Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

COLD WAR あの歌、2つの心

2020-08-30 | 映画(か行)



◾️「COLD WAR あの歌、2つの心/Cold War」(2018年・ポーランド)

監督=パヴェウ・パヴリコフスキ
主演=ヨアンナ・クーリク トマシュ・コット アガタ・クレシャ

90分の尺に収めているのにドラマティックで、満足させてくれる映画って、それ程お目にかかれるものじゃない。「COLD WAR あの歌、2つの心」は久々にそんな感覚を味わえた映画だ。

第二次大戦後の東西冷戦の時代。ポーランドの田舎から歌や踊りが上手な若者を集めて、民族音楽の舞踏団が結成される。音楽監督であるピアニスト、ヴィクトルは個性的な歌声と美貌をもつズーラと出会う。いつしか二人は愛し合うようになり、東ベルリン公演の際に西側への亡命を企てるが、脱出できたのはヴィクトルだけだった。その後公演先で二人は再会。二人は一緒に暮らし始めるが、彼女は突然ポーランドへ。鉄のカーテンを越えて二転三転する二人の行く末は…。

映画冒頭、様々な歌声を録音してメンバーを選抜する場面が続く。淡々としているのに、いろんな歌、踊り、演奏、表情が見られて不思議と引き込まれる。ポーランドの民族舞踊や歌を残していくための舞踏団だったものが、ポーランド政府が社会主義啓蒙のために利用し始めるあたりから、だんだんと不穏な空気が流れ始める。

惹かれあった二人は、お互いのために何ができるかを考え続ける。政府関係者から監視の対象になったヴィクトル。ズーラは彼を監視して密告する役割だった。彼のために真実を告げるズーラ。彼女が政府関係者に弱みを握られていることから、彼女を連れて亡命しようとするヴィクトル。やがて二人で音楽を紡ぎ出そうとするが、彼女のために用意した舞台やパリでの暮らしは、彼女が望むものとは違っていた。そんな男女のすれ違いが、国境を越えて繰り返される十数年間をわずか88分で描ききる。それでも決して駆け足の演出でもなく、周辺の人物たちを交えて揺れるけれど求め合っている二人の気持ちを描き出す。ポーランドに戻ったズーラを追うヴィクトルの姿は痛々しいけれど、そこまで思い詰めた男心に胸を打たれる。

モノクロの寒々としたポーランドの風景、ジャズが演奏されるクールな印象のナイトクラブ、躍動感のある民族舞踊と美しいハーモニー。劇伴がほぼない映画なのに、音楽が途切れず、しかも時代の移り変わりも表現されて不思議な感覚。

世間の評判は聞いていたけど、予想以上。レア・セドゥを思わせるヒロインの物憂げな表情が心に残る。





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劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 3. spring song

2020-08-23 | 映画(は行)


◾️「劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 3. spring song」(2020年・日本)

監督=須藤友徳
声の出演=杉山紀章 下屋則子 神谷浩史 植田佳奈

「Heaven's Feel」最終章に参戦。前作のあのラストで絶望を叩きつけられて途方に暮れた人々の期待が高まる中、2020年3月の公開は新型コロナウィルスの感染拡大で延期になった。焦らされて焦らされて、サマーシーズンに公開された本作。今回も容赦なく前作の続きから始まる。
「誰が殺したのか知っておるな」
また出たか、蟲じじい!ああわかってらい!…とスクリーンに向かって心の中で呟くww

正義の味方に憧れていた士郎が、「桜だけの正義の味方になる」と宣言した第2章。誰もが困難だと思う中、桜を救うという士郎の思いは叶うのか。その一点が貫かれたストーリーになるかと思いきや、登場人物それぞれの思いがみんな炸裂してるから、これまでの2作品と比べてもかなりエモーショナル。

