Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

1月のBGM

2013-01-31 | 音楽
2013年1月に聴いていた愛すべき音楽たち。

■増殖気味 X≒MULTIPLIES/HMOとかの中の人
初音ミクオーケストラのアルバム第2弾は「増殖」カヴァーだった!。YMOファンのtakお兄ちゃん、思わず買っちゃったよ(ミクさんのフィギュアつき・・・)。「増殖」は自分の中でYMOに夢中になった原因たるものだけに、思い入れたっぷり。今回もナイスなカヴァー、それにオリジナル通りにコントも!「いいボカロもあるけど、悪いボカロもあるよね」には爆笑。かなりディープなネタだけに「何?」と思うおじさん世代もいるかもしんないけど、そんな方々にもグッとくるYMO愛が今回も素敵。タイトル曲だったMultipleies(増殖)が未収録なのはちと残念。
増殖気味 X≒MULTIPLIES(初回生産限定盤)(DVD付)

■irony/ClariS
アニメ「俺の妹がこんなにかわいいわけがない」主題歌だったClariSのデビュー作。アニメは僕がハマったのだが、最近長男ルークが原作ラノベを読んでいる。テクノ系アレンジに一本調子なメロディーだから初めて聴いたときは大して興味もなかったのだが・・・。
irony

■Twinkle Night/TM Network
年末にUTSUと木根さんのSPIN-OFFの動画を見て以来、実はクリスマスシーズンが過ぎて年を越しても繰り返し聴いていた。動画でも思ったけど、あの頃と歌声が色あせないって素晴らしい。
TWINKLE NIGHT (完全生産限定盤)

■Don't Look Back in Anger/Oasis
この曲が無性に聴きたくなってさ。Oasisのアルバムでいちばん聴いてるのはこれだろう。日本人はパッフェルヴェルのカノンのようなベースラインが下降するコード進行が好き。Whateverもこの曲もそのコード進行と言える。Oasisが来日した時に、「ニホン人はどうしてこんなにWhateverが好きなんだ?」と言ったそうだが、これが理由なのさ。弾き語りでやってみたいな。
What's the Story: Morning Glory

■TERRA2001/the brilliant green
ブリグリのアルバムの中で最も聴いていない作品だった。それはロックと言うより、「愛の・愛の星」を筆頭に女子向けポップス路線に向かったイメージが強いから。改めて聴き直してその考えを改めた。けっこういいやん!。僕はブレイク前のシングル2枚が大好きなのだが、この「TERRA2001」はその頃のように英語詞の曲が多くてイメージが近いじゃない。やっぱりtommyの声が好き。
TERRA2001

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ネバーエンディング・ストーリー - 80's Movie Hits ! -

2013-01-29 | 80's Movie Hits !

■Never Ending Story/Limahl
from「ネバーエンディング・ストーリー/The Never Ending Story」(1984年・西独=英)

監督=ヴォルフガング・ペーターセン
主演=ノア・ハサウェイ バレット・オリバー タミー・ストロナッハ

  言わずと知れたミヒャエル・エンデの名作文学を映画化した、ドイツ製ファンタジー大作。主人公はいじめられっ子のバスチアン君で、ふさぎ気味の父親と暮らしている。古本屋で手にした一冊の本に彼は夢中になり、その世界に同化していく。そこはファンタージェンと呼ばれる夢の国。だが人間が夢見ることを忘れていくことで”無”に侵されるという危機に直面している。物語の主人公アトレーユは、世界の救い主を求めて冒険の旅へ・・・というお話。バスチアン君が、アトレーユに感情移入し同化していくことで、勇気づけられていく成長物語である。監督は「Uボート」や「アウトブレイク」など閉鎖的空間のサスペンスを描かせたら上手なヴォルフガング・ペーターゼン。SFXはルーカスのILMが担当した。90年には1作目で映画化されなかった後半を描く「第2章」、94年には三作目が製作され、アニメのTVシリーズもあるとか。

