◾️「カサブランカ/Casablanca」(1942年・アメリカ)
監督=マイケル・カーティス
主演=ハンフリー・ボガード イングリッド・バーグマン ポール・ヘンリード
学生時代、社会人になったらいつか欲しいと思っていたものがあった。それはダブルのトレンチコート。僕にとっては、カッコいい大人こそが着るものだという憧れがあったのだ。今にして思えば、そう思っていた理由のひとつはおそらく「タイガーマスク」の主人公伊達直人が着ていたこと。そして憧れた決定的な理由は、「カサブランカ」のハンフリー・ボガードが着ていたからだ。
中学3年の時に買った映画雑誌「ロードショー」の付録だった「名作映画ダイジェスト」なる冊子。これに載っている全てを制覇しようというのがモチベーションとなって、ニキビづらの若造がクラシック映画を手当たり次第に観ていた。そんな折にテレビで観たのが「カサブランカ」。クールな主人公キザでカッコいい台詞を口にして、美人女優と共演するという予備知識だけで観たのだが、時代背景や政治的な描写の数々を知れば知るほど、過ぎし日の恋を思う中年男の話だけではない魅力を感じてますます好きになった。映画好きの叔父に「ただのメロドラマやん」とひと言で片付けられたのに腹を立てたこともあったっけ(恥)。
ピアノ弾きのサムが歌うAs Time Goes By。その曲に秘められた過去。「その曲は歌うなと言っただろ!」の後、バーンと劇伴が流れてまさかの再会。くーっ、何度も繰り返し観た好きなシーン。霧の空港で元カノとその恋人を見送るラストシーン。ボギーの男気。沢田研二が「ボギー、あんたの時代は良かった」と歌ってた頃だったし、ハンフリー・ボガードに男のカッコよさを学んだ気がするのです(なんておマセな)。
そして社会人になって数年後。僕はダブルのトレンチコートを手に入れた。シングルのコートを着る上司たちに"若造が何を意気がって着てやがる"という視線を浴びる日々。今でも冬になると、コートの長い裾をヒラつかせて歩くの好きだ。今どき、ボギーのコートが…とか言っても通じないけどさ。そんな僕は、アニメ「文豪ストレイドッグス」の登場人物たちが、長いのヒラヒラさせてバトルするのをたまんなくカッコいいと感じる。年齢重ねても、カッコいいと思うツボは変わんないのかな。