Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

おとぼけオーギュスタン

2025-01-04 | 映画(あ行)


◼️「おとぼけオーギュスタン/Augustin」(1995年・フランス)

監督=アンヌ・フォンティーヌ
主演=ジャン・クレティアン・ジベルタンブルン ステファニー・チャン ギ・カザポンヌ 

ココ・アヴァン・シャネル」のアンヌ・フォンティーヌ監督初期の作品で、60分の中編。パートタイムで保険会社に勤務しながら、俳優業をしているオーギュスタン。彼の日常とメジャー作品のオーディションに挑む様子が描かれる。

タイトルとジャケットのデザインから、ムッシュユロ(「ぼくの伯父さん」)みたいな小洒落たコメディを期待していた。だがこれがなかなか曲者の主人公で、ケラケラ笑えるような作品ではなかった。

俳優の仕事もないのに、三枚目役は嫌、感情表現は苦手とか変な注文ばかりつける。オーディションはホテルボーイ役だからと高級ホテルで一日見習いを頼み込むが、部屋の清掃をする中国人女性に「また会いたい」とか言い寄る始末。職場では同僚の仕事ぶりを上司に悪く言って点数を稼ぐけど、女性社員には終始からかわれる。

彼は生真面目すぎる人なんだろうけど、ちょっと扱いにくいタイプ。タイトルにある"とぼけた"人でもない。本人は大真面目に物事に向き合っている。周囲と噛み合わない様子で笑わせるのが狙いだろうが、今ドキの若い世代に"イタい"と言われそうなオーギュスタンを笑いのネタにするのは、観る人によっては不快に映る気もする。

オーディション場面で相手をしたティエリー・レルミット。何を言われても大らかに対応する姿がいいね。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

tak's Movie Awards 2024

2025-01-02 | tak's Movie Awards

 


2024年の映画生活は昨年に引き続き多くの作品に触れることができた。新作はもちろん、宅配レンタルで名作と称される作品や配信にあがっていない作品を観るのが楽しくて、心の向くまま無節操に観るものを選んできた。そのため例年以上に新旧混じったベスト作品の選出になっている。Filmarksでの率直な感想と口コミには今年もお世話になりました。
いち映画ファンとしての年中行事、2024年の年間ベストは、この1年間にわたくしtakが観たオールタイムの映画からセレクト。公開年にタイムリーになってませんので、ご了承くださいませ。

tak's Movie Awards2024

■作品賞=「PERFECT DAYS」(2023年・日本)

孤独を楽しんでいるようで、人との触れ合いが恋しくなる。詩が韻を踏んでいるような映像の反復が美しい。

今年の10本
PERFECT DAYS(2023)
アイミタガイ(2024)
哀れなるものたち(2023)
関心領域(2023)
親密すぎるうちあけ話(2004)
ちひろさん(2023)
デューン 砂の惑星PART2(2024)
パリタクシー(2022)
フィツカラルド(1982)
落下の解剖学(2023)

■アニメーション作品賞=「ルックバック」(2024年・日本)
アニメだからできること、アニメだから伝わること。

■監督賞=ヨルゴス・ランティモス 「哀れなるものたち」(2023年・イギリス)
演技も演出も美術も音楽も、あらゆる要素がとにかく大胆。こんな映画はなかなかない。
今年の10人
ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」
ウィリアム・ワイラー「友情ある説得」
上田慎一郎「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」
ヴェルナー・ヘルツォーク「フィツカラルド」
クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」
ジョナサン・グレイザー「関心領域」
ダルトン・トランボ「ジョニーは戦場へ行った」
パトリス・ルコント「親密すぎるうちあけ話」
ヨルゴス・ランティモス「哀れなるものたち」
リドリー・スコット「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」

■主演男優賞=ダニー・ブーン 「パリタクシー」(2022年・フランス)
人間不信に陥りそうな現実の中、スクリーンからあふれ出す人情という温かさ。人間観察に優れたコメディアン兼役者は、そこにリアルを吹き込んでくれる。
今年の10人
アラン・ドロン「サムライ」
キット・ハリントン「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
クラウス・キンスキー「フィツカラルド」
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ「DOGMAN ドッグマン」
ジェラール・ドパルデュー「メグレと若い女の死」
ダニー・ブーン「パリタクシー」
ファブリス・ルキーニ「親密すぎる打ちあけ話」
フレデリック・マーチ「セールスマンの死」
ポール・ニューマン「傷だらけの栄光」
役所広司「PERFECT DAYS」

■主演女優賞=有村架純「ちひろさん」(2023年・日本)
人とのつながりを避けているようで、自然に人と人をつないでくれる。孤独との向き合い方、人との向き合い方。架純たん、いい役者になりました🥲
今年の10人
有村架純「ちひろさん」
アンナ・カリーナ「はなればなれに」
エマ・ストーン「哀れなるものたち」
カトリーヌ・フロ「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」
クリステン・スチュワート「ランナウェイズ」
ザンドラ・ヒュラー「落下の解剖学」
サンドリーヌ・ボネール「親密すぎるうちあけ話」
ダイアン・キートン「赤ちゃんはトップレディがお好き」
フェイ・ダナウェイ「ネットワーク」
ルアンヌ・エメラ「エール!」

