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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ダンケルク

2018-03-16 | 映画(た行)

■「ダンケルク/Dunkirk」(2017年・イギリス=アメリカ=フランス)

監督=クリストファー・ノーラン
主演=フィオン・ホワイトヘッド トム・グリン・カーニー ジャック・ロウデン ハリー・スタイルズ ケネス・ブラナー

クリストファー・ノーラン監督の作品には毎度驚かされる。独創的な発想とちょっと知性的なこだわりがいつも素敵だ。一方、インテリ臭くてわかりにくいから嫌い、という映画ファンもいるだろうが。時系列を逆走する出世作「メメント」や夢の多重構造「インセプション」。ハリウッドヒーローをストイックにしてしまった「バットマン」三部作。どれも既成のハリウッド映画のフォーマットをぶっ壊してきた。そんな彼が戦争映画を撮る・・・どんなだろう?と想像ができなかった。

結論。戦争映画なのに、ノーラン監督はステレオタイプの戦場を描く気が全くない。苦戦を強いられたダンケルクの史実はきちんと追いつつも、映画の視点はどこか客観視している。海岸で戦闘機の攻撃に右往左往する兵士達の脱出劇は、緊迫感はあるのだが、何故だろう「プライベート・ライアン」で感じた身が縮むような映像体験とは違う。映画の冒頭で主人公たちは無人の町を逃げ惑う姿は、迷宮に迷い込んだダークファンタジーみたい。海岸に追い詰められた多くの兵士たちは助けの船が来るまで並ぶだけの群衆に過ぎない。2機の戦闘機にしても群れから外れた存在。敵機とのドッグファイトも短く、いちばんハラハラさせられるのは燃料の残量だったりする。船の中に隠れた主人公たちが危機に陥る場面にしても、大スケールの戦争映画とは思えない小さな空間が舞台。うーん、どうも居心地が悪い。僕らがイメージする、敵と味方が対峙する戦場はほぼ出てこないのだ。でも姿が見えない敵と戦うのはとんでもない恐怖。この映画がIMAXシアター向けに製作されたのは、観客を主人公の近くに置いて体感させる為なのだ。うーん。計算尽くってことか。

そして時系列をぶち壊すが好きなノーラン監督は、ここでもそれをやらかす。戦闘機側のエピソードと、海岸の兵士たちの脱出劇はラストでこそ重なるのだが、決して同時進行しない。戦争映画を観る側は、登場人物がどうなるかだけでなく、作戦がうまくいくのか、戦果はあるのかを主人公の上官並みに気にしているはずだ。しかし、ノーラン監督は戦争映画なのに、わかりやすく戦況を時系列に描く気は全くないのだ。

もしかしたら、ノーラン監督は戦争映画に英雄はいらないと言っているのかな、とも思えた。兵士たちは、敵とではなく恐怖やどうしようもない状況と戦っているのだ。不時着した戦闘機からの脱出シーンは、ヒッチコックの「海外特派員」へのオマージュ。

映画『ダンケルク』日本版予告編 1




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