
■「ステキな金縛り」(2011年・日本)
監督=三谷幸喜
主演=深津絵里 西田敏行 中井貴一 阿部寛
三谷幸喜作品には毎回笑わせてもらっている。これまでの三谷映画は、あの業界ならありそう!、あのシチュエーションなら自分もそうする!、そのリアクションあり!そんな現実世界、実生活の笑いのツボをついてくるところが魅力だった。脚本に仕上げる着眼点の見事さ、面白さ。しかし「ステキな金縛り」はちょっと違う。裁判で落武者の幽霊を証言台に立たせるというアリエナーイお話。主人公だけでなく次々に出てくる登場人物たちも、他の映画では見られない過剰な芝居が多い。そう、舞台劇を観ているみたいな。だからむしろ映画でなくてもよいのでは・・・という意見もあるみたいね。でもそれ故に深津絵里のコメディエンヌ振りが際だっているし、西田敏行がこの上なく楽しんで演じているのがよくわかる。
脇役に至るまで選ばれている役者が、その役柄がデフォルメされたようにピシリとはまる。無実の罪で裁かれているKANはいかにも人が良さそうなキャラだし、ファミレス店員の深田恭子(きゃわいいー!)、目立ちたがり屋の俳優を演ずる佐藤浩一、陰陽師の末裔を演ずる市村正親、変な髪型の生瀬勝久・・・芸達者をそろえた見事なキャスティング。これが実現できるのも三谷作品だからこそ。
本当に自分は弁護士に向いているのか?崖っぷちに立たされた主人公エミが任された難事件。それは妻殺しの容疑をかけられた男の裁判。彼は犯行時刻にさびれた村の宿屋で、落武者の幽霊によって金縛りに遭っていたというのだ。調査に訪れたエミは幽霊に遭遇。落武者の幽霊六兵衛は主君を裏切った無実の罪で成仏できずにいたのだった。エミは六兵衛に証言台に立つことを申し入れる。あの手この手で見えない幽霊を信じさせようとする奮闘が面白いし、超現実主義者の検察官やあの世の秩序を守ろうとする役人までからんできて事態は大混乱に。裁判の行方は・・・。
「有頂天ホテル」ではグレタ・ガルボ主演の名作「グランド・ホテル」へのオマージュが捧げられていたが、クラシック映画に対する敬意は本作でも描かれている。ジェームズ・スチュワート主演の大傑作「スミス都へ行く」。政治の不正を暴くために議会で大演説をするクライマックス。初めて観たときデモクラシーのお手本のようなお話にいたく感動したっけ。劇中使われたヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(「アルプス一万尺」)は、「ステキな金縛り」でもうまく使われている。「素晴らしき哉、人生」も出てくるし、三谷監督はフランク・キャプラ監督作が本当にお好きなんだろな。楽しい2時間20分ではあったが、難を言えば上映時間がちと長く感じたことかな。