Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

9月のBGM

2012-09-30 | 音楽
2012年9月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■MOVE/上原ひろみ(feat.Anthony Jackson & Simon Phillips)
福岡公演も待ち遠しい(多分行けませんが)上原ひろみの新作。「1日のサウンドトラックです」とご本人は言う。目覚ましの音を表現したピアノから始まる躍動感の塊のような表題曲から、パワフルで時に繊細で・・・聴き惚れる。僕はジャズやフュージョンのような技巧派音楽は流し聴きできない性分だが、最近はジャズ系アルバムは雰囲気を楽しんでいた。だがこれは違う。心を掴んで聴く以外の他の行為を赦してくれない力強さがある。通勤中に聴きながら「すげ」「おおぉー」「かっけー」とぶつぶつ言いながら聞いている怪しい人と化していた・・・。
ムーヴ(初回限定盤)(DVD付) Move - 上原ひろみ

■Global Compilation Album "Love The World"/Perfume
世界進出を果たした三人娘の事実上のベスト盤。これだけダンスチューンを集められたら納得の選曲でしょ。個人的には「エレクトロワールド」と「SEVENTH HEAVEN」が選ばれたのが嬉しい。「FAKE IT」のPVはやたらとかっこいい。これはドライブで聴きたいアルバムかも。
Perfume Global Compilation LOVE THE WORLD(初回限定盤)(DVD付)

■陽はまた昇る/高橋優
映画「桐島、部活やめるってよ」の主題歌。予告編で聴いた瞬間にもう心奪われた。この歌声は、「それでもこの世界で生きていかなければならない」僕らの心の叫びである。名曲。
陽はまた昇る(初回限定盤) 陽はまた昇る - Single - 高橋優

■Big☆Bang!!! /中川翔子
しょこたん部長のデビューアルバム。え?何故今頃?・・・だって「空色デイズ」と「snow tears」が無性に聴きたくなったんだもん。このアルバムはいいね、とにかく元気をくれる。アイドル系アルバムにありがちな"きゃわゆさ"を売りにするあざとさがない。それでいて彼女の世界観が伝わるいい仕事だ。僕がカラオケで「空色~」歌うという血迷った行動をとっても赦しておくんなまし(笑)。
Big☆Bang!!!

■toto(宇宙の騎士)/toto
こちらもファーストアルバム。スズキワゴンRのCMで、「Child Anthem(子供の凱歌)」のクラシックカヴァーが使われている。それでグッときたもんだから、オリジナルを収めたアルバムを聴き直していたのだ。やっぱりかっこいい。Toto、Journey、Asiaのコピーバンドやりたいなぁ。
宇宙の騎士 Toto - Toto

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イルマーレ

2012-09-25 | 映画(あ行)

■「イルマーレ/Il Mare (時越愛)」(2000年・韓国)

監督=イ・ヒョンスン
主演=イ・ジョンジェ チョン・ジヒョン チョ・スンヨン

 何て美しい絵になる映画だろう。画面を見つめているだけで幸せな気分になれる。冒頭の緑がかった水面を走るカメラ、パステル画のような空と海、その真ん中に海に突き出たモダンな建物。この上なく洗練された映像美と主人公の生活ぶりに韓国映画らしさってものを忘れそうになる。極端な言い方をするとキムチ臭くないのだ(笑)。でもそんなことよりも、切ない恋物語がたまらない。僕はこういう”ちょっとおセンチな雰囲気”に実に弱いんだ。

 イルマーレと名付けられた海辺の家の郵便受けを通じて、1998年の男性と2000年の女性が心を交わすというSFファンタジー的要素を持つ物語。僕は恋愛映画に必要なのはスリルとサスペンスだというのが持論だ。ハラハラとドキドキ、そんな心の動き、それにこの先どうなるの?という観ている側の居心地の悪さが加わって初めて良質な恋愛映画は成立する(つまり先が見え見えの映画ではダメということね)。その点、この映画は高得点。主人公二人の心の動きというドキドキに、クライマックスの一刻を争うスリルの相乗効果がよい。

