Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

トットチャンネル

2021-08-30 | 映画(た行)





◼️「トットチャンネル」(1987年・日本)

監督=大森一樹
主演=斉藤由貴 渡辺典子 高嶋政宏 網浜直子

黒柳徹子の自伝を映画化した、テレビジョン黎明期の物語。大森一樹監督の斬新な演出はとにかくテンポがよくて、気持ちがのせられる。時代考証が細かいところまで行き届いているのだろう、初めて知るテレビ局の裏側がとても楽しい。玉ねぎおばさんは、随分と型破りな人だったんだな、と再認識。

ラストの結婚披露宴シーンはちょっとできすぎと思えたけど好感。

斉藤由貴のアイドル映画としては、いろんな顔が見られる楽しさがある。



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恋する女たち

2021-08-28 | 映画(か行)





◼️「恋する女たち」(1986年・日本)

監督=大森一樹
主演=斉藤由貴 高井麻巳子 相良晴子 柳葉敏郎

斉藤由貴を主役に据えた大森一樹監督の三部作ではいちばん好きかも。登場人物一人一人の個性が見事に活きてるから、脇役までとても魅力的なのだ。とはいえ、80年代のフジテレビ資本映画らしく、おニャン子クラブ会員番号16番(若い人はわからんだろうな…😅)の高井麻巳子(大好きでした!)、「スケバン刑事」のビー玉お京こと相楽晴子共演。あの時代だからこそ撮ることができた青春映画。まみまみ(80年代育ち丸出しですみません)がディスコクィーン役だなんて、ミスキャストにも程があるけど、そこは置いといて。

さらに脇役がみんな魅力的だから、全体としてはすっごく満足。ヒロインの大学生の姉役は、落ち着いた雰囲気が素敵な原田貴和子お姉ちゃん(原田知世ファンなんでこの呼び名許してください)、斉藤由貴にヌードを描かせろとしつこく迫る美術部員が小林聡美。そして恋のお相手は柳葉敏郎。

映画後半、海辺を歩きながら恋愛について語り合う場面が好き。大人の「肩書付きの恋」って表現、今聞くと納得できるだろうな。ツルゲーネフやサリンジャーを引用する、ちょびっとインテリジェンスな感じが、これまた文系男子にはツボだったのでした。



『恋する女たち』劇場予告編


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ドライブ・マイ・カー

2021-08-22 | 映画(た行)






◼️「ドライブ・マイ・カー」(2021年・日本)

監督=濱口竜介
主演=西島秀俊 三浦透子 岡田将生 霧島れいか

原作が収められた村上春樹の作品集「女のいない男たち」には、ちょっと思い入れがある。文芸春秋社が本屋ポップに使うコピー文章を募集する企画があって、応募したら光栄にも選ばれた。本屋の店頭に平積みされた新刊と一緒に飾られた。書店員でもないのに、大好きな村上春樹作品に自分の文章が添えられて、めちゃくちゃ嬉しかった。

今回の映画化は、短編「ドライブ・マイ・カー」と、同じ作品集に収録された「シェエラザード」「木野」の2編のエピソードを付け加えて書かれた脚本である。舞台設定やドライバーを雇うことになるいきさつは改変されているが、原作にある台詞は丁寧に用いられていて好感。だが、それ以上に劇中演じられるチェーホフの「ワーニャ伯父さん」の台詞が散りばめられて、それがストーリーとところどころ響き合うような効果をもたらす。3時間の長尺を耐えられるのか心配だった。だが、この映画の言葉を大切にする姿勢と、込められた文学へのリスペクトに、ひと言ひと言を噛み締めようと聴き入っている自分がいる。ここまで構築するにはかなり考えに考えを重ねて脚本を仕上げたんだろう。カンヌの脚本賞、個人的には納得できる。

音声がすごくクリアで、西島秀俊のボソボソしたしゃべりや三浦透子の淡々とした口調もきちんと聴き取れる。

村上文学に登場する人物はみんな喪失感を抱えた人ばかり。この原作も然りで、現実とうまく向き合うことができなくて不安を抱えた主人公だ。西島秀俊は、大河ドラマ「八重の桜」以降、筋肉質で好印象な男優となり、自信にあふれる役柄も多い。だけどひと昔前はどこか頼りないヤサ男の役柄が多かった人でもある。「ドライブ・マイ・カー」では、その両面が生きている。演出家としての自信と裏腹に、亡き妻へのくすぶる思いに揺れる弱い自分を抱えている。クライマックスの感情が昂る表情は、昔の彼を見るようだった。それは村上文学の男をちゃんと表現できているのだと感じられた。

