◼️「リリィ/Le Petiti Lili」(2003年・フランス)
本作「リリィ」は日本ではDVDスルーとなった作品。ヒロインはリュディビーヌ・サニエ。フランソワ・オゾン監督作で気に入って、彼女目当てでセレクト。えーと、フレンチロリータに弱くてすみませんw
チェーホフの「かもめ」を現代フランスを舞台に翻案した作品。そう聞くと敷居の高さを感じてしまうが、それほど小難しい映画ではない。女優の息子ジュリアンは映画監督を目指していて、恋人リリィを主役に作品を撮った。伯父サイモンの家で家族にお披露目をする。母に酷評されて落ち込むジュリアン。母の出演作を撮っている監督ブリスはリリィに可能性を見出し、彼女を連れてパリへ。ジュリアンを慕っていたジャン・マリーの支えもあって、ジュリアンは数年後に監督デビューを飾ることになる。作品は伯父の家で起こった家族の出来事で、母やブリスが本人役でキャスティングされるが、リリィを演じるのは誰かが決まっていなかった。
うーむ。最初に挙げたミレール監督の代表作と比べると、どうも居心地の悪さを感じる。それは、映画の話自体がタイトルロールであるリリィの視点を貫いていないからだろう。映画前半、庭園に集っていたみんなをリリィが魅了したのは間違いないのだけれど、その後でリリィへの思いをジュリアンが募らせるでもなく、芸能界を駆け上がるリリィが描かれる訳でもなく。ストーリーの真ん中からリリィがどっかに行ってしまうのだ。
中盤は悩み苦しむジュリアンを中心に、伯父サイモンと母マドの意見対立、ジャン・マリーの恋心と村の医者をめぐる女たちの様子が描かれて、群像劇の様相になる。それはそれで悪くないのだが、リリィがいなくても成り立つエピソードが続き、後半売れっ子になったリリィが「私に自分の役を演じさせて」と懇願するのが唐突に思えてしまう。ジュリアンを挫折させた庭園での出来事に、リリィがどれくらいの思い入れがあるのか。その後も実はジュリアンを思い続けていたとか、映画中盤不在だったリリィが何を思っていたのかがわからないだけに、観ていて悶々としてしまう。
その空気を救うのが初監督作の撮影現場を舞台にしたクライマックス。招かれたジュリアンの家族たちが、撮影を見守る様子が微笑ましい。特に伯父サイモンが自分役の名優ミシェル・ピコリに挨拶して、映画の話に花が咲くのが楽しい。監督役のベルナール・ジロドー、ジャン・ピエール・マリエール、ジュリー・ドパルデューら役者陣が魅力的。リリィ不在のどこに辿り着くのかわからない中盤の人間ドラマが悪くないのは役者の力。
えー、お目当てのサニエたん。冒頭の眩しいヌードから始まって、田舎娘から脱皮した後半の表情まで素敵。あんまり聡明な役柄ではないけれど、もっと出番が欲しかった。あのタレ目が好きなんだろって?図星♡