80年代の楽曲で、この曲程長いこと愛されているバラードって他にあるのだろうか。そう思えるほど世代を超えて多くの人に愛されている名曲Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)。自動車や化粧品のCFに使用されるたびに新たなファンをつかんでいる。ブラスロックで一世を風靡したものの、その後低迷していたシカゴ。彼らにとってこの曲は起死回生の大ヒットとなった。プロデューサーにデビッド・フォスター、新メンバーにビル・チャンプリンを迎え、従来の路線からAORっぽい路線に転換したことは、70年代以来のファンには驚きだったことだろう。97年には、R&BグループAz Yetがカヴァーしてトップ10ヒットを記録している。僕がシカゴを知ったのもやはりこの曲だったし、このピアノはさんざん練習したものだ。今でも譜面なしで弾ける曲のひとつだし。
映画ではHard To Say I'm Sorryの他に、マイケル・センベロ(Summer Lovers)、ティナ・ターナー(Johnny And Mary・Crazy In The Night)、スティーブン・ビショップ(If Love Takes You Away)、デペッシュ・モード(Just Can't Get Enough)、エルトン・ジョン(Take Me Down To The Ocean)が使われている。今見るとなかなか豪華な面々なのだが、当時の僕はそんなこと気づきもしなかったんだなぁ。
※Chicago関連の曲が聴ける主な映画
1982年・「青い恋人たち」 =Hard To Say I'm Sorry
1983年・「セカンド・チャンス」 =Prima Donna
1990年・「デイズ・オブ・サンダー」 =Hearts In Trouble
1991年・「マイ・ガール」 =Saturday In The Park
1999年・「スリー・キングス」 =If You Leave Me Now
2000年・「リトル・ニッキー」 =Does Anyone Really Know What Time It Is?
※Toto関連の曲が流れる主な映画(各人がプレイヤーとして参加したものは除く・Toto名義のみ)
1977年・「サタデー・ナイトフィーバー」 = Second Lowdown (クレジットなし)
1984年・「砂の惑星」 = 上記参照
1992年・「アメリカン・ハート」 = Fast Blues (Jeff Porcaro, Mike Porcaro, David Paich, Lonny Castro and Mark Bonilla)
ブームとはホームパーティのようなもの。主人公たちは大勢で家に集まり、バカ話をしたり、恋を語ったり、音楽をかけて楽しむ。ソフィー扮するビックとチークが踊りたいアレクサンドル・スターリング君(今どうしてるのだろう?)が、彼女の後ろからウォークマン(このあたりが時代だな)を持って近づき、ヘッドフォンをかける印象的なシーン。そのときにヘッドフォンから流れてくるのも愛のファンタジー。サントラには他にもブームの場面で繰り返し流れた曲が収録されている。ディスコチューンの Move Onは特に繰り返し流れるので印象的だ。僕はスローナンバーのGo On Foreverがお気に入りだったなぁ。きっと今の年齢でこの映画を見直すと、ブリジット・フォッセーとクロード・ブラッスール扮する両親の方に感情移入してしまいそう。
さて、音楽担当はジョルジオ・モロダー一派のドラマー、キース・フォーシー。ここではインストロメンタルのスコアも書いており、ヴァリエーションも豊富でいい雰囲気を出している。ちなみに Flashdance ~ What A Feeling の歌詞をアイリーン・キャラと共作したのも彼である。シンプル・マインズにとって初のNo.1ヒットとなった主題歌 Don't You (Forget About Me) は、キース・フォーシーがこの映画のために書き下ろした曲である。実は当初ビリー・アイドル、ブライアン・フェリーにもオファーがあったそうなのだが、いずれも断られている。そしてプリテンダーズに話がいった後、クリッシー・ハインドが夫が在籍していたシンプル・マインズに話をまわしたそうである。シンプル・マインズも歌うのを嫌がったという話もあるが、これが大ヒットにつながったというから世の中はわからない。そんなたらい回しされた曲なれど、この曲のカッコよさは今聴いても色あせていない。僕はシンプル・マインズをこの曲で知った。この後のアルバム "Once Upon A Time" はしばらく聴きこんだなぁ。
キース・フォーシーは Don't You (Forget About Me) をとにかく気に入っているらしく、後にビリー・アイドルのベストアルバムで再録している。サントラには他に ワン・チャン(Fire In The Twilight) や ジャネット・ジャクソンのプロデューサーとしても知られるジェシー・ジョンソン(Heart Too Hot To Hold)らも参加。サントラも映画自体も当時の派手なヒット作とは違い、どうしても地味な印象を受けるが、高校生にとって等身大の悩みを同じ目線で描いてくれたこの映画は、当時ティーンには強く心に刻まれる一作となったのである。5人が円形に並んで語り合うクライマックスは、カーラ・デ・ヴィトーの We Are Not Alone と共に印象的であった。やっぱり当時観ておくんだったなぁ。
※Simple Mindsの曲が流れる主な映画
1985年・「ブレックファスト・クラブ」 = Don't You (Forget About Me)
1995年・「ギャングスターズ 野獣死すとき」 = 7 Deadly Sins
1998年・「マーシャル・ロー」 = Great Leap Forward