Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

5月のBGM

2015-05-31 | 音楽
2015年5月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■Cornerstones 2/佐藤竹善
世間はカヴァーアルバム大流行。これは日本のポピュラー音楽界が成熟してきたことの証でもあるので歓迎すべきことだし、いい曲が語り継がれるのはいいことだ。しかし、およそその人に似つかわしくないカヴァー曲が出回っているのも現実。

そんな中で、Sing Like Talkingの佐藤竹善はソロ作品でカヴァーを数多くやっているのだが、洋楽カヴァーでも邦楽カヴァーでもどうしてこんなにピッタリなんだ?と思える程にしっくりくる。カヴァー作品のシリーズCornerstones第2作では、Alan Parson's ProjectのEye In The Sky、Electric Light OrchestraのLast Train To London(ロンドン行き最終列車)、Eric ClaptonのChange The World。オフコースの生まれ来る子供たちのために、安全地帯のワインレッドの心などを取りあげている。

選曲の巧さもあるけれど、およそ日本人向けとは思えない楽曲がピタリとハマるのは聴いていて快感。もちろんオリジナル作品もいいんですけど。彼の歌声で鈴木雅之の「ガラス越しに消えた夏」を聴いてみたい。
CORNERSTONES2

佐藤竹善 - 生まれ来る子供たちのために


■Relax In The City/Pick Me Up/Perfume
今月前半、通勤BGMだったPerfumeの新譜。最近のシングル曲はヤスタカ氏の遊び心が先行するのか、別にきゃりーが歌っても不思議ではない印象があったけど(個人的感想です)、今回はカップリング曲も含めて洗練されたアレンジがかなり好きなのだ。Relax In The CityはダンサブルなPerfumeとは異なる癒し路線の一曲。こういう需要はあるんです、確実に。

Pick Me Upのシンセ音は、ヨーロピアンポップスによく使われそうな暗さを感じさせていい雰囲気を出しているし、ミュージックビデオも意味深なストーリー仕立てで面白い。
Relax In The City / Pick Me Up (初回盤)(DVD付)

[MV] Perfume 「Pick Me Up」


■PUNCH LINE/しょこたん❤でんぱ組
今期最もハマって見ているアニメが、実はフジテレビノイタミナ枠の「パンチライン」。ただのお色気アニメだろっ!と甘く見ていたのだが、そこはクオリティの高さを誇るノイタミナ作品。回が進むにつれて事実が明らかになるミステリアスな展開と、「妖星ゴラス」と「キューティーハニー」と「ゴースト ニューヨークの幻」がごっちゃになったような設定の妙、小室哲哉の音楽に牽引されて、毎週楽しみに見ておりまする。

OPの同名主題歌はヒャダイン作。彼の音楽の引き出しの豊富さを改めて感じさせる出来映え。いい年齢した大人がパンチラを真剣に撮っているおふざけMVは、映画「ヌイグルマーZ」の井口昇監督によるオー!モーレツ!(古っ!)な力作だ。
PUNCH LINE!(初回生産限定盤)(DVD付)

しょこたん❤でんぱ組 『PUNCH LINE!』


■80's 12inch Special/various artists
久々に引っ張り出して聴いてしまった・・・。80年代には12インチシングルと称して、主にダンス用に長尺のヴァージョンやリミックスがあまたこの世にリリースされた。

そんな作品のコンピレーション盤。シンディにフィル・コリンズ、プリンスなど80年代定番アーティストはもちろん、他のコンピ盤ではあまり収録されないようなタコ、アニモーション、レベル42、ビッグ・カントリーなども収録されてなかなか楽しい2枚組。Rock Me AmadeusやLook Of Loveにディスコ世代の血が騒ぐ。
80’S 12インチ・スペシャル

Level 42 - Lessons In Love (Extented Version)