 音楽の方は「Uボート」(シンセの重低音が素敵だった)のクラウス・ドルディンガーが担当。ドイツ公開時は彼のスコアだけであったが、より一般受けするものを、とジョルジオ・モロダーに追加音楽が依頼された。そして リマールが歌う ♪The Never Ending Story が付け加えられた。リマールは80年代初めのニューロマンティック系バンド、カジャ・グーグーのヴォーカル。デュラン・デュランのニック・ローズプロデュースのアルバム「White Feathers」やシングル ♪Too Shy(君はトゥー・シャイ) や ♪Hang On Now はスマッシュヒットとなった。が、リマールは脱退しソロ活動を開始。アルバム「Don't Suppose」を引っさげて東京音楽祭へやって来る。 ♪Only For Love を歌う金髪ツンツンの美少年に黄色い声援が飛んでいたのを思い出す。リマールはこれでモロダーと人脈ができたらしく、映画主題歌担当へとつながっていく。日本でも主題歌は大ヒット、羽賀健二による日本語カバーと、宮城まり子園長のねむの木学園の子供達によるカバーもリリースされている。

ところで映画は原作にないラストシーン(現実世界のバスチアン君がファルコンに乗っていじめっ子を追い回す場面)が加えられている。熱心なエンデファンからは不評を買い、エンデ本人も望んでいたスタッフや出来栄えと違うことから自分の名をクレジットから外すことを求めて訴訟を起こしている(結局は敗訴)。この場面、せめて夢の中だけでもいじめ返してやりたい・・・という”のび太的発想”なら人によっては空しさを感じるだろうけど、本の中の冒険を通じて得た勇気をもって現実に向き合う姿を表現した、と解釈すれば前向きに感じられる・・・とも思うのだけど。

The NeverEnding Story (1984) Official Trailer - Childhood Fantasy Movie HD


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チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~

2013-01-28 | 映画(た行)

■「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~/Poulet Aux Prunes」(2011年・フランス=ドイツ=ベルギー)

監督=マルジャン・サトラピ & ヴァンサン・パロノー
主演=マチュー・アマルリック マリア・デ・メディロス イザベラ・ロッセリーニ ゴルシフテ・ファラハニ

フランスのコミック作家マルジャン・サトラピが自らの手で自作を映画化した意欲作。舞台はむかしむかしのイラン。と言っても前世紀とかそんなんじゃなく、宗教的戒律が厳しく政治に反映されるイラン革命よりも前のお話と思えばいいだろう。バイオリン弾きの主人公ナセルは大事な楽器を壊されてしまって失望し、死ぬことを決意する。映画はその最後の8日間を追っていくお話である。ものを壊されて死を選ぶ、しかもベッドに横たわって食べることを拒否することで死へ向かう・・・現実派の鑑賞者には向かない映画かもしれない。タバコの煙が塊になって空中を突き進んだり、突然アニメーションが挿入されたり、死に方を考える主人公がいかにもコミックな描写だったり・・・そんな映像表現もいけ好かないという方もあるだろう。でも原作がそもそもコミックだし、ファンタジーだし、せめてそういう部分を受け入れて観ないとすべての行動に重大な理由がつけられるラストで感動できない。説明くさい描写で納得ずくにしてわかりやすく進行するハリウッド映画とは違う。"感覚で観る"ことが求められる映画かもしれない。