士郎のあまりのカッコよさに身震いする。遠坂凛(推しキャラです)の活躍も、言峰綺礼の執念も、もちろん間桐桜の狂いっぷりも素晴らしい。だけど、美味しいところを見事にかっさらうのは、なんと言ってもライダーとイリヤ。マスターである桜を思う気持ちがひしひしと伝わるライダーのひと言ひと言。そして物語を総括するイリヤの存在感。いやもうロリコン呼ばわりされてもいいよ、イリヤ万歳ww。それだけに、桜の影がやや薄くなった感もある。

セイバーオルタ対ライダーのバトルが激しくって荒々しくって。でも美しいバトル。これはアニメだからこそ描ける名場面。最後に「士郎…」と名を呼ぶセイバーに泣きそうになる。でもそんな感情に浸る暇も与えない。クライマックスは見せ場の波状攻撃。待った甲斐があった完成度の高い最終章。

桜のように世の中にネガティブな感情を抱いている人って、現実多いと思う。第2章でダークサイドに堕ちていく彼女を見て、ちょっとだけ「ジョーカー」が頭をよぎった。気持ちが参っている時に観る第2章は、あの映画並みにどんよりとした気持ちにさせられそうだ。でも、この物語には第3章があり、彼女を見守る誰かがいた。青空を見上げたくなるエンディング。この映画の結末を、映画館の外も桜の花びらが舞い散っている3月に観られていたら…と思うとそこは残念な気がする。

黒桜みたいな黒と赤のストライプのシャツ持ってたよなあ…と帰宅してワードローブをあさるオレ。あった、あったぞww






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劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 2. lost butterfly

2020-08-22 | 映画(は行)
◾️「劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 2. lost butterfly」(2019年・日本)
監督=須藤友徳
声の出演=杉山紀章 下屋則子 神谷浩史 植田佳奈


「Heaven's Feel」三部作の第2作。オリジナルのゲームにおける"桜ルート"は、最も過激である為、テレビシリーズではアニメ化はできないと聞いていた。その噂に違わぬ残酷描写、エロス、血飛沫に彩られた絶望的なストーリーが展開される。これが実写なら間違いなく「観ない」という選択をしそうな話だが、グロテスクな部分も単なる残酷描写を通り越して、独特の美学まで感じてしまうから目が離せない。されど、これは免疫がないとトラウマ級の作品だけに、青少年の視聴には十分なご配慮をお願いします。
今回特に目を引くのが水の表現。降りしきる雨の中で、それまで隠してきた思いをぶちまける桜。水たまりも踏みしめてまっすぐに進み、彼女を守る決心をする士郎。名場面だ。また、桜の涙は感情の高まりとともに溢れてくる。最も印象に残るのは、士郎と抱き合う真夜中の場面なのでは。一方で血の滴りや飛び散る様子、地面に染みて広がる場面も単なる色彩の変化ではなく、ドロッとした液体を間近で見ているかのような生々しさで迫ってくる。


それにしても第1作同様、次々とサーヴァントたちが倒れていく。12回蘇生する魔術をもつバーサーカーと、エクスカリバーの連打が可能になったセイバー・オルタの圧倒的迫力のバトルは、この映画のハイライトのひとつ。最後はもはや痛々しく感じてしまうのだが、そうしたバトルを経て追い込まれるのは士郎や凛たちだけではなく、観客である僕らもだ。どうしたらこの劣勢を覆せる?と思いながらも、ストーリーは次々に絶望的な展開を示してくる。こんな桜が観たかったというファンもいそうなメルヘンチックな場面が続いたかと思いきや、僕らはさらなるダークサイドに突き落とされる。あっ、あっ!ギルさま!えーっ!?