他言語で舞台劇を創り上げる主人公。その手法も、人と人のコミュニケーションの難しさを僕らに投げかけている。だからこそ手話が用いられる場面は、視線を惹きつけて離さない力がある。また広島市を舞台にしたことで加味されたメッセージ。そして原作では踏み込まなかったところにも、本作は深入りする。原作に思い入れがあるだけに「そこ行っちゃう!?」と不安に思ったが、付け加えられたパートが深く考えぬかれたものだと感じられた。

「ノルウェイの森」の映画化に激怒して以来、村上春樹作品の映画化は観るのをためらってしまう。でもこれは観てよかった。個人の感想です。劇伴も地味だし、徹底した会話劇だけに、きっと長尺に耐えられない人もいるとは思う。




映画『ドライブ・マイ・カー』90秒予告
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冴えない彼女の育てかた fine

2021-08-19 | 映画(さ行)






◼️「冴えない彼女の育てかた fine」(2019年・日本)

監督=柴田彰久
声の出演=松岡禎丞 安野希世乃 大西沙織 茅野愛衣

そうきたかあ!!!🤣

映画館の暗闇でニヤニヤしながら観たかった。(連呼される劇中の言葉を借りれば)"キモヲタのオ×××"話を、クスクス笑いながら、伝わらない気持ちの切なさに悶えながら、決死のクライマックスにキュンキュンしながら2時間を乗り切った。こういうのは自宅で観たらいかん。中断されたら入り込んだ気持ちが冷静になってしまう。幸いなことに自宅で邪魔が入らずに観られた。というよりも物語の展開にいちいち反応する自分を、家族に気持ち悪いと思われなくてよかった。あれ?いい歳したオレも倫也と同類?

テレビシリーズ全25話を通じて、僕らが見守ってきたのはモノづくりに挑む若人たちに芽生えてきた様々な感情の変化。いわば成長物語だ。才能が先行する詩羽や英梨々に、ゲームクリエイターとして憧れてきた倫也がその気持ちの一途さ故に気付かなかったこと。その一方でキモヲタ倫也を中心にしたラブコメ展開("正妻戦争"の表現に笑い転げた)は、じわじわと進展するもののそれはヒロインたちによって包囲網が狭められていく様子だった。

倫也が目指した究極のギャルゲー。その中の物語と現実がリンクする快感。第2期のラストでその展開になることは折り込み済みで見始めた劇場版だが、予想を遥かに超えていた。第1期で何もできなかったメインヒロインが真の主役になっていくドラマ。でもそれは表面的な筋書きでしかない。ゲームの演出に関わっていく恵。メインルートの展開を恵に相談する倫也はそれを通じて、女のコと本当に仲良くなる道すじを学んでいく。それは恵が恋のディレクターになった瞬間。この劇場版では、それがさらに進んでいく。詩羽と英梨々がそれぞれの立場で倫也を思う気持ちの変化も見ていて清々しく、惚れ直しちゃう。ラストの英梨々にもらい泣き。

恵とのロケハン>デートだったのが、二人でいることの意味がだんだん強くなる。詩羽と英梨々の危機に倫也が大阪へ向かう駅の場面の切ないこと切ないこと。恵のひと言ひと言が重い。平坦なしゃべりが面白かった安野希世乃のボイスは、2期後半から一気にエモーショナルになる。誕生日デートの約束する場面の「知らないよ♡」、おなじみ白いベレー帽にキュン死。「特別じゃなかったんだよ」と涙する場面のリアルな響き。あー、ヤバい。泣きそう。そして胸キュン(死語?)なクライマックスへ。

「合格、だよ♡」
オレも言われてぇーっ!🤣

そしてこの物語は真のエンディングを示す。あー、やっぱりこのストーリーの本質はモノづくりなんだな。素敵な結末。

大好きな人と手をつなぐ心地よさ。エンドロールで春奈るなの「glory days」を聴きながら、その感触を思い浮かべる。え?キモいって?そんなふうに言わないでぇー!😂 でもこんなアニメにキュンとなれる自分は、いい歳しててもまだまだイケてるのだよ(違う)。



劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」本予告 |2019年10月26日(土)公開


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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱

2021-08-15 | 映画(わ行)






◼️「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱/黄飛鴻之二: 男兒當自強」(1992年・香港)

