Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

11月のBGM

2013-11-30 | 音楽
2013年11月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■斉藤&和義/斉藤和義



斉藤和義は同い年だけに応援してしまう男性アーティストの一人。昭和の楽曲を毎回ゲストが歌うNHKの音楽番組「カヴァーズ」で、彼は沢田研二の「ダーリング」と梓みちよの「二人でお酒を」を歌った。わかるなぁこの選曲のセンス!(自分も「二人でお酒を」をリコーダーで吹いていた・恥)。そんな斉藤和義の新作は2枚同時リリース。ストーリーのある歌詞が心に響くスローな曲もロックンロールも健在なアルバムだ。ここのところ量産してきた曲をまとめただけ・・・という印象もぬぐえないが、それでも各楽曲のクオリティには聴き入ってしまう。「Hello, Everybody!」と「Always」「メトロに乗って」が好き。でも40代男としていちばん胸に染みるのは、何と言っても「月光」。

■winter fall/L'Arc~en~Ciel


センセイと呼ばれるお仕事していた頃、年度末のイベントでカラオケ歌う機会があった。何を歌おう・・・と考えた結果その時に選んだのがこの曲。自分のクラスの男子が「えー、オレが歌おうと思ってたのに」と言ってきたから「お前はSHAZNAでも歌ってな」と言って彼に歌わせなかったっけ(大人げない)。ふと聴きたくなって車の中で歌ってみる・・・よしよし、今でもばっちり歌えるゾw

■恋するフォーチュンクッキー/AKB48


いやぁ、なんか気に入っちゃってですねー(汗)、思わずiTunesでダウンロード。80年代ディスコ調という紹介記事を読んだけど、僕にはむしろジャクソン5ぽくきこえるんだけどね。いずれにしても、ガールズポップスのお手本とも言うべき快作。福岡ドーム前の大群衆のPVは何度見てもグッとくる。いろんな業界や自治体がこの曲のビデオを作ったのも楽しかったね。いつうちのトップが「やろう」と言い出すか・・・と内心思っていたのだがw。え?踊れるかって?

■So Young/The Yellow Monkey


吉井和哉も同い年だけに応援しているアーティストのひとり。イエモンのシングル曲So Youngは大好きなバラードだ。カラオケではイエモンはあれこれ歌うけど、この曲はまだチャレンジしたことがないな、そういえば。この曲を初めて聴いたとき、イントロのピアノがすっごく気になった。それはセルジュ・ゲンスブールの名曲「Initials BB」に似ている・・・と思ったから。イエモンといえばデビッド・ボウイをリスペクトとしているのは有名。そのボウイのLet's Danceが気に入って、同じミュージシャンを使って作品を作ったことがある不良老人がセルジュ。そのセルジュが、恋人ブリジット・バルドーとの別れの時期にリリースされた名曲にそっくりな曲をイエモンが・・・。不思議な輪廻を感じたのでした。

■Initials BB/Serge Gainsbourg


そんな訳でセルジュ・ゲンスブールも聴いてみた。カトリーヌ・ドヌーヴ主演映画「恋のマノン」の主題歌Manon、バルドーとのデュエット曲Bonnie and Clydeなど秀作ぞろいのコンプリートシリーズの1枚。古い曲なのに古くさくないし、誰にも似ていないカッコよさ。




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青い恋人たち -80's Movie Hits !-

2013-11-29 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

 

■Hard To Say I'm Sorry (素直になれなくて)/Chicago

from「青い恋人たち/Summer Lovers」(1982年・アメリカ)

 

監督=ランダル・クライザー

主演=ピーター・ギャラガー ダリル・ハンナ ヴァレリー・クィネッセン

 

80年代の楽曲で、この曲程長いこと愛されているバラードって他にあるのだろうか。そう思えるほど世代を超えて多くの人に愛されている名曲Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)。自動車や化粧品のCFに使用されるたびに新たなファンをつかんでいる。ブラスロックで一世を風靡したものの、その後低迷していたシカゴ。彼らにとってこの曲は起死回生の大ヒットとなった。プロデューサーにデビッド・フォスター、新メンバーにビル・チャンプリンを迎え、従来の路線からAORっぽい路線に転換したことは、70年代以来のファンには驚きだったことだろう。97年には、R&BグループAz Yetがカヴァーしてトップ10ヒットを記録している。僕がシカゴを知ったのもやはりこの曲だったし、このピアノはさんざん練習したものだ。今でも譜面なしで弾ける曲のひとつだし。

