Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

2022年4月のプレイリスト

2022-04-30 | 音楽
◆2022年4月に聴いていた愛すべき30曲

New Season(森高千里)
新年度の始まりだもの。
DREAM SOLISTER(TRUE)
Cape Light(和泉宏隆トリオ)
Everlasting Love(Love Affair)
映画「ベルファスト」で使用された楽曲。
Wyvern(米澤美玖)
monochrome rainbow(Tommy heavenly6)
ダブルシャッフル(水樹奈々)
Run For Cover(David Sanborn)
Arrivée des camionneurs(キャラバンの到着)(Michel Legrand)
映画「ロシュフォールの恋人たち」の華麗なるオープニングナンバー
Night on Bald Mountain(禿山の一夜)(Mussorgsky)
松本清張ドラマ「けものみち」で印象的な使われかたをしておりました。

Through The Fire(Chaka Kahn)
旅愁(西崎みどり)
いくつもの愛を重ねて(森口博子with SALT & SUGAR)
あまりの完成度に泣くかと思った。
おないどし(野宮真貴with横山剣)
光るとき(羊文学)
アニメ「平家物語」OP曲。サビの歌詞が毎回胸に突き刺さる。
空の青さを知る人よ(あいみょん)
影になって(JUJU)
Good Girls Go To Heaven (Bad Girls Go Everywhere)(Meatloaf)
微かな密かな確かなミライ(スフィア)
ONE(Aimer)

縄文ロンリーナイト(レキシ)
今月いちばん聴いたアルバムは新作「レキシチ」かも。
風が吹く街(ラックライフ)
Nothing's Gonna Stop Us Now(愛は止まらない)(Starship)
映画「マネキン」主題歌。
innocnt world(Mr.Children)
On The Sunny Side Of The Street(世良公則)
言わずと知れた朝ドラ「カムカムエブリバディ」より。
Runaway Horses(Belinda Carlisle)
日本印度化計画(筋肉少女帯)
オレにカレーを食わせろぉー♪
桜の花、舞い上がる道を(エレファントカシマシ)
La Javanaise(Serge Gainsbourg)
Rocket Man (I Think It's Going To Be A Long Long Time)(Elton John)




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マネキン

2022-04-29 | 映画(ま行)

◼️「マネキン/Mannequin」(1987年・アメリカ)

監督=マイケル・ゴッドリーブ
主演=アンドリュー・マッカーシー キム・キャトラル G・W・ベイリー ジェームズ・スペイダー

アンドリュー・マッカーシーは、80年代に"ブラット・パック"と呼ばれた青春映画スターたちの一員として括られる存在だ。しかし出演作のどれもが、タイプの違う誰かと比較される対象だったり、グループの中でもどこか独自路線だったり、悪く言えばやや浮いてる存在に見えた。主役の映画でも共演者の誰かの熱演で印象に残らない。ちょっとかわいそうなイメージがある。だけど僕はけっこうアンドリューが好きで、「セント・エルモス・ファイアー」の文筆家に憧れる帽子がトレードマークの地味な青年に、ちょっと自分を重ねていたのだ。

さて。そんなアンドリューの主演作「マネキン」。今回は対等の立場になる共演男優がいない。やんちゃなエミリオ兄ちゃんもいなければ、なりきり演技で場をかっさらうなんちゃらJr.もいない。レギュラーメンバー的な共演者は、ちょい悪上手のジェームズ・スペイダーくらい。さあアンドリュー!弾けちゃってくれ!そんな僕の期待どおりのアンドリューが見られる。公開当時、僕は硬派な映画ファンを貫いてこの手のラブコメを避けていたから、今回が初鑑賞だ。

これまでアンドリューが演じてきた優等生タイプとは違うちょっとダメ男。しかし、芸術家志望で変なこだわりがあるもんだから仕事もうまくいかないキャラクターは、周囲の人々と違った感覚をもつこれまでのキャラとも通ずる。映画冒頭のチープなエジプトの場面から、お気楽80年代映画の空気感。改めて今観ると微笑ましくて楽しいじゃない。唐突に人間になるマネキンのエミーは、彼の前でしか人間の姿になれなくて、他の人にはただのマネキン人形にしか見えない。彼は人形を恋人にする変わり者として周囲から見られるのだが、気味悪がられるどころか周囲が受け入れてる感じがちょっと違和感。同僚のオカマが性的嗜好の一つとして認めてくれる描写はいい。今のジェンダー感覚でリメイクしても面白いかも。