■The ConstruKction Of Light/King Crimson
キング・クリムゾンのアルバムの中でも地味だし、「太陽と戦慄」の続編を収録しているくらいノイジーな楽曲の印象が強いアルバム。だけど、ときどき取り憑かれたように聴きたくなることがある。

ギターのアルペジオが時にハモり、時にディレイになり淡々と続く不気味さ。ひずみ過ぎのギターと複雑なアンサンブルが不安な気持ちをかき立てる。だけど食らいつきたくなるこの魅力は何だろう。
Construkction Of Light

King Crimson - Lark's Tongues In Aspic Part4


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宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

2015-05-16 | 映画(あ行)

■「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」(2014年・日本)

総監督=出渕裕
声の出演=小野大輔 桑島法子 鈴村健一 大塚芳忠 中村繪里子

 「宇宙戦艦ヤマト2199」テレビシリーズは僕らオリジナルを見ていた世代にとっても、若い世代にとっても支持されたシリーズだ。オリジナルの設定やストーリーや人物像を発展させ、武力のあり方や民族間の対立・共存といった現代的なテーマ、さらに女性隊員を増やして萌え要素まで加わり、毎回僕らをワクワクさせてくれた。その劇場版「星巡る方舟」は、完全オリジナルストーリーの新作である。映画冒頭、お馴染みの主題曲をバックにテレビシリーズでイスカンダルに到着するまでのエピソードの断片が次々に流れる。そうだよ、これだけの危機を乗り越えてヤマトはここまでやってきたんだ。そう思うと、もうこれだけで泣きそう(笑)。

 イスカンダルからの帰途にあるヤマトはガトランティスと名乗る艦隊の攻撃を受ける。「さらば宇宙戦艦ヤマト」世代なんで、白色彗星帝国につながる記憶が期待を膨らませてくれる。ワープして戦闘を回避しようとしたが、ヤマトは異空間に存在する謎の惑星にたどり着く。調査に降り立った古代進と隊員たちは、古びたホテルの様な建物の中でそこに時間と共に閉じこめられた人々に出会う。ホテルで向き合うその人々が、宿敵ガミラスの軍人たちだと観客である僕らは判って見守っている。そのドキドキ感。さらに時に隔てられた空間という設定がSFの名作「惑星ソラリス」を思わせるなんて、これは嬉しい誤算。派手なドンパチを期待した人もあったかもしれないが、これはこれでヤマト新シリーズが人間ドラマに重きを置いていることを再認識させてくれる。波動砲がスターシアの手によって封印されているだけに、どういう展開になるのか?とハラハラ。抑えに抑えたドラマが続いた後の艦隊戦のクライマックスに気分は最高潮に。

 アニメの劇場版はファンサービス。テレビシリーズ抜きには成り立たないものがどうしても多い。「ヤマト2199」はこの「星巡る方舟」公開に先駆けてテレビシリーズを古代進目線で再編集した劇場版「追憶の航海」をイベント上映した。初めて観る人でも、これで「星巡る方舟」に至るまでのストーリーは押さえられる。「追憶の航海」は、名場面に次ぐ名場面、見せ場に次ぐ見せ場が次々に登場するド派手な作品になっていた。水樹奈々の主題歌が流れるエンドロールをながめながら感じたのは、不思議な達成感(笑)。テレビシリーズ各回のエピソードのクオリティを改めて感じた。

 そして「星巡る方舟」。結末は触れずにおくけれど、これも旧作よりもより深みを増したガミラス側の登場人物の相関関係や民族問題を知ることで感動はきっと変わってくるに違いない。そして「ヤマト」を観て気分を高めてくれるのはなんと言っても音楽なのだが、これも宮川泰が遺した作品を、息子宮川彬良が引き継いでいることもこの作品に対する思いを強くさせる。「ヤマト」のスピリットは、銀幕の向こう側でもこっち側でも世代を超えるのだ。

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ムード・インディゴ うたかたの日々

2015-05-10 | 映画(ま行)

