Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

3月のBGM

2013-03-31 | 音楽
2013年3月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■Let It Be/The Beatles
名盤と呼ばれるものを久々に聴いてみるかぁーという気になった今月。迷わずCD棚から手にしたのは「Let It Be」。初めてピアノで弾き語りした曲が思えばLet It Beだった。レコーディングの様子を撮った記録映画を、かつて大分のシネマ5で観られたのは貴重な機会だったな。高校時代にアルバム全曲を初めてきちんと聴いた。メンバーの不和があった時期の作品だけど、そうした背景を知ることでビートルズ楽曲は響きが変わってきこえるから不思議。でもそれはクラシックだろうが、ロックだろうが同じ。知識を深めることが曲の理解を深めることになるのだ。
Let It Be

■Yumi Arai The Concert With Old Friends/荒井由美
ユーミンが1996年に荒井由美名義でリリースしたライブ盤。リアルタイムじゃないけれど、不思議と合わせて歌えてしまうし、懐かしくきこえるのは曲が時代を超えているから。むかしと比べたらだみ声になってる感はあるけれど、楽曲の輝きは不変のもの。Cobalt Hour、12月の雨、あの日にかえりたい・・・いい曲ばっかり。
Yumi Arai The Concert with Old Friends [DVD]

■放課後ティータイムll/放課後ティータイム
放送終了後も人気が衰えない「けいおん!」。わが家では今、レイア姫(12歳)が真剣にみている。数ある楽曲の中でも「私の恋はホッチキス」が好きだという。以前に中古盤で入手していた「放課後ティータイムll」をレイアがよく聴いている。最近「けいおん!」を話題に友達ができたらしい。「けいおん!」は世界をつなぐ。そういえば、僕の職場の「けいおん!」ファンが次々に異動でいなくなることになるそう・・・わが課のアニメファン、一気に少数派(汗)。
TVアニメ「けいおん! ! 」劇中歌集 放課後ティータイム II(通常盤)

■I Was Born To Love You/Freddie Mercury
NHKのBSプレミアムで放送された「日本人の愛する洋楽アーティスト50」。堂々の1位はQueenだった。70年代ロック(特にプログレ大健闘!)満載、80年代もきっちり。でも90年代以降のアーティストでランクインしたのは、オアシス、ニルヴァーナ、ガガ、ビヨンセだけで、洋楽離れを感じもした。投票した年齢層に偏りがなかったことが感じられるいい番組だった。フレディのソロワークスをまとめた2枚組+1ボックスを月末は聴いてた。Queenがカヴァーしたフレディのソロ作、I Was Born To Love You。オリジナル版の80年代らしいピコピコしたサウンドが妙に懐かしい。
ベスト・オブ・フレディ・マーキュリー / SOLO

■The Collection(若き緑の日々)/Simon & Garfunkel
サイモン&ガーファンクルは高校時代に夢中になった。だから持っている全アルバムはすべてレコード。CDで持ってるのは、ビージーズに似合いそうな邦題のこのベスト盤だけ。長男ルーク(中2)の友人が遊びに来て、うちに忘れていったiPod。ルークが搭載されている曲を見ると、ポール・サイモンや70年代の洋楽が満載だった。聞くところによると、彼はポール・サイモンを崇拝していて"I Am A Rock"を口ずさんでいるんだとか。中2なのに、すげっ。今度うちに来たら、冬の散歩道のイントロでも弾かせてみるかw。
若き緑の日々

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第七の封印

2013-03-30 | 映画(た行)

■「第七の封印/Det Sjunde Inseglet」(1956年・スウェーデン)

●1957年カンヌ映画祭 審査員特別賞

監督=イングマル・ベルイマン
主演=マックス・フォン・シドー グンナール・ビョルンストランド

 キリスト教の知識が乏しいために深読みすることはできないが、映像美と独特な物語の進行には魅了された。まず印象に強く残るのは死神とチェスを始める冒頭。十字軍帰りの騎士を死神が迎えに来る。騎士は、死を迎えるまでに知りたい事がまだいくつもある、チェスの勝負の間猶予して欲しいと言う。この騎士を演ずるのがマックス・フォン・シドー。後に「エクソシスト」で悪魔と対決する神父を演ずる人だけに、”死神と勝負”ときくと映画ファンとしては勝手につながりを感じてしまう。

