◾️「君の膵臓をたべたい」(2018年・日本)
監督=牛嶋新一郎
声の出演=高杉真宙 Lynn 和久井映見
実写版も(蛇足な現代パートは別にして)悪くないと思ったが、このアニメ化はもっといい。いや、すごくいい。ストーリーに没頭できる分かりやすさが加わったことで、タイトルに込められた意味が際立ってくる。
「君の膵臓をたべたい」という言葉がストーリー上で持つ意味は、驚くほど最初にきちんと提示される。桜良が何を思っていたのかがまるで謎解きミステリーのようだった実写版。このアニメ版では共病文庫を再び手にするクライマックスがそこにあたる。他人が自分をどう思っているのか想像するのが趣味とか言いながら、ネガティブな想像しかできない「僕」。桜良が書き遺した文章で、本当にどう考えていたのかを知る答え合わせ。そして、最後に彼が送ったメッセージとの呼応。これは実写版よりも鮮烈でハッとさせられる。答え合わせで二人の答えが一致するのだ。これは実写版ではなかった演出だけに涙腺直撃。
死ぬ前に最後だから…という彼女の自由な行動。でもその明るさの裏にある不安で仕方ない気持ちとのギャップも、アニメだからこそ落差が際立っている。明るかった笑い声の後、ベッドでもらす囁くような本心。「奔放な女子に振り回される男子」という構図は、実はアニメ好きには最も共感しやすいポイントだとも思える(涼宮ハルヒを心底愛する僕の私見です・笑)。「星の王子さま」をイメージした描写も印象的。そもそもアニメ化向きの題材だったのではなかろうか。いやはや、思わぬ良作でございました。