Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

冴えない彼女の育て方♭

2021-11-28 | テレビ・アニメ






全11話プラス#0、配信にて完走。

怒涛のラブコメ展開になるもの…と思って見始めたら、とんでもない刺激物だった。え?#0の全編サービス回や某時代劇のようなお約束入浴シーンのサービスカットにええ歳したおっさんが刺激されたのかって?

敢えて言おう!それは違うと!

…敢えて言うってことは少しは認めてるってことなんだけどね
(加藤恵風に読んでください)

いやもう、クリエイティブマインドにグサグサ刺さりまくる展開と台詞。誇りをもって物事に取り組むとはどういうことなのか。ハンパで終わるとはどういうことなのか。成し遂げる為の覚悟とはどういうものなのか。そしてその原動力となるものは何なのか。モノづくり系作品も数あれど、まさか「冴えカノ♭」がそこに着地するとは思わなかった。

追加された第3のルートをめぐる詩羽とのせめぎ合い、英梨々の根性に数回に渡って感動させられた後の冬コミ回。恵の痛烈なひと言にカウンターパンチを喰らったのは、倫也だけではなく僕らも同じだ。ゲームづくりに巻き込まれただけだったはずの恵が、クリエイター2人の間でどういう気持ちでいたのか。そして恵がいかに重要な存在になっていたのか。

2期後半の寂しさと葛藤と悔しさが入り乱れる展開に、どう着地するのかとハラハラ。そして恵があの坂の上で倫也に告げる言葉に涙。あんなこと言われたら泣く、ぜってぇ泣く。もう僕にとっても君はメインヒロインだ、僕の推しは君だ。うん。

そしてやっぱりラブコメ?という最終回の着地点が見事。倫也の鈍感ぶりにいいのか?と思いつつも、だからこその安心感でもある。

うーん、やっぱりみんな好き。
ダメじゃん、オレ💧



TVアニメ『冴えない彼女の育てかた♭』公式サイト

TVシリーズ第一期・第二期全25話を収録したBlu-ray Disc BOX 2019年9月25日(水)発売

 
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冴えない彼女の育て方

2021-11-26 | テレビ・アニメ






いわゆるハーレムアニメと呼ばれる男子願望系は数多く存在する。その多くの作品では、主人公の男子は女性に囲まれている状況に鼻の下を伸ばしている輩。こんなんだから今どきのアニメはけしからんという同世代もいるけれど、高校時代に「うる星やつら」で本格的にアニメ開眼した自分としては、諸星あたるに比べたら大したことないじゃん!と完全に免疫ができているようだ(笑)ついでに言うと、本編でほぼ流れないキャラソンを許容できるのも「うる星」の影響だと思うのだ。

話を戻そう。

ノイタミナ枠で放送された「冴えカノ」も御多分に洩れずいわゆるハーレム系。だが主人公の安芸倫也くんは、これまでのどっちつかずな主人公像とはひと味違う。恋愛ゲーム製作に類い稀なる情熱をもつ彼にとって、それぞれ才能あふるる周りの女子たちを恋愛の対象と思っていない。時々、オンナを感じてドキリとはするけれど、そこでガツガツ攻めたりはしない。一方で彼女たちは倫也にただならぬ思いを抱いているというのに。彼の鈍感ぶりと彼女たちのすれ違いがロマコメとして格段に面白い。そして、ストーリーが進むにつれて一般男子がもつであろう恋心やときめき、乙女心を少しずつ理解していく過程にキュンとくるのだ。まあ、最終回を迎えても、倫也くんが女心を学んだとは言い難いけど。

彼をとりまくヒロインたち、それぞれ個性があって、キャラの色分けができてるのが楽しい。ED曲のとおり、まさに「カラフル」。安野希世乃演ずる加藤恵が個人的にはお気に入り。坂道での出会いシーン、ショッピングモールの買い物のエピソードがいいね。あー、でも詩羽先輩とお泊まりの回はたまらんね。英梨々とロミオとジュリエットの回もよかったなー。美智留のバンドが空色デイズ演奏する回も名場面。

あー、もう、みんな好き。ダメじゃん、オレ(汗)



TVアニメ『冴えない彼女の育てかた』公式サイト

TVシリーズ第一期・第二期全25話を収録したBlu-ray Disc BOX 2019年9月25日(水)発売

TVアニメ『冴えない彼女の育てかた』公式サイト

 
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OVER DRIVE

2021-11-23 | 映画(あ行)

◼️「OVER DRIVE」(2018年・日本)