主人公が人生を振り返る。仙人のような師匠に弟子入りしてバイオリン弾きとしての腕を磨くが、師匠に「お前は技術はあるが心がない」と言い放たれる。そんなとき、テヘランの街で見かけた美しい娘イラーヌに心を奪われてしまう。次第にお互い惹かれるようになり、ナセルは彼女にプロポーズ。イラーヌはそれを受け入れるが父親の反対で二人は別れることになってしまう。しかし失った愛と引き換えに彼のバイオリンは素晴らしい音を奏でるようになっていく。以来、長年の演奏旅行で活躍するナセル。母親の薦めで結婚をするが、そこに愛はなかった。ナセルの心にはバイオリン、そしてイレーヌの面影に支配されたままなのである。その妻は幼い頃からナセルに憧れていて、縁談を断りナセルを待ち続けた一途な女性。家いても子供の面倒をみない夫に厳しく接する。ナセルは「芸術家と結婚したのだから」と冷たく言い放つ。バイオリンやチェロなどの弦楽器のフォルムは女性のボディラインをイメージしているとよく言われる。そんなバイオリンを妻が叩き壊す。何事でもそうだが、物事の裏側や気持ちを理解できたとき僕らは本当に感動できる。映画は主人公の臨終へとカウントダウンをしながら、一方でその裏にあった出来事とそれぞれの秘められた心を描き出していく。ドアの陰で涙する妻、そしてナセルとイラーヌの再会。再会シーンは冒頭に登場するのだけど、そこに僕らは涙しない。でもまったく同じ場面を映画の終わりに目にして僕らは切なさでいっぱいになる。

ファンタジーであり、秘めたる愛情をめぐるラブストーリー。マチュー・アマルリックは、ナセルのちょっと偏った執着心を落ち着きのない目線で演じている。イラーヌを演じたのはイランの女優ゴルシフテ・ファラハニ。国際的に活躍する女優で、欧米作品に出演したために出国禁止になったこともあるそうだ。僕は「彼女の消えた浜辺」での不安げな表情でしか知らないだけに、この映画での満面の微笑みと大粒の涙はとても印象的だった。脇役には「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニや「アメリ」「エンジェル」のジャメル・ドゥブースも出演。タイトルになったチキンのプラム煮込みがあまり出てこないのがちょっと残念。主人公が大好きなソフィア・ローレンをイメージした巨大なおっぱいにしがみつく場面がいいねっ。
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トーク・トゥ・ハー

2013-01-24 | 映画(た行)

■「トーク・トゥ・ハー/Hable Con Ella」(2002年・スペイン)

●2003年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞
●2003年アカデミー賞 脚本賞
●2003年ゴヤ賞 音楽賞
●2002年LA批評家協会賞 監督賞
●2002年ヨーロッパ映画賞 作品賞・監督賞・脚本賞

監督=ペドロ・アルモドバル
主演=ハヴィエル・カマラ ダリオ・グランディネッティ レオノル・ワトリング ロサリオ・フローレス

(注・ネタバレあり)極彩色の文字が現れるエンドクレジットを観ながら、何とも言えない切ない気持ちになった。この映画は究極の片思い。愛しているのに触れることもできないマリオ。一方で献身的に昏睡中のアリシアの世話をするベニグノ。しかし、彼は愛する女にその存在もその思いも知られることもないまま世を去る。ベニグノの行為はストーカーとも言ってもいいかもしれない。しかし、彼のアリシアへの思いの一途さ・純粋さがその際どさを浄化している。恋人の覚醒を知らないで死を選ぶなんて、まるで「ロミオとジュリエット」じゃないか。ラストの彼に涙する観客もいることだろうが、その涙は感動なのか同情なのか。ベニグノとマリオの関係も、もうひとつの愛のかたち。それまでの孤独な生い立ちが、人を愛する普通の方法を知らない彼を形成したのだ。「恋人と呼んでもいいかい?」と言うベニグノをマリオは拒まない。それは愛する者を失った者同士だからだろうか。

