「Fate/Zero」で征服王イスカンダルをサーヴァントに聖杯戦争を戦い、生き残ったマスター、ウェイバー・ベルベット。成長した彼は、魔術師の総本山時計塔の君主の一人、ロード・エルメロイ2世となっていた。とは言え、それはエルメロイ家の次期当主であるライネスが成人するまでロードとして雇われたような義兄妹関係に基づくもの。彼が頼れる愛弟子グレイ、個性的な教え子たちと共に、魔術がらみの難事件に挑むミステリードラマである。
Fateシリーズのスピンオフ作品ながら、他にはない世界観と謎めいたストーリーに毎回魅了された。グレイが普段は隠している戦闘能力を発揮する場面のカッコよさ。一人称が"拙"と控えめで古風な言葉遣いもいい。師匠への信頼の中に時折り女の感情がにじむ。口元の描画と声優のちょっとした息づかいで、さりげなく表現されてるのが好感。誰を信用していいのかわからなくなる複雑な人間関係と独特な設定になんとかついていきながら、BS初回放送の録画で全13話を完走。深く理解できずとも、僕はこの雰囲気は十分に楽しめた。サブキャラたちもそれぞれとても魅力的でミステリアス。そして最終回。かつてのサーヴァントであり、彼が追いかけ続けた憧れの男の言葉に思わず涙した。これって、原作読めってことよね。
何より気に入ったのは、オープニング曲がインストロメンタルであること。基本は「ヒッチコック劇場」や「刑事コロンボ」「名探偵ポワロ」と同じミステリー番組なんだもの、その決断大正解。舞台である古風な英国をイメージさせるストリングスとフルートの音色が奏でるメロディ。オープニングの89秒の中で起伏のあるドラマティックなアレンジをやってのける梶浦由記のいい仕事。