後に「SATC」で人気者になる若きキム・キャトラルも見どころの一つ。夜のデパートを舞台に衣装も取っ替え引っ替え、踊ってはしゃいでイチャイチャして。閉店後のデパート店内デートって、古くはチャップリンの「モダンタイムス」にも登場する。誰にも邪魔されない素敵なシチュエーション。朝目覚めて注目を浴びる…って展開も同じだな。

あの頃の僕なら冷めて見てたお気楽な結末も、今なら微笑ましく思える。そんなラストシーンを飾るのは、Starshipの大ヒット曲Nothig's Gonna Stop Us Now(愛は止まらない)。いい曲だ。

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夕陽に向って走れ

2022-04-29 | 映画(や行)

◼️「夕陽に向って走れ/Tell Them Willie Boy Is Here」(1969年・アメリカ)

監督=エイブラハム・ポロンスキー
主演=ロバート・レッドフォード ロバート・ブレイク キャサリン・ロス スーザン・クラーク

キャサリン・ロス目当てで初めて観賞。生粋のハリウッド生まれのキャサリン・ロスは、ネイティブアメリカンの娘を演じている。役者の出身や血筋まで配慮を求める今のハリウッドと違って、こうしたキャスティングが可能だった時代だ。

ウィリー・ボーイと呼ばれる青年がネイティブが暮らす居留区に戻ってきた。かつて恋人ローラの父とトラブルを起こしたウィリー。再びローラに近づくが厳しい視線が注がれ、銃口が向けられる。居留区を見守る立場の監督役のエリザベスはローラの身を案じていた。保安官クーパーは、エリザベスと男女の仲であったが、それはあまりにも一方的で彼女には屈辱的な関係だった。ローラが真夜中に逢引きしているところを襲われたウィリーは誤って彼女の父親を殺してしまう。逃げる二人をクーパー保安官が追い詰める。

名作「明日に向かって撃て!」と同年に製作された映画で、ロバート・レッドフォードとキャサリン・ロス共演というだけで嬉しくなるのだが、こんなゲス野郎のレッドフォードを初めて観た。それに加えて恋人を思ってるのかプライド重視なのかわからんロバート・ブレイクにもイライラさせられる。それでも破滅に向かって突っ走るような、当時のアメリカンニューシネマ的結末は悪くない。特にクライマックス、どこから撃ってくるのかわからない緊張感は、他の映画では味わえない名場面。

ネイティブだけでなく、女性に対する差別も盛り込んだ作品。そして、窮屈な生き方しかできなくなった時代の西部劇でもある。ここには、赤狩りでハリウッドを追われたポロンスキー監督の思いが込められているのかもしれない。



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天才スピヴェット

2022-04-24 | 映画(た行)

◼️「天才スピヴェット/L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet」(2013年・フランス=カナダ)

監督=ジャン・ピエール・ジュネ
主演=カイル・キャトレット ヘレナ・ボナム・カーター ジュディ・デイヴィス ロバート・メイレット

ジャン・ピエール・ジュネ監督作が大好きだ。独自の世界観とファンタジックな表現は、他の誰とも違う。登場人物たちも一風変わった個性的なキャラばかり。特に主人公は、「アメリ」のアメリ・プーランを筆頭に、みんな自分はどこか世間の感覚とは違うと感じている。分別のついた大人だし、感覚の違いを受け入れて世間とつながっている。さて、「天才スピヴェット」の主人公T・S・スピヴェットは10歳の少年。まだ他人との違いに悩み、もがく年頃だ。勝手な想像だけど、この物語はジュネ監督も少年時代に思ってきたことなのかもしれない。

モンタナのど田舎に住む少年は、好き勝手に生きてる家族と、銃暴発事故で亡くなった兄弟への負い目を抱えていた。科学と実験、分析にしか興味がなくて、学校では厄介者扱い。しかし彼の発明や発想は、科学雑誌に投稿すると称賛されていた。そんな彼のもとに学術研究機関スミソニアン協会から、受賞の知らせが入る。大人だと偽った彼は、家を抜け出して、一路ワシントンへと向かう。

映像美とロードムービーの面白さ。素性の知れない彼にいろいろ指南する人々との出会いが彼を大きくする。袖ふれあうも多少の縁と言うけれど、人との出会いは影響をくれる。

派手な第一印象のわりに映画全体としては地味。だけど、これまでのビジュアルで訴えるジュネ映画よりも、ちょっとだけ地に着いた感じは決して悪くない。家族のキャラはハチャメチャなのに、うまく収束するのは素敵。