そんな他の映画では観られない人間関係に、僕はグイグイ引き込まれた。結果ベニグノのおかげで(?)アリシアは覚醒することになるのだが、父親や医師など周囲の人物の気持ちを考えると、単純によかったねとは言い難いんだよなぁ。そこはややひっかかるところ。アルモドバル作品は実は初めて観た。挿入されるサイレント映画「縮みゆく恋人」のユーモアとエロスは強く印象に残る場面だし、以前から性を題材に扱ってきたアルモドバル監督独特の世界なのだろう。旧作観なきゃいけないな!。男が小さくなって女性の上を歩き回り、そしてヴァギナに入っていく・・・性行為であり胎内回帰。アリシアに触れるベニグノの指先。セックスを介せずに女性に触れるという行為が、ここまで官能的で幸福に描かれる映画は観たことがない。これは触れずして触覚を刺激される映画でもあるのだ。

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ミリオンダラー・ベイビー

2013-01-23 | 映画(ま行)

■「ミリオンダラー・ベイビー/Million Dollar Baby」(2004年・アメリカ)

●2004年アカデミー賞 作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞
●2004年全米批評家協会賞 作品賞・主演女優賞
●2004年ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)・監督賞
●2006年セザール賞 外国語映画賞

監督=クリント・イーストウッド
主演=クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン

 クリント・イーストウッド監督の人間ドラマには、本当に泣かされるし、考えさせられる。「パーフェクト・ワールド」、「マディソン郡の橋」、「ミスティック・リバー」・・・題材の選び方が巧いんだろうな。今回も社会保障の短所や尊厳死の問題をも含む社会性を織り込みながら、メインであるフランキーとマギーの人間関係をゆっくり丁寧に描いていく。この映画のようにじっくりと人間を見つめる視点は現代ハリウッドでは実に貴重だ。それを考えるとやはりオスカーは渡されるべくして渡されたのだろうな、と思えてくる。

 ボクシングに喜びを見いだしたマギーのひたむきな姿には心打たれる。それ故に彼女が快進撃を続ける試合の場面は観ていてとても爽快だ。だが、その後に彼女を待つ悲劇・・・。まさかここまで落差があるとは・・・と正直観ていて切なくなってきた。でも僕らは誰を責めることもできない。他人同士なのに親子以上の絆で結ばれた二人。ベッドに横たわるマギーの頬にフランキーがキスするところでもう泣きそうになったよ。モーガン・フリーマン扮するスクラップが、フランキーを見守る視線がまた温かいのね。頑固一徹な男とのバランスが実に見事。弱い者いじめする若いボクサーを叩きのめすところ、わずかなつぶやきまでもが素晴らしかった。

 いい映画ってのは言葉がいらないんだよね。それは絵で語っているということ。確かにスクラップのナレーションが流れるが、それをバックに物語は映像で丁寧に語られていく。ガウンにつづられた言葉の本当の意味を知る場面、マギーの無言の笑顔と涙。リング上での悲劇から後、一見ナレーションが物語を語っているようにも見えるが、実はそのナレーションはスクラップがフランキーの娘に宛てた手紙の文面だったことを我々はラストで知ることになる。二人でレモンパイを食べたダイナーの汚れたガラス越しにフランキーの後ろ姿が見えるラストシーン。その物言わぬラストが静かな余韻を残してくれる。ただ結末を考えると賛否あるだろうね。「ミスティック・リバー」のときも書いたけど、ハッピーエンドでないことだけを理由にこの映画を”外れ”と言うのは失礼極まりない。そういう輩、恥を知れ。

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海を飛ぶ夢

2013-01-22 | 映画(あ行)

■「海を飛ぶ夢/Mar Adentro」(2004年・スペイン=フランス)

