Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

11月のBGM

2014-11-30 | 音楽
2014年11月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■INNOCENCE/藍井エイル


アニメ「ソードアート・オンライン」(第1シリーズ)に今頃ハマってしまった。ライトノベルが原作と侮ることなかれ。ゲームの中に入り込んだ人々が"ゲームオーバー=現実の死"という極限の状況で、どう生きていくか、どう現実と戦うのかが描かれる。面白いのは、主人公たちは現実世界(リアル)でも何かと戦っているという二重構造。後半、別ゲームに舞台を移してから二重のサスペンスは、血の繋がらない剣道少女の妹(あだち充世代の僕らがキュン死しそうなキャラ・笑)の恋心もからんで、回を重ねるごとにハラハラ、ドキドキが増していく。これは面白い。2期のOPであるINNOCENCEの歌詞の切なさ、"隠してた感情が悲鳴をあげてる"が一層心に響く。

藍井エイル 『INNOCENCE(Music Video) Short Ver.』


■Erotica/Madonna


マドンナ離れしていた時代を取り戻そうと、ちょっと前に購入していた11枚組BOX(1983-2008)。最近アルバム「Erotica」を通勤中に流し聴きしているのだが、グルーヴ感と、歌ってるのかしゃべってるのか半端なヴォーカルがなんとも心地よい。変な写真集出してエロ路線全開になるマドンナをあの頃避けてたから、純粋に音楽を聴いてなかったんだな。ダンスミュージックって時代を感じがち。古さを感じないのは、僕の中のダンスミュージックのイメージがこの時代で止まってるのだろか。それはディスコ時代への憧憬?

Madonna - Deeper And Deeper (Video)


■Mu?Mu?Mu? Mannish Boys!!!/Mannish Boys


しばらく通勤BGMだったのは斉藤和義と中村達也のMANNISH BOYS。職場の斉藤和義信者女子から「しばらく持ってていいですからぁー!」とCDを渡されたもんで。ドラマ主題歌だったI am Dandyが、男心を勇気づけてくれる。四分打ちビートに弱いんだ、オレ。松本孝弘がラリー・カールトンと共演したり、布袋寅泰はジャズに興味示したりしてるけど、同い年の斉藤和義がこういうやんちゃなバンドやってるのは実に嬉しい。こういう音楽にワクワクしてるオレも、大人になれない大人のひとりw

MANNISH BOYS(斉藤和義×中村達也) - I am Dandy【MUSIC VIDEO(Short Ver.)】


■Bright Lights, Big City/original soundtrack


ストレスが溜まってくるとハードロック聴くこともあるけれど、僕は80年代ダンスミュージックを聴く頻度が確実に上がってくる。中でもお気に入りの一枚が映画「再会の街 ブライトライツ、ビッグシティ」サントラ盤。プリンス、ニューオーダー、ドナルド・フェイゲン、ブライアン・フェリー・・・ともう体がリズムを刻みたくってムズムズしちまう。収録曲はどれも好きなものばかりだけど、ナラダ・マイケル・ウォルデンのDivine Emotionsは特にお気に入りなのだ。

Narada Michael Walden Divine Emotions


■人生×僕=・Mighty Long Fall/ONE OK ROCK


中高生が聴くロックというなかれ。純粋にかっこいいと思えたら、それはかっこいいんすよ。目下、わたくしThe Beginningをカラオケで歌うのが目標(笑)。えー、無理とかいうなよぉ?。

ONE OK ROCK - The Beginning [Official Music Video]


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行きそで行かないところへ行こう

2014-11-22 | 読書
■「行きそで行かないところへ行こう」/大槻ケンヂ



大槻ケンちゃんとは同世代だけに、
彼の文章に引用される様々なネタにはいつも「そうーだよなぁ、ウンウン」とうなづいてしまう。
今回はタイトル通りに、行きそうで行かないところへ出かけていって思ったことを綴る企画。

尾道で大林映画の面影を追い、
日光江戸村で苦手を克服、
浅草ロック座で女性賛美、
カレー屋「Q」で感慨に浸る。

でも単なるお出かけルポではない。
惚れた女の子を勇気づける曲を書こう温泉宿に行って、現実から逃げてる自分に気づくエピソードは、
ケンちゃんの交友録として楽しいし、気弱だけど人に優しい彼の人柄が伝わってくる。
失踪したマネージャーと再会するエピソードには慈悲の心すら感ずる。
ストリップを見ながら女性の素晴らしさに涙する。
そんな彼の人柄こそが魅力。