 

さて、そんな”名曲中の名曲”を使った映画。それは「青い珊瑚礁」(80)のランダル・クライザーが監督・脚本を担当した「青い恋人たち」。エーゲ海のサントリーニ島を訪れたアメリカ人カップルが、ミステリアスなフランス人女性と出会う。オレあの女(ひと)に惚れた・・・私はどうすんのよ(涙)・・・でもあの女(ひと)素敵・・・じゃ三人で抱き合いましょう・・・とまぁなんとも羨ましい三角関係の恋愛映画であった。

 

僕は「ゴールデン洋画劇場」(いかにも80年代のフジテレビ系でやりそうな映画!)でこの映画を初めて観た。「セックスと嘘とビデオテープ」のピーター・ギャラガーが、三人でベッドを共にして「もうやりすぎて疲れちゃった」という表情をすると、二人の女性は「セックスの神様よ!」と巨大なペニスの偶像を部屋に飾るという場面もある。おまけにお相手はフランス美女のヴァレリー・クィネッセンと、「スプラッシュ」(84)の人魚姫ダリル・ハンナなんだからぁ!!。十代後半だったからなぁ、友達の間では「あの男優、許せん!」というのが素直な感想だった(若気の至り)。

 

映画ではHard To Say I'm Sorryの他に、マイケル・センベロ(Summer Lovers)、ティナ・ターナー(Johnny And MaryCrazy In The Night)、スティーブン・ビショップ(If Love Takes You Away)、デペッシュ・モード(Just Can't Get Enough)、エルトン・ジョン(Take Me Down To The Ocean)が使われている。今見るとなかなか豪華な面々なのだが、当時の僕はそんなこと気づきもしなかったんだなぁ。

 

 

Chicago関連の曲が聴ける主な映画

1982年・「青い恋人たち」 =Hard To Say I'm Sorry

1983年・「セカンド・チャンス」 =Prima Donna

1990年・「デイズ・オブ・サンダー」 =Hearts In Trouble

1991年・「マイ・ガール」 =Saturday In The Park

1999年・「スリー・キングス」 =If You Leave Me Now

2000年・「リトル・ニッキー」 =Does Anyone Really Know What Time It Is?



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サイレント・フルート

2013-11-27 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その29)★ビルが奏でる楽器のルーツ

■「サイレント・フルート/The Silent Flute」(1977年・アメリカ)

監督=リチャード・ムーア
主演=デビッド・キャラダイン ジェフ・クーパー クリストファー・リー

 「Vol.2」の最初の方で、いよいよビルがその姿を現す。モノクロの画面、ブライドが式を挙げる教会の場面だ。長い横笛を吹きながら教会のベンチに座るビル。
「どうしてここがわかったの?」「お見通しさ」
その横笛を吹く場面はもう一度出てくる。棺桶に閉じこめられたブライドの回想シーン。ビルがブライドに、パイ・メイについて語るたき火のシーン。ビルは弾き語りのように笛の音を挟みながら、”五点掌爆心拳”について語る・・・。どちらも印象に残る場面だ。その横笛はデビッド・キャラダインがかつて主演した映画「サイレント・フルート」撮影時に自作したものである。現在でもステージでその演奏を披露することもあるとか。キャラダインは、「サイレント・フルート」では主人公を導く盲目の達人を演じている。これがビルのイメージにつながっている。このたき火のシーンはまさに「サイレントフルート」の雰囲気だ。

 「サイレント・フルート」はブルース・リーとジェームズ・コバーンらが原案を出した作品で、そもそもはブルース・リーの為に企画されたものだった。単なるアクション映画ではなく、武道の精神面又は哲学的とも言える内容である。武道の試合が行われ、優勝した者は「秘法の書」を取り戻してくる命を負うことになる。相手が倒れた後で殴ってしまったことから、主人公は負けを宣告されるの。諦めきれない彼は試練に挑む勝者を追って旅に出る。猿人と闘う第1の試練、ジプシーのような無国籍な集団で欲望と闘う第2の試練・・・そして迎える「秘法の書」の秘密。武道の、そして人生の奥義がそこにはあった(結末は是非ご覧あれ)。単なるアクションとは違うメンタルな台詞が次々に過ぎていく。