●2004年ベネチア映画祭 主演男優賞・審査員特別賞・ヤング・シネマ賞
●2005年アカデミー賞 外国語映画賞
●2004年ゴールデングローブ賞 外国語映画賞 

監督=アレハンドロ・アメナーバル
主演=ハビエル・バルデム ベレン・ルエダ ロラ・ドゥエニャス セルソ・ブガーリョ

 このところ猛烈に忙しくて映画館に足を運べなかった。やっと時間を作って久々に観たのがこの「海を飛ぶ夢」。アレハンドロ・アメナーバル監督作品。彼の作品が僕はかなり好きだ(「アザーズ」は未見なのだが)。長編デビュー作「次に私が殺される」(成長したアナ・トレントが美しい)は、猟奇殺人を扱ったサスペンス映画で殺人場面などちょっと悪趣味?とも思ったが、一方で恋愛の機微をきっちり描いていてよくできた映画だった。続く「オープン・ユア・アイズ」も独創的なストーリーで酔われた。アメナーバル監督が執着するテーマは”死”。この「海を飛ぶ夢」はこれまでのサスペンス/スリラーとは違い、ヒューマンドラマとして見事な秀作に仕上がっている。いやぁこの映画を選んで本当によかった!。

 主人公は海底で首を折る事故に遭って以来26年四肢麻痺の状態。ベッドに寝たきりの彼は、兄夫婦や甥、父親に囲まれて不自由ながらもうまくやってきた。だが彼は死を切望する。何故?と思いながらも彼の台詞からそれを理解しようと我々はするのだ。でもそれを理解する事は難しい。同じ四肢麻痺の神父も彼を説得することはできなかった。理解者となったのは、尊厳死を求める訴訟を担当することとなった女性弁護士。単に足が少し不自由な人としか最初思われなかったのが、次第に彼女の抱えた問題が明らかになる。飛行機の座席に座る彼女と主人公がオーバーラップする場面があるけれど、あれは二人が共感することを暗示していたのだな。主人公は次第に彼女に思いを抱くようになる。「君には少しの距離でも僕には無限だ」彼女に触れることもできない彼にとっては空想は唯一のできること。海辺に散歩に行った彼女を空想で追う場面の美しいこと。突然立ち上がる主人公。彼は窓から空へと飛び立つ。眼下に景色は次々と流れ、青い海と空をカメラは捉える。やがて地上に視線を移すと海辺を歩く彼女が・・・邦題の由来となった美しい場面。だがそれが主人公の空想だとわかっているだけに、観ていてとても切ない。

 尊厳死をめぐる現状はどこの国でもまだまだ厳しい。悲しい物語なのにどこか明るく感じられるのは、時にユーモアをこめて人物が描写されていること、それと主人公の懸命さだ。死を選ぶことに懸命というよりも、自分を理解してもらおうとすること、誰かに何かを残そうと詩作に打ち込む姿、甥を息子のように思うところ・・・随所にそれが感じられる。自分が同じ立場なら・・・そう考えてはみるけれど、やはり想像することも難しい。感動して、考えさせられて、映像美に酔って・・・こういう経験ができる映画ってそうそうはありません。結局彼は、生命を与えそして奪った”海”に還ったのだ。一方で痴呆という状態で生きながらえた女性との対比。どちらが幸せかなんて計ることはできない。この映画は死を否定的に捉えていない。そこが悲しい話なのに、どこか前向き(表現悪いよな)に感じられるのだ。

 私事だけど、僕は大学1年のときに高校時代の友人を突然の交通事故で亡くした。葬儀が終わって数ヶ月後、仲の良かった友人数名と家を訪問したときに、お母様が彼が書き遺したノートを見せてくださった。そこに幾度も出てきた言葉が僕には強く印象に残った。それは「目を閉じると海が見える」という言葉だったのね。細かいところは忘れたけれど、それは”内なる海”についての詩だった。僕はそれからしばらくして自作曲を書いた。”そして、今彼は海に還る”というフレーズで始まる歌。偶然にも”内なる海”をイメージさせるラストシーンを観ながら、僕はそれを思い出さずにはいられなかった。
(2005年筆)

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007 スカイフォール

2013-01-20 | 映画(た行)

■「007 スカイフォール/Skyfall」(2012年・イギリス=アメリカ)