■「ムード・インディゴ うたかたの日々/L'Ecume Des Jours (Mood Indigo)」(2013年・フランス)

●2013年セザール賞 美術賞

監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ロマン・デュリス オドレイ・トトゥ ガド・エルマレ オマール・シー

 世代を超えて読み継がれるボリス・ヴィアンの恋愛小説「日々の泡(うたかたの日々)」。僕はセルジュ・ゲンスブールの大ファンで、彼を見いだした重要人物としてボリス・ヴィアンを知った。ヴィアンの手掛けた音楽や小説などに触れる機会はなかったが、5年程前に「日々の泡」を初めて読んだ(こちら)。人気があるのがよーくわかった。前半は文章を追っていくにつれて、恋愛のワクワクする気持ちが伝わってくる。対してクロエが病に苦しむ後半は大事な人を失う切なさとコランの荒れていく気持ちが突き刺さってくる。

 恋人たちが二人だけの世界に浸ってしまう様子を、"薔薇色の雲"に包まれると表現する。これを映画化ではどう表現するのだろう。そしてミシェル・ゴンドリー監督による映画化のニュースが知らされて、僕の期待はmaxに。ところが僕の居住地の映画館は上映されることはなく、結局DVDでの鑑賞となってしまった。残念。ゴンドリー監督の旧作には大好きな「エターナル・サンシャイン」がある。「恋愛睡眠のすすめ」などビジュアル面での表現に特徴ある作風だけに、今「日々の泡」を映画化するには最適な人選かもしれない。

 予想通り「ムード・インディゴ」はあの小説独自の世界観を見事に映像化するのに成功していると言える。カクテルピアノやコランの部屋の数々の仕掛けにもワクワクするし、オドレイ・トトゥとロマン・デュリスのキャスティングは原作よりちょっと年齢高め?とも思えるけど申し分ないし、いい仕事をしてくれる。僕が気にしていた"薔薇色の雲"はクレーンで吊られた遊園地のゴンドラみたいな乗り物となって描かれた。なるほど、これはこれで十分ロマンティックじゃない。クロエが病に苦しむ後半は、映像から色彩が失われることでコランの失意が視覚からも伝わってくる。ただファンタジー色の強い作風を好むかどうかで、この映画への評価は分かれてしまうかもしれない。

 この映画はボリス・ヴィアンの原作へのリスペクトがあってのもの。原作に描かれた、読んでいて気恥ずかしくなる程の恋する気持ちと、周りが見えなくなる程に二人の事しか考えられないわがままな気持ち。それをゴンドリー監督流のイマジネーションで描き出したものだ。そこを知って観るのと観ないのとで、ゴンドリー監督のこだわりに共感できないのではなかろうか。原作ファンの為に製作した映画とまで言うつもりはないが、ゴンドリー監督自身も原作ファンの一人として自分のイマジネーションを世に示したかったのだろう。それがそもそもファンタジー色が強い監督だけに、過剰に乙女チックに感じられた人には受け入れがたい映画だったかも。

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アイネクライネナハトムジーク

2015-05-06 | 読書


職場の斉藤和義信者女子が貸してくれてた、
伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」読了。

伊坂幸太郎が歌詞の代わりに斉藤和義に提供した短編が、
名曲ベリーベリーストロングとなるのだが、
僕はこの曲を聴く度になーんか胸が熱くなるのだ。

斉藤和義 - ベリーベリーストロング~アイネクライネ


その短編の世界から発展した
"絆の話"たちがこの短編集に収められている。

トラブルの仲裁に入る不思議な言葉、
100円で一曲聴かせてくれる斉藤さんのエピソードが面白い。

世代を超えた因果の物語は伊坂文学の得意とするところだが、
それを読んでいて心地よいのは、
僕が近頃人恋しくなってるからだろか。

アイネクライネナハトムジークアイネクライネナハトムジーク
伊坂 幸太郎

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はじまりのうた

2015-05-05 | 映画(は行)