 僕は今回初めて観たのだが、実はかつて映画館で見損ねた映画でもある。地元の大分では2本立てで上映されていた。おじと一緒に行ったのだが、何らかの理由で観ずに帰った。今思えば砂漠で出逢う妖艶な美女との入浴シーンをニキビ面の中学生だった当時に観ていたら・・・生涯忘れ得ぬ映画になっていたかも(笑)。

 結局 「燃えよ!カンフー」と同様に、キャラダインはブルース・リー向けの企画2本で主演をすることになった。笛を手に闘う盲目の達人のモデルは、もちろん”座頭市”である。日本刀(もちろんハットリハンゾウ作)を手にビルは闘うのだが、鞘に収めたままで相手の攻撃をはらったりする様は、「サイレントフルート」の長い笛を振り回す達人であり、仕込み杖を使う市だ。「vol.2」でカットされたのだが、ビルにはアクションシーンがある。これは「vol.2」のDVDに特典映像として収録されているので、是非観て欲しい。ブライドと座ったまま闘うラストと共に影響を与えた部分かな。



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星空の用心棒

2013-11-26 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その28)★マカロニウエスタン
■「星空の用心棒/I Lunghi Giorni Della Vendetta (Long Days Of Vengeance)」(1967年・イタリア)

監督=スタン・バンス
主演=ジュリアーノ・ジェンマ フランシスコ・ラバル コンラッド・サンマルティン

「キル・ビル」、特に「vol.2」ではマカロニウエスタンの影響が色濃く感じられる。もちろん、復讐劇が多いのもその理由だろう。技法の面では、例えばブライドとエルがトレーラーの中でにらみ合う場面。ここでの”目のアップ”は、セルジオ・レオーネ監督作(「夕陽のガンマン」等々)にそのルーツがある。「vol.2」ではマカロニウエスタンの様々な楽曲があちこちに散りばめられている。「vol.2」のサントラに収録されているのは、「続・夕陽のガンマン 地獄の決闘」・「豹/ジャガー」・「さすらいのガンマン」の3作品、「vol.1」のサントラにも「怒りのガンマン 銀山の大虐殺」が収められている。

「vol.1」のアニメーション場面で、殺し屋プリティ・リキがオーレン・イシイの父親にとどめをさす場面に流れたのが、この「星空の用心棒」の楽曲だ。主演は「荒野の1ドル銀貨」などマカロニウエスタンが生んだスター、ジュリアーノ・ジェンマ。作曲は「黄金の七人」で有名なアルマンド・トロバヨーリ。スキャットを使った都会的な楽曲が持ち味なのだが、ウエスタン向け楽曲を研究したんだろう、トランペットやエレキギターをフィーチャーしてエンニオ・モリコーネ的なスコアに仕上げている。

”復讐への長き道”という原題を持つこの映画をお手軽な低予算マカロニウエスタンと言うなかれ。けっこう充実したメンバーなのだ。無実の罪を着せられた主人公が復讐するお話自体は、アレクサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」(巌窟王)を翻案したもの。監督のスタン・バンスは1960年にヴェネチア映画祭で新人監督賞を受けたこともあるし、編集は「グレートハンティング」「ポールポジション」など記録映画の監督や「ニュー・シネマ・パラダイス」の編集も担当したマリオ・モッラ。

主人公は銃の名手って訳でもない。奇策と知恵で勇敢に宿敵に立ち向かう。そこが西部劇にありがちな圧倒的に強いヒーロー像とは異なる。父親を殺して鉄道会社を我がものにする悪役は、主人公の恋人だった女性を妻にしている。彼は彼女にも協力を願う。しかしハーバード大卒の医師と名乗るヤブ医者と娘や判事の力を借りて復讐を遂げるのだ。マカロニウエスタンは、単にドンパチで片をつけるハリウッド西部劇の明快さとは違った”間”という緊張感がある。そして妙なアイディアも魅力の一つ。この映画でも指先に糸をつけて引き金を引いたり、保安官バッヂを手裏剣のように投げたり・・・。だが登場人物とストーリーの面白さが、やはりこの映画の魅力かな。それにしてもこの邦題、筋とはなんの関係もない・・・。








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砂の惑星 -80's Movie Hits !-

2013-11-25 | 80's Movie Hits !

