるまでを描いたクライム・サスペンス。しかし後半、待ち合わせ場所のいかがわしい店(名前が「おっぱいグルグル」だもんね!)に入るとそこは吸血鬼の巣窟だった!というホラームービーへと一変。その構成のすさまじさに唖然としてしまうが、延々と続く吸血鬼との戦いに、気づくと見入ってしまっていた自分がいる(笑)。主人公たちに迫る無数の吸血鬼をバッサバッサと倒していく場面は、「vol.1」のクライマックス、青葉屋の大立ち回りの予行演習みたいなもんだったのかもね。いやむしろ「キル・ビル」よりも荒っぽいし壮絶。

 ロバート・ロドリゲス監督は、製作費稼ぎのために新薬を体で試すバイトまでやっちゃう人だとか。それだけにいざ作り始めたらもうやりたいことはとことんやるんだね。股間から”オチンチン銃”出すわ、サルマ・ハエック扮する踊り子”地獄のサンタニコ”の足から酒流して飲んじゃうわ、裸のお姉ちゃんウヨウヨ出てくるわ、店の前で呼び込み兄ちゃんは"Pussy Pussy"繰り返すわ、ジュリエット・ルイス(実は僕、大ファンです)がトイレに座るシーンのおまけまでついて・・・うーんもう、こんな教育上よくない映画他にあるだろか?。・・・でも面白ーい!!

(追記)この映画にはメイキングフィルムがある。「パルプ・フィクション」でプロダクション・アシスタントだったサラ・L・ケリーが監督した「フル・ティルト・ブギ」(97)がそれだ。この映画のクレジットには「an L Driver Production」と記されている。サラの相性が”エル・ドライヴァー”だったというのが理由。ダリル・ハンナの役名はこれが由来なんだね。ちなみに「vol.1」の病院の場面で、サラ・L・ケリーは看護婦のひとりとして出演している。



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クリムゾン・タイド

2013-10-26 | 映画(か行)

■「クリムゾン・タイド/Crimson Tide」(1995年・アメリカ)

監督=トニー・スコット
主演=デンゼル・ワシントン ジーン・ハックマン ジョージ・ズンザ ヴィゴ・モーテンセン

 「Uボート」「深く静かに潜航せよ」「レッド・オクトーバーを追え」など潜水艦ものに失敗作は少ない。本作はトニー・スコット監督に製作ジェリー・ブラッカイマーという売れ線映画専門チームが、潜水艦という閉鎖空間を使ったサスペンスに挑んだ意欲作。まず理解しておかねばならないのは、映画冒頭に示される言葉。アメリカ大統領とロシア大統領と並んで、核弾頭を積んだ潜水艦の艦長は世界で最も力を持つ者である・・・つまり核弾頭の発射ボタンを押す権限を艦長が持っているということ(現在はその権限なし)。

 主人公は、潜水艦アラバマ号の艦長である叩き上げの軍人ジーン・ハックマンと優秀な成績が認められて副艦長となったデンゼル・ワシントン。ロシアで勃発したクーデターで反乱軍が核ミサイル基地を占拠。アメリカと日本にミサイルを撃とうとしたことから、アラバマ号に出撃命令が下る。ついに核ミサイルの発射命令が送信されるのだが、続いて送られてきた命令は無線機の故障で一部しか受け取ることができなかった。敵は今にも発射しようとしているのに、現在出されている発射の命令を遂行しない訳にいかないと主張する艦長。通信を全文確認するまで発射しないように主張する副館長。二人の意見の食い違いは、やがて艦内の対立に。ロシアのミサイル発射準備が整う時間が迫る中、その対立は銃を突きつけ合う事態に発展する・・・。