 手紙を通じて知り合う前の彼女(チョン・ジヒョンをついこう呼んでしまう・笑)が彼氏といるのを、駅のホームで見つめる場面の切なさ。紛れもない本人なんだけど、自分が思いを通わせているのとは異なる次元の人物。僕はここでかなり涙腺刺激されちまった。チョン・ジヒョンが声優という設定も、ある意味顔が見えない恋愛映画を象徴しているのかもな。同じ犬が双方の時間にいることに説明がないのと、イ・ジョンジェと父親との関係をもっと描いて欲しかったという不満はあるけれど、主人公二人に焦点を絞った作風がむしろ潔いとも言えるかな。愛する人のために家を設計し、建てました・・・なんてどっか「冬ソナ」のクライマックスを思わせるじゃない。キム・ヒョンチョルが歌う ♪Must Say Goodbye が流れ、エンドロールが終わった後。僕の口からもれた言葉は・・・「あー、恋がしたい!」。子持ちがそんな事思っちゃいけないって?でもこんな映画みて泣ける自分はまだまだイケてると思うのだけれど(バカ)。あ、犬の目線の主観移動という見事なカメラワーク!これは機会があったら是非真似したいな。

 ★

この文章を書いたのは2004年。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックでハリウッドリメイクされた韓国映画の秀作。韓国の恋愛映画ってシナリオがよく練られていて、単に色恋沙汰のハラハラだけじゃない面白さがある。それにしても恋愛映画観る度に「恋がしたーい!」と年甲斐も立場も考えず書いてしまう自分・・・(恥)。しかしそういう気持ちになるだけで、いろんな意味で原動力になるのさ。これからもそれはきっと。



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おおかみこどもの雨と雪

2012-09-21 | 映画(あ行)

■「おおかみこどもの雨と雪」(2012年・日本)

監督=細田守
声の出演=宮崎あおい 大沢たかお 黒木華 西井幸人

「サマーウォーズ」の細田守監督の最新作は、生きることを真っ正面から描いたファンタジー。確かに評判通りによくできている。温かみのあるシンプルな絵柄のキャラクターたち、緻密な自然描写、自然と人間を対比したテーマ、子供の旅立ちと見送る親の気持ち・・・よくわかるし感動もした。でもね・・・何か煮えきれない気持ちがある。感想がなかなか形にできなかったのもそのせいだ。

この映画を酷評している人の多くは現実目線でこの映画を見ている。おおかみおとこと恋をして子供が生まれて、誰にも頼らずに山里に暮らそうとして・・・ありえないだろ、という目線。一方で、この映画を受け入れている人は、ファンタジーの前提を肯定した上で、育ててくれた自分の母親への感謝の気持ちを感じていたのではなかろうか。また母親という目線であれば、共感できる場面も多々あることだろう。どちらもよくわかる。僕はどちらかと言われれば、ファンタジー肯定派の後者の立場だ。子を持つ親の立場で見ると、子供が病気になったときの懸命なヒロインの姿や、妊娠した場面での悪阻のリアルなこと、部屋をめちゃくちゃにされる場面、学校で本性を出さないようにするおまじない・・・あの頃親がこういう苦労や気遣いをしてくれたから、僕らは大人になった。僕はエンドクレジット観ながらそれを思った。おかあさん、ありがとう。それでも煮えきれない気持ちが残る。何だろう。それはエンドクレジットを見ながら感じたさみしさ。単に雨が母親の元を去ってしまったからではない。

僕は前作「サマーウォーズ」が大好きだ。ネットワーク上のヴァーチャルな世界と現実世界が見事にリンクする物語と、人と人のつながりの大切さに心底感動した。「おおかみこどもの雨と雪」同じように、ファンタジーという現実から遠い世界と、僕らがいる現実世界がリンクしている舞台設定だ。だがこの映画はファンタジーでありながら、あちこちに現実が描かれる。しかも映画館の外の世界に引き戻されるようなかなりリアルな描写の現実だ。「千と千尋の神隠し」みたいに、豚になっちゃう両親や汚された川の神様など隠喩めいた描写とは違う。細田監督は現実から逃げない。親がセックスをしたから子供が生まれるというプロセス、しかも前述の悪阻まできちんと描かれている。児童福祉関係の職員からネグレクトを疑われる場面にしても、おおかみおとこの遺体(狼の死骸)を清掃車が運び去る場面にしても、現実世界であればありうることだ。生きていく上では必ずあること。ファンタジーに徹するならば絶対にしない描き方だろう。現実に生きる世界があってこそのファンタジー。現実世界に戻りたくなくなるような夢物語だけを売り物にする娯楽映画とはまったく違う。このスタンスは素晴らしいと思う。これは僕がこの映画に感動した理由のひとつ。

