Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2023年9月のプレイリスト

2023-09-30 | 今日のBGM

◆2023年9月のプレイリスト
2023年9月に聴いていた愛すべき30曲

1 THE SEPTEMBER WIND 1985(松岡直也)
もう9月。早いよなぁ。
2 オーダーメイド(RADWIMPS)
野田洋次郎が選ぶ言葉の感覚。聴くたびにすげえなと思うのだ。
3 ALICE(My Little Lover)
買い物中店内に流れていて、無性にちゃんと聴きたくなった。
4 Even The Nights Are Better(さよならロンリー・ラブ)(AirSupply)
昔から思ってたけど、この曲はどこかABBAを思わせる。時代のせいか。
5 爆竜戦隊アバレンジャー(遠藤正明)
20周年の新作が驚くほど当時のテイストで感激。主題歌好きだ。カラオケ行きたい🎤
6 Pick Up The Pieces(ユッコ・ミラー)
いろんな🎷演奏聴き比べてみる。
7 Sleep On My Baby(坂本龍一&カクトウギセッション)
アルバム「Summer Nerves」は夏に欠かせない愛聴盤。
8 City Hunter〜愛よ消えないで〜(中川翔子)
「シティーハンター」新作にちなんで、小比類巻かほるの主題歌をカバー。
9 Junior's Farm(Paul McCartney & Wings)
中学生の頃から今まで聴き続けている洋楽は、やっぱりポールなんだよな。
10 A View To A Kill(Duran Duran)
デュランデュランは女子ファンが多かったから、当時好きとは言いにくかったw

11 心音(中島みゆき)
未来へ/未来へ/未来へ/君だけで行け
12 Girl Goodbye(Toto)
朝から聴いたら🎸リフが頭から離れなかった🥴♪
13 ぼくの先生はフィーバー(畑中葉子)
平尾昌晃トリビュート盤より。ヨーコにとって先生=平尾昌晃だけに、ダンサブルなのにちょっと胸にくる一曲🥲
14 ウィアートル(rionos)
「さよならの朝に約束の花をかざろう」を鑑賞。主題歌は囁くようなか細いボーカルとシンプルなアレンジが主人公と重なる。
15 The Great Pretender(Freddie Mercury)
プラターズのカバー。まさに熱唱🥲
16 Disappointed (808Mix)(Electronic)
New Orderメンバーによる別ユニット、電子ロック。True FaithやBlue Monday好き(自分w)には向いている。
17 津久見中学校校歌(伊勢正三)
昔 海の底に雪が積もるように白い山になった
セメント工業で知られた津久見市だから白い石灰岩のイメージ。素敵な表現😊
18 Syncrogazer(Roselia)
水樹奈々のカバー。奈々さまがファルセットで歌う部分も地声で唸る相葉あいなに闘志を見たぜ💪
19 絆ノ奇跡(MAN WITH A MISSION & milet)
アニメ「鬼滅の刃」OP曲。NHK「のど自慢」で同い年のおいさんが熱唱していた。カラオケはアニソン率高い自分を重ねる。オレも歌おうかなw
20 NとLの野球帽(Chage)
小倉生まれのChageが少年時代を日々を思って歌った曲。いい曲だ☺️

21 Bond77(Marvin Hamlish)
「007/私を愛したスパイ」サントラより。ディスコアレンジのテーマ曲。
22 風の中の火のように(KAI FIVE)
小学生の頃から聴き続けている甲斐よしひろ。大好きな一曲。
23 Highway Star(布袋寅泰)
パープルのカバー。無機質な8ビートのアレンジがボウイ時代を思わせる。
24 中川翔子(中川翔子)
ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)の手による珍作。これ、NHKでは流せないんじゃない?
25 Copacabana (At The Copa)(Barry Manilow)
この曲が似合う夏ももうすぐ終わり。
26 A Change Of Seasons(The Dream Theater)
ひたすら演奏がカッコいいのだ🎸🥁
27 In This Country(Robin Zander)
映画「オーバー・ザ・トップ」主題歌。
28 負けるもんか(バービーボーイズ)
こんな歌詞の曲、よく親は何も気にせず聴かせてくれたよな💧
29 Can't Take My Eyes Off Of You(Little Glee Monster)
いろんなカバーがあるけど、これは安心して聴ける良作😊
30 Moon(Perfume)
満月となった今年の中秋の名月。美しかったね。そしてPerfumeの新曲で心は踊る。