 全編を通じて漂うのは”死”のイメージ。ペストが流行している地域から逃れて旅をする主人公たち、悪魔に取り憑かれたとして処刑される女性、葬列のようなペスト患者の一団。主人公の騎士は神について知りたいと教会で語るが、その話を聞いているのが死神だったりして、彼の問いかけに神は沈黙するのみである。そして旅芸人を除く7人は死神に踊らされ、連れられていく。何とも言えない無常感が残る。この映画を言葉で語るのは難しい。でも強烈に心に残る魅力がある。

(2002年筆)

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ノー・マンズ・ランド

2013-03-29 | 映画(な行)

■「ノー・マンズ・ランド/No Man's Land」(2001年・仏=伊=ベルギー=英=スロヴェニア)

●2002年アカデミー賞 外国語映画賞
●2002年ゴールデングローブ賞 外国映画賞
●2001年カンヌ映画祭 脚本賞
●2001年ヨーロッパ映画賞 脚本賞

監督=ダニス・タノヴィッチ
主演=フランコ・ジュリッチ レネ・ビトラヤツ フィリプ・ショバゴビッチ

 見終わって言葉を失った。戦争とは何と空しいものなのだろう。この映画は、他の戦争映画とは全く違う。激しい戦闘場面も、横たわる屍を示して反戦を声高に訴えたフィルムはたくさんあるけれど、この映画にはそれもない。紛争中のボスニアとセビリアの中間地帯、ノー・マンズ・ランドと呼ばれる地域に取り残された3人のギリギリの様子をカメラは追っていき、彼らを救おうとする国連防護軍、スクープを追いかけるマスコミも絡めて、映画は時にコメディタッチに、時にシリアスに描いていく。そして落差の激しい空虚なラストシーン。カンヌの脚本賞を受賞しただけに、見事なストーリー・テリングを見せる。

 三人の兵士は塹壕に取り残され、不安とエゴと親しみ、憎しみが交錯する。銃を突きつけて「この戦争はお前の国が悪い!」とののしる。そして銃口を向けられた方が「オレの国が悪い」と答えさせられる。無益だ。国家間で銃を向け合う戦争も同じようなものかもしれない。でもそうせずにはいられない。互いに共通の知人がいたことから心の交流が生まれかかるが、次の瞬間には「今度合うときは照準器の中だ!」と突き放される。戦争さえなければ案外いいヤツかもしれない。戦争さえなければ・・・・。

三人を救おうにも救えない国連防護軍の面々。権限のあるなしで指示が乱れる上層部。現場の軍曹はマスコミを利用して上層部を動かそうとする。テレビを見て慌ててヘリを飛ばす上官の姿はおかしい。けれど、政府の重要人物から「TVの報道で事態を知りました」との言葉が平気で飛び出すような我が国。人のことは笑えないだろう。

「何もしないのは紛争に荷担しているのと同じ」この台詞がやたら耳に残る。これは国連防護軍の立場を言い表しているのだけれど、同時に観客にも訴えかける。”平和”について考えることで、戦争を止めることはできないのだろうか。言っておきたい。それには、まずこの映画を観ることだ。そして心に感じたことをどんどん周囲の人々に語って欲しい。映画のメッセージは人の心を動かす。世界を変えることだってできるかもしれない。

(2002年筆)



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うる星やつら オンリー・ユー - 80's Movie Hits! -

2013-03-28 | 80's Movie Hits !
- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■I, I, You & 愛/小林泉美
from「うる星やつら オンリー・ユー」(1983年・日)

