Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

単騎、千里を走る。

2006-02-05 | 映画(た行)

■「単騎、千里を走る。/Riding Alone For Thousand Of Miles」(2005年・中国)

●2006年サンディエゴ映画批評家協会賞 主演男優賞・外国語映画賞

監督=チャン・イーモウ
主演=高倉健 リー・ジャーミン ジャン・ウェン 寺島しのぶ 

 ここ最近のイーモウ作品は「HERO」にしても「LOVERS」にしても技術とスタアで彩られた映画だった。今回はイーモウカラーとも言うべき鮮やかな色彩はほとんどなく、そられは中国の雄大な風景に取って代わっている。逃げ出したヤンヤンを追って迷い込んだ岩場は、形作られるまでの長い年月を見るだけで感じさせる。また今回の出演者は主要キャストを除いて素人を使っているところも特徴だ。「秋菊の物語」の頃の素朴な温かさが画面からにじんでくる。寡黙な日本の旅人のために、いくつも机を並べてもてなしてくれる中国の人々。規則にしばられながらも主人公の気持ちに理解を示す役人たち。

 人と人が顔を見合わせるコミュニケーション。ネットやメールが普及する現在、失われつつあることだ。その大切さをイーモウ監督は思いだして欲しい、という。言葉が違っても分かり合おうとする中国の人々とのコミュニケーション、ものを言わずとも心が通じ合ったヤンヤンとのコミュニケーション。そして息子との途切れたコミュニケーション。人と人とが通じ合うことはいろんな感情を生む。それ故に難しいことも現実にはあるけれど、通じ合えた喜びは何事にも代え難い。ヤンヤンとの別れの場面、台詞もなく黙って青空をバックに抱きしめるだけの場面。ただそれだけなのに涙があふれてくる。獄中につながれた俳優ジャーミンの息子に会いたい気持ちに共感した主人公が突然に中国奥地の村へ行こうとする。普通ならガイドは止めようとするところだろうが、この映画のガイドたちは主人公に協力を惜しまない。この映画の中国人は本当に”いい人”ばかりだ。

 だがそれ故にとっても綺麗にまとめすぎたような印象も残る。中国側から見れば、日本人の旅人が自分の思いを貫いて中国のルールすら曲げようとし、人の生活に(善意だけれども)介入してくる話だ。ここ最近ニュースで流れる中国と日本の関係は、決して穏やかなものではない。でもこの映画には「日本人の旅人がわがまま言って」という発言をする中国人は一人たりとも出てこない。例えば刑務所の所長がこういう発言の一つでもしていたら、この映画はすごく現代性を感じさせるものになっていたと思うのだ。ラストの荒れる海を眺める健さんの背中・・・あれは蛇足な気がしてならない。それから「お義父さんとあの人と三人でお食事がしたいんです」って近頃の嫁はなかなか言わないよ、きっと。ああいう女性こそニッポンの最後の希望なのでは(笑)。デジカメやビデオカメラの起動音がやたらと耳に残るのも気になった。SONYの宣伝かと思えるくらいに。

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オフコースを聴いて考えたこと

2006-02-04 | 音楽
2000(ミレニアム)ベスト2000(ミレニアム)ベスト
オフコース 小田和正


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ある日の仕事帰りにふと「愛をとめないで」が聴きたくなった。なぜだかわからないけど。
レンタル店に立ち寄ったら、「ミレニアムベスト」なるCDしかなかった。
ちょっと納得がいかない選曲だ。これでベストとはおこがましいだろ。
「風に吹かれて」も入っていなければ「眠れぬ夜」も入っていない。
「SAVE THE LOVE」とかけっこう好きだったのに・・・まぁそれは無理なことか。
「愛をとめないで」があればいいや。僕は他に数枚、節操のない取り合わせでレジに向かった。
僕はオフコースが大嫌いだったはずなのに・・・。

いや、僕の場合、オフコースが嫌い、というよりも逆恨みと言った方がいいかもしれない。
中学3年のとき。冬だったかな。
1,2年のときに同級生だったある女の子に電話で告白した。結果は・・あっさりフラれた。
「ありがとう・・・でもね・・・私、キミのことそういうふうに思ったことないの。」
僕は受話器を握って何も言えなくなった。学校じゃ、あんなに一緒に笑っているのに。
「・・・ごめんね。」彼女は言った。
「ううん。君の気持ちがわかればいいんだ。じゃ、また学校でね。」
精一杯の強がりの台詞。

彼女はオフコースが好きだった。それまでは僕もオフコースを人並みには聴いていた。
彼女と一緒にオフコースを話題にすることもあった。
でもあの日以来、僕の中でオフコースを封印した。
それからの僕はオフコースを耳にすると落ち着かなくなる。
ボウリング場のBGMで「さよなら」が流れるとガーターを連発するようになる(マジ)。

それがどうだろう。帰宅中の車の中でCDをセットした。
きかせて/あなたの声を/抱かせて/あなたの体を/心が言葉をこえて/愛の中へつれてゆくよ・・・
20年ぶりに聴く曲ばかりだ。
振り返らないで/今 君は素敵だよ/僕のゆくところへ/あなたを連れていくよ・・・

頭の中で忘れられていた引き出しが開かれた。「愛の唄」が流れたときだった。
過ぎゆくは若き日々/いくつかの愛も消えて
僕は口ずさんでいた。20年間ずっと聴いたことがなかった「愛の唄」を、
歌詞を間違えずに合わせて歌うことができている!。
永遠の命も名誉もいらない/あなたに会えたこと/それだけでいい
どうしたんだろう。あれ程嫌っていたオフコースの歌詞が心にすっと入ってくる。
泣き濡れてただ一人/さみしい黄昏には/恋人よ 振り向けば/やさしい想い出をあげよう・・・

20年経ってやっとオフコースを素直に聴けた。バカだと思うかも知れないけど・・・。
小田和正の詩が素直に聴けるようになった・・・大人になったってことなのかな。
その夜、妙におセンチなオヤジになっていた僕でした。
コメント (7)
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セルジュのDVD買っちゃいました

2006-02-01 | 音楽
セルジュ・ゲンスブール 1970-1989セルジュ・ゲンスブール 1970-1989
セルジュ・ゲンスブール


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僕のメインHPtak's Movie Page!今月のおうたコーナー。2月はセルジュ・ゲンスブールの曲を取りあげる予定。

セルジュ・ゲンスブールの映像作品はいろいろあるけど、映画は「ガラスの墓標」と「シャルロット・フォーエバー」くらいしか観たことがない。
セルジュファンなら必修科目の「ジュテーム・モア・ノン・プリュ」はまだ観たことがない。
でもBS2などで放送されたドキュメンタリーの類はあれこれ見ている。
もう繰り返し見ているんだけど、挿入されるPVの断片をフルで見たいとずーっと思っていたんよね。
60年代までの版を近いうちに購入しよう!これは僕にとってはマストアイテム。

セルジュ・ゲンスブールに関しては以前にも書きました。
僕のGreatest Albums 「ラブ・オン・ザ・ビート」
シャルロット・ゲンスブールについてもこちらを。
僕のGreatest Albums 「魅少女シャルロット」
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