監督=ツイ・ハーク
主演=ジェット・リー ロザムンド・クァン ドニー・イェン ホン・ヤンヤン

リー・リンチェイ、もといジェット・リーが実在の英雄ウォン・フェイ・フォン(黄飛鴻)を演じたシリーズもの。初めて観たのが本作。いっやー今まで観ていなかったのが悔やまれる。面白いわ。何よりも脚本がいい。

勧善懲悪に終わるのがこの手のアクション映画の常套手段だけど、この映画の登場人物は、単純に2つに分けられない。外国人を排斥しようとする白蓮教団、白蓮教に手を焼いているが外国とはうまくやらなきゃいけない清朝の役人たち、革命を起こそうとしていることから清朝の役人達に追われる孫文たち、そしてともかく善を貫く我らがウォン先生。立場の違うこれらが入り乱れていく面白さ。

単純な2つのグループのバトルに終わらないから、クライマックスは危機また危機で息つく間もない。さらに激しいアクションと弟子フーとのユーモラスなやりとり、ロザムンド・クァンとの恋まで加われば、娯楽映画の要素のすべてがある。そう言ってもいいかもしれない。

今ではこの映画のような時代劇は製作されることすら少なくなったのは悲しむべきことだ。それ故にこの映画の輝きはいっそう強くなる。白蓮教団のクン大師との対決は、ワイヤーワークを駆使して見事な見せ場になっている。机を積み重ねた祭壇の上での決闘は、手に汗握る名場面。そしてラストを飾るドニー・イェン扮する提督との対決。平面に収まらないバトルフィールドは香港映画おなじみの竹の足場を使ったアクロバティックなものになっている。二人の対決はチャン・イーモウ監督の「HERO」で再び見ることができる。この「ワンチャイ」を見たら、他の映画でドニー・イェンが棒術使いというだけでお涙もの。その一つが「ローグ・ワン」だったりする。



映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』予告編


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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明

2021-08-13 | 映画(わ行)






◼️「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明/武状元黄飛鴻」(1991年・香港)

監督=ツイ・ハーク
主演=ジェット・リー ロザムンド・クァン ユン・ピョウ ジャッキー・チュン

ジェット・リーが黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)を演ずる「ワンチャイ」シリーズ第1作。この第1作を見ると、医師で武術家であったフェイフォンの人柄や偉大さがよーくわかる。いかに庶民や弟子に慕われていたのか、武術家として一目置かれていたのか。ジャッキー・チェンの「酔拳」で、若き日のフェイフォンしか知らない映画ファンには、これは是非観ておいて欲しい。後にサモハン・キンポーが「燃えよデブゴン7」で演じた、弟子の"肉屋のウェン"も登場。ヒロイン、ロザムンド・クァンとの淡い恋愛要素もちょうどいい具合で、アクション映画の面白い流れにうまいスパイスになっている。

清朝末期、欧米列強の租界が存在する中国が舞台だけに、歴史的な背景にも注目して欲しい。第2作は白蓮教徒や孫文も出てくるから世界史の授業には格好のネタです!本作でも一方的に締結された不平等条約がいかに酷いものだったのか、ゴールドラッシュをネタに労働者を募る様子など、英米人の横暴ぶりが描かれる。果たして拳は銃に敵うのか。変わりゆく時代が感じとれるのではなかろうか。

最大の魅力はアクションシーン。とにかく他の映画では見られないアイディア満載。平坦な広場で技を繰り出すカンフーアクションはもちろん面白いけれど、この映画の上下の空間を駆使した演出は素晴らしい。冒頭の船上のロープを駆使した獅子舞から始まって、クライマックスの倉庫での死闘まで飽きることがない。特に倉庫でハシゴを駆使したスリリングな場面は、輸出品の綿花が詰められた積荷をトランポリンのように駆使する見事さ。第2作「天地大乱」の竹足場のアクションシーンも素晴らしかったな。



映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』予告編


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荒馬と女

2021-08-09 | 映画(あ行)






◼️「荒馬と女/Misfits」(1961年・アメリカ)

監督=ジョン・ヒューストン
主演=クラーク・ゲーブル マリリン・モンロー モンゴメリー・クリフト

ジョン・ヒューストン監督作が一時期好きだったことがある。その頃好きだったのは「マルタの鷹」「白鯨」「勝利への脱出」「王になろうとした男」。女優が目立たない映画が多い印象。だけど、当時すごく心に残ったのは「荒馬と女」だった。