●2012年ゴールデングローブ賞 主題歌賞
●2012年LA批評家協会賞 撮影賞
●2012年英国アカデミー賞 英国作品賞・音楽賞

監督=サム・メンデス
主演=ダニエル・クレイグ ハビエル・バルデム ジュディ・デンチ レイフ・ファインズ

「007」シリーズ50周年となる第23作「スカイフォール」は、シリーズ最大のヒット作となった。ボンド役に起用されたときは、賛否両論だったダニエル・クレイグも3作目。今でも一部の人々からは"悪役みたい"と言われがち(「ロシアより愛を込めて」のロバート・ショウのイメージが重なるのだろう)。しかしそういう人々って意外と「カジノ・ロワイヤル」以降のボンド映画を観ていない方々がかなりいるものと思われる。食わず嫌いしているのだ。いかにしてジェームズ・ボンドが一人前のダブルオー要員となったかに迫るのが「カジノ・ロワイヤル」と前作「慰めの報酬」だった。愛する女性を失って未練と復讐が心から離れない若きボンド。荒々しさとユーモアを排した作風、そして復讐という私心を超えて任務を全うできるスパイに成長したところまでが前作。2作品をかけた人間ドラマ路線で、ジェームズ・ボンドと名乗るにふさわしい男だと世間に認められたと言っていいだろう。そしてダニエル・クレイグ3作目「スカイフォール」。そろそろ従来の娯楽路線?と思いきや、50周年記念作品が追い求めたのは「ルーツ」だった。

M(ジュディ・デンチ)が関係する過去の事件にまつわる謎をめぐって、MI6が危機に陥る物語。息詰まるノンストップアクションのプレタイトル。観客は一気に引きずり込まれる。ところがMの指示で放たれた弾丸は不幸にもボンドに命中し、彼は水中に落下。アデルが歌う主題歌、水中に広がる血をモチーフにしたタイトルバックは、女性の曲線美と拳銃のデザインで往年のファンを唸らせてくれる。今回の悪役はスペインの名優ハビエル・バルデム。彼の素性を明かすとネタバレになるので控えるが、彼はMI6そしてMへの復讐を企んでいるのだった。職務に復帰したボンドは世界とMを守り抜くことができるのか?ってお話。

イスタンブール、上海、マカオも登場するが主たる舞台はイギリス。ロンドン五輪の年だし、ボンド映画50周年だしイギリスをフィーチャーするのは、「ルーツ」を追う故なのか。「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」の内容そのものがダブルオー要員としてのジェームズ・ボンドのルーツではあった。それはボンド映画には本来似つかわしくない成長物語だった。「スカイフォール」はさらに、個人としてのボンドのルーツに迫る。これはイアン・フレミングの原作でもあまり触れられたことのないテーマだと思われる。スコットランドの荒野に建つ古びた建物が故郷として登場し、両親の墓標まで映し出される。ボンドのプライベートは初期に少しだけ描かれたエピソードがあるが、生い立ちにまで迫るのは驚きだ。身寄りのない男性だからスパイとして抜擢したということまで明かされる。僕はスコットランドの荒れ野の風景に立つボンドの姿を見てエミリー・ブロンテの「嵐が丘」が頭をよぎった。愛する人を失って孤独に苦しんでいた少年時代、前作までで若きスパイとしての荒々しい活躍。僕はボンドのルーツは「嵐が丘」のヒースクリフなのではないかと思えた。そんなボンドにとってのMの存在は・・・。人間ドラマ系ボンド映画としては完成度の高い秀作である。

Mが審問会でMI6の存在意義を説く場面も印象的。国と国が対立する冷戦時代にスパイ組織が果たしてきた役割とは確かに違ってきた。今だからこそ未知の敵と対峙しなければならないのはMI6だと訴えるジュディ・デンチは迫力があった。映画のクライマックスのボンドとの信頼関係を伺わせる台詞も泣かせる。往年のファンにとっては、ボンドカーの代表たるアストンマーチン再登場には大感激。毎回新装備をボンドに提供するQが復活したのも嬉しい。ただこれまでのQは発明家のイメージだったが、今回はパソコンヲタク。レイフ・ファインズがレギュラーとして登場することになるのも嬉しいね。ハビエル・バルデムの悪役と言えば「カントリー」だけど僕は未見なので比べられないが、冷酷さといい気味悪さといいシリーズ屈指の存在かも。次作がどうなるのか楽しみ。ダニエル・クレイグになってからの人間ドラマ路線が続くのか、それともM、Q、マネーペニーと役者がそろったところで伝統の娯楽路線に戻るのか?。