監督=押井守
声の出演=平野文 古川登志夫 神谷明 榊原良子

 僕が高校時代に夢中になったアニメの筆頭は、何と言っても「うる星」だった。僕はそもそも「少年サンデー」派だったので、原作は最初から読んでいる。TVシリーズは、僕が住んでいた地域での放送時間はなんと5時30分から!。民放2局の悲しさ故(僕らは文化的僻地とさえ呼んでいた)のことで、毎週ビデオに録画しては懸命に見ていた。友人にはVHSの”標準”で録画し続けたヤツもいて、うちの母親は「男子高校生がラムちゃーん!とかマンガに夢中になって(笑)」と呆れていたもんだ。初期TVシリーズは、今やジェームズ・キャメロンも注目する映像作家となった押井守監督、脚本は伊藤和典氏が手がけており、見応えのあるエピソードも数多かった。僕らの間で最も評判となったのは、初期の傑作エピソード「君去りし後」だった。これを見てファンになったのもいるくらい。

 そんな「うる星」の劇場版第1作は「うる星やつら オンリー・ユー」だった。子供の頃諸星あたると婚約をしたと主張する美人の異星人エルが地球にやってくる。目的はもちろん、あたるとの結婚。定石通りにあたるはそっちにフラフラするのだが、ある秘密を目にして逃げようとする。当然ラムは後を追うこととなり、三角関係が織りなすドタバタ劇が進行、TVとは違う大スケールの物語が展開する。音楽担当はTVシリーズの主題歌も手がける小林”MIMI”泉美。高校時代に米軍キャンプでソウルやファンクを演奏し、高校卒業後にスタジオ・ミュージシャンとなる。じきにソロアルバムをリリース、高中正義や松任谷由実らのセッションにも参加した。「うる星」のヒットで一躍注目された後、日本での音楽活動に満足できず、ヨーロッパへ。現在はプロデューサー、日本の若手ミュージシャンとヨーロッパの橋渡し的な仕事をしているそうだ。「オンリー・ユー」ではエンドクレジットで流れる主題歌 I, I, You & 愛 を歌っている。

 この他に「オンリー・ユー」では3曲の挿入歌がある。ひとつはラム役の声優平野文が歌う ラムのバラード。あたるを連れ去ったエルを追う機体が爆発し、間一髪カプセルで逃れたラムが宇宙空間を漂うシーンにかぶさる印象的なバラード。そしてエルとあたるの婚約?の原因となる影ふみの場面に流れるのが、影ふみのワルツ だ。2曲ともサントラのLPには未収録だった。3曲目はTVのエンディングでも使用された 星空サイクリング。他に、BGMとして流れるインストロメンタルは小林泉美とアレンジャーとして参加していた安西史孝氏の作。今ではビンテージとなっているシンセ類(フェアライト、ジュピター8、プロフェット5等)が使われ、この頃のテクノやコンピュータミュージックが好きな人には飽きることない面白いサントラである。安西氏のWPによると原作者高橋留美子先生の声をサンプリングしている曲もあるとか。

※小林泉美関連の曲が聴ける主な映画
1980年・「翔んだカップル」 = 音楽担当
1980年・「がんばれ!!タブチくん!!あゝつっぱり人生」 = 音楽担当
1983年・「うる星やつら オンリー・ユー」 = ♪I, I, You & 愛(小林泉美)他 音楽担当
1984年・「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」 = ♪ラメ色ドリーム(小林泉美)

※小林泉美が手がけたTVアニメの楽曲
「うる星やつら」
♪ラムのラブソング(松谷祐子)
♪宇宙は大ヘンだ!(松谷祐子)
♪心細いな(ヘレン笹野)
♪Dancing Star(小林泉美)
♪夢はLove Me More(小林泉美)
「さすがの猿飛」
♪恋の呪文はスキトキメキトキス(伊藤さやか)
♪恋のB級アクション(伊藤さやか)
「GU-GUガンモ」
♪ケッキョク・ガンモ(杉山佳寿子)
♪キュンと涙(高橋美紀)
「ストップ!!ひばりくん!」
♪ストップ!!ひばりくん!(雪野ユキ)


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至福のとき

2013-03-27 | 映画(さ行)