このラストシーンを突きつけられて、身体に染みつくようなAimerの歌声を聴かされて、シアターを後にする…。これを映画館で初めて観た人の感じたワクワクとモヤモヤの入り混じった気持ちは計り知れない。さらにコロナ禍で第3作の公開日は焦らされ続けた。結末、見届けたくなるよね。


劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 Ⅱ.lost butterfly 本予告 | 2019年1月12日(土)全国ロードショー



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劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 1. presage flower

2020-08-19 | 映画(は行)






◾️「劇場版Fate/stay night Heaven's Feel 1. presage flower」(2017年・日本)
監督=須藤友徳
声の出演=杉山紀章 下屋則子 神谷浩史 植田佳奈

Fateシリーズのアニメは、長男の勧めがあって一緒に見た。
Fate/stay night
Fate/Zero
Fate/stay  night Unlimited Blade Works
….ハマりました。原作のゲームは知らないけど、完成度の高いアニメ作品と楽曲に気づくと夢中になっていた。Lisaや藍井エイル、Aimerを聴くようになったのは、これがきっかけだった。ちなみにED曲だった「あなたのいた森」はカラオケ十八番で、サーヴァントのお気に入りはネロ・クラウディウス。こんなおっさんですが、何かww
さて。強烈な長さのプレタイトルに続いて、いちげんさん、にわかファンお断りとでも言わんばかり、問答無用の導入部。タイトルバックでストーリーを進めるのはときどき見かける手法だが、本作の端折り方はハンパじゃない。シリーズ通じて重要な部分をバッサリ切る。第一のセイバールート、第二の凛ルートを観客は知っている前提での構成という大胆さ。でも、アニメの劇場版は所詮はファンサービス。これくらいのことをやって、描きたいところに力を注ぎ込むのは、潔くてむしろ好感がもてる。だって、ファンがこの劇場版に期待するのは間桐桜の物語なんだもの。「あなたが私のマスターか?」とセイバーに尋ねられるとこなんて、もう何度も見てるだろうしねw
それでも過去作の予備知識がことごとく裏切られていく。次々に自分の好きなサーヴァントたちが倒れていくのに、「ええーっ!」と声をあげそうになる。ランサー対真アサシンのスピーディなバトルには感激するし、虫嫌いの僕には毎回辛かった間桐家の虫描写もさらにパワーアップ(泣)。雪が降る美しい場面、それがいつしか雨に変わる瞬間。美しさに息を飲む。
何よりもこれまで目立たなかった桜が、いかに士郎を慕っていたのか、どんな思いでいたのかが明確に語られて切ない。
「もし私が悪い人になったら、許せませんか?」
その言葉の意味とは…。怒涛のクライマックスで明かされる次なる展開の序章。エンドクレジットに重なるAimerのねっとりとした歌声が、桜の心情を再度上書きしてくる。
貴方のこと傷つけるもの全て
私はきっと許すことはできない
わるいことをしたらきっと貴方が
怒ってくれると約束したよね
続きは第2章で。


劇場版「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」第一章/予告編第一弾


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セーラー服百合族

2020-08-17 | 映画(さ行)





◾️「セーラー服百合族」(1983年・日本)

監督=那須博之
主演=小田かおる 山本奈津子 江崎和代 倉吉朝子

高校時代。レンタルビデオ店がこの世に初めて出現した。1泊千円とかいう時代。そのお年頃では堂々と映画館で観られない類の映画(当時の言葉で言う"成人映画"ってことね)数本とSF映画を、友人数名とお金出し合って借りたことがある。そのうちの1本がこれ「セーラー服百合族」だった。

この作品をきっかけににっかつロマンポルノのアイドルとなった小田かおると山本奈津子。夜のプールで二人がジャレ合う美しい場面。小田かおるが演ずるのは、レズビアンだけどボーイフレンドもいるボーイッシュな女の子。妊娠したかも!?と騒いだけど、生理が遅れていただけどわかって、再び彼氏とイチャイチャ。山本奈津子演ずるバージン女子は置いてけぼり。

そんな彼女の前に年上の女性が現れいろんな手ほどきを。奈津子ちゃんにはのぞきが趣味の危ない男子が絡んできて、かおるちゃんは彼氏とすったもんだがあって、結局女同士がいい♡という結論に達する物語。

当時のおっちゃんたちが観ていたロマンポルノに、それまではレズビアンが出てくる作品はあっても、一人より二人見せる目的のようなもの。だけど百合女子の心理に迫るストーリーだったことは画期的なことだったのだろう。僕らにとっては、ロマンポルノに出演しているのは年上のお姉さま女優ばかりだった時代。そこへ同世代が登場した衝撃。そして山本奈津子は僕のミューズとなった(注・高校生です)。