そして僕が感じたさみしさの理由。それは、人間が暮らす現実世界と、けものたちが暮らす自然界という異なる世界の関係だ。雪は人間として暮らす道を選択するが、雨は森の長老の後継者となるべくヒロインの元を去ることになる。このふたつの異なる世界が共存していくことの難しさがこの映画では見え隠れする。一方で「サマーウォーズ」は、人間がつくったヴァーチャルな別世界が暴走を始めるけれど、結局は人と人の絆によってその危機が回避され二つの世界はバランスを取り戻すことになる物語だ。テクノロジーへの強い警鐘という意味も込められているけれど、異なる二つの世界は共存しうる(人間がつくり出したものだから当然とは言えるが)。しかし「おおかみこども~」では、本来共存すべきはずの自然と人間社会を隔てるものを感じずにはいられない。雪は生涯その現実と戦うことになるのだろう。父や母がそうしたように。でも、この映画の2時間は、どっぷりと現実を忘れさせてくれはしないけれど、生きていくことを今までよりも少しだけ考えさせてくれるだろう。




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ウィンブルドン

2012-09-20 | 映画(あ行)

■「ウィンブルドン/Winbledon」(2004年・イギリス=アメリカ)

監督=リチャード・ロンクレイン
主演=キルスティン・ダンスト ポール・ベタニー サム・ニール

 ワーキング・タイトル製作の映画たちは、本当に僕ら30代にこそ元気をくれる。「ノッティング・ヒルの恋人」しかり「ブリジット・ジョーンズの日記」しかり「アバウト・ア・ボーイ」しかり。ポール・ベタニー演ずる主人公ピーター・コルトはかつて世界ランク11位だった30代のテニス・プレイヤー。今では引退の時期を迎えている。引退試合と決めて臨んだウィンブルドンで、彼はアメリカからやってきたリジーと出会う。最初はお互いお楽しみであったのが、お互いにとって大切な時間となり、大切な人となっていく。夜のテニスコートで彗星を見上げてのキスシーンには、こっちまで胸がときめいてしまう。ピーターはリジーのお陰で順調に勝ち上がる。男って実に単純な生き物だ。女の子なしには活躍することもできない。一方で父親の厳しい指導下にあったリジーは、気持ちの乱れから負けてしまうことに・・・。ピーターを攻めるリジー。ピーターは大事な試合の前にカメラの前で心情を告白する。そしてピーターはセンターコートへと向かう・・・。

 テニスを題材にしながらも全然スポ根的精神論を強要せず、ロマコメ路線を突き進み、最後は試合の興奮と恋愛成就の喜びが一体となる大団円。これぞエンターテイメントだ。僕は映画館の片隅で小さく拍手した。そりゃ確かに一般人とは違う世界のお話かもしれない。パパラッチから逃げ回る恋に感情移入できない人もあるかもしれない。そこをうまーくカヴァーしているのが、キャスティングと脇役のキャラクター。ポール・ベタニーの誠実そうなイメージが、テニス選手も人の子じゃないかと納得させてくれる。これが同じ英国俳優でもジュード・ロウやクリスチャン・ベール、ルパート・エベレットだったらきっとこうは上手くいかなかった。またピーターの家族の人間くささ。テニス選手の家族というと、ハイソなイメージを持ちがちだが、これが何とも庶民的で素敵なのだ。限られた選手しかプレーできないセンターコートにイギリス人が勝ち進んだことを素直に応援する人々の姿も、最後には理解を示すサム・ニールも、とても温かい気持ちにさせてくれるシチュエーションが「ノッティング・ヒルの恋人」に似ているって?。細かいことはいわないで楽しもう。きっとハッピーな気持ちにさせてくれて、日常を忘れさせてくれるはずだ。

 ★

この文章を書いたのは2004年。ノーマークだったのだが大感激。「ブリジット・ジョーンズの日記」を筆頭に、ワーキングタイトルの映画はどれも大好き。
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内海の輪

2012-09-17 | 映画(な行)
■「内海の輪」(1971年・日本)