■「至福のとき/幸福時光(Happy Times)」(2002年・中国)

監督=チャン・イーモウ
出演=チャオ・ベンシャン ドン・ジエ

 思えば銀幕を通して観る中国は時代的に少し前のものか、さらに時代がかったものかが多い。僕が多くを観ていないせいもあるだろうが、「フル・モンティ」みたいに操業停止の工場や失業者が出てきたり、ハーゲンダッツが売られている中国を映画で観るのは初めてだ。テレビのドキュメンタリーなんかでは上海の繁栄ぶりなんかはよく放送されているけど、ここで描かれているような中国はお目にかかったことがなかった。

 まぁそれはさておき、これは盲目の少女との出会いによって人間性を回復する中年男の物語である。ある女性と結婚せんがためにその少女の就職を引き受けた男。彼は自分をよくみせるために、自分は旅館の経営者だと嘘をつき続ける。だが物語の後半、盲目の少女を元気づけるためにつき続けた嘘はいつしか親子の関係にも似た愛情に変わっていく。「あんたは本当の事を言ったことがない」とののしられた後、男は少女に読んで聞かせる為に”彼女の父親から”とする手紙を書く。本当は父親からの手紙には娘のことなど触れていないのに。それは嘘が真の愛情となった瞬間だった。が、それは彼女の耳に届かない・・・その切なさはグッとくるところだ。でもラストはちょっとなぁ、感動はさせるけど「この先どうなるの?」という心配ばかりが心に残って・・・僕にとって至福の2時間とはちと言い難かった。でもドン・ジエの笑顔には救われる。

(2003年筆)

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戦場のピアニスト

2013-03-26 | 映画(さ行)

■「戦場のピアニスト/The Pianist」(2002年・ポーランド=フランス)

●2002年カンヌ映画祭 パルムドール
●2003年アカデミー賞 監督賞・主演男優賞・脚色賞
●2003年英国アカデミー賞 作品賞・監督賞

監督=ロマン・ポランスキー
主演=エイドリアン・ブロディ トーマス・クレッチマン フランク・フィンレイ

 ホロコーストものにもいろんなフィルムがあったが、これはその迫害と戦火の中を生き抜いたある男の現実。ロマン・ポランスキー監督は実際にゲットーで生活していた経験がある。それだけに街角に転がる死体の様子、路上にこぼれた食べ物をすする男、その中の人間模様といったゲットーの日常が冷静な目で描かれている。

 淡々としたその語り口に、映画としての感動が薄いと感じる人もいるだろう。実話の映画化だとか、ポランスキーにホロコーストの実体験がある、といった映画以外の面で感動させる映画とも言える。だがクライマックスで出てくる廃墟の町に一人たたずむ場面(左のチラシ)の圧倒的なイメージは、多くを声高に語らずとも戦争の空しさを物語っているではないか。映画の中でも最も視覚に残る場面だった。それって映画にしかできない表現ではなかろうか。

 著名なピアニストだったから迫害の渦中から離れた場所で、人を頼って生き延びられた。他の人ならばこうはいかない。確かにそうだ。だが、生きていくことこそが困難な中で生き延びたことはやはりすごいと思う。生きることの尊さ、それを感じて欲しいな。この映画を物足りないと感じた人は、何か生き延びることへの理由とか目標めいたものを、ハッキリ描いて欲しかったんじゃないかな。「愛する人のために・・・」だの「生き延びてまた僕のピアノを聴かせたい・・・」といったことがね。でも生きるってそれ以上に大事なこと。そこまで演出してたら、きっとこの映画は嘘くさい話になっていただろう。

 僕が唯一気に入らないのは邦題。「戦場」って、敵味方相対して銃弾ドンパチ飛び交う激戦地をイメージさせるものではない?。むしろワルシャワを出ることのなかった主人公にちなんで、例えば「ワルソーのピアニスト」なんてどうだろう?。フランスの歌手、故ジルベール・ベコーの名曲と同じタイトル。そう言えばこの歌にも反戦の思いが込められている。

