Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

宇宙戦艦ヤマト2202 第7章新星編

2019-03-31 | 映画(あ行)

◾️「宇宙戦艦ヤマト2202 第7章新星篇」(2018年・日本)

 

監督=羽原信義

声の出演=小野大輔 桑島法子 鈴村健一 大塚芳忠

 

なるほど。こういう結末に持っていくとはね。オリジナル「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」へのリスペクトは十分に示しつつも、かつてのテレビシリーズ「ヤマト2」や「完結編」に通ずる希望あるラスト。感想は人それぞれあるだろうけど、悲壮感で観客を泣かせるだけに終わらせないのは好感。

オリジナルの「さらば」は、誰かのために行動することの尊さを、これ以上ない形で示してくれた。そのテイストはそのままに、「2202」では散りゆく者それぞれの思いが明確に描かれるから胸を打つ。泣かないぞーと思ってスクリーンに向かったが、斉藤始や加藤三郎の最期にはさすがに涙を誘われる。斉藤の「俺の嫁が言うことは聞いとけ!」のひと言にはシビれた。そしてクライマックスの「森雪が一緒にいるから!」で涙腺崩壊。あー、この感想書いててまた泣けてきたww

オリジナルにはなかったガトランティス側の重厚なドラマも、この第7章の大きな魅力。一方でデスラー総統は背負わされたものがあまりに大きいせいか、出番が少なめなのがやや残念。

羽原信義監督は「蒼穹のファフナー」が代表作。回が進むにつれて、こっちの気持ちがどんどん暗くなる作品だった。それがあの「さらば宇宙戦艦ヤマト」のリブートを手がけるというから、途方もなく悲惨な話になるのではと思っていた。「2202」が始まった時は、こっちの気持ちが最後までついていけるかが何よりも心配だった。

オリジナル「さらば」が製作された時代は、「ガンダム」以前の"アニメは勧善懲悪"が当たり前だった時代。敵側の理屈や掲げる正義が詳しく描かれることはなかった。ガトランティス側のドラマ、ガミラス側のドラマがより鮮明になった分だけ、最後はあのズウォーダーまでもが、血の通った"人"として描かれる。それは福井晴敏の巧さであるのは言うまでもない。続編決定との報が届いたが、今度はどんな心の準備をして臨めばいいのだろ。楽しみである。

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水のないプール

2019-03-21 | 映画(ま行)

◾️「水のないプール」(1982年・日本)

監督=若松孝二

主演=内田裕也中村れい子 藤田弓子

高校1年の夏。映画ファンを公言して、貪欲に何でも観ようとしていた僕を、叔父が湯布院映画祭に連れて行ってくれた。新旧日本映画が観られて、俳優や監督、スタッフの話を聞くことができるシンポジウムもある温泉地の素敵な映画祭。そこで観た一本が、この「水のないプール」だった。予備知識、皆無。

えっ?え?叔父さん、16歳のオレがこれ観ていいの?間違いじゃないの?

全編裸、裸、裸…中村れい子が脱がされる場面でスクリーンいっぱいに映し出されたヒップ。ただでさえドキドキしてるのに、生唾呑み込む音が隣の席に座ってるお姉さんに聞こえるんじゃないか、とハラハラ。窓からクロロホルムを部屋に流し込み、眠り込んだ女性を犯すという、実際に起きた事件を基にした物語。ボソボソしゃべる陰気な顔した主人公。次第に犯行が大胆になり、女性の為に朝食を用意したり、悪戯めいた行動までするようになる。それは誰からも抑圧されない、自分だけの世界。でもそれは決して彼を満たしてくれることはない。水のないプールはそのイメージ。逮捕された後で、中村れい子がつぶやく「もう誰も来てくれないじゃない」とのひと言。大人が都会で生きていく寂しさってヤツを、少年は垣間見てしまったのでした。

叔父さんはそのままシンポジウム会場に僕を連れて行った。会場に現れたのは、若松孝二監督、内田裕也、安岡力也のお三方。ぎゃー、さっきスクリーンで観た人たちが目の前にいる。安岡力也、デカい!怖い!何を語っておられたのか、あんまり覚えていないけど、とにかくギラギラしたアツい空気を感じたのでした。ゲストの名前が画面に映されると大きな拍手、原田芳雄やタモリなど脇役が登場するとまた拍手。映画の楽しさを共有するって、こういうことなんだな。貴重な経験でした。

内田裕也氏のご冥福をお祈りします。

シェケナベイベー、ロックンロール。

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MIE, 中村れい子, 藤田弓子, 紗貴めぐみ 内田裕也
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翔んで埼玉

2019-03-03 | 映画(た行)
◾️「翔んで埼玉」(2018年・日本)

監督=武内英樹

主演=二階堂ふみ GACKT 伊勢谷友介 ブラザートム

最初に言う。これは埼玉をディスるどころか、完全な愛の映画だ。地元や出身地への愛着、好きと言う気持ちを呼び覚ましてくれる。いやむしろ、エンドクレジットまでさんざん笑わせてくれた後、ここまでネタにされた埼玉を羨ましくさえ思う。

埼玉を徹底的におちょくったコミックとして話題となり、復刻版が出版された「翔んで埼玉」。たった3話しかない未完の作品である原作「翔んで埼玉」が映画化されると聞いて、魔夜峰央作品の大ファンである僕は、最初不安でしかなかった。今の日本。誰かをおとしめて笑いをとる芸人が名MCだなどとチヤホヤされて、暴言悪口が芸風のようなタレントが毎日テレビに現れ、誰かを悪く言うことで責任を逃れる政治家がいて、何かにつけて誰かが傷ついている。そんな世の風潮の中、この埼玉をディスる話が変な方向に発展してはいかないか。それが最大の不安だった。

しっかし、そこは「テルマエ・ロマエ」の映画化を成功させた武内英樹監督とスタッフたち。埼玉解放というドラマを軸に、原作にはない千葉や群馬を巻き込み、さらにデフォルメされた展開で見事なエンターテイメントに仕上げている。例えば、埼玉県人を試す為に"踏み絵"が使われるのだが、知事の写真から草加せんべいに変えられているのは誰にも分かりやすい改変で笑いを誘う。

原作の濃いキャラクターを再現する為に芸達者な二階堂ふみとGACKTをキャスティング。さらに、原作は学業とスポーツで転校生を叩きのめそうとするのに対し、東京の空気をテイスティングする対決という改変。GACKTが「芸能人格付けチェック」で連勝中というイメージを僕らが持っているだけに、ここには爆笑。さらに大河ドラマで上杉謙信を演じたことのあるGACKTが、「者共、出陣じゃ!」と叫ぶのには、テレビっ子の心をくすぐるあざとい仕掛けだとわかっているのに、嬉しくなってる自分がいるww

映画に付け加えられた現代(?)のエピソードが、地元愛の仕掛けとして見事。何もないけど、ほどほどに幸せ。埼玉をネタに笑っていたつもりが、映画を最後まで見終えて、「なんかいいやん、埼玉」と思えてしまうから不思議。ご当地映画としては最強かも。

コメント (2)
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