 東西冷戦を背景にした時代によく撮られたような題材(「博士の異常な愛情」や「未知への飛行」など)を、現代に置き換えて撮ったアイディア、映画全体の張り詰めた緊張感は確かに面白い。潜水艦が出てくる場面を技術で撮った「レッド・オクトーバーを追え」とは違って、潜水艦の姿を見せるのは最小限で人間ドラマに的を絞っているのも好印象だ。それぞれの人間性や考え方(核を使用することへの是非など。人種の話には行きそうで深入りしない)の違いを会話の中で示すのも巧いなと感じる。特に部下への接し方でそれは特に表れる。艦長は出航前に全員を前に演説をする。この鼓舞する演説の見事なこと!。
「君たちに望むのは最大限の努力だ。それができないヤツは空軍に行け」
「私に従えない者はケツの辺りに刺激的な感覚を覚えるだろう。私の蹴りが入るからだ」
とユーモアを交えつつ、世界に冠たる国の誇り高き船に乗る優秀な乗組員たちを奮い立たせる名演説。僕は日頃こういう男臭い映画を観ないからなのか、この場面のカッコよさに鳥肌がたつ。一方で副艦長デンゼル・ワシントンの心のつかみ方も見事だ。その人にしかできない役割とその重大さを理解させる説得術。特にアメリカ人なら大好きな「スタートレック」を例に出して、無線修理に手こずる乗組員を励ます場面がいい。
「カーク船長はチャーリーを呼んで「もっとパワーを」と言う」「ワープスピードが欲しい・・・」
「そうだ、俺はカーク船長。君はチャーリーだ。君が無線を直せないと何十億という人が死ぬんだ」「・・・」
「できるな?チャーリー」「はい、船長!」
この映画の脚本はクエンティン・タランティーノがリライトしたと伝えられるが、映画「眼下の敵」のクイズをする場面と、「スタートレック」の挿話は彼が手を入れた部分なのか?。この台詞、日常生活でも使ってみたい!

 映画の結末はすぐに想像がつく。やっぱりねー、と思えるものだけにそこに驚きはないのだけれど、そこはブラッカイマー作品なんだからと思えば納得ではないか。命令を遵守することと、法を遵守すること。核にしても権限にしても大きすぎるパワーをもつことは、時におごりや取り返しの付かない勘違いにつながることもある・・・というのがこの映画の教訓なのかな。



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柳生一族の陰謀

2013-10-25 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その9)★神に会うては神を斬り、仏に会うては仏を斬り・・・

■「柳生一族の陰謀/Shogun Samurai」(1978年・日本)

監督=深作欣二
主演=萬屋錦之介 松方弘樹 千葉真一 西郷輝彦

 「武士たるもの、戦いに臨んでは己の敵を倒すことに専念すべし。これ兵法の第一義なり。人としての情けを断ちて、神に会うては神を斬り、仏に会うては仏を斬り・・・」ブライドがヴィヴィカ・A・フォックスを殺した後に聞こえる印象的なナレーション。これは、TV版「柳生一族の陰謀」のオープニングナレーション。タランティーノは日系のTVで同シリーズを観て以来お気に入りで、ナレーションの引用だけでなく、ジュリー・ドレフュスの拷問シーンにも同番組の音楽が使われているとか。もしも、タランティーノが気に入ったのが「必殺」シリーズだったら、あの♪チャララ~が使われていたかもしれないし、「大江戸捜査網」だったら「死して屍拾う者なし」ってナレーションが流れていたのかな・・・と想像すると楽しいではないか。

 映画「柳生一族の陰謀」は時代劇復権を賭けて東映が製作した大作時代劇。二代将軍秀忠が毒殺され、継嗣問題が持ち上がる。家光擁立派の柳生但馬守(萬屋錦之介)らと対立派の抗争劇が、「仁義なき戦い」同様見事に演出された大ヒット作である。このヒットで柳生十兵衛(千葉真一)を主人公にしたTV版が製作され、「赤穂城断絶」など大作時代劇が続けて製作されるにことになる。いやはやヒットは当然だ。史実云々言う以前に面白い。両陣営の政治的な駆け引きという静の部分と、千葉真一や志穂美悦子、若き真田広之らの動の部分がバランスよく配されて飽きさせることはない。成田三樹夫扮する烏丸少将文麿が剣の使い手であるのも面白いし、出雲の阿国(大原麗子)を愛する笛吹き原田芳雄の一途な男の思いには泣かされる。クライマックスの小笠原玄信斎(丹波哲郎)との対決シーンも見応えあり。そうした個々の人物像がとても魅力的。今回改めて時代劇の面白さを再認識させてもらった。時代劇を絶やしてはいかん!。頑張れニッポン!。ダリル・ハンナ扮する隻眼の殺し屋エル・ドライヴァーは、もしかして十兵衛がルーツ?