(2003年筆)

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ターミナル

2013-03-25 | 映画(た行)

■「ターミナル/The Terminal」(2004年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=トム・ハンクス キャサリン・ゼダ・ジョーンズ

 うーん、やっぱりスピルバーグの映画だなぁ。もちろん2時間バッチリ楽しめるし、役者もうまいし、ジョン・ウィリアムスの音楽も期待通りの出来。ニューヨークにやってきたクラコウジア(という架空の国)のヴィクターは、空港に降り立つ直前に自国でクーデターが発生したことからパスポートが無効になり、到着ロビーに足止めを食らってしまう。外に出ることもできないし、頼る人もいない。そんな中で生きる術を見いだし仲間を増やしていく主人公の懸命さは感動ものなのだ。約束を果たしに空港を出ようとするヴィクターを、多くの人が応援するクライマックスは、なかなか感動させられる。

 スピルバーグ作品で劇伴以外のストーリー面で音楽が印象的な映画って、実はあまりない。敢えて挙げればプラターズの♪Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)を上手に使った「オールウェイズ」や、クインシー・ジョーンズを起用した「カラー・パープル」くらいなもので、他の映画ではひたすらジョン・ウィリアムズのダイナミックなスコアが全面に出ている。「ターミナル」ではジャズが重要な要素となっている。ラストの「サインは演奏の後で」の場面、本当に音楽を愛する人にはグッとくるはずだ。「プライベート・ライアン」みたいに大上段に振りかぶった大きなテーマを持つ作品ではなかなかお目にかかれない場面だ。スピルバーグのフィルモグラフィーの中ではやや小品(といっても飛行場をセットで建てるくらいだから大作なのかもしれないけど)。されどそうした作品にこそ、スピルバーグの愛がにじみ出している気がするのだ。噴水を造って彼女を待つ場面は、日頃のスピルバーグ映画では見られないいつもと違うワクワクが待っている。この辺りもフィルモグラフィー唯一の恋愛映画である「オールウェイズ」に通ずるところかも。

 でもねぇ、これはやっぱりファンタジーなんだ。空港から出られない人間というシチュエーションを作り出すための設定もそうだ。案内表示にも出てくるから、クラコウジアには直行便が出るようなんだけど、ケネディ国際空港に直行便があるような国ならば、同じ目に遭うのはヴィクター一人であるはずがないじゃない。まずこの段階で無理あるゾ・・・と思ってしまう。スピルバーグは女優を見る目がない、と常々言われているのだけど本作も然り。キャサリン・ゼダ・ジョーンズが寂しい30代スッチー役だなんて納得いかんと思うのだ。高飛車で人を見下す位の役柄が似合う女優だもんね。どうもいつもの魅力は感じられない。一方でトム・ハンクスは「キャスト・アウェイ」の空港版みたいなもので(いいすぎ?)、あぁまた困難に陥ったのねと観客の期待する姿。80年代組である僕には昔のコミカルな彼が戻った気がしてちょっと嬉しかったりもする。現実味には乏しい。けれど人生がうまくいくかどうかって、結局は物事のタイミングだからやっぱり待つしかない。だからこそ、今を懸命に頑張っている人々に対する応援歌のような映画なんだよ、きっと。

(2004年筆)

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ワーキングガール - 80's Movie Hits ! -

2013-03-24 | 80's Movie Hits !
- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■Let The River Run/Carly Simon
from「ワーキング・ガール/Working Girl」(1988年・アメリカ)

監督=マイク・ニコルズ
主演=メラニー・グリフィス ハリソン・フォード シガニー・ウィーバー

 メラニー・グリフィス扮する主人公テスは証券会社で働く秘書。社内での成功を望んでいるが、学歴がないために出世どころかアイディアを実現することすら難しい。同年代の女性上司(シガニー・ウィーバー)が彼女のアイディアを盗用しようとしたので、上司の入院中に自ら行動して企画を実現させ、恋と成功とを勝ち取るというサクセス・ストーリー。アメリカは実力社会のイメージを持つ人もあるだろうが、やはり学歴で扱いに差があるのはどこも同じ。「カクテル」でも高卒のトム・クルーズは就職に苦労していたよね。