■Dune (Desert Theme)/Toto
From「砂の惑星/Dune」(1984年・アメリカ)

監督=デビッド・リンチ
主演=カイル・マクラクラン ユルゲン・プロホノフ フランチェスカ・アニス マックス・フォン・シドー

 偶然なのか世の流れだったのか知らないが、結果としてプロデューサーのディーノ・デ・ラウレンティス氏は、80年代初めにロックファンに二つの大きなサントラのプレゼントをくれた。ひとつはクィーンに音楽を担当させた「フラッシュ・ゴードン」。そして今ひとつはTotoに音楽を担当させた「砂の惑星」である。

 ボズ・スキャッグスらのアルバムで、セッション・ミュージシャンとして活躍していた腕利きたちが結成したバンドであることは、今さら言うまでもないだろう。Totoの楽曲には様々な魅力がある。①フュージョンのようなハイテクの演奏に支えられた楽曲、②AOR的な楽曲、③ロックミュージックとして・・・ファンによってもどの辺に魅了されているかが分かれるバンドでもある。このサントラはそうしたイメージとは異なり、ほとんどの楽曲がオーケストラで演奏されている。クレジットはToto名義ではあるけれど、キーボードのデビッド・ペイチと彼の父親マーティ・ペイチが中心となって製作されたものらしい。しかし上に挙げた Dune (Desert Theme) は複雑な構成と変拍子のバンドサウンドで、これは従来のTotoファン(特に上に挙げた①好きには)納得の楽曲だろう。特筆すべきはブライアン・イーノの参加だな。9曲目の Prophecy Theme は彼の作品。

 監督は「エレファントマン」で一般的にブレイクしたばかりだったデビッド・リンチ。主演がこれが映画デビュー作(いきなり主演!)だったカイル・マクラクラン。ここから「ブルー・ベルベット」や「ツインピークス」と続く、リンチとマクラクランのコンビが始まったのだ。TV用長尺版がビデオリリースされているけれど、リンチはその扱いに納得していない為、そちらでは名義がアラン・スミシーとなっている。好きな人にはたまらん映画だとは思うのね。でもクリーチャーの造形や登場人物たちは初めて観たときには悪趣味としか思えなかったしなぁ・・・好きな映画とは僕はお世辞にも言えない。僕の周辺の人々は口々に”あの砂虫が×××にしか見えない!”というのだが皆さんはいかが?。リンチ映画自体は嫌いではないけどね(但し「イレイザー・ヘッド」は除く)。脇役にはホセ・フェラー、マックス・フォン・シドー、シルバーナ・マンガーノら大物も出演。そしてロックファンにはスティングの勇姿が忘れられない。しかし興行的に大失敗したのは、多くの映画ファンはご存じのことだろう。



※Toto関連の曲が流れる主な映画(各人がプレイヤーとして参加したものは除く・Toto名義のみ)
1977年・「サタデー・ナイトフィーバー」 = Second Lowdown (クレジットなし)
1984年・「砂の惑星」 = 上記参照
1992年・「アメリカン・ハート」 = Fast Blues (Jeff Porcaro, Mike Porcaro, David Paich, Lonny Castro and Mark Bonilla)

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五毒拳

2013-11-23 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その27)★邵氏兄弟有限公司/毒ヘビ暗殺団の由来
五毒拳 [DVD]
■「五毒拳/The Five Venoms」(1978年・香港)

監督=チャン・ツェー
主演=フィリップ・コク スン・チェン チアン・シェン

 ビルの暗殺団The DiVAS。ビルの弟バドとビルの愛人4人で構成されるこの最強暗殺団の面々には、毒ヘビの名がつけられている。ブライド=ブラック・マンバ、エル・ドライバー=カリフォルニア・マウンテンスネークって具合だ。ヘビの名がそれぞれにつけられたのは、ショウブラザース後期のカンフー映画「五毒拳」がその元ネタである。日本未公開だった「五毒」だが、キングレコードによるDVD化によって手軽に観られるようになった。感謝。

 五毒拳という悪の限りを尽くしたある拳法の流派があった。師匠はこれまでの悪行を悔やみ、この流派にまつわる財宝を寄付し、この拳を封じることを遺言とした。そして最後の弟子にそれを託す。これまで5人の弟子がおり、それぞれがムカデ・ヘビ・サソリ・ヤモリ・ガマの技を身につけている。最後の弟子は一人で5人を倒す程ではない。そこで5人のうちの1人と組み、残り4人を倒せと師匠はいうのである。「キル・ビル」で暗殺団にヘビの名が付いているのはこれが元ネタなのである。