監督はこの数年後に「BE BOP HIGH SCHOOL」を撮る那須博之。かたやロマンポルノ、かたやツッパリ高校生の青春映画。映画の趣向は異なるのだけど、その年頃の輝きや戸惑い、どうしようもなさが描かれているのは共通点かも。

当時、NHK FMの番組に山本奈津子が出演したことがあって、新作(確か「濡れて打つ」)の話や撮影の舞台裏について語っていたのを覚えている。まさかの登場に「うっそー!?」(今と違って「マジか」とか言わないのが80年代)と、ラジカセに思わず近づいたっけ(恥)





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王様と私

2020-08-16 | 映画(あ行)



◾️「王様と私/The King And I」(1956年・アメリカ)

監督=ウォルター・ラング
主演=ユル・ブリナー デボラ・カー リタ・モレノ マーティン・ベンソン

シャム王家に教師として雇われた英国人女性が、封建制はびこる王政に新風を吹き込む姿を描くミュージカル映画の名作。名曲“Shall we dance“と共に、教養として知っておきたい映画の一つ。

閉鎖的な宮殿の生活しか知らない王やその子供たちに世界の姿を教え、ストウ夫人の「アンクルトムの小屋」を通じてヒューマニズムを語り、やがてそれは奴隷制が続いていた国に一石を投ずることになる。外国の使節に、シャム王国が野蛮な国でないことを示すために「アンクルトムの小屋」の劇を披露するシーンは印象的。

しかし「アンクル…」は黒人社会では「白人に従順な黒人」を指すこともあるし、そもそも白人女がアジア人にあれこれ教える話を白人至上主義だという批判もあるかもしれない。僕は、「王様と私」は純粋に民族を超えて人が理解しあえる姿が自然な姿として語られているように思えて、むしろ好感を抱いたけど、今の目線だと、ハリウッドクラシック映画に不快な思いをする人もいる。この映画もそんな一つになっちゃうのかな。

往年の派手なミュージカル映画とは違うが、華麗なセット、優雅な衣装も見どころ。ユル・ブリナーの力強いシャム王、気丈なヒロインを演ずるデボラ・カーも名演。

そもそもは「アンナとシャム王」という1946年の映画がオリジナルで、リチャード・ロジャースらの手にやってミュージカル化されたもの。こちらは後にジョディ・フォスター主演でリメイク。またミュージカルの舞台では、シャム王を渡辺謙が演じたこともありましたね。





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さよならエマニエル夫人

2020-08-14 | 映画(さ行)



◾️「さよならエマニエル夫人/Goodbye Emmanuelle」(1977年・フランス)

監督=フランソワ・ルテリエ
主演=シルビア・クリステル ウンベルト・オルシー二 アレクサンドラ・スチュワルト ジャン・ピエール・ブーヴィエ

「エマニエル夫人」シリーズ第3作。互いを束縛しない夫婦の物語は、第3作にしてついにその大前提が崩れていく。それは、エマニュエルが初めて恋を知ったこと、夫ジャンがそれに嫉妬を初めて覚えたことだ。それだけに大人の恋愛映画として観ればなかなかグッとくるところもあるのだが、いかんせんこれはあの「エマニエル夫人」の続きであって、観客の期待はそんなとこじゃない。

セイシェル島(松田聖子の歌が頭をよぎる人は80年代育ち・笑)で暮らしているジャンとエマニュエルは、友人や時に観光客を交えて自由な生活を送っていた。ある日、ロケハンにやって来た映画監督グレゴリーと出会う。彼の視線に何かを感じたエマニュエルは彼に近づき誘惑する。しかし、グレゴリーはエマニュエルと夫の自由な性生活に理解を示さなかった。そんな拒絶を示されたことのなかったエマニュエルはショックを受けるが、そんな彼にますます惹かれていく。再び会った時にエマニュエルは「あなたを知りたい」と言う。それはこれまでにない順当な恋の手順。やがてエマニュエルはそれまでの大胆さを失っていく。夫ジャンはグレゴリーのせいだ、と嫉妬心を露わにし始める。それは初めて抱いた感情だった。