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ローリング・サンダー

2013-10-24 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その8)★エル・パソの教会/復讐劇の舞台はメキシコへ

■「ローリング・サンダー/Rolling Tunder」(1977年・アメリカ)

監督=ジョン・フリン
主演=ウィリアム・ディベーン トミー・リー・ジョーンズ リンダ・ヘインズ

 タランティーノが大のお気に入りの映画と言う「ローリング・サンダー」。彼が陽の当たらない秀作をリバイバルするために設立したローリング・サンダー・ピクチャーズは、もちろんこの映画が由来である。8年に及ぶ捕虜生活を経験したベトナム帰還兵の主人公は、町の英雄として帰ってきた。が、妻は別の男性と暮らしていて、息子は父親の顔も覚えていない。そして、メキシコのならず者たちに半殺しの目に遭わされて右手を潰され、最愛の息子と妻も殺されてしまう。主人公は復讐に燃えてメキシコへ・・・というお話。ポール・シュレーダーが脚本を手がけた本作は、いわばもうひとつの「タクシー・ドライバー」だ。「キル・ビル」では冒頭の教会がこの映画のクライマックス、テキサス州のエル・パソであること、そして「vol.2」でビルを追ってメキシコへ行く物語に影響を与えている。また右手がフック船長のような鍵の手である主人公も、頭を撃たれて金属がはめられている設定のザ・ブライドにつながる。ラスト売春宿での殺戮シーンもこじつければ青葉屋の大虐殺とも言えるだろうし。

 大した劇伴もなくとにかく物静かな主人公の姿を追う物語は、とても冷徹な印象を受ける。最愛の息子が殺される場面でも涙さえ見られない。よくあるハリウッド映画ならここで観客の感情をも高めるために大げさな工夫でもするところなんだろうけど、ここでは皆無。そして抑えていた怒りが復讐としてあふれ出すところは、もう任侠映画のノリ。だが主人公に憧れていた三十路前の女性リンダとの関わりは、この映画で唯一人情を感じるところだ。自分の復讐の旅に同行させながら、最後の復讐前には女をベッドに残し黙って去る。全てが終わってカントリーが流れるエンドクレジットは、不思議な安堵感を与えてくれる。ラストの襲撃に同行する元部下に若きトミー・リー・ジョーンズ。社会に受け入れられないベトナム帰還兵の姿を僕らは「ランボー」やら「タクシー・ドライバー」やら「ディア・ハンター」やらで観てきたけれど、復讐という思いにすがるこの映画の主人公もまた同じ。しかしそうした映画たちとは違った徹底した復讐アクションだから、ちょっと異質な存在ではある。要はこの映画は現代を舞台にしているけれど復讐ウエスタンなのね。


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バトル・ロワイアル

2013-10-23 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その7)★「深作欣二に捧ぐ」/ゴーゴー夕張

■「バトル・ロワイアル」(2000年・日本)

●2000年日本アカデミー賞 編集賞・新人俳優賞・話題賞
●2000年ブルーリボン賞 作品賞・新人賞

監督=深作欣二
主演=藤原竜也 前田亜季 山本太郎 ビートたけし

 タランティーノはこの映画を”近年最も影響を受けた映画”と言う。言うまでもなくタランティーノは「仁義なき戦い」を始めとする作品で、故・深作欣二監督の大ファン。対談などをきっかけに親交もあり、「BRll」ではアメリカ大統領役で出演する予定もあったし、千葉真一と深作監督とタラが組んだ映画の企画もあったとか。いずれもお流れとなったのは残念だけど。オマージュを込めた「キル・ビル」は深作監督に見せられぬままであった。それ故に「深作欣二に捧ぐ」と出るし、また「BR」を観て気に入った栗山千明を出演させたのも(しかも迫ってくる男を殺すという同じシチュエーションまで登場)、この映画の大きな影響だというのはご存じの通り。