監督=羽住英一郎
主演=東出昌大 新田真剣佑 森川葵 北村匠海 吉田鋼太郎

成長物語は、映画を観て感動させる要素の一つだ。だから最初からデキるヤツが主人公の場合、ストーリー上いろいろあっても、冒頭と印象がさほど変わらなくて心底物足りないと思うことも多い。羽住英一郎監督の大ヒット作「海猿」の主人公がまさにそれで、僕はどうも好きになれなかった。

羽住監督がモーターカースポーツの世界に挑む「OVER DRIVE」の主人公兄弟。これがまたどちらもデキるヤツ。コツコツと仕事をこなすメカニックの兄と、天性の才能あるドライバーの弟。やっぱり映画の最後までデキるヤツなのは変わらなかったけれど、「海猿」と違ってこの二人を見守っている2時間は決して嫌ではなかった。自分のことばっかり主張する弟だけど、実は兄を信頼しているし、過去の行いを悔いている。そんな弟を自分の技量で一途に支える兄。「俺たちはバディだ」とか言ってた「海猿」が、結局個人の力量やんとしかし思えなかったのと違って、お互いを認めている兄弟の様子が「海猿」にはないバディ感があって、意外と好感だったのだ。

通常カーレースの映画は表情は見えないし、車の順位を映像だけでちゃんと理解させるのは難しいものだ。本作はラリーの映画だから、サーキットのレースと違って車が競り合う場面がないし、ドライバーの表情が分かりづらくてもナビゲーターやピットの面々がいることで、状況が伝わりやすい。ライバルチームとの順位争いもテンポがよくて、思っていたより楽しんで観ていられた。

そんな男二人のドラマに絞り込んでいたら、「フォードvsフェラーリ」みたいな没入感があったのだろうが、スポンサー会社の担当者女子が、男たちのドラマにいちいち水を差すのだ。映画は彼女の成長物語でもあるんだけど、チームの一人としてピットの面々に認められる経過があるわけでもないし、自分をラリーの仕事に押し付けた上司に頑張りを認めさせることもない。彼女の会社への逆襲がラストに用意されていたらまだよかったが、そこがないなら、もう男二人のドラマとして観たかった。

北九州ロケはレトロな街並みの門司港、雄大な平尾台など。いろんな絵が撮れるのがよき。赤煉瓦が素敵な大阪商船ビル前をドリフトで走り抜けるなんてかっちょいい。





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ブラザー・オブ・ザ・イヤー

2021-11-21 | 映画(は行)

◼️「ブラザー・オブ・ザ・イヤー/น้อง.พี่.ที่รัก(Brother of The Year)」(2018年・タイ)

監督=ウィッタヤー・トーンユーヨン
主演=サニー・スワンメーターノン ウッラサヤー・セパーバン ニチクン・ホルベチクル

ダメ兄貴とデキる妹。素直になれない二人の関係を描いたメイドインタイランドの人情コメディ。留学から帰国して日系企業に勤め始めた妹は、タイ人と日本人のハーフ男性と付き合い始めるが、父親ヅラする兄が何かと邪魔で仕方ない。仕事でも顔を合わせることになる兄妹の関係はだんだんとこじれていくのだが、結婚の日取りが近づいてお互いとのこれまでの関係を振り返る。しかし…。

ジャパンカルチャーが二人をつなぐポイントになってるのを見ると、こんな影響与えてるんだな、と嬉しい気持ちになる。日系企業の面々のちと微妙な日本語と、興奮すると「トラ!トラ!トラ!」と叫ぶ時代錯誤もいいとこな上司が、日本人鑑賞者には気になるところ。新入社員歓迎野球大会は、ストーリー上で重要な部分。ひと昔前の企業なら確かにありそうよね。

兄への思いを述べる披露宴のスピーチが涙を誘う。しかし再び二人の間には深い亀裂が。そしてダメ兄貴が自分が口にしたひと言で号泣するラストがいい。人情ドラマに国境はないよな。

日本では劇場未公開。2018年の東京国際映画祭で上映され、今回ロケ地である北九州国際映画祭で上映された。妹が結婚後に住む街として北九州市が登場。小倉城や若戸大橋が美しい。




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イイネ!イイネ!イイネ!