監督=斉藤耕一
主演=岩下志麻 中尾彬 三国連太郎

2012年夏、小倉北区の松本清張記念館では「松本清張と映画」と題した企画展をやっている(10月31日まで)。清張作品は多くの映画やドラマとなってきた。「砂の器」などの傑作もあるけれど、一方で原作者の意図しているのと違うものができあがることもあった。そこで、清張自らプロダクションを設立して「疑惑」など多くの良作を世に送り出した。この展示は清張原作映画の歴史が見られるとともに、清張が育った北九州の地で観て、影響を受けたであろう映画の数々を、当時の資料とともに展示しているのが興味深い。



これと同時に小倉の老舗映画館である昭和館は、清張作品の特集を組む。今回僕が足を運んだのは「内海の輪」。原作は週刊誌に「霧笛の町」のタイトルで連載された小説で、中編集「内海の輪」に表題作として収録された作品。僕はこの原作は知らなかったのでストーリーの予備知識は皆無だった。四国の呉服屋に嫁いでいるヒロイン美奈子は、大学で助教授目前である宗三と逢瀬を重ねていた。宗三は美奈子の義理の弟だったが、夫が他の女に走って別れを告げた晩に結ばれ、その後も関係を続けていたのだった。美奈子は同窓会があると夫を偽り、宗三も岡山での発掘調査を理由に瀬戸内各地を旅行する。ところが旅先で友人に会ってしまった宗三は不倫の発覚と助教授となる自分の身に不安を覚え、また美奈子が宗三の子を身籠もったことを告げられたことで激しく動揺することに。そして・・・というお話。

2時間サスペンス枠でも何度かドラマ化されているお話だが、劇場映画向けのスケール感があるかと言われればそれは今ひとつ。もちろん「砂の器」や「天城越え」などと比較してはいかんと思うが、それでも二人の姿を通じて人の行き過ぎた欲望とエゴの醜さが描かれて、飽きさせる映画ではない。「内海の輪」の見どころのひとつは瀬戸内海の美しい風景。クライマックスの舞台である兵庫県の蓬莱峡(ほうらいきょう)や広島県の尾道、仙酔島など。人目を忍ぶ数日の逢瀬のつもりが結果としてずるずると各地をさすらうことになる二人、次第に険悪なムードになっていく。「愛する人に殺されたら幸せなのかしら」と冗談を言っていた美奈子が、次第に宗三の殺意を感じ取っていく緊張感。しばし姿を消した宗三を探して、切り立った蓬莱峡の崖を泣き叫んで滑り降りる美奈子の姿は強く印象に残る場面だ。若き中尾彬、最後は情けない役柄だけど誠実さの裏にちょっとワルそうな感じがよく出ていて好感。一度彼女の元を立ち去ったくせに戻ってきて、「忘れ物をしたゼ」と(スギちゃんに似合いそうな)キザな台詞の後、岩下志麻の唇にブチューッと豪快なキスをする。そこはシリアスな場面のはずが何故か笑いがこみ上げてきた・・・失礼。



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シャア専用電子ピアノ?

2012-09-13 | うちの子に御用?
ピアノの練習に熱心なうちのレイア姫(11歳)。されどアップライトピアノなんぞ置ける場所も金もなく、ピアノ代わりに僕のシンセKORG X5Dを使っていた。実はキーボードマガジンの懸賞で”2名様を当てた愛機。最初のうちはよかったのだが、最近弾く曲のレンジが広くなってきて「鍵盤が足りない!」と言うようになった。うーむ、そりゃいかんな。

レイアはNHKの連続テレビ小説「カーネーション」が好きだった。ドラマの中で母親にピアノをねだる子供らが「ピアノ買うて」と書かれたメモを家のあちこちに隠す場面がある。レイアはついにこのドラマを真似て、僕のノートパソコンやらプリンターの中に密かにメモを入れ始めた(笑)。

・・・と言うわけで本日やって来ました。電子ピアノKORG LP-350。



あれこれ検討したのだが、同じ価格帯の中では他メーカーと比較して抜群に鍵盤がいい。ヤマハの上級機種並のタッチ。しかもイタリアンレッドってところがお洒落でしょ。レイアと僕が「どうせなら赤がいい!」と主張してこれになりました(派手好きな親子です)。譜面台にちと問題があるけれど、それ以外は不満なし。

翌日早速「戦場のメリークリスマス」を弾いてみる。
配偶者アミダラM「あんたがいちばん欲しかったんじゃないの?」
そうかも。だーれもいないときに練習しまくろう。

長男ルーク(13歳)がこれをひと言。
ルーク「赤なん?シャア専用?」

・・・バレたかw。


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守ってあげたい!