"ストリップの退屈さはピンク・フロイドに似ている"には大笑い。
「Q」のゴールドカレー玉子入り、ちょっと食べてみたいよなぁ、というよりそのおじいちゃんの「・・・ですね」が聞いてみたい。
 


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黒蜥蜴

2014-11-18 | 映画(か行)

■「黒蜥蜴」(1968年・日本)

監督=深作欣二
主演=丸山明宏(美輪明宏) 木村功 川津祐介 松岡きっこ

 江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化、丸山明宏(美輪明宏)主演の舞台は好評を博した。本作はその映画化である。小倉の老舗映画館昭和館のサスペンス映画特集として1週間の上映。クエンティン・タランティーノ監督はあの「キル・ビル vol.1」で犯罪者たちを束ね、暗黒街に君臨するるオーレン・イシイのモデルとして、この黒蜥蜴をイメージしていたと聞く。しかもDVDはリリースされていない。もう行くしかないでしょ。

 秘密クラブにカメラが進んでいく冒頭から妖しく淫靡な雰囲気が漂う。ボディペイントしたようなお姉ちゃんたちがゴーゴーを踊り、客たちは肌も露わな女たちを抱きすくめる。そんな店の様子を二階席から見下ろしているのが、主人公である名探偵明智小五郎(木村功)。やがて店の女主人緑川(丸山明宏)が現れて歌い始めるオープニング。タイトルバックに映し出されるオーブリー・ビアズリーが描いた有名な「サロメ」の絵。もうこの数分間で妖しさはMAX。スクリーンのこちら側の僕らは、この異様な物語の結末を見るまでもう戻れないと覚悟を決める。

Black Lizard 1968


 やがて宝石商の令嬢早苗(松岡きっこ)を誘拐するという犯罪予告が届き、彼女を守るべく明智が選ばれる。予告時刻が迫る中、宝石商のお得意である緑川夫人が現れ、明智と一緒に犯行時刻まで一緒に過ごす。しかし、犯罪組織の首領黒蜥蜴であることを明智に見抜かれ、誘拐は失敗に終わってしまう。だがそれであきらめる黒蜥蜴ではなかった。再度早苗の誘拐に成功した彼女は、ダイヤモンド「エジプトの星」を要求。早苗の身に迫る危機・・・。90分足らずの映画なのに、起伏のあるストーリーが物足りなさを感じさせず、何よりも強烈なビジュアルに最後の最後まで圧倒される。そして何よりも、丸山明宏の魅力。女主人には見えないという意見があるのはわかるが、この強烈なキャラクターを他に誰が演じられるというのか。ホテルを脱出するのに男装したり、絢爛たる衣装をまとい、時に高笑い、時に泣き崩れ、様々な顔を見せてくれる。戯曲も彼のために三島由紀夫が書いたものだと聞くが、この映画も丸山明宏を観るための作品。劇中披露する黒蜥蜴の歌も印象的だ。

 人物の魅力だけでなく、この映画はディティールを見るのも面白い。江戸川乱歩作品らしく怪奇色が強いのも特徴だ。冒頭のクラブ内部の内装だけでなく、解剖用の死体が浮かぶプールから人間剥製の館まで次ぎに何が出てくるのか目が離せない。クライマックスの人間剥製の場面には、三島由紀夫が登場。三島と丸山の接吻はこの映画の見どころのひとつと言えるかも。また、部屋の様子を俯瞰で撮ったり、ガラステーブルを使ったり、カメラワークも面白い。巨大なトランクに閉じこめられた松岡きっこの裸をなめるように撮る視線は、この映画の中でも忘れたくない場面のひとつ。仰々しい台詞のひとつ、ひとつ。上映時間90分に大胆な表現の数々を詰め込んだ意欲的なカルト作。ツッコミどころも強引と思えるところもあるけれど、それも魅力。


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舞妓はレディ

2014-11-16 | 映画(ま行)

■「舞妓はレディ」(2014年・日本)