2021-11-20 | 映画(あ行)


◼️「イイネ!イイネ!イイネ!」(2017年・日本)

監督=門馬直人
主演=クレイジーケンバンド ハリン 伊原剛志 中野英雄 金子賢

クレイジーケンバンド結成20周年で製作された横浜への地元愛あふるる佳作。現在はミュージシャン、そのマネージャー、ヤクザとそれぞれの道を歩んでいる幼なじみの男3人。ある日、トラブルに巻き込まれている女性をケンが助けたことから、裏社会のもめ事に巻き込まれていくことに。横浜スタジアム公演が決まったCKB、そして女性との恋の行方やいかに。

本人役をセルフカバーする(演じる)横山剣さんを始めとして、とにかく不器用な男ばかりがズラリと並ぶ。組織に馴染めないヤクザを演ずる金子賢、地味ながら筋を通すヤクザの伊原剛志、ヘマをやらかす旧友中野英雄。それをバンドメンバーや秋吉久美子演ずる頼れるママさんなど周囲の人々がそっと協力したり、助言したりする様子がいい。街の裏にある厳しさとそこにある人情が染みる。

たまに好きな音出せるから楽しいんだってスタンスのバンドメンバー。みんなで愛車を駆ってパレードみたいに街を流す場面、好き。助けた女を追うヤクザたちが「黒服の奴らと一緒にいるんです」と言うのが、バンドメンバーだから笑える😆

CKB楽曲は全編に流れるが、アルバム「SOUL電波」収録の「生きる。」が究極の励ましソングとして心に残る。

どうしたっていうんだい
なんてこたないじゃんな
気にすんな じゃ泣くだけ泣きな♪

この一曲だけを友の為に演奏する場面、助けた女性を励ます為にアカペラで歌う場面。そしてその曲が傷心の自分に突き刺さるクライマックス。

くーーーーっ🥲
いいね👍いいね👍
いーっねっ👍

特定のファンサービス映画ではあるけれど、CKBお好きならお気に召すはず。



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祈り 幻に長崎を想う刻

2021-11-15 | 映画(あ行)


◼️「祈り 幻に長崎を想う刻」(2020年・日本)

監督=松村克弥
主演=高島礼子 黒谷友香 田辺誠一 金児憲史

長崎原爆で倒壊した浦上天主堂遺構保存をめぐる人々の思いを描いた舞台「マリアの首」の映画化。僕が映画館に足を運んだ時期には、九州では長崎と北九州でしか上映されていなかった。映画冒頭でも紹介されるように、小倉と八幡も原爆投下候補地だったんだもの。長崎に原爆が落とされた日は、戦争や核廃絶についていろんな気持ちがよぎる。

もともとは舞台用の戯曲なので、闇市のセットやクライマックスのマリア像を運び出す場面の演出は、かなり舞台寄りになっている。具体的に被害の数字を並べながら惨状を訴える台詞にしても、一般映画を観る感覚だと、説明過多に聞こえたり、オーバーアクトに感じられるところもあるだろう。

一方で、原爆投下後の惨状は広大な風景として映し出される。おびただしい数の死体が転がる中で、生き残っている人がわずかであることが誰の目にも明らかとなる、映画化だからできた表現になっている。またそれぞれの登場人物の表情に迫れるのも映画だからできること。特に田辺誠一が演ずる病身の夫が、「本当に終わらせるべきは核ではなく戦争」と訴える場面は、それまで遠景や舞台を撮っているように引いていたカメラがグッと迫る印象的な場面になっている。

舞台で語り継げばいい、映画にして何も説教くさい作品にしなくてもいいのでは、という意見もあるかと思う。でも映画にするからこそ、原爆投下後の長崎で人々が抱えていた思いや、浦上天守堂の様子が、多くの人に伝わりやすい機会となる。エンターテイメントではないけれど、舞台の雰囲気も残しつつ、語り継ぐべき物語としてこの映画が製作されたことは大事なことだと思うのだ。

昼は看護師、夜は娼婦である鹿(高島礼子)は、壊れたマリア像を守り抜こうと計画する。その仲間である忍(黒谷友香)は病身の夫を支える一児の母。それぞれの過去。登場人物それぞれの台詞の端々に、戦争への怒りと平和を願う気持ちが示される。一つでいい。この映画の彼らの言葉を一つでいいから、心の片隅に留めて欲しい。



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リスペクト

2021-11-13 | 映画(ら行)


◼️「リスペクト/Respect」(2021年・アメリカ)

監督=リエスル・トミー
主演=ジェニファー・ハドソン フォレスト・ウィティカー マーロン・ウェイアンズ オードラ・マクドナルド

音楽もの伝記映画が次々に製作されている。本人になりきった演技はもちろんだが、歌や演奏も聴かせなければいけない。ましてや数々の偉業をなし遂げたアーティストだけに、観客は思い入れがあるから中途半端なことはできない。主役は、デビュー作「ドリームガールズ」で歌唱力とビヨンセを喰らう名演技を見せたジェニファー・ハドソン。これ以上のキャスティングがあろうか。彼女なしにこの企画は実現し得なかっただろう。