 修業時代に5人はマスクをしているので素顔を知らない。しかも財宝を守るため最も善人である兄弟子と組まねばならない。誰が五毒拳の使い手なのか?誰と組むべきなのか?クライマックスまで3番弟子サソリがわからないミステリー要素、個性ある登場人物とその技、悪役との息詰まる攻防、全体的な暗いムード。設定は突飛だけど起伏に富んだ展開が物語を面白くする。華麗なカンフーは見られないが、ストーリーの面白さがこの映画一番の魅力だな。チャン・ツェー監督作は残酷描写も欠かせない。本作では1番弟子ムカデが殺しの道具として針を使うのだが、針を口や鼻から入れて外傷をつけずに殺す手口。また5番弟子ガマを、万針衣(内側に無数の針が仕掛けられたもので体に着せて痛めつける道具)で拷問する場面の痛々しさ!。普通の勧善懲悪カンフー映画に飽きちゃった人にはおすすめ。この映画は陰なるカンフー映画の秀作。

 そして拳法をベースにしたスーパー戦隊シリーズ「獣拳戦隊ゲキレンジャー」は、カンフー映画ネタが随所に見られる大傑作なのだが、「五毒拳」も登場する悪役の元ネタとなっている(詳しくはこちら)。



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ラ・ブーム -80's Movie Hits !-

2013-11-22 | 80's Movie Hits !


- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■Reaity(愛のファンタジー)/Richard Sanderson
from「ラ・ブーム/La Boum」(1980年・フランス)

監督=クロード・ピノトー
主演=ソフィー・マルソー アレクサンドル・スターリング クロード・ブラッスール ブリジット・フォッセー

 中学3年のとき。僕はテレビの中にいたフランス娘に恋をした。彼女の名はソフィー・マルソー。フランスで大ヒットした青春映画「ラ・ブーム」の主役だという。当時僕はまだ映画本編は観てもいなくって、そのCMの映像と流れていた映画主題歌のReality(恋のファンタジー)の虜になった。映画雑誌「ロードショー」を毎月買い始めた時期で、部屋の壁はみるみるうちにソフィーの笑顔でいっぱいになっていく。映画館で初めて観たのは高校生のときの「ラ・ブーム2」。大分セントラルロキシーはその日カップルだらけで、ニキビ面の少年は居心地悪さを感じながらもソフィーの笑顔に夢中になっておりました。今でもフランスを代表する女優の一人として活躍しているのは、嬉しい限り。

「ラ・ブーム2」の頃のカゴメの広告


 デビュー作「ラ・ブーム」の主題歌Realityを歌うのはリチャード・サンダーソン。この曲と「ラ・ブーム」のサントラ収録曲以外では彼の曲は知らない。でもこの曲はその中学3年以来、ずーっと心の中にある。ヨーロピアンポップスらしいシンセのメロディが印象的なイントロ、やさしいメロディ、ささやくような歌い出し、サビで歌われるのは高まる恋する気持ち。スピッツの草野正宗はこの曲を"自分にとってラブソングのお手本"だと雑誌のインタビューで答えている。カッコいい演奏でもないし、歌声だって特にうまいとは思わない。この曲が僕ら世代に今でも愛され続けている理由は、ウラジミール・コスマのメロディの美しさ。だが何よりもソフィー・マルソーというイメージが重なってこそのこの曲でもある。失礼な言い方かもしれない。でも、映画主題歌って劇中の素敵な場面とか俳優の表情とかそういうものと一体になって僕らの心に残るものである。ムーンリバーは窓辺でギターを弾くオードリー・ヘプバーンのイメージだろうし、ジェームズ・ボンドのテーマ曲だってあのガンバレルの映像と一緒に思い浮かべるはずだ。愛のファンタジーもそのひとつ。