■「はじまりのうた/Begin Again」(2013年・アメリカ)

監督=ジョン・カーニー
主演=キーラ・ナイトレイ マーク・ラファロ ヘイリー・スタインフェルド アダム・レビーン ジェームズ・コーデン

 音楽でつながれた人と人の絆って強い。自分自身の実体験も含め、僕はそう信じている。映画を観るにあたってもそうだ。映像と音楽が一体となった奇蹟のような瞬間や、音楽を介して人と人がつながっていく物語に強く強く惹かれる。そんな映画と出会った時の幸福感。例を挙げたいところだがきりがなくなりそうなので割愛するが、ジョン・カーニー監督の前作「Once ダブリンの街角で」もそんな幸せな映画との出会いの一つだった。そしてこの「はじまりのうた」も。

 「はじまりのうた」の冒頭は、傷心のヒロインであるグレタが友人であるスティーヴのライブに飛び入り出演するところから始まる。そこで落ち目の中年音楽プロデューサー、ダンがグレタの歌を聴いて彼女に声をかけた。彼はデモテープを路上録音で作ろうと提案し、二人のタッグが周囲の様々な人物を巻き込む出来事に発展していく。いや、これは音楽をプレイすることだけでなく、人間関係をも含んだセッションなのだ。映画は冒頭数分間、時系列に物語を進行させない。それは、グレタがその晩スティーヴのライブに同行するに至ったいきさつと、ダンがその晩そのライヴをどんな心持ちで聴くに至ったかをそれぞれの目線で示していく。だからグレタがライヴで歌う、地下鉄のホームで飛び込み自殺しようか迷う女の子の歌を僕ら観客は3回(レコード会社の場面でさらに1回)聴くことになる。ここはやや"くどい"とも感じられるのだが、ダン目線の部分では、彼のイマジネーションでアレンジが視覚化される。この演出は、音楽好きならきっと心を掴まれることだろう。

 この映画で素敵な小道具として登場するのがiPhoneだ。「Once」でも思い出の動画を見ながらかつての恋人を思う場面があったが、本作では単に動画再生だけではない。グレタにはミュージシャンの恋人デイブ(マルーン5のヴォーカル、アダム・レビーンが好演)がいたが、彼は仕事で同行した別の女性と関係してしまい、喧嘩別れしてしまう。グレタが彼へのあてつけにスティーヴと曲を作ってiPhoneで送りつける場面がある。マイクスタンドにiPhoneをテープでぐるぐる巻きにしてグレタは"バカみたいに好きだったわ"と歌うのだ。

映画『はじまりのうた』スペシャルミュージッククリップ「Like A Fool」


こんなメッセージを残されたら、そりゃ彼氏も"しまったー"と思うよな。さらに音楽プレイヤーとしても大活躍。ダンが二股に分かれたイヤホンジャックで同じ音楽を聴きながら元妻とデートした、と思い出を語る。グレタとダンは夜の街をお互いの音楽プレイリストを一緒に聴きながら音楽について語り合う。共通の音楽で盛り上がれる瞬間って実生活でもあることだけど、やっぱり素敵だ。

 この映画は人間関係のセッションでもある。グレタと関わることから、ダンは次第に自分に自信を取り戻し、別れた妻の元にいる娘との関係も回復していく。娘ヴァイオレット(「トゥルー・グリット」の生意気な小娘ヘイリー・スタインフェルド)は、グレタから服装や友達との関わり方についてアドバイスを受け、彼女の発案でヴァイオレットをレコーディングに参加させることになる。ヴァイオレットがリードギターとして加わった屋上セッションの場面はとても感動的だ。

映画『はじまりのうた』スペシャルミュージッククリップ「Tell Me If You Wanna Go Home」

"家に帰りたくなったら言ってね"と歌うこの曲は、まさにダンと元妻、娘を関係修復へと導く。

 そしてグレタとの関係を取り戻したい、とデイブがやってくる。彼は二人で共作したバラードLost Starsを、ポップなアレンジでレコーディングしていた。グレタはそれを"違う"と突っぱね、彼のやり直したいという申し出も断る。映画のクライマックス。グレタの望むアレンジでデイブが歌うLost Starsは涙を誘う名場面だ。

