◼️「人のセックスを笑うな」(2007年・日本)
監督=井口奈己
主演=松山ケンイチ 永作博美 蒼井優 忍成修吾
永作博美大好きで、松山ケンイチ大嫌いなもので、実はこの映画を観るのをずーっと避けてきた。この二人がイチャイチャする場面がある映画を観るなんて拷問だよ。好きな女の子から自分が知ってる男との遍歴を聞かされるくらいに耐えられないに違いない!と公開当時思っていた(考えすぎです)。やっと観る気になった。
井口奈己監督、なかなかカットと言わずに長回しが好きな人とは聞いていたけれど、これ程とは。低めにでーんとカメラを据えて、奥行きがある遠景。遠くに向かって連なる電信柱、大学校舎の廊下、とキューブリックも大好きな一点消去の構図。そこに長回しで役者の演技が刻まれる。用意された台詞が終わった後もカットがかからないから、かなりのアドリブが要求されて役者の自然な様子が引き出されたと聞く。なーるほど、実際に観てみると納得できる。川辺の道をユリが歌いながら自転車で遠ざかる場面にしても、ユリとみるめのイチャイチャも、二人でエアマットに空気を吹き込む場面にしても、最後の方はもうノリでやってるのがよくわかる。それだけに自然。一方、カメラが動く時は被写体と並行して動く。
歳上女性に夢中になって翻弄される主人公を、途中までざまあみろと思いながら観ていたけど、無言の切ないラストシーンでちょっと許せる気になった(何様?ww)。蒼井優演ずるえんちゃんの煮え切らない感じもいい。言いたいけど言えないのも青春。酔い潰れてベッドに横たわるみるめの上をジャンプする様子が憎めない。
そして何よりも、永作博美演ずるユリの不思議な雰囲気は絶品。この無邪気で自由奔放な大人、他の女優さんが演ずるのなんて想像できない。心配だった(何がだ)イチャイチャ場面も、ずーっとニコニコしてて、いわゆる濡れ場じゃないのが好感。一緒にいる楽しさが伝わってくる。同い年の先生役で温水洋一を配置するなんて、意地悪なキャスティングだよね。
最初のうちは、ボソボソ喋るセリフと延々続くロングショットに途中で飽きるんじゃないかと思ったけれど、ちょっとイジイジした青春の風景は意外と好感だった。映画館を出る時、永作博美が音楽流しながら歌ってた曲を口ずさんでいた。
Let Me Fly Like An Angel ♪