 ブームとはホームパーティのようなもの。主人公たちは大勢で家に集まり、バカ話をしたり、恋を語ったり、音楽をかけて楽しむ。ソフィー扮するビックとチークが踊りたいアレクサンドル・スターリング君(今どうしてるのだろう?)が、彼女の後ろからウォークマン(このあたりが時代だな)を持って近づき、ヘッドフォンをかける印象的なシーン。そのときにヘッドフォンから流れてくるのも愛のファンタジー。サントラには他にもブームの場面で繰り返し流れた曲が収録されている。ディスコチューンの Move Onは特に繰り返し流れるので印象的だ。僕はスローナンバーのGo On Foreverがお気に入りだったなぁ。きっと今の年齢でこの映画を見直すと、ブリジット・フォッセーとクロード・ブラッスール扮する両親の方に感情移入してしまいそう。



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ブレックファスト・クラブ - 80's Movie Hits ! -

2013-11-21 | 80's Movie Hits !

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■Don't You (Forget About Me)/Simple Minds
from「ブレックファスト・クラブ/The Breakfast Club」(1985年・アメリカ)

監督=ジョン・ヒューズ
主演=エミリオ・エステベス モリー・リングウォルウド アンソニー・マイケル・ホール

 80年代の青春映画といえば、ジョン・ヒューズ監督による愛すべき作品群を思い浮かべる人も多いはず。ヒューズ映画のヒロイン、モリー・リングウォルドのどこかスネたような表情が実は好きだった・・・そんな男子諸君もいることであろう。さて、本作は休日登校を命じられた5人の高校生が主人公。カメラは最初と最後を除いて校外に出ることはなく、ひたすら図書室の5人を追い続ける。初めはののしり合うような5人だが、お互いのことを語り合ううちに次第に相手と我が身を見つめ直し、少しだけ成長できた・・・そんなお話。

 実は最近、初めてこの映画を観たのだが、高校生の当時観ていたらもっとグッときていた部分があるのだろうな。やはり映画には観るべき時期に観るべき映画があるのだ。その年頃に観ていたらきっと今と違う納得をすると思うんだよね。僕は大学生のとき公開から1,2年遅れで「フットルース」を観た。そのときに”高校生の時点でこれを観ていたらもっと夢中になれたかも”と思った。「ブレックファスト・クラブ」を今観るとなんか今イチ共感しずらい。休日登校させられることのない優等生だったからかって?いえいえ、優等生には程遠い存在でしたよ。それともそれは製作当時から30年近く経って僕が大人の側に立ってしまったからなのだろうか。それとも主人公たちが「あんな風になりたくない!」と口々に言う"親"ってヤツに僕がなったからだろうか。

 きっとそうだろう。最初と最後に登場する親たちに何ひとつスポットが当たらないのに不満が残った。自分の子供が車のすぐ横で誰かとキスしているんだよ。車に乗った後で、エミリオくんにこんな一言でもあったなら。
「お前、あん女んコは誰かえ?。レスリングん方は今ひとつじゃが、うまくやっちょんじゃねぇか(何故か大分弁がしっくりくる・笑)」
僕は納得していた気がする。

 それでも、親の期待に潰されそうとか、成績のことで思い詰めたりとか、主人公たちが語る思春期独特の悩みは万国共通。単なる雑談が次第に自分の状況や悩みについての告白大会と変わっていく。その様子はお気楽な80年代青春映画のはずなのに、まるで舞台劇を観ているようにスリリング。それは校内からカメラがほとんど出ず、輪になって話す場面でみられるようにカメラ自体も彼らの目線に降りているからだ。カメラの目線と僕らはひとつになり、彼らと同じ目線に立つ。

 さて、音楽担当はジョルジオ・モロダー一派のドラマー、キース・フォーシー。ここではインストロメンタルのスコアも書いており、ヴァリエーションも豊富でいい雰囲気を出している。ちなみに Flashdance ~ What A Feeling の歌詞をアイリーン・キャラと共作したのも彼である。シンプル・マインズにとって初のNo.1ヒットとなった主題歌 Don't You (Forget About Me) は、キース・フォーシーがこの映画のために書き下ろした曲である。実は当初ビリー・アイドル、ブライアン・フェリーにもオファーがあったそうなのだが、いずれも断られている。そしてプリテンダーズに話がいった後、クリッシー・ハインドが夫が在籍していたシンプル・マインズに話をまわしたそうである。シンプル・マインズも歌うのを嫌がったという話もあるが、これが大ヒットにつながったというから世の中はわからない。そんなたらい回しされた曲なれど、この曲のカッコよさは今聴いても色あせていない。僕はシンプル・マインズをこの曲で知った。この後のアルバム "Once Upon A Time" はしばらく聴きこんだなぁ。