Adam Levine - Lost Stars

アカデミー賞にもノミネートされたこの曲は、マルーン5のアルバムにも収録されている。多くの人々の協力で、ストリートで録音されたグレタのアルバム1枚分になるデモテープは完成し、レコード会社からも色よい返答が出そう。そしてグレタが選んだ結論は・・・。僕らは音楽にどう向き合うことが幸せなのか。前向きなラストシーンに大感激。「Once」の切なさとはまた違った余韻は、僕らに音楽の素晴らしさ、そして一緒に物事を楽しめる、成し遂げる仲間の大切さを改めて教えてくれるのだ。



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恋するパリのランデヴー

2015-05-03 | 映画(か行)

■「恋するパリのランデヴー/Un Bonheur N'arrive Jamais Seul」(2012年・フランス)

監督=ジェームズ・ユット
主演=ソフィー・マルソー ガド・エルマレ モーリス・バルテレミ フランソワ・ベルレアン

 僕は中学以来ソフィー・マルソーの大ファンである。最近は監督もやったり、主演作がハリウッドリメイクされたり、年齢を重ねていい仕事をしているようだけど、いかんせん出演作品に恵まれないのか、日本では未公開作が多い。本作も日本では劇場未公開で、しかもダサい邦題が添えられている。いかがなものかと思いながら、いざ観てみると・・・中年男女の恋愛コメディとしてはなかなかいいじゃないですか。今の年齢になってこそわかる現実味や登場人物の心情も共感できることばかり。ソフィーがどうこう言うよりも、大人向けのロマコメとしてワクワクさせてくれる映画。

 主人公サーシャは作曲家。CM曲の仕事をこなしているが、いつか舞台音楽を手掛けることを目指していた。仕事先から帰る途中で出会った魅力的な女性シャルロットと突然恋におちる。彼女は夫と別居中の3人の子持ち。子供嫌いだと言っていたサーシャだが、シャルロットの部屋の洗面台修理をきっかけに、彼独特のユーモアで子供たちとも仲良くなっていく。ところが、シャルロットの夫は取引先のお偉いさんアランだったことを知る。サーシャは仕事を干されてしまう。その後、ブロードウェイで舞台音楽を担当するチャンスが到来。ところが仕事の相棒は彼女と距離を置いて仕事に専念するように言われるし、シャルロットとのこれからの関係を考えて思い悩むことに・・・。

 独身中年のサーシャが母親に世話を焼いてもらっているところや、シャルロットと子供たちとのやりとりが妙に生々しくて、同年代の自分が観ると、こういう展開あるだろな・・・と共感できる場面が多い。サーシャの台詞「キスはキス」は映画「カサブランカ」で流れるあの曲(As Time Goes By)の歌詞の一節で、しかもシャルロットの寝室には「カサブランカ」のポスター(しかも日本語版)が貼られている。なかなかいい場面じゃない。サーシャの部屋には「ウエストサイド物語」や「ヘアー」などのポスターが貼られていて、ミュージカルにただならぬ愛があるのだと伝える小道具としてうまく使われている。

 結末は絵に描いたようなハッピーエンドなのだが、子供を巻き込んで二人距離が近づいていく様子が大人の恋物語として好感度高い。二人が出会うずぶ濡れの場面にしても、洗面台トラブルをめぐるドタバタコメディ部分にしても、ソフィー・マルソーがそれまでの主演作で見せたことのないコメディエンヌ振りを発揮する。水道管から吹き出した水の圧力に倒されてパンツ丸見えになる場面なんて、アイドルの頃じゃ想像もできない。そうした場面をソフィーは楽しそうに演じているように観えるし、イザベル・アジャーニやエマニュエル・ベアールが同じことをやっても無理して演じてるように思えるんじゃないだろか。僕らはハリウッド製のロマコメで描かれるロマンスにしばしば日常を忘れさせてもらうけど、このフランス製ロマコメは子育てや仕事という日常をからめながら大人の恋が成就するまでを楽しませてくれる。だから僕らは共感できる。フランス映画は"人間模様"を描くのがお家芸。そんな伝統はここでも受け継がれている。