世間の注目を集めて、現実に振り回されるT・Sの元に駆けつけるのはやっぱり家族。勝手に家を出た彼に、父親がかけるひと言がいい。「お前が無事ならいい」放任なようでちゃんと気にかけている不器用な父親。息子に「帰るか?」と尋ねるラストはグッときた。昆虫研究家の母を演ずるヘレナ・ボナム・カーターが、これまた極端な役柄に母性を滲ませて好演。

お互いをわかってないようで、お互いをわかってる。好き勝手にやってるようで、お互いの好き勝手を認めている。突き詰めればこのお話は、誰かに認められるって幸せなことだよね、というメッセージ。家族や学校は認めてくれないけれど、世間が認めてくれる。でも世間はそれを時にビジネスための食い物にする。誰が理解者なら自分にとって幸せなのか。「アメリ」の満足感と幸福感とは違うけれど、ほっこりした気持ちにしてくれる佳作。みんな違って、みんないい。そして、それを認めてくれる誰かがいるって大事なこと。




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雲のように風のように

2022-04-20 | 映画(か行)


◼️「雲のように風のように」(1990年・日本)

監督=鳥海永行
声の出演=佐野量子 市川笑也 小林昭二 福田信昭

もともとは日本テレビのスペシャル番組として、1990年に放送されたアニメーション(後にイベントで劇場公開)。「うる星やつら」など80年代に人気作を手がけてきたスタジオぴえろ作品。スタッフには、後にスタジオジブリで活躍するアニメーターが数多く参加、マッドハウスや京都アニメーションも関わっている。30年以上前の作品だが、日本のアニメーションの歴史を知る上でも、鑑賞して損はない佳作。

中国の架空の国で皇帝が崩御。次の皇帝となるのは皇太子だが、皇后は皇太子を亡き者にして幼い自分の子を皇帝にしようと企てる。一方で宦官たちは妃となる娘を連れてきて手柄をたてようと、各地に妃候補を探しに走った。田舎娘の銀河は、妃になって後宮に入れば三食昼寝付きで女子でも学問をすることができると聞いて応募し、宦官とともに都へ向かう。育ちがいい訳ではないが、正直な物言いと探究心がある銀河。後宮に時折現れるコリューンと名乗る人物と親しくなり、コリューンが刺客に襲われたのを救う。やがて、ライバルを抑えて銀河は正妃の座を射止める。新皇帝にも信頼される関係になるが、そこへ反乱軍の蜂起が起こる。

わずか80分余のアニメーションだが、ドラマティックな物語と多彩なキャラクターで満足できる。失われていく王朝を守ろうとする者、見捨てて去っていく者、その時世にロマンを求めて剣を手にする者。大人たちは乱世の渦の中で右往左往する。そこに巻き込まれた少女が成長し、妃として立ち向かおうとする真っ直ぐな気持ちが感動的。後半はかなりヘヴィーでビターな展開が待っている。

後宮が舞台だけに、原作はもっと大人向けのエピソードもあるのだろうが、子供の鑑賞を前提とした作品だけにナレーションでサラッと触れる程度にしている。追い詰められた皇帝を「私もう子供じゃない!」と言って抱きしめるクライマックスと、その後の脱出劇は原作だともっと深いのだろうな。

原作は酒見賢一のファンタジーノベル「後宮小説」。キャラデザインが「魔女の宅急便」のキキを思わせる。佐野量子(かなり好きでした)は確かに棒読みだけど、ヒロインの垢抜けない様子や不器用さが感じられて、決して悪くない(ひいき目です)。




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007/ゴールドフィンガー

2022-04-16 | 映画(た行)

◼️「007/ゴールドフィンガー/Goldfinger」(1964年・イギリス)

監督=ガイ・ハミルトン
主演=ショーン・コネリー ゲルト・フレーベ オナー・ブラックマン シャーリー・イートン

子供の頃、自動車の図鑑を眺めて楽しんでいた。あるページで手が止まった。その見開きのページには「スパイの車」とある。フロントに機関銃、リアから煙幕が出て、ナンバープレートが回転して変わり、隣を走る車をパンクさせる装備があって、助手席に乗った悪い奴は屋根から放り出される。なんだこれ、カッコいい。ウルトラ警備隊のポインター以上に少年の心に刻まれた。そして数年後。その車が登場するスパイ映画を少年が観る日が訪れた。「007/ゴールドフィンガー」である。