 ところで、この「BR」を僕は今までずっと避けていた。きっと「キル・ビル」がなかったら観なかったと思う。正直言えばやはり中学生が殺し合うというセンセーショナルな内容だし、バイオレンス映画嫌いだし、国会議員による上映禁止騒ぎや世間の評に流されていたこともある。実際に今回観て、残酷描写はこんなもん?と思えたし(「子連れ狼」を観た後だから?)、思っていたよりも面白かった。極限まで追いつめられた時の人間のエゴがこれでもかと描かれる。決して世間で言われているように殺人を面白がって描いた映画ではない。意味もなく人を殺すヤツは出てこないし、殺人を楽しむヤツは徹底的に悪とされている。むしろ「生きる」ことを描いている映画とも言えるだろう。僕は「子供には何でも経験させて自分でいいことか悪いことか判断させるべき」と常々思っている。その証拠に世のお母様たちが嫌う「クレヨンしんちゃん」の全面的肯定派だ。見せて真似するべきか、おかしいと思うか本人次第だと思うのだ。「しんちゃん」を嫌うくせに「名探偵コナン」を見せるお母様方もいる。毎週人が殺されているのにね(笑)。それはさておき、「BR」も同年代の子に観て判断してもらえばいいと思うのね、基本的には。でも”親”の立場としては「殺し合いの映画」はやはり見せたいとは思わない。だから上映禁止騒動の気持ちもまんざらわからなくはないのだ。

 70才を越えた深作監督がパワフルなバイオレンスアクションを撮ることはすごいと思う。しかし、脚本のせいなのかな?どうも楽しめないところも多い。”みやむー”が「それじゃぁルールを説明するねぇ!」と登場するビデオにしても興ざめだし、全編告白大会ってのもなぁ・・・。台詞で十分なのにわざわざ字を見せることにこだわっているのも、ちょっとした台詞がグッとくる深作映画らしさとは違う気がする。「人を嫌いになるにはそれなりの覚悟がいるんだぞ」は除くけどね。出てくる大人達はみんな情けない。秋也の父親にしても無理心中を図ろうとする北野にしても。娘に嫌われ、その思いを生徒に向ける悲しい姿をたけしは見事に演じている。でも昨年の最後の生き残りの気味悪さよりも、すげぇ!イカれている!と思ったのは、栗山千明だな。どうしてあのシチュエーションで朝練が出来るの?「あたしの全存在をかけて、あんたを否定してあげるわ!」台詞も決まってるぅ!。柴咲コウはやっぱ梶芽衣子に似ているよね。ところで「キル・ビル」の脚本では当初ゴーゴー夕張には姉ユキがいる設定になっていたらしい。ユキが妹を殺された復讐をするという場面が用意されていた。何とユキ役には柴咲くコウが設定されていたんだってさ!何とも惜しい話だ。



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フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ

2013-10-22 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その6)★これから二大女優が東京を蹂躙するのだ

■「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ/The War Of The Gargantuas」(1966年・日本)

監督=本多猪四郎
主演=ラス・タンブリン 水野久美 佐原健二

 タランティーノはユマ・サーマンとルーシー・リューに、"「キル・ビル」は二大女優地球最大の決戦だ!"と述べた。実際に二人はこの「サンダ対ガイラ」を参考に(何の?)とビデオを見せられた、とか。ザ・ブライドがオーレン・イシイを追って東京へやって来る。飛行機が東京へ近づく場面を、タランティーノはミニチュアを使ってコテコテの特撮映画風に仕上げた。ゴジラのスタッフに都市のミニチュアを借りて撮影、空は松竹の和製ホラー「吸血鬼ゴケミドロ」みたいに!という注文があったというから・・・すごいよね。ちなみにタランティ-ノは「vol.2」を、本作の英語タイトルをもじって"The War Of The Blond Gargantuas!"(金髪巨大女戦争)と呼んでいる。とにかくお好きなようだ。

 お話は前作「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」の続編にあたる。人間の味を覚えて次々と船や町を襲う怪物(ガイラと呼ばれるようになる)。それは前作のフランケンシュタインの体の一部が蘇生したものだった。空港で女性事務員を食べて衣服をペッとはき出すディティールも真に迫っている。自衛隊のメーサー殺獣光線車などの攻撃で怪物は倒されたかと思えたが、そこにもう一体の怪物が出現!。これが前作で死んだと思われていたフランケンシュタインだった(サンダと呼ばれる)。いわば弟分のガイラが人を襲うのをサンダは許せない。ついに両者が対決することになってしまう。山村から川をくだり、市街地、そして海へと場を移しながら戦いは続く。そして・・・。

 それまで怪獣の着ぐるみが主流だった東宝特撮映画に、人間型の怪獣が登場したことでバトルがよりスピーディーになったのは見応えあり。サンダにとって育ての親でもある水野久美との関係や、ガイラが女性を手のひらにのせる場面など、どこか「キング・コング」を思わせる。メアリー・シェリーのフランケンシュタインとは全く異なるものではある。しかし根底に流れる、人によって造られながら人に受け入れられない人造人間の哀しみは同じ。人間に対する愛情と憎しみが二体の怪獣に表現されているのだ。



