麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

オセロー

2007年07月31日 | 鑑賞
 演劇集団円『オセロー』(作/W・シェイクスピア 訳/松岡和子 演出/平光琢也)は大入り満員で全10ステージを終えたそうだ。
紀伊國屋ホールにて7/20~29。

【文中敬称略】
 なんといっても、吉見イアゴーの“悪ぶり”が圧巻

「金田・平光コンビによるシェイクスピアシリーズ」の前2作を見逃しているが、平光演出では、昨年の橋爪『ファウスト』は観た! 少々遊びが過ぎた舞台だったが、この『オセロー』はテンポ良く、笑いも「笑かそうとする」のではなく、芝居の中の面白さが際だっての笑いで・・・よくシェイクスピアは、海外では笑いが起きるのに日本ではシカツメラシイ顔で終わると言われるところを、見事、楽しい舞台に仕上げていた。

 舞台上方に垂らされた鎖と、様々な表情を見せる盆舞台だけの、その二者の変化で時間と空間を飛ばしていく、加藤ちかの美術も大いに機能した“スタイリッシュな演劇”に、終演後は満場、割れんばかりの拍手だった!!!
                            
 おっと。主役を演じた金田明夫を忘れてはいけません。
 オープニングは少々小さいオセローだなあ…と思わなくもないのですが、映像では冴えないサラリーマンやドジな刑事など、いわゆる「脇」で光る俳優が、堂々“高潔なムーア人の将軍”を演じ、実際、体も大きく見えてくるのである。それが終盤、妻デスデモーナに贈ったハンカチを副官・キャシオーが手にしていたという有名な場面では、前述の盆舞台の窪みに、鮮やかに(?)嵌り込んで、英雄がただ嫉妬に狂う男になる様を強烈に印象づけた。
 一気に体が小さく見えるそれは、デ・ニーロばり(?)だ。

 ヒロイン・デスデモーナの朴ロミ(←ロミは王偏に路に、美)も、登場は声優チックな発声が耳に触ったが、多くの男を惑わせる若く美しいベネチアの元老院議員の娘として、他の女性とはステージが違う、と捉えると納得もいった。

 また、彼女の身の回りの世話をするエミリアは、イアゴーの妻でもあるが、『オセロー』では夫婦揃って“もうけ役”ともいえる「貞淑で賢明な妻」を、三沢明美が、夫役の吉見一豊に負けじと、気品に溢れた心優しいエミリアは、例えるなら、見事なグラブさばきをみせる玄人受けする「セカンド」のようだった。

 ついでに例えるなら、全力投球するエース・オセロー金田、キャッチャーはノムさんばりの奸計(?)でリードするイアーゴ吉見、ホットコーナーには華のあるデスデモーナ朴。一気にはしょって、8番ライト=ライパチ君は、イアーゴに操られ最期はイアーゴの剣に倒れる哀れなロダリーゴー瑞木健太郎・・・という布陣、みたいな。
 いやぁ~大変素晴らしかったです

 で。あえていえば、これはもう完全に好みの問題ですが、音楽が、僕には駄目でした。

コメント
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