2012-09-11 | 映画(ま行)

■「守ってあげたい!」(2000年・日本)

監督=錦織良成
主演=菅野美穂 杉山彩子 宮村優子

 ひょんなことから女性自衛官となった無気力な現代っ娘が、教育隊の訓練を通じて成長していく様を描く青春映画の佳作。見終わって思ったのは、何故もっとヒットしなかったのだろう?ということ。おちこぼれの主人公たちが、あることをきっかけに目覚めて一般的には突飛だったりバカげていたりするようなことに一生懸命取り組む。そして何かをつかんで人間として大きくなる・・・。これは青春映画の定石なんだけど、そういう意味では「ウォーターボーイズ」と同列の映画だと言えるだろう。ともかく20年弱生きてきて、”オレって今まで何一つ成し遂げたことがないよな~”と自分の人生を振り返った事がある主人公と同年代の男のコ女のコは特に必見!。この映画はきっと勇気をくれることだろう。

 自衛官に個性がないから、と集められた3班は元レディースはいる、元女子プロレスラーいる、ミリタリーおたくはいる・・・とおかしな連中ばかり。特に”飛鳥ラングレー”ことみやむーの浮いた演技には注目。冒頭の爆弾処理から始まって募集事務所の方とのやりとり、煙缶(エンカン)や独特な時刻の読み方などの自衛隊用語、そして教育隊での生活の様子など、一般ピープルには興味深い部分もたくさん描かれている。「合格ですよ!」って募集官が自宅に行って家族に「知りません」と言われる光景なんて、実際ありそうで納得。菅野チャンが夜ベッドでポケットボード出してメールしてたりして、あぁ携帯は取りあげられないのか、とか妙なところで感心したり。そういう意味では、お寺ライフの裏側を綴った「ファンシイダンス」に通ずる映画でもあるのだ。

 一方で厳しい現実も忘れてはいないところは好感がもてる。土砂災害の現場に偶然遭遇してしまった主人公たちに、「なんだよ、女の自衛官ばっかり来やがって!」とか言われたり。でもこの場面ちょっとくどいのだけれど。あと好きだったのは、「G.I.ジェーン」並みに女捨ててんじゃない?と思われていた班長が、ふとオンナの表情を見せるクライマックスかな。日本の映画事情って変だと思うのだけど、良質な日本映画が観られるのは大都市圏だけなんだよね。地方都市在住だとこんな映画は劇場にかかることすらないし、ビデオ店でVシネマやTVドラマと同じ列に並んでいたりすると”劇場公開作”といくら書いてあっても有り難みってどこへやら・・・なんだよね。まぁここで言うことじゃないのかもしれないけど。

 ★

この文章を書いたのは2002年。最近シネコンで上映される映画は、この頃とは違って日本映画の比率が高くなっている。おまけにあの頃とは違って外国映画にメガヒットがなかなか出ない。さらにフィルム上映がデジタル上映に切り替わるのは画質や設備の点でよいのだろうが、観られる映画に制約が出ていたりもする。たかだか10数年の話だけど、時代は変わっているんだね。

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ラビット・ホール

2012-09-09 | 映画(ら行)

■「ラビット・ホール/Rabbit Hole」(2010年・アメリカ)

監督=ジョン・キャメロン・ミッチェル
主演=ニコール・キッドマン アーロン・エッカート ダイアン・ウィースト タミー・ブランチャード

最近、僕の身近な人が小学生のお子さんを交通事故で亡くされた。遺族や葬儀の司会から紹介される家族のエピソード、生前好きだった曲・・・あれ程心に刺さるような葬儀に参列したことがなかった。それに僕は大学1年の夏、高校時代の友人を交通事故で亡くしている。その後、彼のご両親は離婚してしまった。それだけにこの映画を、僕は穏やかな気持ちで見ることができなかった。このレビューもなかなか筆が進まなかった。この映画の主人公は交通事故で4歳の息子を亡くした夫婦。悲しい記憶を早く忘れてしまいたい妻と、息子との思い出にいつでも触れていたい夫。二人の溝は次第に大きくなっていく。そんな時、加害者の学生を見かけたことから、妻は彼に近づこうとする…。