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さよならの朝に約束の花をかざろう

2023-09-27 | 映画(さ行)

◼️「さよならの朝に約束の花をかざろう」(2018年・日本)

監督=岡田麿里
声の出演=石見舞菜香 入野自由 茅野愛衣 梶裕貴

ポスターで勝手に恋愛ものと思い込んで、さらにおとぎ話の様な純度の高いファンタジーと聞いて、公開当時から敬遠していた。しかし岡田麿里が携わった他の作品にあれこれ触れて、胸を熱くしたもので、これは観ておくべきかと思い始めた。

感謝。Filmarksの再上映のおかげで、劇場で観る機会に恵まれた。思いっきり現実逃避できましたw😭

世間とは隔たりを保って生活しているイオルフの民。日々の出来事を織り込みながら布を織り続ける彼らは、10代で身体の成長が止まり、永く生き続けることから"別れの一族"と呼ばれていた。外の世界の者と関わると必ず別れを経験することになるからだ。イオルフの少女マキアは平穏な日々の中で孤独を感じて生きてきた。そこに隣国から国王軍が侵攻してくる。イオルフの長寿の血を求めて姫に娶ろうというのである。マキアは戦闘の中で村から離れた森に取り残される。そこで母親の遺体の下で泣いている男の赤ん坊と出会う。マキアは彼を自分の子として育てようと決心する。

先日観た「アリスとテレスのまぼろし工場」と違って、僕らがいる世界と似たところも重なるところもない。スクリーンに広がるのは中世ヨーロッパを思わせる風景や自然、ジブリ作品に出てきそうな巨大な機械や入り組んだ街並み、そして絶滅危惧種の巨大な龍。

冷めた気持ちで観ちゃうんではないかと思っていた。でも、忘れていた絵本を大人になって再び手にしたような気持ちになっていた。エリアルと名付けられた男の子が場面が変わる度に成長していく。絵本のページをめくると子供の背が伸びているかのようだ。マキアは少女のままだから、エリアルの周囲は(育ての)母親だと信じてくれない。マキアが自分を育ててくれたことへの感謝はあるのだが、次第に疎ましく感じ始める。そして旅立つ日が訪れるのだが、その頃戦火が国に近づいていた。

「別れがあるから出会わない方がいい」という長老の教え。周囲との関係を遮断してイオルフの民だけで生きてきた。しかし人は誰かと出会うことで成長することができる。いつかさよならが訪れる出会いだとしても、出会いは、相手を大切に思う気持ち、誰かを愛する気持ちを育んでくれる。マキアとエリアルの成長物語としての感動が物語の太い主軸。

出会いと別れの物語だけでなく、戦争や国の存亡という損得勘定が引き起こす悲劇も痛いほど描かれている。強引に王族の子供を産まされたレイリアが、我が子と引き裂かれる様子は観ていて辛い。彼女の最後の決断には心打たれる。またレイリアを慕うイオルフの男子クリムが闇に落ちていく様子も痛々しい。全ては戦争が招いたこと。

外界と遮断して変わらずに存在し続けるイオルフ族。それはアニメでよく言う閉鎖空間。変わろうとするマキアの行動は、その因習から一歩を踏み出す。本作は「アリスとテレスのまぼろし工場」の舞台の原型とも言える。岡田麿里の真骨頂は思春期の心の動きだとよく言われる。しかし、本作で語られる人を慕う純粋な気持ちの美しさは普遍的なもの。身近な共感を排除してストーリーテラーとして、純度の高いファンタジーに挑んだ傑作。か細いボーカルが主人公に重なる主題歌が、じわっと心にしみた。



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名探偵ポアロ ベネチアの亡霊

2023-09-25 | 映画(ま行)

◼️「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊/A Haunting In Venice」(2023年・アメリカ)

監督=ケネス・ブラナー
主演=ケネス・ブラナー ミシェル・ヨー ティナ・フェイ ジェイミー・ドーナン

アガサ・クリスティの「ハロウィーン・パーティ」を原作とする、ケネス・ブラナー=ポアロの第3作。前作の「ナイル殺人事件」がセット撮影や仰々しい演出だったから、次作はどうなるのかと案じていたのだけれど、オープニングからベネチアの美しい風景を満喫できる。コロナ禍がひと段落したこともあるのだろうか。