 キース・フォーシーは Don't You (Forget About Me)  をとにかく気に入っているらしく、後にビリー・アイドルのベストアルバムで再録している。サントラには他に ワン・チャン(Fire In The Twilight) や ジャネット・ジャクソンのプロデューサーとしても知られるジェシー・ジョンソン(Heart Too Hot To Hold)らも参加。サントラも映画自体も当時の派手なヒット作とは違い、どうしても地味な印象を受けるが、高校生にとって等身大の悩みを同じ目線で描いてくれたこの映画は、当時ティーンには強く心に刻まれる一作となったのである。5人が円形に並んで語り合うクライマックスは、カーラ・デ・ヴィトーの We Are Not Alone と共に印象的であった。やっぱり当時観ておくんだったなぁ。





※Simple Mindsの曲が流れる主な映画
1985年・「ブレックファスト・クラブ」 = Don't You (Forget About Me)
1995年・「ギャングスターズ 野獣死すとき」 = 7 Deadly Sins
1998年・「マーシャル・ロー」 = Great Leap Forward



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かぐや姫の物語

2013-11-20 | 映画(か行)

■「かぐや姫の物語」(2013年・日本)

●2013年毎日映画コンクール アニメーション映画賞
●2014年LA映画批評家協会賞 最優秀アニメ賞
●2014年ボストン映画批評家協会賞 アニメーション映画賞

監督=高畑勲
声の出演=朝倉あき 高良健吾 地井武男 宮本信子

 日本最古の物語とされる「竹取物語」は、これまで数々の映像化がなされてきた。僕らは幼い頃からそれを幾度も目にしてきた。小学校高学年の頃には、竹取物語は平安時代に異星人との接近遭遇があったことの伝承だとかいう説を少なからず信じていたし、「ウルトラマンA」で南夕子が月に帰ると言い出すエピソードに心震わせたものだ。80年代には市川崑監督が実写映画化。沢口靖子のかぐや姫と「未知との遭遇」のパロディのようなUFOが現れた。日本人として親しんできたお話ではあるのだが、わからないのはかぐや姫自身が何を考えていたのかだ。おそらく多くの人は、月からやってきて地球人を引っかき回した挙げ句に帰ってしまったお姫様くらいにしか思っていないだろう。ジブリの鈴木プロデューサーは、いつか誰かが取り組むべき題材だと思っていたと聞く。そして長い製作期間を経て完成したのが、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」なのだ。

 教科書でも読んだ竹取物語の冒頭が宮本信子のナレーションで流れて、映画は幕を開ける。これまでのジブリアニメは細部まで描き込まれた緻密さが印象的だった。「風立ちぬ」でも関東大震災の数秒に1年以上絵が直され続けたと聞く。対照的に、「かぐや姫の物語」で目を引くのはそのシンプルな線の作画だ。刷毛や筆のはらいまで生々しく、淡い色調の絵は、翁のやさしい表情はとにかくやさしく、苦悩するかぐや姫の表情はとにかく険しく。背景も最小限の絵で表現し、観客には銀幕に現れる登場人物以外の余計な情報はまったく与えない。それは観客の意識を登場人物に向けさせる高畑勲監督の演出の巧さ、潔さ。かぐや姫の成長はとにかく謎めいて描かれる。まるでタケノコのようにすくすくと成長する彼女を、村の子供達は"たけのこ"と呼んだ。あぁやっぱり異星人なんだよ。「ヤマトよ永遠に」でイスカンダル人が地球での成長が早かったもんなぁ・・・とつまらないことを思い出したりもする(苦笑)。子供達が歌うわらべ歌の続きをなぜか彼女は知っている。子供達の交流がほのぼのと描かれる一方で、前半で印象的なのは年老いて子供をもつことになった翁(声は遺作となった地井武男)と媼の溺愛ぶり。黄金を手にして姫のために都に屋敷をこしらえ、村を後にする場面からかぐや姫の心情は強く描かれていく。

