◼️「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」(2024年・日本)
監督=上田慎一郎
主演=内野聖陽 岡田将生 小澤征悦 川栄李奈
上田慎一郎監督は見せ方が上手。本作を観て改めてそう思った。台詞に頼らない映像で、置かれた状況や心情をちゃんと伝えてくれる。特に短い場面の心理描写が見事なのだ。「カメ止め」の後半もそうだったし、カンヌ映画祭×Tiktokのショートムービーコンペで受賞した「レンタル部下」の切ない感じも好きだったな。
「アングリー・スクワッド」は韓国ドラマを現代ニッポンに翻案した作品と聞く。チームで大掛かりな詐欺をするいわゆるコンゲーム。巨額の脱税をしている外面のいい金持ちに、地面師詐欺で挑む話だ。しかし単に泥棒や私腹をこやすために人を騙す話ではない。そこにはいろんな意味での復讐の感情が絡んでくる。しかもそれに真面目な税務署員が加わるってところがいい。
行動の裏にある真意を知ると同じ映像の見え方が変わってくる。感情が乗った映像がある映画ほど雄弁なものはない。主人公熊沢が詐欺一味に加わるまでの日々。上司に逆らえず、長いものに巻かれ、富ある者に屈辱を味合わされる。正しいことをしようとするのに立ちはだかる分厚い壁。それを覆えす話だから、とにかく気持ちがいい。鬱展開や重たいテーマの日本映画が多いだけに、こういうのを待っていた気がする。
内野聖陽の困った顔と自信たっぷりの岡田将生。川栄李奈、真矢みきなどなど個性が際立った役者陣も素晴らしい。
そして上田監督の見せ方の上手さ。えっ?そうくる?とテンポよく観客の期待を小さく裏切りながら、その先に用意された大どんでん返しに僕らはさらに転がされる。ショートムービー「みらいの婚活」も僕らが見ている風景を次々に根底からひっくり返して驚かせ、真の意味を知ってしんみりさせてくれたけど、そうした実験の発展型が本作だ。現実味がないとか堅いこと言わずに、この素敵な120分に向き合って欲しい。ラストの内野聖陽が悪役小澤征悦に言うひと言は、「アンタッチャブル」のラストでエリオット・ネスがカポネに言う「授業終わり!」に匹敵するカッコよさw(言い過ぎ?😆)