 この映画のメラニー・グリフィスは輝いている。当時の大物スタア、ハリソン・フォードやシガニー・ウィ-バーとの共演だけど、決して印象は薄くない。彼女自身の出世作となったのも納得できる。働く女性に限らずこの映画から元気をもらった人も多いと思うのね。見終わった後の爽快感には本当に勇気づけられる。恋人アレック・ボールドウィン、ド派手な同僚ジョーン・キューザック("coffee?, tea?, me?"は印象に残るよね)、脇役にはケビン・スペイシーも出演している。「愛は霧のかなたに」に出演しているシガニー・ウィーバーが、オフィスにゴリラのぬいぐるみを置くのはご愛敬。

 カーリー・サイモンは映画音楽にかかわることが多く、本作では全体のスコアも担当している。60年代にサイモン・シスターズという姉妹デュオでデビューし、ボブ・ディランのマネージャー氏の手でソロデビュー。72年のグラミー賞で最優秀新人賞を獲得している。Let The River Run は映画冒頭、通勤で混み合うニューヨークの風景に重なり、タムで刻まれるリズムが気分を高揚させてくれる。オスカーも獲得した名曲。数年前にビールのCFでも使われていた。日本人にとっては高島政伸のドラマ「HOTEL」の主題歌(邦題はステップ・バイ・ステップ)という方がおそらくピンとくることだろう。ミュージカルでも活躍する島田歌穂によるカバーなのだが、同ドラマでは他にもクリス・デ・バーの名曲 Lady In Red (この映画でも使われている)や セリーヌ・ディオンの Where Does My Heart Beat Now 等洋楽カバーが多数使われている。80年代って洋楽が親しみやすかった時代だったなぁと改めて思う。

Let The River Run - Carly Simon


※Carly Simonの曲が流れる80年代の主な映画
1977年・「007/私を愛したスパイ」 = ♪Nobody Does It Better
1982年・「ラブ・チャイルド」
1984年・「スイング・シフト」 = ♪Someone Waits For You
1985年・「マドンナのスーザンを探して」 = ♪You Belong To Me
1985年・「コードネームはファルコン」 = ♪You're So Vain
1986年・「心みだれて」 = ♪Coming Around Again
1986年・「ベスト・キッド2」 = ♪Two Looking At One
1986年・「恋のじゃま者」 = ♪If It Wasn't Love
1988年・「ワーキング・ガール」 = ♪Let The River Run 他(音楽担当)


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-80's Movie Hits ! - 目次

2013-03-23 | 目次
80年代の映画主題歌 ちょっと流れてた挿入歌も含めて、とにかく”歌もの”にこだわった映画主題歌特集なのである。

↓80年代を振り返ってみよう
back to 80's

■80's 定番サントラ集
 「フラッシュダンス」 (1983)
80年代を代表する大ヒット作。本編で流れた順に全曲解説を試みる。
 「愛と青春の旅立ち」(1982)
FMラジオで僕のリクエストカードが初めて読まれたとき、リクエストしたのはこの曲だった。
 「ブルースブラザース」(1980)
ブルースは絆だぜ、ベイビー。
 「ビバリーヒルズ・コップ」(1984)
映画冒頭で流れたあの曲のイントロに、心が躍った。
 「フットルース」(1984)(その1)
80年代を代表するサントラ。 ケニー・ロギンス/サミー・ヘイガー篇
 「フットルース」(1984)(その2)
デニース・ウィリアムズ/シャラマー篇
 「フットルース」(1984)(その3)
ムーヴィング・ピクチャーズ/クワイエット・ライオット篇
 「フットルース」(1984)(その4)
日本では熱血ドラマの主題歌でもある。ボニー・タイラー篇
 「プリティ・イン・ピンク」(1986)
80年代を代表する青春映画。本編で流れた順に楽曲を解説。
10 「トップガン」(1986)(その1)
お待たせしました。まずはTop Gun AnthemとDanger Zone篇。
11 「トップガン」(1986)(その2)
「歌手では食べていけないわよ」ティーナ・マリー/ライチャス・ブラザーズ篇