スカイフォール Skyfall Best of James Bond 50th Anniversary
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座頭市

2013-01-20 | 映画(さ行)

■「座頭市」(2003年・日本)

●2003年ベネチア映画祭 銀獅子賞(監督賞)
●2003年ブルーリボン賞 助演女優賞

監督=北野武
主演=ビートたけし 浅野忠信 大楠道代

 勝新「座頭市」のイメージをぬぐい去るためにたけしは数々の楽しい仕掛けを用意した。金髪、ミュージカル、コント・・・これを楽しまない手はないぜ。前作「Dolls」が僕には今イチだったからなぁ。僕は冒頭の場面にたけしの”開き直り”を感じた。僕らニッポン人が日々テレビで見慣れている金髪のたけちゃんが座っている。そこにタイトル ☆バーンッ!「座頭市」。今銀幕に映っているこいつが市だ、たけちゃんじゃないぜ。問答無用に観客にそれを押しつける。それでも”たけしじゃん”と思っている観客には、絡んできたヤクザを瞬時に切り捨てて見せる。勝新の市はあんまやってる日常だの、ばくちも女も好きというキャラについての詳細な描写が付き物(というイメージあるなぁ・・・)だけに、僕はこの冒頭にまず惚れた。

 開き直りはまだ続く。ガダルカナル・タカにコントやらせたり、「ひょうきん族」のアダモちゃんを思わせるイカれた若者も出てくるし、小ネタのギャグも挟みながら物語は進んでいく。夏川結衣と浅野忠信のエピソードが薄味なのが残念だけど、インパクトのある脇役が多いだけに仕方ないのかな。たけし映画の音楽といえば久石譲なのだが、今回は鈴木慶一を起用。日常音をパーカッシブに用いるお遊びが印象的。そして圧巻はラストのタップダンス盆踊り。本編観る前はやりすぎだろうと思っていたが、これが実に見事で、観ていてこっちまで興奮させられる。ベネチアでエンドクレジットが始まってから拍手が止まらなかった・・・なんて報道もされていたけど、この場面をみせられたらねぇ、わかります。実は北野監督、ミュージカルやってみたかったのではなかろうか?。「ひょうきん族」のドラマで落ち目の映画監督役やったときに、”ボブ星”(もちろん「オール・ザット・ジャズ」のボブ・フォッシーからきている)と名乗っていたくらいだから。実は「座頭市」も深夜番組でコントにしていたそうだ。

 それにしても黒澤明監督の命日に銀獅子賞をもらうなんて、映画ファンには感慨深いものがある。実際は「娯楽作をきちんと評価したい」という意向を示していた映画祭側に、チャンバラ映画が強烈にアピールしたことは間違いないだろうけどね。
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ウェルカム・トゥ・サラエボ

2013-01-19 | 映画(あ行)

■「ウェルカム・トゥ・サラエボ/Welcome To Sarajevo」(1997年・イギリス)