純粋に男と女の物語として観ると、深いなぁ…と感心する台詞が随所に散りばめられている。エマニュエルの友人が、「女として欲してもらえなくなるけど、それでも一緒にいれるのは彼だけ。他の女と情死するでしょうけど、それは私のおかげよ」という台詞は、男の立場で聞くとドキッとする。またエマニュエルがグレゴリーに本気になりながらも「また違ったタイプの暴君かもね。新しい発見があるわ」と言うひと言も印象に残る。

男ってこんなふうに見られているのか、とまさかソフトポルノを観ながら考えるなんて思わなかった。さすがフランス映画。しかしながら映画のクライマックスはジャンの見苦しい悪あがき。そんな男女の駆け引きが観る目的じゃないという人が大多数だろう。他の2作と比べて低評価なのはきっとそのせい。この映画のハイライトと言える浜辺のラブシーンは、夜明けの海岸なので画面が暗いのがますます残念。

この映画のもう一つの魅力はセルジュ・ゲンスブールが担当した音楽。ミディアムテンポのレゲエ調の曲に、セルジュの呟くような歌声が乗る。カッコいい。

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シャルロット・フォー・エヴァー

2020-08-10 | 映画(さ行)


◾️「シャルロット・フォー・エヴァー/Charlotte For Ever」(1986年・フランス)

監督=セルジュ・ゲンスブール
主演=シャルロット・ゲンスブール セルジュ・ゲンスブール ロラン・ベルタン

僕が心から尊敬するアーティストの一人、セルジュ・ゲンスブール。60年代からシャンソン界で活躍し、"歌うポルノ小説家"と呼ばれたり、国歌をレゲエにアレンジして物議を醸したり、不可解な映画などの刺激的な作品を遺した。また多くの女性アーティストに楽曲を提供し、プロデュースもこなし、歌手として魅力を増した女優もあまた。そしてブリジット・バルドーやジェーン・バーキンとのスキャンダラスな私生活でも知られる人物だ。

そんな不良老人セルジュが、愛する娘シャルロットの為に撮った、不思議な映画が「シャルロット・フォー・エヴァー」。ストーリーは決して盛り上がることなく、変な親父と妙な娘の姿が淡々と描かれる。セルジュの他の作品を知らないでこの映画を観たら、きっと「?」しか心に残らない。自分なりのエロスを作品で追求してしたセルジュが、ロリータ振りを思いっきり発揮した作品なのだ。

正直言うと胸糞悪い映画でもある。娘の友達にチョッカイを出したり、下ネタでしか会話しなかったり。でも僕は、映画が終わる頃には、このよだれにまみれた不良老人がものすごくカッコよく思えた。自分であることに遠慮なんて必要ない。幼さの残るシャルロットの美しさを、フィルムにとにかく焼き付けておきたかったのだ。髪を洗いながら浴室で踊る姿は、きっと心に残る。娘にここまでさせるか?とも思うけど、偏った愛情表現なのだ。

何よりも僕が気に入っているのはこの映画の音楽。この頃、セルジュはデビッド・ボウイのLet's Danceをいたく気に入って、ボウイのアルバムに参加したミュージシャンを集めて新作「ラブ・オン・ザ・ビート」(ビートはフランス語で男根の意味があり、掛け言葉になっている)をリリースした頃。この映画で使われたギターのカッティングがやたらカッコいい楽曲たちは、シャルロット名義のアルバム「シャルロット・フォー・エヴァー」に収められている。名盤。



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JFK

2020-08-05 | 映画(さ行)





◾️「JFK/JFK」(1991年・アメリカ)