大事なものを失った悲しみは当事者でないとわかるものではない。また悲しみへの向き合い方も人それぞれだ。僕らはそれを頭で理解していても、勝手な見方をすることがあるものだ。交通事故遺族のサークルに参加して、自分たちだけではないことを感じるのも一つの方法。夫は参加する意義を感じたが、妻はどうしても周囲と合わない。いちばん悲しみを共有してくれそうな配偶者とも意見が合わない状況になれば、お互いに自分と同じ思いを理解してくれそうな相手を探すことになる。息子の事故に自責の念がある妻にとって、それは加害者の少年だった。観ている最中、「どうして彼と会わねばならないのか?。加害者だぞ。」と思っていた。それは映画のクライマックスで夫が口にしたことと同じだ。しかし、鑑賞後にじっくり考えてみれば、息子の死に責任を感じている点では二人は共通している。だからこそ、二人はまた会いたい、話したいと思えるようになったのだろう。一方で夫はサークルで知り合った女性(サンドラ・オー)と意気投合する。二人は理解者が欲しくってお互い寂しくて仕方ない関係。車でマリファナを吸ってサークルをサボってしまったり。だが、彼女がパートナーに去られたことを告げられると、「僕は妻を愛しているんだ」と繰り返す。結局それ以上に接近することはないのだが、夫婦それぞれの思いが実に丁寧に描かれていく。ミッチェル監督の視線は優しい。受け取り方によっては一見理解しがたい二人の行動を、丁寧に綴っていくことで次第に観ている側に共感させていく。

少年が描いたコミック「ラビットホール」(「不思議の国のアリス」でウサギを追ってアリスが落ち込んだ穴)で、息子がまたこことは違うパラレルワールドででも生きていてくれたらと思うようになる。この世での生を失った悲しみは消えないけれど、何もかもがうまくいっている世界がきっとある。それは彼女にとって気持ちの救いとなる。ダイアン・ウィースト扮する母親が主人公に言う「岩のような悲しみもいつかポケットの小石に変わる」という台詞もいい。大事なものを失った人の心を表現した見事な表現だと思うのだ。冒頭に書いた方々がどんな思いでいるのか、本当に理解することはできない。でも僕らは、小石になりつつある悲しみの存在を理解することだけはできるのでは。



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ロミーとミッシェルの場合

2012-09-05 | 映画(ら行)

■「ロミーとミッシェルの場合/Romy & Michele's High School Reunion」(1997年・アメリカ)

監督=デヴィッド・マーキン
主演=ミラ・ソルヴィーノ リサ・クロードー ジャニーン・ガラファロ

 LAで気ままな生活を送る仲良し二人組が、田舎の同窓会出席のためにサクセス・ストーリーをでっちあげる。しかし、そこで彼女たちは本来のあるべき自分に気づく。80年代ポップス満載の楽しい楽しいお気楽コメディ快作である。自分のスタイルや主張をしっかり持つことがよいのだ!といういかにもハリウッド映画的なテーマなのだが、この映画にはとにかく爽快感がある。一度主人公たちを落ち込ませておいて、高校のいじめられっ子だったのが大逆転!というラスト。まるでカンフー映画の復讐劇(または「少林サッカー」と言ってもよいか・笑)を観ているかのようだ。ちょっと冴えないが一事に長けている人(いわゆるヲタクと言ってもいいか)が成功を手にするお話。世の中にどこか引け目を感じている観客を、勇気づけてくれること必至。お気楽ヤンキーガールのお話なんだけど、そんな普遍性があるからこの映画を好む人が多いのだろう。僕も好きです、これ。

 劇中流れる80年代ポップスがとにかく楽しいし、選曲もうまい。リサ・クロードーが「高校時代のヒット曲でカセット作っといた」と、同窓会へ行く道中 ♪Footloose をガンガン流す。嘘の成功物語引っさげて同窓会へ向かう彼女たちが、”気ままにいこうゼ”ってな曲を歌う皮肉。キャリアウーマンに変身した彼女たちは ♪Karma Chameleon を聴いている。LAのクラブの場面 ♪Staying Alive で踊っている彼女たちは、冴えない生活してても踊っているときは”まだ生きてるゼ!”と感じていることだろう。本来の自分に目覚めた彼女たちが ♪Venus をバックに登場するところは、もう拍手もん。アラン・カミングのヘリに乗ってパーティ会場を去る場面、♪Heaven Is A Place On Earth なんて気が利いてるじゃない!。そして二度流れるのが ♪Time After Time。「クラブ通いの成果が出たわね!」というダンスシーンは、クラシックバレエみたいなダンスだからもう笑うしかない。エンドクレジットの ♪We Got The Beat までTVの前で盛り上がりっぱなしの僕でした(笑)。あぁー!踊りに行きたい!マハラジャが恋しい!(80年代青春組)。