この邦題はマリリン・モンローが出演していることを意識してつけられたものだ。原題は“Misfit“。くい違いとでも言おうか。これが頭にないとこの映画をちゃんと受け止めたことにはならないと思う。

登場人物たちはみんなこの“Misfit“を背負っている。クラーク・ゲーブルは根っからのカウボーイで既に時代遅れの存在。モンローは夫と合わず、離婚しようとして舞台となる町にやって来る。モンゴメー・クリフトら他の人物も何かの理由で独り身になっている人ばかり。

男と女の考え方の違いが“Misfit“として示される印象的な場面がある。クライマックス、野生の馬を生捕りにしようとする場面。モンローは馬を逃そうとし、ゲーブルは引きづられても綱を離そうとはしない。モンローのひと言で周りの男たちが戸惑う。

この映画は、モンローの遺作、ゲーブル、クリフトにとっても最後の出演作。モンローとゲーブルが星を見上げて語り合うラストシーンは心に残る場面。星を見上げるハリウッドスタアは、この後星になるのだ。「今じゃ若者は馬の代わりにスクーターに乗ってやがる」ってセリフも、主人公たちにとって時代が変わったことを示すだけでなく、変わりゆくハリウッドのことのように感じられてしまう。晩年までこうした秀作で、いい仕事をみせるスタアたちの偉大さ。



The Misfits Official Trailer #1 - Clark Gable, Marily Monroe Movie (1961) HD


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竜とそばかすの姫

2021-08-01 | 映画(ら行)


◼️「竜とそばかすの姫」(2021年・日本)

監督=細田守
声の出演=中村佳穂 成田凌 染谷将太 玉城ティナ

他の作品でも書いたけれど、細田守監督はファンタジーの世界観を全面に出しつつも現実を忘れない人だ。本作と同じくインターネットの世界とリアルを描いた「サマーウォーズ」が大好き。バーチャル空間でのつながり、おばあちゃんが電話かけまくって「あんたならできる」と励ますつながり、一家がそれぞれの得意で事件に挑むつながり。サイバーゾーンとリアルのネットワークの関係が絶妙だった。

さて「竜とそばかすの姫」もサイバーゾーンとリアルの話。しかし「サマーウォーズ」から10年余りが経ち、インターネットと僕らの関わりも変わってきている。壮大な仮想空間「U」でアバターたちが飛び回る様子は似ているし、映画冒頭から示されるその世界への没入感はワクワクさせてくれる。しかし青春の冒険エンターテイメントだった「サマーウォーズ」と違って、「竜とそばかすの姫」にはちょっとハードな現実が散りばめられている。スクールカースト、言えない気持ち、つながりたい気持ち、逃げ場としてのネット社会、心ない声、独りよがりな正義を振りかざす人々、孤独、虐待、エトセトラ。「おおかみこども」で感じた中途半端なリアル感とは違って、ヒロインすずをとりまく現実のしんどさは僕らも日々感じていることだし、見聞きしていることでもある。それだけに「サマーウォーズ」の爽快感を求めたら、裏切られてしまうだろう。

そう言う面での物足りなさは、ハードで現実的な部分がキーワードとして並べられているにすぎず、ヒロインの成長物語だけを手放しで賛美できないことだろう。クライマックスの展開も、これで解決できるの?本当に大変なのはここからなのでは?すずを助けているつもりの毒舌なやり手の友達も、結局はいちばんすずを型にはめていた訳で、彼女の改心とかないの?Uにアクセスするギアの仕組みや、竜がサイバー空間に屋敷を持てた理由とか、ツッコミどころが多々あって、ちょっとモヤモヤしてしまう。それでもすずの心境の変化と周辺の登場人物に絞って見れば、青春物語としてキュンキュンくる面白さはある。

音楽の良さもこの映画の魅力。観終わって、また聴きたくなる歌声だ。「自分の為に歌っているみたい」というひと言も、ネットで内省的な楽曲が受けている今どきの状況を感じさせる。でもストーリー上ですずが音楽製作する様子がもうちょっと出てこないと、いろいろあって歌えないけど音楽への情熱があることが伝わらない気もする。音楽製作アプリを触ってた少女時代を無言で示すことと、思いついたメロディを記録しなきゃってアプリを操作しようとする短い場面だけではちょっと不親切かも。

全体的には造形の面白さや美しさはあるだけに、ちょっと残念。これまでの細田作品からすると詰め込みすぎな印象が残った。





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