 都の暮らしを最初は喜んでいた姫だが、次第に村の子供達と会えなくなった寂しさを募らせていく。おつきの女童の愛嬌あるキャラクターが時折笑いを誘うが、中盤の空気は重い。目の前の現実と自分の存在意義に苦悩するかぐや姫が描かれる。姫のお披露目の宴が三日三晩開かれても、姫自身はそっちのけの現実。育ってきた村の環境を懐かしむ姫。幼なじみの捨丸との苦い再会。次々にやってくる求婚。私のことは何一つ知らないのに。結婚に逆らう姫が貴公子達の言葉を逆手に、数々の難題を言うくだりはオリジナル通りにユーモラス。今の自分の年齢で見ると、男という生き物の身勝手さと愚かさを感じずにはいられない。次々に結婚を申し込まれて貴公子をあしらい続けたかぐや姫。それが僕らが抱いていたイメージだったが、彼女はここで再び涙にくれる。自分が結婚を拒み続けたばかりに命をおとす者まで出て、何も自分を縛り付けることのなかった昔には戻れない現実。どうにもしがたい貧富の差。そしてある月夜に姫は・・・。

 かぐや姫が何を考えていたのか。上っ面のストーリーだけで語られがちだったこの物語を、高畑監督は血の通った温かい物語に仕上げた。監督が78歳の監督作としてのこしたかったもの。それは美しいニッポンの姿。こんな美しい物語が遠き昔から語り継がれて、こんな美しい風景があって、ひとつひとつの出来事に喜び涙する心ある人間がいる。そんなニッポン。たいせつなものを思い出させてくれる、という言葉でこの映画を語るだけでは物足りない。人が人を思う気持ちをありがたいと思える。それが尊いものだと教えてくれる。主題歌を歌うのは僧侶でもある二階堂和美。 
あなたに触れたよろこびが 深く深く/このからだの端々にしみ込んでいく
いまのすべては過去のすべて/必ずまた会える懐かしい場所で
「いのちの記憶」の歌詞が心に染みるラストシーン。古(いにしえ)のよき物語と現代人の心がひとつになる美しいエンディングが待っている。



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燃えよ!カンフー

2013-11-20 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その26)★デビッド・キャラダイン主演作
Kung Fu: Complete Third Season [DVD] [Import]
■「燃えよ!カンフー/Kung Fu」(1972~75年・アメリカ TVシリーズ)

監督=ジェリー・ソープ他
主演=デビッド・キャラダイン フィリップ・アン ケイ・ルーク

 ビルを演じたデビッド・キャラダインが主演したカンフー西部劇がこれだ。両親を失い、少林寺で修行した混血児ケインが、西部開拓時代のアメリカを舞台に悪漢と対決するお話。2004年にDVDがリリースされて、今回やっと観ることができた。TVで放映されなかったパイロット・ムービー「序章」も収録されている。ケインの生い立ちやアメリカに逃れてきた理由が明らかにされている。86年にはこの復刻版TVムービーがブランドン・リー共演で製作されている。

 このシリーズがすごいのは70年代初めだというのに、白人以外の人間が主人公となる米国製TVドラマだったこと。これはスタッフにしてもキャストにしても大いなる冒険であったに違いない。それに東洋の思想を奇異なものとして描かずに、きちんと尊重しているところが素晴らしい。シリーズ中は多くの脚本家が執筆したそうだが、少林寺での修行シーンだけは外部の人間に書かせなかったという。それだけ知識も必要だし、実際に完成した映像でも敬意すら感じられる。罪人として追われる身ながら、旅の先々で自分の技(能力)を使って悪を懲らしめていく・・・って後の「超人ハルク」TVシリーズの一部にもこうしたパターンが見られる。「ハルク」が放送されていたのは79年あたりからなので、影響を与えたのかもしれない。そもそもこの「燃えよ!カンフー」はブルース・リーのために考えられた企画だったそうな。

 タランティーノはビルのイメージを作り出すにあたって、キャラダイン主演作である「サイレント・フルート」(これもブルース・リー企画)や本作を念頭に置いた。「キル・ビル」ワールドではハットリハンゾウも「影の軍団」のハンゾウ〈と同一人物〉だとされる。ビルも同様で、あのヒ-ローがいかにして”悪”になったか・・・というエピソードまで考えていたというからすごいよね。でもそれはなくて正解だろう。デビッド・キャラダイン自身もビルは悪に走ったケインではなく、自分自身に近いと考えて演技していたそうだから。でも何にしてもこれは一度見ておくべきTVシリーズですな。



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