麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

その鉄塔に男たちはいるという

2007年07月02日 | 鑑賞
 青年座の女性演出家3人が、3月から6月の短い間に「土田英生」の、それぞれ異なるテキストに取り組んだ。
                               【文中敬称略】

 まず3月、ラゾーナ川崎プラザソルで千田恵子が『燕のいる駅』を、今月、青年座の第189回公演として宮田慶子が『悔しい女』を紀伊國屋ホールで、そして須藤黄英が青年座劇場で『その鉄塔に男たちはいるという』(6/27水~7/1日)を。

 ちなみに『鉄塔』は、(社)日本劇団協議会の主催公演で、平成19年度文化庁芸術団体人材育成支援事業「次世代を担う演劇人育成公演」である。
 昨年、弊団が上演した『大地のカケラ』と同じカテゴリーですネ。また『燕』には、弊団の安田扶二子が客演させていただきました。
 
 さて。『鉄塔』大変素晴らしかったです

 あと一週間で戦争が終結するという噂を聞いた、慰問のお笑いグループ5人組「コミックメン」のうち、戦争に加担するのが「ちょっと嫌」という、どちらかといえば軽~い気持ちで、リーダーとスタッフを残して、部隊からちょいと離れた「鉄塔」に4人の男が辿り着いたところから話は始まるのだが…。

 まず配役が絶妙! 将来の青年座を背負って立つであろう山秀樹、高松潤、豊田茂が、それぞれ素材を生かしつつ役を膨らませて、芝居の根幹を担いました。
 タイトルの通り、芝居は全編「鉄塔」の上という大変狭い空間のみ。
(この美術=伊藤雅子の仕事が、またいい
 その中に、文学座の川辺邦弘という異なる彩りを加えた4人が、Tシャツは元々誰のものだったかとか、一週間を過ごすあいだのルールをどうするかなど些細なことで揉める・・・。

 これが後々「戦争」というものと結びつく。
 つまりはそんな個々の些細な争い事の延長線上に、国同士の悲惨な戦があるのだと、声を大にすることなく、多くは笑いの中に込められたメッセージとして2時間休憩なしの中で発せられ、けれども十分濃密に我々はそれを受け止められる。
 そんな素敵な舞台でした。

 後半、その部隊からまさに脱走してくる城之内(桜木信介)が加わるのだが、昨年4月に入団したばかりの彼が、また実に新鮮でいい。体型がまず「いかにも脱走しそうな兵士」であって、特にその腰回りなぞは、中堅ベテランが束になってかかっても敵わないほどのリアルさで客席に迫ってくるのだ

 おお。俳優を褒めているうち作品解説になっちゃたのが、再び俳優に返ってきたゾ。
 数行前に書いたように、悪ふざけのように見えて実にシニカルな毒を持った良質のホンも、「笑い」と「ドキリ」をシーソーのように展開する。
 それを演出の須藤黄英は、正確にトレースして「次世代を担う演劇人育成公演」にふさわしい瑞々しいドラマに仕上げてみせてくれた。


 まったく、量に加えて質の点でも大変上質な劇団=青年座。
 
 我々東演も、負けないように頑張るゾ
コメント
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