恋するパリのランデブー(字幕版)(予告編)


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アメリカン・スナイパー

2015-05-02 | 映画(あ行)

■「アメリカン・スナイパー/American Sniper」(2014年・アメリカ)

●2014年アカデミー賞 音響賞(編集)

監督=クリント・イーストウッド
主演=ブラッドリー・クーパー シエナ・ミラー ルーク・グライムス ジェイク・マクドーマン

 イラク戦争に出征した狙撃手クリス・カイルの自叙伝を映画化。その射撃精度の高さから米兵からレジェンドと称されるのだが、その一方で敵側からは懸賞金をかけられ、自分自身は心に傷を負ってしまう。この映画化は戦績を挙げた人物を英雄視しているとか、米国万歳的な表現があるという感想もあるようだが、僕はイーストウッド監督にそういう意図があったとは思えない。史上最多の射殺者数で仲間を守った実在の狙撃手だけに、英雄視する見方があるのは仕方ない。キャサリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」では、爆発物処理を担当する主人公が、それでも戦場に戻っていく姿が描かれた。戦争が麻薬のように人を蝕んでいく末路を描いた悲しいラストシーンだと受け止めるが、その後ろ姿に拳を振り上げ、歓喜を送ったアメリカ人は確実にいただろう。受け手によって印象が違うのは当然のこと。それは「アメリカン・スナイパー」も同じだ。ただ、上映時期がちょうど過激派組織ISの台頭と重なり、中東で活躍する米国兵士の物語に著しく関心が高まった。結果この映画は「プライベート・ライアン」を凌ぐ興行収入となったのだ。

 「アメリカン・スナイパー」で描かれたのは、戦場でクリスが悩みながら活躍する姿だけではない。戦争に関わった兵士や家族に突きつけられる厳しい現実と悲劇だ。戦地から戻った兵士たちを取り巻く現実の描かれ方は、「ディアハンター」や「ランボー」がベトナム帰還兵の問題を銀幕のこちら側に突きつけたように厳しい。何も映っていないテレビの前に座り続ける姿や、子供とじゃれる犬を抑えつけたりする行動。何よりも辛いのはアメリカに戻っているのに帰宅せずに酒場で過ごしている姿。イーストウッド監督は決して彼らを英雄賛美してはいない。主人公は作戦中に妻に電話して、自分の気持ちを話したり、帰りたいとつぶやいたりする。帰還後のクリスは帰還兵たちの力になるための活動をしていたが、凶弾に倒れてしまう。映画のラストシーンはクリスの葬儀。映し出される星条旗。そこに込められた気持ちは何だろう。僕は"米国万歳"だとは到底思えないが、感じ方は人それぞれだ。それでも男たちはこの国の為に戦ってきたんだという事実を、戦争による犠牲者として受け止めるのか、アメリカを守る為の功労者として受け止めるのか。「許されざる者」で映し出される星条旗もそうだが、そこに込められた思いは感じ方次第だろう。

 この映画が僕らをグイグイと引き込むのは演出の巧さ。砂嵐が迫る中での狙撃手との駆け引きが描かれるクライマックスは、かつてイーストウッド監督が出演していた西部劇の興奮を思い起こさせる。また決死の脱出劇は音声だけで表現される。オスカーを受賞した音響は本当に見事。妻となる女性と出会う酒場の場面、「男の人ってビール3杯で独身に戻れるのね」って台詞はうまい。

映画『アメリカン・スナイパー』予告編


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