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許されざる者

2013-10-21 | 映画(や行)

■「許されざる者」(2013年・日本)

●2013年日本アカデミー賞 最優秀撮影賞・最優秀照明賞

監督=李相日(イ・サンイル)
主演=渡辺謙 柄本明 柳楽優弥 忽那汐里 佐藤浩市

 「悪人」「フラガール」の李相日監督が、クリント・イーストウッドのオスカー受賞作を同じ年の日本に舞台を移して翻案したリメイク作品。正直言うと、イーストウッドの「許されざる者」はそれ程好きな映画ではない。廃れゆく西部劇の伝統を守った作品であることはよしとしても、登場人物の描かれ方にどうも他のイーストウッド作品と違って説得力を感じなかったからだ。若造の言い出した儲け話に、経験も知恵もある年寄りガンマンが加わる流れに納得がいかなかった。娼婦に悪いことをしたヤツと悪徳保安官はやっつけられました・・・星条旗はためく下で成し遂げられた勧善懲悪。"許されざる者"はやっつけられた人たちだったのだ、と言うにはなんかすっきりしない幕切れにどうも納得いかずにいたのだ。それを日本を舞台にリメイク。正直どうなるのだろう・・・と思いながら鑑賞した。

 善と悪の境目は実は非常に曖昧だったりする。悪人にだって善人の顔がある。でも2時間という映画の世界では善悪はっきり境界線を引いて描かれるのが常だ。李監督は開拓時代の北海道に舞台を移しただけでなく、登場人物の設定やストーリーの運び方についても巧みな改変を加えている。そして役者たちの見事な演技で完成された映画。オリジナル版で感じられなかった説得力が僕には感じられた。ちょうどこの「許されざる者」を観る直前に、僕は今村昌平監督の「復讐するは我にあり」を観ていた。映画序盤の殺人は千枚通しでメッタ刺しにする場面だ。緒方拳が農地の隅で何度も何度も鋭い先端を振り下ろす。「許されざる者」の冒頭は、渡辺謙演じる十兵衛が追っ手を木の枝で刺し殺す。同じような場面のはずなのに印象がまったく違う。十兵衛のそれは過去を断ち切り、生きるための決死の行為。もちろん決して肯定されるべきものではないが、倒幕の混乱の中で多くの人を殺めてしまい、人から恐れられた"十兵衛"から逃れることである。冒頭のこの緊迫感で一気に心がつかまれた。十兵衛が賞金稼ぎに再び刀を手にするまでの流れは、オリジナル版で最も合点がいかなかった部分。旧知の仲である金吾からの誘いとして、若い賞金稼ぎをアイヌの血を引く若者にしたことは、物語を一層深いものにしている。

 緊張感に満ちた2時間。この映画には誰も善人と呼べる人がいないことに気付く。町を牛耳る警察署長、娼婦の顔に傷を付けた男たち、命を奪われるまでではなかったが賞金で彼らを殺させようとする娼婦たち、それに群がる賞金稼ぎ、強き側の腰巾着となる小説家、アイヌの人々を虐げる和人たち。主人公十兵衛もすべてを成し遂げた後、誰に感謝されるでもなく「地獄で待ってろ」と言い残して町を去る。オリジナル版とは違って、彼の行く先に平穏はない。雪と氷が積もった荒野があるだけ。生きていくことは厳しいこと。何が善で何が悪なのか、何が許されて何が許されないことなのか。

 決して明るい気持にさせてくれる映画ではない。しかし、僕らが普段考えている正義ってなんだろう、と心にひっかかるものを残す映画であることは間違いない。それは僕らが日々を生きていく中で忘れがちなこと。一歩引いたところから他人の人生を見つめることができる、映画鑑賞という時間だからこそなせること。こういう映画を敬遠せずに観ることは大切なことだ。それは人生をより深くする。・・・ここまで書いて僕はふと気付いた。この感想って、昨今のイーストウッド監督作品を観て思う感慨そのものではないか。あの頃納得がいかなかったオリジナルの「許されざる者」、今観ると昔とは違った味わいを感じるのかもしれない。

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