◾️「告白小説、その結末/D'après une histoire vraie」(2017年・フランス)
監督=ロマン・ポランスキー
主演=エマニュエル・セニエ エヴァ・グリーン ヴァンサン・ペレーズ
新作が書けずにスランプに陥っていた小説家デルフィーヌ。そんな時に、サイン会で出会った熱烈ファンと称する美女エル。意気投合したデルフィーヌは、献身的に接してくれるエルに次第に心を許すようになっていく。二人は共同生活を始めるが、エルの言動にだんだん翻弄され始める。デルフィーヌを執筆に専念させたいからと言うエルは、デルフィーヌの仕事に踏み込んでいくのだが、その行動はデルフィーヌをどんどん孤立させていくことに。そして…。
ロマン・ポランスキー監督の映画は、登場人物を絞り込むととんでもない魅力を発揮する。この映画もデルフィーヌの友人や仕事で別居中の夫を除いては、ほぼ二人の様子だけをカメラは追い続ける。後半はロブ・ライナー監督の「ミザリー」を思わせる二人だけの世界。作家と熱狂的ファンの関係といい、別荘に事実上監禁される状況といい、「ミザリー」と同じ逃げられない恐怖。僕ら観客も最後まで見届けることを強要されているかのような気持ちにさせる。
エマニュエル・セニエは、同じポランスキー監督作「毛皮のビーナス」の自信満々の役柄とは違って、揺れ動く不安な心情を見事に演じている。一方、ミステリアスに登場するエヴァ・グリーン。感情の起伏が激しい難役は、最後の最後まで僕らに人物像を掴ませてくれない。微笑みがだんだん怖くなる。
※以下、結末に触れているので注意
エルに散々な目に遭わされていたはずのデルフィーヌはエルのした事を結果として許し、しかもエルがしていたようなファッションやメイクをするようになっている。姿を消したエルをサイン会の途中で思い出したような彼女の様子を示して映画は終わる。説明的でなく、映像で感じ取らせる思わせぶりなラストシーン。エルはデルフィーヌの作家としての活動を侵しただけでなく、心にも踏み入っていたのだ。これがまたジワジワと怖さを感じさせる。うまいなぁ、ポランスキー。