アメリカが舞台になる最初の作品だけに派手な印象のエンターテイメント。マイアミビーチからイギリス、スイス、再びアメリカと舞台も豪華だし、ボンドのプレイボーイ振りはますますお盛ん。そしてスパイ映画の魅力である秘密兵器が大活躍する楽しさ。コネリー主演の007映画では欧米で最も支持されているというのはうなづける。

悪役は、自分の保有する金を増やし、価値を上げるためには手段を選ばない大富豪ゴールドフィンガー。吹替版育ちなもので、顔を見るだけで滝口順平の声が脳内再生されちまう。憎たらしい役柄だが、演じたゲルト・フレーべは、ナチス党員の肩書を利用してドイツ国内のユダヤ人を逃して匿っていたという経歴があると聞く。こういう裏話を知ると映画ってまた面白い。そしてオッドジョブ(吹替版育ちなもので"よろず屋"とつい呼んでしまう😅)の不敵な存在感。こうした個性的な悪役の存在が007映画を楽しくしてくれる。

ボンドが女性を味方につけるやり口がかなり露骨で、それがなければ成功しなかった任務にも見える。オナー・ブラックマン演ずるプッシー・ガロア(この役名が既に男性目線)は「男性に興味ない」と言い切っている。今のLGBT目線だと、彼女を力づくで押し倒したボンドを不快に感じる方もいるかもしれない。ゴールドフィンガーのやり口に疑問を感じていた気持ちが表現されていたら納得できるのかもしれない。

007映画好きの親父殿は、身支度を整えたボンドに、ガロアが「剃りあとが素敵よ」と言って銃で頬を撫でる場面でニターっと笑う。ほんっと大人ってエッチなんだから、と当時少年だった僕は思った。今配信で見られる吹替では「深剃りは危険よ」との訳になっていて、ストーリーに緊張感をもたせるひと言に感じられる。どっちのニュアンスなんだろ。




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007/ロシアより愛をこめて

2022-04-12 | 映画(た行)





◼️「007/ロシアより愛をこめて」「007危機一発」(1963年・イギリス)

監督=テレンス・ヤング
主演=ショーン・コネリー ロバート・ショウ ダニエラ・ビアンキ ロッテ・レニア

初めてテレビの映画番組で観て以来、もう何度観たかわからない。オールタイムベストを選べと言われたら、おそらく選出する大好きな第2作。

吹替版を繰り返し観てるもんだから、台詞丸暗記してた場面も多い。例えば、クレブ大佐がタチアナに任務を命ずる場面の会話。
「初めての相手はどう?」
「相手次第だと思います。女ですもの」
「利口な答えだね」
字幕で観るとけっこうキツい言葉が並ぶのに、日本語吹替版で選ばれている言葉はしっくりくる。字幕で観ていても、テレビで聞いた台詞が次々に脳内で再生される。
「赤をもらおう」
「せっかちな人ね」
「要所要所を息子で固めとるんだ」
「美女とご一緒だったんでしょ。ジェームズ。」
…いかんいかん。

対立する東西冷戦の構図に、イスタンブールでイギリスに協力するケリム一家、ソビエトに協力するブルガリア人グループ。その間で糸を引きボンドを罠にかけようとする悪の結社スペクターという、実はけっこう複雑な構図のストーリー。だけど、今何を目的に動いているのかが意外と分かりやすい。スパイ映画はただでさえ複雑な国際情勢と騙し合いが描かれるから、難解な映画も多いが、「ロシアより愛をこめて」は、そんな複雑な事情を全く感じさせない編集と演出。エンターテイメントとしても見事なのだ。

悪役に個性があるのもこの時期の007映画の魅力。クレブ大佐を演じたロッテ・レニアの憎たらしい表情もいいが、特に殺しのプロフェッショナルであるロバート・ショウが存在感。ダニエル・クレイグがボンド役になった頃に、金髪に青い眼のボンドなんて殺し屋みたいだ…とオールドファンがしきりに言っていたが、あれはこの映画のロバート・ショウのイメージが残っているからなのだ。

また後々のシリーズ作品へと受け継がれる要素が確立しつつある。Qから支給される装備は仕掛けだらけのアタッシュケースだが、これを手始めに、だんだんとギミック感が増してくることになる。クライマックスはベネチアが舞台となるが、この街もシリーズ中幾度も登場する。そして何と言っても猫を抱いたブロフェルドの不気味な存在。これは多くのパロディや模倣を生むことになる。映画館の看板から逃げる敵を射殺する場面が好き。