それにしても「ハロウィーン・パーティ」を舞台を変え、さらに「ベネチアの幽霊」とタイトルまで変えてホラー映画テイストにする趣向。ブラナー先生、ご乱心?。何を狙っているのかと心配になっていた。原作は未読だが、デビッド・スーシェのドラマ版は鑑賞済み。

ミステリー作家の女性から降霊会へと誘われるポアロ。彼女は霊媒師がすごいが、トリックがわからないと言う。その降霊会の後、霊媒師が殺害され、ポアロも危険に晒された。嵐が吹き荒れる中、屋敷に残された人々。彼らは屋敷にまつわる痛ましい過去から亡霊の仕業だと騒ぎ出す。果たしてポアロは犯人を見つけ出すことができるのか。

作家先生がドラマ版とは違って、前半はポアロの助手的な立場で事件に関わる。ポアロを世界で自分の次に頭のいい人物と言う、なんとも高飛車で自意識過剰な女性なのだが、後半は独自の推論を口にしてポアロの推理を混乱させる。しかしポアロにとっては、彼女も容疑者の一人。ドラマ版では、解決へのアイディアを出し、自分の推論を語って「小説ではありませんぞ!」と叱られる存在。

アップルボビングやハチミツなど原作にある要素を配置する一方で、登場人物の立ち位置や関係性は大きく改変されている。ドラマ版で印象的だった男と女の愛憎劇はなく、その代わりに心に残るのはホラー映画的な演出による全編の怪奇ムード。それでも人間関係を複雑に絡ませて、クリスティぽく仕上げているから、結末の謎解きは楽しめる。ドラマ版では、登場しないのに散々悪く言われる失踪中のメイドや、殺しの疑いをかけられる子供が本作では同名で登場するが、むしろ好意的な役柄に改変。ブラナー先生や脚本家は彼らに思い入れがあったのだろか。

医師親子を演じているのは、ブラナーの前作「ベルファスト」でも親子を演じたジェイミー・ドーナンとジュード・ヒル。霊媒師を堂々と演ずるのはミシェル・ヨー。こうしたこじんまりした舞台のクリスティ作品もいいけれど、「ABC殺人事件」や「死との約束」(「死海殺人事件」原作)を、ブラナーのポアロで観てみたい。





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ライフ・オン・ザ・ロングボード

2023-09-24 | 映画(ら行)

◾️「ライフ・オン・ザ・ロングボード/Life On The Longboard」(2005年・日本)


監督=喜多一郎

主演=大杉漣 大多月乃 小栗旬 勝野洋


好きなことを新たに始めたり、楽しんだりに、早いも遅いもない。そしてそれを通じて人は成長することができる。いくつになっても。日々これでいいのかな、なんてふと考えてしまう僕らに勇気をくれる素敵な作品だ。2018年に亡くなった大杉漣。冴えないけれど懸命な主人公が次第に変わっていく姿が心に残る。


55歳で長年勤めた会社を退職した主人公米倉一雄。特にしたいこともなかった一雄だったが、海を眺めていて、若い頃サーフィンを始めようとして失敗した時を振り返る。そして亡き妻が言った言葉を思い出す。

「カッコよかったのになあ」

一雄は種子島でサーフィンを始めることを決意する。55歳でよそ者の初心者を最初は笑うのだが、当の本人は日々現地の若者や一目置かれる名サーファーに教えてもらうのが楽しくて仕方ない。そこへ妻の死後関係がギクシャクしていた娘がやってくる。


島での日々を通じて、一雄も娘の優もこれまで言えなかった気持ちや出せなかった自分と向き合う。その様子を多くの人はベタと言うのかもしれないけど、僕は素直に感動できた。自分が退職の時期を迎えたら、何をしようと考えるのだろう。それほど遠い将来ではないけれど、幸いなことに好きなことだけはたくさんあるからな。


サーフィン場面はともかく、種子島の風景にビーチボーイズの名曲が似合うなんて思いもしなかった。走り去る軽トラに重なるAll Summer Longに、なんか感激。「アメリカン・グラフィティ」のラストでこの曲が流れる時、ひとつの時代の終わりを感じたが、この映画では新たな始まりの曲なんだもの。



ライフ オンザ ロングボード

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社葬

2023-09-22 | 映画(さ行)

◼️「社葬」(1989年・日本)

監督=舛田利雄
主演=緒形拳 十朱幸代 吉田日出子 江守徹

「日本の新聞はインテリが作ってヤクザが売る。」との字幕、地方で繰り広げられる激しい販売合戦の冒頭が強烈なインパクト。ところが映画はそんな販売戦争がテーマではない。社長派と会長派に分かれた社内の激しい対立。会長の失脚を謀ったら、今度は社長が芸者とイチャイチャしてる間に腹上死。社葬を執り行う裏で渦巻く欲望とエゴのぶつかり合い。日曜劇場のアツい企業ものドラマとは全然違う、東映得意の抗争劇だ。こんな争いがなくてよかったぜ、うちの職場ww。

エリートだらけの新聞社の重役に高卒で上り詰めた主人公を緒形拳が演ずる。この時期には名だたる女優さんとイチャイチャする役が多かったけれど、「社葬」の主人公は等身大で、ちょっとワイルド、少年のようにまっすぐな男を演じている。料亭の女将と浮気するけれど、妻の前ではオドオドして取り繕う様子がおかしい。誰の側にもつかないと言い続けた彼が、最後の最後に動く。これが誰かのために尽力して喜ばれるという動機ではなく、自分の立場が危うくなることが発火点になってるのもまさに等身大。今どきの企業ドラマで感じる高揚感はまるでない。それでもなんか憎めないのは、緒形拳の好演があるからだろう。

主人公を誘う女将に十朱幸代、秘書の藤真利子、大学受験の息子が心配な妻に吉田日出子。吉田日出子はギスギスしたドラマをホッとさせてくれる存在。また井森美幸がなかなか印象的な役どころ。会社の役員たちが曲者役者ぞろいで、怪しげな人ばかり。お座敷でリパブリック賛歌を歌う江守徹が笑える。若き佐藤浩市と、竜童組として活動してた頃の宇崎竜童の音楽がやたらカッコいい。

今観るとなかなか難ありだけど、不思議と嫌いになれない。



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パーフェクト・ブルー

2023-09-19 | 映画(は行)

◼️「パーフェクト・ブルー」(1998年・日本)

監督=今敏
声の出演=岩男潤子 松本梨香 辻親八 大倉正章

今敏監督のデビュー作にして衝撃作。傑作「パプリカ」が大好きなのと、本作のキャラクター原案を尊敬する江口寿史が担当していることから、ずっと観る機会が欲しかった作品。2023年9月にFilmarksが全国規模の上映イベントをやってくれたおかげで劇場で鑑賞する機会をいただいた。感謝。

アイドル歌手から女優へと次なる一歩を踏み出そうとする主人公未麻。でもそれは歌手になりたいと願って上京した彼女にとっては思わぬ方向だった。グループ脱退から、それを望まないファンからと思われる嫌がらせが届き始める。わずかな台詞だけの連ドラ出演のはずが、次第に業界の餌食になっていく様子が痛々しく描かれる。彼女自身の心も身体もさらけ出すハードな仕事を続ける中で、連続して起こる殺人事件。そして未麻は夢と現実の境目がわからなくなっていく。

芸能事務所で起こった性加害問題が世間を騒がせている今年。このタイミングで鑑賞したせいか、裏でのやりとり、アイドル時代のファンの反応、大人への脱皮と言いながら業界の喰い物にされていく様子が生々しく感じられる。アニメだからできるホラー描写、暴力、残虐シーンの数々。そして悪夢が覚めたらさらなる悪夢が襲う場面は、下手なホラー映画よりもよっぽど怖い。特にクライマックスでは、見ているこっちまで現実と幻影が入り混じり、目が離せない。本来はOVAとして世に出るはずだった作品だと聞く。それだけに表現は容赦ない。女の子がいたぶられる話は好きじゃないけど、目を背けたくても映画がグイグイと引っ張ってくる。ダーレン・アノロフスキーが実写化を考えたとも聞く。納得できるエピソードだ。

90年代製作の作品なので、インターネット描写はさすがに古い。しかし、懐かしい型式のマッキントッシュ、今よりも小さな画面で未麻が目にする"もう一人の未麻"は、双方向のやり取りが当たり前の今とは違って、反論できないだけに底知れない不気味さを感じる。

80年代のアイドルを知る世代ならセイント・フォーというアイドルグループを覚えているだろうか。本作で未麻を演じた岩男潤子は、メンバーの一人板谷祐三子の脱退に伴ってセイントフォーに加入した時期がある。脱退後に板谷祐三子がセクシー路線で知られるようになり、岩男潤子が後に声優の仕事で自分を発揮し、メンバーだった濱田のり子が再び歌で活動している。こういう情報があると、どうしても重なって見えてくる。リアルでもいろんな葛藤があったのだろうか。

「あなた、誰なの?」
未麻が出演したドラマの台詞だが、それは物語が進むと自問自答へと変わっていく。
本当に望む自分になっているのか?
それは本当の自分なのか?

不思議な余韻を残すラストシーンを噛み締めながらシアターを出ると、その施設の1階で地元アイドルグループがイベントをやっていた。彼女たちに闇が迫って来ませんように。





コメント (2)
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ファルコン・レイク

2023-09-17 | 映画(は行)

◼️「ファルコン・レイク/Falcon Lake」(2022年・カナダ=フランス)

監督=シャルロット・ル・ボン
主演=ジョゼフ・アンジェル サラ・モンプチ モニア・ショクリ

ケベック州の湖のほとりにある母の友人の家を訪れた一家。もうすぐ14歳になる主人公バスティアンは、母の友人の娘16歳のクロエと同じ部屋で過ごすことになった。年上の女子への憧れにも似た気持ちと、同じ10代である共感。理解できるようで理解できない彼女の行動は、時に優しく、時に残酷。同じ時間を過ごしているようで、どこか置いてけぼり。

今どきこんな言い方しないかもしれないけど、バスティアンはローティーンからミドルティーンになろうとする歳頃で、クロエはもうすぐハイティーン。その時期の3歳年上って、自分よりすごく大人びて見えるもの。相手を振り向かせるにはどんな言葉を選んだらいいのだろう。どんな行動をとればいいのだろう。大学生くらいの男子たちとワインやビールをラッパ飲みするクロエを見て、同じ行動をとるけれどまだ身体がアルコールを受けつけず、無様な姿を見せてしまう。

一方でクロエと性について会話する場面や、10代だから抱えている孤独やなんとも言えない不安を共有する場面では、二人の距離は誰よりも近くなる。同じベッドで寝ながら、"人生でいちばん怖いこと"についてクロエが話す場面はとても印象的なだった。親に自慰行為を見られることだと答えたバスティアン。性に目覚めた男子らしい精一杯の大人ぶった答えかもしれない。

クロエは誰とも分かり合えないことだと答える。彼女は誰ともなじめないと今まさに感じている。その不安を打ち明ける。湖で水死した人がいて、その幽霊が出ると言うクロエ。それは大人たちを自分に振り向かせたくて口にする言葉で、親たちはまともに取り合ってくれない。パーティで一緒に踊る年上の男子たちや大人に、不安な気持ちを言えないけれど、同じ"ティーン"で括られるバスティアンになら言えること。布を被ったバスティアンに寄り添いながら、悩みを打ち明けるクロエは、聖母像に向かって告白をしているようにも見えた。

髪を洗うクロエの背中を見つめる場面。泳ぐのが苦手なバスティアンが湖に入ったところで、クロエがシャツの裾をまくる場面。二人が暗闇で触れ合っている場面。そんな無言の思わせぶりなシーンも、二人の距離を僕らに映像だけで概算させ、強く印象づける。

そして映画のクライマックス。大人ぶって強がりな返事を示したバスティアン。その後、そこで何が起こったのかは具体的に示されない。喪失感漂うその様子を、カメラは主観移動のように捉えていく。無言のラストシーンに解釈は人それぞれだろう。僕は、微かに振り向いたクロエの動きこそが答えだと感じた。湖の風景と薄暗い森の風景。それは閉鎖的で、逃げられないホラー映画の舞台めいた雰囲気がある。秘めておきたいティーンエイジャーの気持ちも、湖だけが知っている。




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007/ユア・アイズ・オンリー

2023-09-16 | 映画(た行)

◼️「007/ユア・アイズ・オンリー/For Your Eyes Only」(1981年・イギリス=アメリカ)

監督=ジョン・グレン
主演=ロジャー・ムーア キャロル・ブーケ トポル ジュリアン・グローヴァー

"ジェームズ・ボンドこそ男子の理想"めいた刷り込みをされて育った僕(毎度同じ書き出しですみません😝)。その刷り込みの張本人である父と映画館で007映画を鑑賞する機会が訪れる。それが「ユア・アイズ・オンリー」だった。この頃、わが家では007映画は家族で楽しむ存在になっており、結局父は僕と2人の妹を連れて行くことになる。下の妹は小学生。今思うと、伯爵夫人とのイチャイチャやリン・ホリー・ジョンソンがベッドにもぐりこむ場面なんて、親父殿は内心気まずい思いをしていたのではなかろうかw。

とは言え、大風呂敷広げた前作と違って、本作はアクション中心の原点回帰が魅力の作品。イアン・フレミング原作のうち映画化されていない短編いくつかと、他の作品から引用されたシーンが脚本には反映されている。ボンドとメリナが縛られてサメのいる海を引き回される印象的な場面は、「死ぬのは奴らだ」の原作に登場する。

また印象的なプレタイトルは、「女王陛下の007」で亡くなった妻の墓参りをする場面から始まり、ブロフェルドらしき車椅子の男がボンドが乗るヘリコプターを遠隔操作して苦しめる空中アクションへとつながる。従来のファンを唸らせつつ派手な見せ場で楽しませてくれる。続くメインタイトルでは、シリーズ唯一主題歌を歌う歌手が登場する大サービス。この掴みは完璧だと言っていい。

一方でロジャー・ムーアのユーモアあるボンド像は健在で、Qの実験室の怪しげな発明品、懺悔室での進捗報告、オウムが覚えた言葉で事態が進むお気楽な展開は、ハードなボンド像を期待したファンには気持ちが萎えてしまうところかも。ボンドに危機が訪れるのはお約束だとしても、ここまで次から次へと途切れなく刺客がやって来るのは、映画の緊張感が持続するためにはアリなんだろうが、盛り過ぎのような気もする。

さて。高所恐怖症の僕にとって、クライマックスのメテオラのロッククライミングはこの映画最大の難所のはず。でも、トム君映画と違ってわが身がそこにいるかのような臨場感とは違う。絶壁にぶら下がってるボンドを遠目に見ているショットがほとんどなので、今回観ても平気だった。「ラピュタ」の方がよっぽど手に汗握る(だから更年期なんだって😒)。

バイクやラストシーンに登場する時計など、日本製品が登場するのも、東西冷戦の描写も、1980年代前半の空気を感じさせる。音楽を「ロッキー」のビル・コンティが担当しているのも特筆すべきポイント。ホーンセクションが印象的な派手めの劇伴が多く、ギリシャの民族音楽の使われ方もいい。そしてキャロル・ブーケがとにかく麗しい。わが妹が歴代ボンドガールでいちばん憧れるのは、キャロル・ブーケだと言う。初めて映画館で見たボンド映画だもんな。





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美しき運命の傷痕

2023-09-13 | 映画(あ行)

■「美しき運命の傷痕/L'Enfer」(2005年・フランス=イタリア=ベルギー=日本)

監督=ダニス・タノビッチ
主演=エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール マリー・ジラン キャロル・ブーケ

なかなか映画館通いができない日々だが、
その分観てなかったヨーロッパ映画に手を出そうと言う気持ちになることも。
「美しき運命の傷痕」は、「トリコロール」三部作が素晴らしかったキェシロフスキが遺したシナリオ案を、
名作「ノー・マンズ・ランド」のダニス・タノビッチ監督が映画化した作品。

かつての悲劇的な事件を引きずる三姉妹とその母。
それぞれが向かい合う様々な愛憎劇。

長女エマニュエル・べアールのパートでは、
幾度も登場するらせん階段や壁の色彩が不安な彼女の心情を表現して見事。
恋愛に臆病な次女カリン・ヴィアールのおどおどした演技が、
この映画のユーモラスな部分を担当。
愛にまっすぐな三女マリー・ジランは大学教授と不倫関係。

彼女たちの愛のかたちが繊細に描かれて、
「細雪」を観ているような気持ちにさせる。

母キャロル・ブーケは、事件の後で言葉を失っているだけに、
目力だけで説得力ある貫禄の演技。
特にラストシーンで彼女が記す衝撃のひと言。
そこには娘たちを守ってきた母親としての強い思いがあるのだろう。

ジャン・ロシュフォール、ジャック・ペランなど脇役も名優が配置されている。
「007/リビング・デイライツ」のボンドガール、マリアム・ダボが旦那の浮気相手で登場。

美しき運命の傷痕




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007/私を愛したスパイ

2023-09-11 | 映画(た行)

◼️「007/私を愛したスパイ/The Spy Who Loved Me」(1977年・イギリス)

監督=ルイス・ギルバート
主演=ロジャー・ムーア バーバラ・バック クルト・ユルゲンス キャロライン・マンロー

小学校高学年で007映画を初めて観て、ジェームズ・ボンドこそ男子の理想像めいた刷り込みをされて育った。じゃあ小学生当時最新のボンド映画新作を映画館で観られたか、というとそうではなかった。大人のエンターテイメントである007映画で、しかもその当時の新作は「私を愛したスパイ」だよ。男と女のイチャイチャはお約束だ。さすがに小学生男児が映画館で観るには早すぎる。特に母親が性に関わる作品には目を尖らせていた。永井豪のコミックを没収されたこともある(「キューティーハニー」のレビュー参照)。

後で知ることだが、中学生以下には成人の同伴が必要とされるレーティング「一般映画制限付」が1976年に導入されている。その頃はこうした面にピリピリしていたのだろう。小学校の職員室の掃除当番だった僕は、先生向け掲示板に指導用と思われる通知が貼ってるのを見たことがある。ジョン・トラボルタの「グリース」は「中学生からが望ましい」と書いてあった。そんな風潮だもの、「私を愛したスパイ」が10代前半のガキんちょに許されるはずがない。

しかし世はスーパーカーブーム真っ只中。ボンドカーがロータスエスプリで、しかも水陸両用で潜航できて、ヘリを撃ち落とすミサイルまで搭載。これを観なくてどうする。しかし、男子小学生がこれを観るまでには、月曜ロードショーが放送してくれる数年後を待つことになる。
坊や、もう少し大きくなったらね
とバーバラ・バックに言われた気がした(妄想です)w。

2022年2月に久々の鑑賞。世界各地のロケ地風景も豪華だし、お話のスケールもデカい。悪役ストロンバーグの根城である巨大施設、殺し屋の巨漢ジョーズ。ソビエトのスパイを演じるバーバラ・バック、セクシーなキャロライン・マンロー姐さま。とにかく映画としてゴージャス。オープニングの派手なスキーアクションからとにかく派手。確かに楽しい。そりゃヒットもするさ。東西冷戦の緊張が緩和されてきた時期に製作された映画だけに、ソビエトとの共同作戦が盛り込まれたのは時代の空気の反映でもある。

今回改めて観たが、なんかノレない自分がいる。この頃から悪役がデーンと構えて悪だくみする人になって、ボンドとクライマックスで決闘するような展開がないのが理由の一つ。その傾向はこの後しばらく続くことになる。本作でそこを埋めるアクション要員としてジョーズことリチャード・キールが起用された。次の「ムーンレイカー」にも登場する人気者になる。仕掛けばかり大きくなって、ボンド本人の活躍にどうもワクワクできなかった。それは今観ても同じで、バーバラ・バックに男性として迫るところばかりが印象に残る。まさに大人向けのエンターテイメント。そりゃ小中学生向け映画にはならないよね(笑)。

僕がこの映画で気に入っているのは音楽。マービン・ハムリッシュが担当しているシリーズ唯一の作品なのだが、劇伴がオーケストラあり、ビートの効いた楽曲あり、アラビアンなアレンジのダンス曲ありとバラエティに富んでいてサントラを聴くのも楽しかった。そして、カーリー・サイモンの主題歌  Nobody Does It Betterが絶品。シリーズ全主題歌の中でも特にお気に入りの一曲なのだ。

エンドクレジットでは「James Bond will return in For Your Eyes Only」になってる…。実際は次の次。







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