監督=周防正行
主演=上白石萌音 長谷川博己 富司純子 田畑智子 草刈民代

 ここのところ重たいテーマの作品が続いた周防監督。僕はそれらを全く観ていない。自分にとって周防監督のカラーはやっぱり「シコふんじゃった」であり、「shall we ダンス?」だ。これまでの殻を破る監督の姿勢を否定するものではないけれど、"らしい"作品をまた観たい・・・と思っていた。そこへこの「舞妓はレディ」だ。田舎娘が失敗を繰り返して舞妓になろうとする成長物語。しかもミュージカル仕立て。ストーリーとしては面白そう・・・と感じたがそれでもまだ映画館へ向かわせるのに物足りなかった。公開されてしばらく経って、この映画で作詞を担当したのが種ともこだと知る。誰とも違う楽曲のセンスと発想、アレンジの面白さ。学生時代にやってたバンドでコピーしたこともあり、現在でもずーっと大好きなアーティスト。種ちゃんが作詞なら聴いてみたい・・・それが僕の背中を押した。いざ映画館へ。

 舞妓になりたいと老舗のお茶屋にいきなりやって来た田舎娘春子。方言丸出しの彼女を女将は追い返そうとするが、言語学者京野の申し出で、春子が訛りを克服して舞妓になれるか賭けをすることになる。映画ファンならこのあたりでピンとくるはず。オードリー・ヘプバーン主演で映画化されたミュージカル「マイ・フェア・レディ」が物語のベースなのだ。ミュージカルなので、(半ば強引に)歌が挿入されるのだが、それは京ことばのレッスン場面でも同じ。オリジナルでは、イライザが発音を直すために"The rain in Spain stays mainly in the plain."を繰り返し言わされるのだが、「舞妓はレディ」でも"京都の雨はたいがい盆地に降る"とパロディが盛り込まれている。また「マイ・フェア・レディ」舞踏会シーンの印象的なドレスによく似た衣装も登場する。確かに楽しい。しかも「ファンシイダンス」ではお坊さん、「シコふんじゃった」では相撲と一般ピープルが簡単に想像できないライフスタイル、それも日本独自の文化を描いた点では初期の作品群に通ずる楽しさがある。さらに草刈民代が、女将役富司純子の当たり役緋牡丹お竜を彷彿とさせる場面もあり映画ファンをクスリとさせる。

 キャスティングの巧さもこの映画の魅力。主役を射止めた上白石萌音が、ストーリーが進むにつれて堂々とした姿になっていくのがとにかく観ていて爽快。また先輩舞妓役の田畑智子が、ここでもまたいい仕事をする。京都出身というアドバンテージもあるだろうが、人手不足から"年増の舞妓"という微妙な立ち位置である不本意さが、ちょっとキツい表情からひしひしと伝わってくる。期待した種ちゃんの作詞も遊び心にあふれていて、いい仕事だった。サントラで聴き直すのもいいかな。

 惜しむところは、ミュージカル場面にもう少し和テイストが欲しかったところ・・・と、観終わった直後に思った。しかし、京都のこの奥深い世界を2時間の映画で楽しく語り尽くすことが難しいのと同じように、海外配給のために媚びた演出にする目的でもない限り、ミュージカル場面まで過剰な和テイストに徹する必要はなかったのかな、とも思える。たとえこの映画で描かれた花街の世界が、見る人から見れば表面的なものだったとしても、その楽しさを垣間見るだけでなにが悪い。そもそも"いちげんさん"お断りの世界。それを映画でちょっと見せてくれるだけありがたいもんだ。そういう意味では既に「舞妓Haaaan!!」という先行する作品がある。されど、あれは男性目線がどうしても中心で女性を争奪するバトルをおもしろ可笑しく撮った映画だ(それはそれで面白かったが)。女性目線で「舞妓Haaaan!!」を見れば、芸子とか舞妓という枠に女性をはめて有り難がっている男のエゴが嫌みに感じられるかもしれない。「舞妓はレディ」は、花街の内側にちょっとだけ踏み込んで、僕ら観客を日常と違うところに連れて行ってくれる素敵な映画だ。そしてそれは、周防監督だからできる幸せな結末のように思えてならない。

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