さて。僕に007映画を仕込んだ映画好きの父親は、歴代ボンドガールのベストはこの映画のダニエラ・ビアンキだと言う。大人になった息子はその気持ちがよーくわかるようになりました。この役柄については、美貌の添え物みたいに言われることもあるけれど、今観ると組織の下で道具としてしか扱われない立場の悲しさがにじみ出ているとも思えるのです。はい。





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007/ドクター・ノオ

2022-04-08 | 映画(た行)





◼️「007/ドクター・ノオ」「007は殺しの番号」(1962年・イギリス)

監督=テレンス・ヤング
主演=ショーン・コネリー ウルスラ・アンドレス ジョセフ・ワイズマン

007シリーズとの出会いは小学校高学年。父親(とその兄弟)が007映画大好きで、"男子の理想像はジェームズ・ボンド"との偏った思想を植え付けられて育った(笑)。中学時代にイアン・フレミングの原作は創元推理文庫で読み漁り(なんてオマセな)、第2作は日本語吹き替えの台詞を暗記するくらい観た。今でも家族の会話で、007シリーズの台詞が引用されることもしばしばである(恥)。

さて。第1作「ドクターノオ」をテレビの映画番組で観たのは中学生。テレビ放送版を繰り返し観てるので、今改めて観ると放送でカットされた部分(ゴルフに誘った女性が押しかける場面、放射能を洗い流す場面etc)がなーんか楽しい。

そしてウルスラ・アンドレスの登場シーン、最初にボンドと名乗る場面などなど、語り継がれる名シーンたち。

失踪した諜報員の謎を追ってジャマイカに赴くジェームズ・ボンド。第1作らしく、殺しの許可証を持つスパイを紹介する場面がしばらく続くのだが、これが何とも魅力的。ボンドのプライベート、ウォッカマティーニへのこだわり(shaken, not stirred)、ワルサーPPKを嫌がる銃へのこだわり、スーツの着こなし、Mのオフィスでのマネーペニーとのやりとり、そしてカッコいい帽子投げ(真似してました・恥)。この数分間で美学のある男だとしっかり認識させてくれる。そしてその後の大活躍。カッコだけじゃない、スマートでしかもデキる男の魅力に、誰もが引き込まれた。ヤクザ映画観た後で肩を怒らせて歩く人と同じで、007を観ると背筋が伸びる気がするのだ。やっぱりショーン・コネリーは僕にとっては別格の存在。

ドクターノオの拠点である蟹ヶ島(吹替版育ちなもので😓)。施設のセットや原子炉の描写はチープに感じるけれど、そんなことが気にならない緊張感がたまらない。

うちの父と叔父は秘書(実はドクターノオ側の人)に迫る場面が好きなようで、「ここいいよな」と語り合ってた。お子ちゃまだった僕は二人のやり取りを冷ややかに見てた。だけど今の年齢で同じ場面を見ると、若山弦蔵の声で「手はここ」(吹替版育ちなもんで😅)と笑顔を見せながらベッドに押し倒すボンドの姿が勇姿にしか見えないww







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ベルファスト

2022-04-05 | 映画(は行)

◼️「ベルファスト/Belfast」(2021年・イギリス)

監督=ケネス・ブラナー
主演=ジュード・ヒル カトリーナ・バルフ ジュディ・デンチ ジェイミー・ドーナン

元来シェイクスピア俳優であるケネス・ブラナーは、英国文化の継承者の役割がある。近年アガサ・クリスティ作品の映画化を続けているのもそうした姿勢の表れだと思うのだ。ケネス・ブラナーが次に撮ったこの「ベルファスト」は、自身の少年時代を基に、北アイルランドの街で宗教対立を発端にした暴動とそこで暮らす人々が描かれる。これまでブラナーが手がけてきた文学作品の継承でなく、忘れてはならない歴史の継承であり、これからへのメッセージが込められている。

紛争についてもっと悲惨な内容を予想していた。厳しい状況は描かれながらも、この映画は少年バディ視点の庶民生活を中心に据える。日に日に悪化する街の様子、ギクシャクする両親の様子も目にするけれど、家族で映画を観たり、学校で好きな女の子に認められたいと願ったり、悪友の万引きに巻き込まれたり、家族で映画「チキチキバンバン」を観て盛り上がったり。変わらない日常がそこにある。