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北斎漫画

2012-09-02 | 映画(は行)

■「北斎漫画」(1981年・日本)

監督=新藤兼人
主演=緒方拳 樋口可南子 田中裕子 西田敏行 フランキー堺

2012年5月に100歳で亡くなり、生涯現役の映画監督としてメガホンをとりつづけた新藤兼人監督。メジャー映画会社の仕事ばかりでなく、独立プロで商業映画では表現できないような題材にも果敢に挑んできた人。僕はまだまだ不勉強で監督作の多くを観てはいないけれど、最後の作品まで人間の生き様を描き続けた人だと思っている。脚本のみを提供したメジャー系の作品でも、人間を見つめる視点は貫かれていた。僕が観ている映画では、例えば鈴木清順「けんかえれじい」の青春像、深作欣二「軍旗はためく下に」のおぞましい戦場の現実、野村芳太郎「事件」のドロドロした人間関係、和田勉「完全なる飼育」の性愛・・・時に説明しがたい矛盾を抱えてしまう人間の不可解さ、悲しさ、面白さ。それらを思い出しても他の映画とは違う力強さを感じずにはいられない。

小倉昭和館で追悼上映として「原爆の子」「鬼婆」「北斎漫画」の3作品が上映された。「北斎漫画」は高校生のとき、フジテレビで放送されたのを録画して親の目を盗みつつ少しずつ観た映画だ・・・(恥)。あの頃は樋口可南子と田中裕子のヌードに見とれてたのと、緒方拳演ずる北斎の老いてなおパワフルなところばかりが印象に残っていた。だってねぇ、男と女のこともようわからん時期に観た訳だし(早すぎ?)それは仕方ない。そういえば、NHK連続テレビ小説「おひさま」関係で樋口可南子が「あさイチ」に出演したときに、有働由美子アナがひたすら「蛸となさった場面が・・・」とドラマの話そっちのけで「北斎漫画」の話題から離れなかったこともあったっけ。それくらいにインパクトのある力強い映画。

さて。今の年齢になって「北斎漫画」を改めて観て、妙に心に残るのは男たちのことばかり。下駄屋に婿入りして嫁の目を盗みながら読み本を書く滝沢馬琴(西田敏行)のおどおどした様子には、既婚男性なら共感できるところがあるだろう。厠で本を読んでたり、仕事のついでに読み本の打合せしようとして見つかったり、婿入りも生活の安定が理由だったり。10代で観た頃いちばん理解し難かったのが、お直に翻弄される男たち。あの頃は、とっととあきらめればいいやん、あんな女・・・と思いながら観ていたけれど、今観ると北斎がのぼせ上がる理由や忘れようとしても忘れられない気持ちが痛いほどわかる。日蓮像を「これはお直だ」と言って拝み続ける執着、お直が去った後の喪失感。晩年に瓜二つの女が現れた時の立ち直り方。北斎の父親がお直に翻弄された挙げ句に自殺する場面にしても、高齢で若い娘をつなぎとめておく厳しさが今となっては理解できる。

しかし新藤監督が亡くなった今観て、最も強く訴えかけてくるのは最後の北斎の台詞だ。90歳から5年で西洋画を学んで描く。そしてその後はこれまでの総仕上げ・・・という意欲に満ちた言葉。この後北斎はポックリ亡くなり、これが臨終の言葉となるのだが、新藤監督は100歳のまでメガホンをとり、それをやっちゃった人なんだなと思えた。「夕立がきやがった!」と江戸の町を走り出す北斎。それは新たなひらめきがあって、それを実現しようと立ち向かうエネルギーの現れ。新藤監督の頭の中には老いてなお、夕立が降っていたのだな。ご冥福をお祈りします。

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