映画「リスペクト」はクィーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンの生涯を描いた力作。幼い頃から父親の教会で歌っていたアレサ。私生活でのトラブル、公民権運動、マネージャー男性との紆余曲折、様々な困難を経て、再び自分のルーツであるゴスペルを歌う1972年のチャーチコンサートに至るまでを描いたものである。

僕が初めてアレサ・フランクリンが歌う姿を見たのは、忘れもしない「ブルース・ブラザース」のThink。フリ〜ダム♪と歌うパワフルな姿だ。代表曲はなんとなくどこかで聴いたことがあるレベルで、80年代育ちなものでユーリズミックスとデュエットした楽曲や、Freeway Of Loveなど当時のヒット曲、映画「コミットメンツ」でカバーされたChain Of Fools、ストーンズのJumpin' Jack Flashのカバー(めちゃくちゃ好き♡)あたりを知っている。だから映画「リスペクト」で語られる時代の活躍は詳しくは知らなかったので、とても興味深かった。

公民権運動の時代だけに、白人と黒人の衝突や無理解は映画以上のものがあったことだろう。そんな中で白人ミュージシャンの演奏をアレサが気に入って受け入れるのは、グッとくる場面の一つ。チャーチコンサートのAmazing Graceの熱唱。そしてエンドクレジットで流れる、ご本人の(You Make Me Feel Like) A Natural Womanに感激。一緒にいるだけで素直な気持ちになれる。そんなパートナーへの気持ちを歌った名曲。世間の困難に向き合う女性の歌もパワフルで素晴らしいけれど、この曲の優しい響きが心に残った。




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宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち 前章-TAKE OFF-

2021-11-11 | 映画(あ行)


◼️「宇宙戦艦ヤマト2205新たなる旅立ち 前章-TAKE OFF-」(2020年・日本)

監督=安田賢司
声の出演=小野大輔 桑島法子 大塚芳忠 山寺宏一

オリジナルの「新たなる旅立ち」にテレビシリーズ「ヤマトⅢ」の要素を加えて再構築した新作前編。

惑星のコアが崩壊しつつあるガミラス星からの移住計画が進む中、ヤマトは地球政府要人とガミラス大使を乗せて大マゼラン星雲へと赴く任に就く。突然ガミラス星に正体不明の敵が迫り、ガミラス星が崩壊したことで、双子星であるイスカンダルが軌道を外れて暴走を始める。追うガミラス艦隊に迫る強大な敵。イスカンダルとガミラスの危機と、地球の政治的な立場の狭間でヤマトは…。

ヤマトを旗艦とする3艦の部隊で、真田志郎と森雪がそれぞれ艦長となっている。前作の結末で古代と雪が背負った重い十字架。出航前夜に、沖田十三像の前で交わす言葉にただのカップルではいられない辛さがにじむ。不穏分子とされる部下の処遇について悩む古代に、並んでいる雪が黙って肩に手を回す場面では、もうそばで見守るだけの存在ではなく、苦楽を最前線で共有する関係だと、無言で納得させてくれる。

そしてさらにかつての裏切り者がヤマトに乗船する。

総集編的な「宇宙戦艦ヤマトという時代」では、真田志郎の目線でシリーズを総括したが、今回は芹沢統括司令の目線でこれまでが振り返るところから始まる。これまで古代進たちの信念や行動と対立する存在でもあった彼だが、これまでの出来事と彼らをどう見ていたのか。

先達に誓ったデスラーの強い信念が描かれる。溶岩に覆われた地表に船を近づきながら「一人でも!」と叫ぶ姿、難民を救おうとする姿が心に残る。

さらにイスカンダル星の地下サンクチュアリの秘密など、これまでになく様々な要素が入り混じる。2月公開の後編が楽しみで仕方ない。



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劇場版 きのう何食べた?