監督=マイケル・ウィンターボトム
主演=スティーヴン・ディレーン ウディ・ハレルソン マリサ・トメイ

 ボスニア・ヘルチェゴビナの紛争については日本にいると知らないことが多い。この映画は予備知識がないとチと辛いと思うので、少しばかり授業をしよう。いくつもの宗教と人種が入り乱れる旧ユーゴスラビア連邦が分裂を始め、92年にボスニア・ヘルチェゴビナが独立を宣言した。ところが連邦離脱に反対するセルビア人たちが、独立を支持するイスラム教徒との間で戦闘を始めた。戦いはセルビア人側が優勢で、彼らはセルビア人をもっと増やして地域を支配しようと考えた。セルビア人たちは、イスラム教徒の男を殺し、女性に自分たちの種を仕込んだ。堕胎が禁じられているイスラム教徒の女性は当然にセルビア人の血が流れた子供を産む・・・という訳だ。これを”民族浄化”と呼ぶのだから恐ろしいだろ?。これにNATOが介入して空爆、多くの一般市民を巻き添えにしながらも95年に停戦にこぎつけた。・・・これがボスニア・ヘルチェゴビナの紛争だ。

 「ウェルカム・トゥ・サラエボ」は、イギリス人ジャーナリストが主人公。彼が取材に来たサラエボでは、上記のような”民族浄化”が起こっていただけに、戦争の落とし子たちが孤児となっていた。孤児院を取材して子供たちを救うことを世界に訴えようとする主人公。ところがニュース性がない、とプロデューサーら本国の意向がそれを阻むこととなる。主人公は国連の救援隊と共に子供たちを国外に退去させようとし、さらに一人の少女をイギリスへ連れ帰ろうとするのだ。国外に連れ出すバスの車中にセルビア兵が踏み込む場面、兵士はセルビア人の子供と赤ちゃんを連れ去る。トラックの荷台で赤ちゃんを抱き上げて嬉しそうな声をあげる兵士。彼らにとってその赤ちゃんは支配の為のコマのひとつ。それ故に赤ちゃんは国内に残され危険にさらされることになる。同じひとつの命なのに。

 ボスニア・ヘルチェゴビナの惨状を世界に伝えるためにジャーナリストたちは危険と隣り合わせでカメラを回し続ける。その気持ちはよくわかるのだけど、ちぎれかかった足やら血まみれの死体やら、あれだけ生々しいニュースフィルムを見せつけられるとやはりショックだ。平和を心から望まずにはいられない。虚構である銀幕の中で、現実の映像を見せられるのはある意味感動を呼ぶ。けれど映画として別な表現で反戦の意を伝えることはできるはずなんだよね。「シンドラーのリスト」や「タイタニック」みたいに現実を劇映画に織り込むのはズルいと言う人もいる。スクリーンの外側の事実で観客を泣かせているからだ。映画の作り手ならば感動を現実世界に頼ってはいかんと思うのだ。しかしマイケル・ウィンターボトム監督は敢えてその道を選んだとも僕には思える。ジャーナリズムでも伝えきれないあの国の悲劇、現実から目を背けるなと訴えているのだ。僕がこの映画で強く印象に残ったのは、「サラエボは世界で14番目の地獄。これが世界一の地獄になったら、オレはコンサートをするよ。」と言っていた男が丘の上で一人チェロを弾くラストシーン。無言で戦争の悲劇を訴えるこの場面。そこに込められた思いはとても、とても強い。

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映画チラシ。

2013-01-18 | その他のつぶやき
仕事帰りに本屋さんに寄ったら映画パンフのセールをやっていた。

価値がきちんとわかってるお店が出店してるんだろうな、と感じられるいいお値段。
クリント・イーストウッドの70年代の戦争映画パンフが数千円、
ヘップバーン作品の復刻版が千数百円。

わかる、オレはその価値がわかるぞ。
でも北九州じゃ売れるかなぁ?・・・と思っていたら、チラシ50枚パックが。

70年代から80年代のチラシ、1枚25円くらい。
僕は中学3年から映画チラシコレクター。この値段は見逃せないな。

「キャリー」の初公開版など貴重な70年代ものがけっこう入ってるやん。
むかーしテレビで観て泣いた記憶がある「名犬ウォントントン」!これはなかなかお目にかかれない。
フィービー・ケイツの「プライベートスクール」!
高校時代なら確実にクリアケースの下敷に入れてたな(恥)。

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