挿入される映画やグッズの数々に思わずニヤリとしてしまう。チラッと映すアガサ・クリスティの本や「マイティ・ソー」の雑誌は、ケネス・ブラナーのフィルモグラフィーに直結する小道具だし、アストンマーチンのミニカーやサンダーバードのおもちゃは60年代の英国を感じさせる。感激したのは、フレッド・ジンネマン監督の異色西部劇「真昼の決闘」とフランキー・レーンの主題歌High Noonを挿入したこと。これが暴動の中で息子と妻を救おうとするバディの父親の行動に重なる描写は実に見事。祖母が好きだった映画として「失はれた地平線」が挙げられるのもいい。理想郷シャングリラが登場するクラシック。そして祖母は「ベルファストから行けはしないわ」とつぶやく。さりげなく目の前の荒廃したベルファストと対比させてみせる。なんて巧い。

バディとその家族に向けられる祖父母の愛ある言葉の一つ一つも胸に残るいい場面。「イングランドに行ったら言葉が通じないらしい」というバディに、「ばあさんとは50年一緒にいるが何を言ってるのか今でもわからん」と言って笑わせる。「大事なのは自分が誰かを忘れないことだ」とのひと言も響いた。そしてラスト、家族に向けられた祖母の短い台詞も忘れがたい。祖父母の仲の良さも素敵だなと思うポイントだが、ギクシャクしていた両親が歌いながら踊るラスト近くもいい。四分打ちスネアがカッコいい、Love AffairのEverlasting Love(余談:U2のカバーもナイスなんです)が流れる素敵なシーンになっている。

戦乱の中で街に住み続ける人々。連日報道されるウクライナの様子とどうしても重なってしまう。何故争わなければならないのか。この映画を観るとますますその疑問と虚しさを感じずにはいられない。

家族愛と郷土愛、そしてポップカルチャーへの愛情を添えた物語。オスカー脚本賞は納得だ。個人的に、アイルランドが舞台となる映画と相性がいいのかな。これまであんまりハズレと思ったことがないし、むしろお気に入りの映画が多い。この作品もその一つとなるだろう。



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ザ・ロック

2022-04-03 | 映画(さ行)





◼️「ザ・ロック/The Rock」(1996年・アメリカ)

監督=マイケル・ベイ
主演=ニコラス・ケイジ ショーン・コネリー エド・ハリス

金にものを言わせたハリウッド製エンタメ作品は、ある時期を境にパタッと観なくなってしまった。それゆえか、マイケル・ベイ監督作は避けて生きてきた(大げさ)のだが、ショーン・コネリーの勇姿がふと観たくなって、BSで放送された「ザ・ロック」を初鑑賞。

よく言えば無駄がない。悪く言えば思考や情感に浸る余裕が全くない。でもそれは余計なことを考えさせない没入感があるってこと。

エド・ハリス演ずる軍人が何故アルカトラズを占拠して政府に抗議する行動に出たのかは、(効率よく)タイトルバックから語られ始める。
なんてこった。
誰か現地に詳しい奴はいねえか。
一方でニコラス・ケイジ演ずるスペシャリストが有能であること、クリスチャンの彼女に結婚を迫られていること、VXガスがいかに危険で扱いにくいものなのか、などなど次々と示される。そして素性を明かされないショーン・コネリー登場。大立ち回りを演じた後に、さあ任務に出発っ!

ん?今始まって何分?。
情報量多いけど、力技でガンガン突き進む。これがマイケル・ベイ節なのかぁー。

次々に示される事実と展開をひたすら受け入れるしかない。娘と再会するシーンは、置かれた状況と人間味ある部分を示すいい場面だが、余韻に浸る間はない。はい任務、任務〜。情感の部分は役者陣の巧さによるところが大きいのかも。エド・ハリスやデビッド・モースは表情で葛藤を伝えてくれるし、主役の二人は交わす短い台詞の中で人柄がにじんでくる。これはキャスティングの勝利でしょ。老いたコネリーだが八面六臂の大活躍。あ、オレ元英国諜報部員ですから、って納得するしかないですね、はい。

VXガスの扱いを雑に感じてしまうけど、それも消し飛ぶくらいにカッコいいショーン・コネリーと、人間味あるニコラス・ケイジを存分に楽しむべし。ドンパチばっかりのエンタメは避けがちな僕だけど楽しめました。爆弾落として任務完了ですっ!という映画じゃなかったのがよい。発煙筒のシーンは、わかっちゃいるけどジーンとくる。



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