■映画主題歌メガヒット集
 「カリブの熱い夜」(1984)
銀幕から漂った熱気とフィル・コリンズの主題歌を忘れない。
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)
言わずと知れた大ヒット作。すべては愛の力さ。
 「007/美しき獲物たち」(1985)
「007」映画とニューロマンティックの幸福な純英国産コラボ。
 「ホワイトナイツ 白夜」(1985)
音楽にこだわりがあるテイラー・ハックフォード監督作。
 「ステイン・アライブ」(1983)
ビージーズには申し訳ない。
 「ネバーエンディング・ストーリー」(1984)
この曲の輝きは時代も超える。
 「グーニーズ」(1985)
シンディ姉さんのゴキゲン(死語)ポップス。
 「ゴーストバスターズ」(1984)
レイ・パーカーJr.はこれしか知らないって!?失礼なっ。
 「ロッキー4 炎の友情」(1985)
虎の目を取り戻せ!
10「007/リビング・デイライツ」(1987)
ノルウェーからやってきた3人組による007主題歌 一発屋なんて言わせない
11「ブレックファスト・クラブ」(1985)
今も根強い人気作品の主題歌はシンプルマインズのNo.1ヒット



■Rock / Pop Starの映画音楽
 「ジャズ・シンガー」(1980)
ニール・ダイアモンドの独壇場。名曲の嵐。
 「キャットピープル」(1981)
デビッド・ボウイとジョルジオ・モロダーの見事なコラボレーション。
 「パープル・レイン」(1984)
プリンス殿下の長編MTV映画。でもカッコいいのよ。
 「バットマン」(1989)
あの頃、謎めいたプリンス殿下はまさにブルース・ウェインそのものだった。
 「ワーキングガール」(1988)
カーリー・サイモンの感動的な歌声。
 「メトロポリス」(1926 / 1984)
ジョルジオ・モロダーが古典的SFにロックをかぶせた異色作
 「再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ」(1988)
ドナルド・フェイゲンが映画音楽を担当した異色作
 「ザナドゥ」(1980)
ELOとオリビア・ニュートン・ジョンの素敵なコラボレーション
 「砂の惑星」(1984)
TOTOが音楽担当した異色SF大作



■80's銀幕アイドル集
 「Wの悲劇」(1985)
薬師丸ひろ子★私、女優なんだから!
 「恋する女たち」(1986)「さよならの女たち」(1987)
斉藤由貴★これぞ80年代青春映画。
 「ぼくらの七日間戦争」(1988)
宮沢りえ★リハウスしてきました。
 「怪盗ルビイ」(1988)
小泉今日子★ダイアモンドのような和製ハリウッド映画
 「リトル・ロマンス」(1979)
ダイアン・レイン★CMで流れたあの曲はダイアンの笑顔とともに覚えてる。
 「スケバン刑事」(1987)
南野陽子★おまんら、ゆるさんぜよ
 「さよならジョージア」(1981)
クリスティ・マクニコル★80年代前半活躍したボーイッシュなアイドル女優
 「時をかける少女」(1983)
原田知世★知世は未来へいきます