■助演男優賞=デンゼル・ワシントン「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」(2024年・イギリス=アメリカ)
善人イメージの強いデンゼル・ワシントンだが、こういうしたたかな悪役も巧い。単なる悪人でなく、そこに至るまでの人生を感じさせる重みある演技が素晴らしい。
今年の10人
アンソニー・パーキンス「友情ある説得」
ウィレム・デフォー「哀れなるものたち」
大沢たかお「キングダム 大将軍の帰還」
クリストファー・ウォーケン「デューン 砂の惑星PART2」
ジェーソン・ロバーツ「ジュリア」
ジェームズ・ガンドルフィーニ「ザ・メキシカン」
デンゼル・ワシントン「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」
ピーター・フィンチ「ネットワーク」
ポール・ジアマッティ「デュエット」
ロバート・ダウニーJr.「オッペンハイマー」

■助演女優賞=グウィネス・パルトロウ「デュエット」(2000年・アメリカ)
カラオケがつなぐ人間模様。ずっと観たかった本作を宅配レンタルで初鑑賞。離れ離れになっていた父親との再会と和解。父娘のデュエット場面は泣くかと思ったぞ🥹
今年の10人
アニー・ジラルド「殺人鬼に罠をかけろ」
アンヌ・ブロシェ「親密すぎるうちあけ話」
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ「華麗なるアリバイ」
エレナ・アナヤ「サン・セバスチャンへ、ようこそ」
グウィネス・パルトロウ「デュエット」
草笛光子「アイミタガイ」
スーザン・サランドン「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
ドロシー・マクガイア「友情ある説得」
バーバラ・ベル・ゲデス「めまい」
ピア・アンジェリ「傷だらけの栄光」

■音楽賞=トーキングヘッズ「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」(1984年・アメリカ)
この頃のトーキングヘッズをよく知らなかったけど、これは映画館で観るべき作品。ステージをひたすらカメラは追う。観客の盛り上がる様子は最後でチラ見せ。僕らは特等席にいるのだ。
今年の10人
イェルスキン・フェンドリックス「哀れなるものたち」
キース・モリソン「スパルタンX」
クロード・ボラン「ボルサリーノ」
ソニー・ロリンズ「アルフィー」
トーキングヘッズ「ストップ・メイキング・センス」
バート・バカラック「007/カジノ・ロワイヤル」
パット・メセニー「コードネームはファルコン」
フランシス・レイ、ミシェル・ルグラン「愛と哀しみのボレロ」
ミカ・レヴィ「関心領域」
ミシェル・ルグラン「はなればなれに」

■主題歌賞=夜明けのマイウェイ(黒木華)「アイミタガイ」(2024年・日本)

劇中の台詞「今はそういう話を信じたい」が強烈に胸に響いた。70年代末期のテレビドラマ楽曲だが、こんなに映画にマッチするなんて🥹。映画館の暗闇で一緒に歌っていた。
今年の10人
Angel Queen(Dara Sedaka)「劇場版1000年女王」
blast!(TRUE)「劇場版響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」
Cold Song (Klaus Nomi)「愛の記念に」
Everchanging Time(Siedah Garrett)「赤ちゃんはトップレディがお好き」
MacArther Park(Donna Summer)「ビートルジュースビートルジュース」
The Power Of Love (Frankie Goes To Hollywood)「異人たち」
This Is Not America(David Bowie)「コードネームはファルコン」
月並みに輝け(結束バンド)「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:」
夜明けのマイウェイ(黒木華)「アイミタガイ」
ロタティオン(LOTUS-2)(平沢進)「千年女優」







今年も素敵な映画と出会えますように。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アガサ・クリスティ 〜謎の失踪 失われた記憶〜

2025-01-01 | 映画(あ行)



◼️「アガサ・クリスティ 〜謎の失踪 失われた記憶〜/Agatha Christie : A Life In Pictures」(2004年・イギリス)

監督=リチャード・カーソン・スミス
主演=オリヴィア・ウィリアムズ アンナ・マッセイ レイモンド・クルサード スティーブン・ボクサー

アガサ・クリスティーが11日間失踪した1926年の事件は謎に包まれている。それはミステリーファンやクリエイターの想像をかき立て、数々のドラマや映画が製作されてきた。

本作は、発見時に記憶を失っていたアガサに向き合う精神科医が、催眠療法で失踪の謎に迫ろうとするお話で、英国BBCテレビの製作によるドラマ。失踪期間がこうだったら面白いという発想で製作されたドラマ「アガサと殺人の真相」(2018)のライトなミステリー仕立てとは違って、アガサ自身の行動と心の闇に迫るドラマになっている。

本編は大きく2つのストーリーが並走する。アガサの失踪であたふたする周囲の人々、精神科医とのやり取りを描く1926年パートと、舞台「ねずみとり」10周年を祝う1962年のパーティ会場でアガサが受けるインタビュー。若き日のアガサはオリヴィア・ウィリアムズ(「17歳の肖像」の先生役が良かった)、老年のアガサはアンナ・マッセイ(ヒッチコック「フレンジー」で殺される被害者の一人)が演じている。

史実としては、アガサが大戦中看護に従事したこと、薬に詳しくなるエピソード、離婚を経て2番目の夫マックスと出会うまでが紹介される。幼い頃から繰り返しみる夢に出てくる銃を持ったうす汚い男のイメージが、ことあるごとに彼女を精神的に苦しめる描写は、ホラー映画のテイスト。全体的にはどよーんと暗い雰囲気で娯楽作ではない。だが2000年代に入ってもこうした作品が製作されるのは、クリスティに対する人気と興味が衰えを知らない証でもある。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする