◼️「わが青春のマリアンヌ/Marianne De Ma Jeunesse」(1955年・フランス=西ドイツ)
監督=ジュリアン・デュビビエ
主演=マリアンヌ・ホルト ピエール・ヴァネック イザベル・ビア
ジュリアン・デュビビエ監督作を観るなんて、いつ以来だろう。クラシック好きだった学生時代にビビアン・リーの「アンナ・カレーニナ」やあれこれ観た。特に「舞踏会の手帖」が好き。本作に興味をもったのは、多くの方がレビューに挙げているように、松本零士が好きな映画でヒロインが「銀河鉄道999」のメーテルのモデルになったとか、THE ALFEEの「メリーアン」の元ネタになったとかいう話から。映画冒頭、湖に面した森に霧がたちこめる幻想的なシーンから始まる。
夜露に濡れた/森を抜けて
白いバルコニー/あなたを見た
おぉそれっぽい。いつバルコニーに立つヒロインが出てくるのだろうと思って観ていた。ヒロインはバルコニーに立つどころか、幽閉されてるのにびっくりww。
湖のほとりにある寄宿学校にアルゼンチンから新入りヴァンサンがやって来る。ギターを爪弾き、動物になつかれる彼には不思議な魅力があった。ある日、生徒たちが幽霊屋敷と呼んでいる古城に悪ガキ集団と忍び込んだ彼は、美しい女性マリアンヌに出会う。ヴァンサンは心を奪われ、行動も変わってくる。ヴァンサンを慕う娘が裸で迫っても受け入れない。怒った彼女はヴァンサンがかわいがっていた鹿を殺す。そんな彼の元に幽霊屋敷から「助けて」と書かれた手紙が届く。
男子たちはダブルキャストで、フランス語版とドイツ語版(ヴァンサン役は「荒野の七人」のホルスト・ブーフホルツ)が同時に撮影された。日本ではフランス語版が公開され、今回僕がレンタルDVDで観たのもフランス語版。
結局マリアンヌは実在したのか、僕ら鑑賞者視点だと曖昧で、母と別れて暮らすことになり、しかも母は家庭教師だったいけ好かない男と再婚することで、傷心のヴァンサンが見た幻影なのかもしれない。ラストシーンで再び霧に煙る森と鹿が映されるだけに、動物好きのヴァンサンに森が見せた幻影だった、というファンタジーなのかも。鹿を殺した娘の末路にゾッとする。
しかし、ヴァンサンの目にマリアンヌは、男爵は、用心棒の大男(大相撲の朝潮似)は確かにそこにいた。そう言えば「銀河鉄道999」のラストでメーテルは鉄郎に言う。
「私はあなたの思い出の中にいる女。青春の幻影。」
そうか。この映画のマリアンヌはまさにそういう存在なのだ。