■More!
 「テキーラ・サンライズ」(1988)
リチャード・マークス作の傑作バラード。
 「幻魔大戦」(1983)
キース・エマーソン大先生と角川アニメの感動的な出会い。
 「アメリカ物語」(1986)
スピルバーグがディズニーぶりっ子してみました。
 「うる星やつら オンリー・ユー」(1983)
ラムちゃんに恋した僕ら。心は友引高校の学生だったよ。
 「初体験リッジモント・ハイ」(1982)
真っ赤なビキニともに忘れられない音楽たち。
 「エンドレス・ラブ」(1981)
映画主題歌から生まれたデュエットの名曲。
 「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」(1984)
リン・ミンメイの歌声に恋をした。 
 「ダーティハリー5」(1988)
マグナム左右衛門とガンズ・アンド・ローゼス
 「パロディ放送局U.H.F」(1989)
替え歌のキング、アル・ヤンコビック主演のカルト的人気のコメディ
10「ナイルの宝石」(1985)
ライブエイドではカラオケで歌ったタフガイ、ビリー・オーシャンのごきげんポップチューン
11「ランボー」(1982)
ランボーの勇姿とともに心に焼き付く哀愁漂う主題歌
12「青い恋人たち」(1982)
美しき恋の三角関係の映画で流れたのは究極のラブバラード
13「恋人たちの予感」(1989)
男と女の究極テーマをジャズをバックに考える名作ラブコメ
14「ゴールデン・チャイルド」(1986)
世界最高の男を称える歌はアン・ウィルソン姐御のパワフルな歌声が似合う


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ダイ・アナザー・デイ

2013-03-23 | 映画(た行)

■「ダイ・アナザー・デイ/Die Another Day」(2002年・イギリス=アメリカ)

監督=リー・タマホリ
主演=ピアース・ブロスナン ハル・ベリー トビー・グレーブス

 シリーズ第20作にして40周年。記念作だからかどうかは別にしても、とにかくド派手な印象の最新作。近頃はサイケな衣装のおバカなスパイ映画やらスキンヘッド暴力男のスパイ映画が本家の「007」をしっかり意識しているだけに、そんな若い世代にも楽しんでもらおうという狙いだろう、オープニングから激しい活劇が展開される。拘禁されたボンドがいたぶられる場面をタイトルバックに使うなんて、今までにない趣向。せっかく主題歌がマドンナなんだから、シーナ・イーストンみたいに全面に出しちゃえばよかったのに・・・。しかしそっからはボンドが汚名返上の大活躍をみせる。

 全作品見続けている僕らのような従来のファンは、どうしても「007」見るとディティールに目がいくんだよね。例えばQの部屋にあった今までの”お道具”の数々。「サンダーボール作戦」とか懐かしいよね。ボンドカーも英国産に戻ってアストンマーチンだし、マネーペニーのボンドへの恋心も描かれているし、さらには過去の作品へのオマージュの数々・・・あぁ楽しい。監督にしてもイギリス連邦から選出、ニュージーランド出身のタマホリ監督だもんね(大島渚の助監督経験あり)。

 タイムリーに北朝鮮が舞台となるけれど、”謎の多い国”として題材にしただけ。冷戦終結後のボンドシリーズの悪役は、あくまでも”個人”(本作では西洋文化かぶれの北朝鮮軍人)で、本作でもその流れは変わっていない。この映画について北朝鮮がアメリカにクレームつけてきた話は既に聞いていたけど、アメリカは出資しているだけだからねぇ。この扱いがひどいというなら、「リーサル・ウェポン2」の南アフリカの方がよっぽどひどい扱いだと思うけど。でも政治的な面をうやむやにしてきた最近のボンド作品よりは、よりスリリングでスパイ映画らしいと僕は思うのだが。

 お約束の綺麗どころでは、ハル・ベリー扮する米国諜報員ジンクスの活躍がやはり見どころ。ベッドシーンも今までになく激しいし、アクションをこなすボンドガールは久しぶり(例えばミシェル・ヨー)。昔は高いところにぶら下がって「ポパイ」のオリーブみたいに"Help Me~!"と叫んでるボンドガールが多かっただけに(例えばタニア・ロバーツ)、時代とともに女は強くなっている。ロザムンド・パイクもクールでよかった。二枚目の看板ボンドガールは添え物的扱いが多かった(例えばデニス・リチャーズやキャロライン・マンロー)けれど、今回は非常に重要な役どころ。ラストの女同士の戦いは、飛行機の中だから揺れるのはわかるんだけど、タマホリ監督揺らしすぎ!(笑)。ボンドとグスタフの格闘の方が画面の細部まで楽しめるのに、せっかくの美女がもったいなーい。

(2003年筆)

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