2021-11-08 | 映画(か行)


◼️「劇場版 きのう何食べた?」(2021年・日本)

監督=中江和仁
主演=西島秀俊 内野聖陽 山本耕史 磯村勇斗 梶芽衣子

僕はそれなりに厨房に立つ男子で、テレ東の料理番組「男子ごはん」好きで毎週見てた時期もあった。ドラマ「きのう何食べた?」は仲良しの映画友達女子からのおすすめで、けっこうハマってしまった。ゲイカップルの穏やかだったり、大小の波風が起こったりの日常に、気づくと癒しを感じてしまう不思議なドラマ。

さて今回の劇場版。こんなに黙って観られない映画も珍しい。映画館のあちこちから聞こえるのは、クスクス笑う声だけではない。次々に登場する料理や語られるレシピに反応する声が自然に聞こえるのだ。普段なら周囲のそうした声が気になるところだが、この映画については違う。みんなが同じリアクションをするから、異常な一体感がある。金目鯛を使ったアクアパッツァがスクリーンに現れた瞬間、
😳😲😋「おおーっ♡」「おいしそ」
そしてその残り汁を使って西島秀俊がリゾットを出してきた瞬間、
🤩😍😆「ああーっ♡」「食べたいっ!」
ローストビーフの簡単な作り方を田中美佐子が指南する場面では、
😮😦🤭「その手が…」「あ、やってみよ」「すごっ」「えっ」
これはもう120分の飯テロだ。右隣からお腹が鳴る音すら聞こえた。

さらにドラマでおなじみのキャラたちにザワザワ。思わず声が出る人もいる。毎回変なTシャツで登場するジルベールの胸には「ユニコ」と文字の一部が見える。
😀「あれ、きっとトウモロコシが頭についた一角獣🦄よ」
😆「マジーっ!ユニコーンっ!www」
ドラマを共有してるからこそのリアクション。なんだこれ。めっちゃ楽しい♪

それでいて、ゲイが置かれた現実に葛藤する姿もきちんと描かれる。でも老いてきた親との関係や、自分の家族を大事に、って彼らの状況だから言われることじゃない。誰にも共感できるポイントがじわーっと沁みてくる。ドラマの尺に慣れてるから2時間持つのかと思ったけれど、予想以上にいいエピソードが重ねられて十分に楽しめる。スーパー中村屋の店員が黙って特売品を指さして、ニヤッと笑うのが好きっ。店内で流れる中村屋の歌が頭から離れないww

上映が終わって思ったことは二つ。人からかけられるひと言がどれほど大事なことか。ドラマもそうだけど、この劇場版でも嬉しいひと言がたくさん。自分はこうした言葉をかけてあげられているんだろうか。言葉が選べているんだろか。

そしてもう一つは、一緒にいたいと思える人と一緒にいることの心地よさ。映画「プルコギ」で田村高廣が「仲良くなりたかったら飯を食え」と言ったように、韓国映画「キッチン 3人のレシピ」でヒロインが料理で思いを伝えようとしたように、食は人と人をつないでくれる。映画館を出た後、緊急事態宣言明けでやっと仲良しがそろってお酒呑めた。僕らは映画と食といろんなことでつながっているんだな😉






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悪い種子(たね)

2021-11-06 | 映画(わ行)

◼️「悪い種子(たね)/The Bad Seed」(1956年・アメリカ)

監督=マービン・ルロイ
主演=パティ・マコーマック ナンシー・ケリー ヘンリー・ジョーンズ アイリーン・ヘッカート

ナチュラルボーンキラー(生まれついての殺し屋)という言葉もあるし、人の残忍さは遺伝するものという考え方がある。子供の言動を見ていて、「あちゃー、あの頃のオレと同じようなことやってるよ」と思うことは、子育ちしていてしばしばある(汗)。生まれた後の育ち方の問題だけとは思えないことは、確かにあるとは思うのだ。

善悪の区別が希薄な少女に向き合う母親の苦悩を描いた舞台劇の映画化「悪い種子」。「哀愁」や「心の旅路」などクラシックの名作で知られるマービン・ルロイ監督が、1950年代にこうしたテーマを扱っていたことに驚く。異常心理による犯罪映画代表作であるヒッチコック先生の「サイコ」も、子供の驚くべき行動で恐怖する「光る眼」も1960年の作品。サスペンスやSFであるそれらとは異なり、日常に起こりうる怖さだけに、「悪い種子」はかなり挑戦的な作品だと言える。「結末を話さないでください」めいたメッセージが最後に映されるが、同様の注意を宣伝文句に使った「サイコ」より先。

母親が苦悩し始める後半が見ていて痛々しくて、それだけの映画だったら投げ出してたかも。並行して、使用人との腹の探り合い、善良な娘と信じている家主のおばさんとのやりとり、被害者の母親や学校関係者と様々な関係が次々と絡んできて、気持ちが落ち着く暇がない。追い討ちをかけるように繰り返されるピアノのメロディ。驚愕の結末まで目が離せない。舞台劇の映画化だからなのか、カーテンコールのようなエンディングが付け加えられている。



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