監督=オリバー・ストーン
主演=ケビン・コスナー シシー・スパイセク ジョー・ペシ トミー・リー・ジョーンズ

1963年11月22日。ニューオリンズの地方検事ジム・ギャリソンは、ケネディ大統領がテキサス州ダラスで射たれたと知る。射殺犯とされるオズワルドの逮捕、大統領の訃報、ジャック・ルビーによるオズワルド襲撃、と立て続けに起こる出来事。そしてことの顛末をオズワルドの単独犯行と結論づける"ウォーレン報告"が提出された。ギャリソンは、単独犯行説に異論を唱え再調査を行う。数々の新証言が出てくるが、皆証言は頑なに拒む。真実を阻む見えない大きな壁。やがてギャリソンは、Xと名乗る元軍人から政府内の陰謀について知らされる。事件の真相に近づくために何ができるのか。そしてギャリソンは法廷へ。

政治的な題材を好むオリバー・ストーン監督の執念が映像から滲み出る。実際の映像と映画、客観的な事実とモノクロの再現シーンが次々と観る側に示される見事な編集が、歴史を目撃しているような不思議な臨場感を与えてくれる。この事件についてのテレビドキュメンタリーを随分前に見たことがある。映画でも繰り返し流される大統領の頭に命中するショッキングな実録映像は、その番組で初めて見て、ウォーレン報告の矛盾や残された謎、そして陰謀説の解説を聞いて、ゾッとしたのを覚えている。この事件の裏には一体何があったのか。

映画のクライマックスは、ギャリソンがCIAのために働いたとされるクレイ・ショーを大統領殺害で起訴した裁判だ。ギャリソンは陪審員たちを前に事実を示しながら、国家的な陰謀があり、ショーがそれに関わったと主張する。最終弁論の場面のケビン・コスナーの気迫には圧倒される。「アンタッチャブル」のエリオット・ネス役こそベストだと信じてきた僕だけど、この力強いスピーチに心打たれた。
「愛国者は自分の国を政府から守るべきだ」
「みなが真実を知りたいと望んでる。明らかにして誇りをもてる国にしたい」
なんか今のニッポンにも響く言葉たち。

そしてオリバー・ストーン監督はエンドクレジットにこう記す。
"この作品を真実を探求する若者にささげる"
事件の全ての文書が開示されるのは2030年代になるという現実を踏まえてのこのひと言。
Dedicated to …が未来の不特定多数の人に向けられたのを観たのは初めてかもしれない。まさに執念の映画化。今まで理屈ぽくて、肩に力の入った映画ばかり撮る人だと思っていたけど、「JFK」は食わず嫌いだった。監督、ごめんなさい。オールスターキャストも映画的興奮を高めてくれる。ジャック・レモンとウォルター・マッソーの登場には感激。





JFK (1991) Official Trailer - Kevin Costner, Oliver Stone Thriller Movie HD


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ピラミッド

2020-08-03 | 映画(は行)


◾️「ピラミッド/The Awakening」(1980年・アメリカ)

監督=マイク・ニューウェル
主演=チャールトン・ヘストン ステファニー・ジンバリスト スザンナ・ヨーク

「ドラキュラ」のブラム・ストーカー原作によるホラー。考古学者コーベックは、歴史上から消された王女カーラの謎を追っていた。ついにその遺跡を発見するのだが、その瞬間から彼の身辺には奇怪な出来事が起こり始める。遺跡を発掘したその日に生まれた娘マーガレット。彼女は成長するにつれて、次第に王女カーラの姿に似ているとコーベックは感じるようになる。それは王女カーラが現代に転生しようとする前触れだった…。

チャールトン・ヘストンは、70年代に後にカルトとなるようなSF映画にも出演してきた人だが、80年製作のこのホラー映画もそんなノリで出演を決めたのだろうか。次第に狂気に堕ちていく主人公を巧みに演じている。転生儀式のクライマックスを経て、まったく救いがないラストへ。続編でも考えられていたのだろうか。

監督はマイク・ニューウェル。後にラブコメや「ハリー・ポッター」も手掛けているだけに、こんなのも撮ってたんだ…と改めて驚く。トム・クルーズの「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」と比べてみるのも面白いかも。



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